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平成29年(2017年)9月20日更新

平成29年第三回都議会定例会 知事所信表明

平成29年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。

1 はじめに

戦後の復興、高度経済成長を経て、世界有数の大都市へと発展した東京には、今、かつてない二つのうねりが押し寄せようとしております。人口が減少に転じることが見込まれ、かつ、団塊の世代の皆様が75歳以上となる2025年。この大きな転換点を見据え、これからの東京・日本の持続的な成長をいかにして実現していくのか。そして、安心できる医療・福祉・介護の体制をどう充実させていくのか。私たちの目の前には、これまでの延長線上の政策では太刀打ちできない課題が山積をしております。
危機感を持って捉えるべきこの難局を打開する鍵は、「人」にあります。都民一人ひとりへのきめ細かな目配りと、旧来の発想から抜け出す大胆な取組を織り交ぜながら、女性も男性も、高齢者も若人も、障がいのある方も、誰もがその力を存分に発揮できる社会を創り上げる。そこから生み出される大いなる活力こそ、迫りくるうねりを乗り越え、明るい未来に向かって成長を続けていくための原動力となるのであります。
人口減少というピンチを、誰もがいきいきと活躍できる東京を実現するチャンスへと変えていかなければなりません。そこで、これまで以上に「人」に焦点を当てた、大義と共感溢れる政策を重点的に進めるべく、7月には「重点政策方針2017」を策定をいたしました。東京が持つ資源を最大限に活用しながら、「保育サービスの魅力と質の向上」「誰もが元気に支え合う社会」「未来の東京・日本を支える人づくり」など、「人が生きる、人が輝く東京」を実現するための8つの戦略を展開してまいります。
未来へのスプリングボード、跳躍台であり、2025年への備えを加速させる契機ともなるオリンピック・パラリンピックに向けて、東京の活力の源である都民一人ひとりをもっと輝かせ、持続的に成長する東京の礎を築いていく。そのために、重点政策方針に基づき、実行プランに掲げる「2020年に向けた」政策を一層磨き上げ、前へと進めてまいります。そして、50年、100年先も世界の中で輝き続ける、さらなる高みの成熟都市・東京を必ずや創り上げる。知事就任2年目を迎え、改めて深く決意し、さらにスピードを上げて、なすべきことをなしてまいります。

2 人が生きる、人が輝く「ダイバーシティ」・東京

「人口減少」と「超高齢化」という二つのうねりを前に、首都・東京は何をなすべきでありましょうか。私は、これからも「活力を生み続ける東京」を実現するためには、やはり「人への投資」が欠かせないと考えております。これより、その実現に向けたチャレンジを述べてまいります。

超高齢社会への対応に力を入れる

世界に例を見ない速度で超高齢化が進む中、住み慣れた地域で医療・介護・住まいなどが一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築は、喫緊の課題であります。併せて、これまで東京・日本の成長を牽引し、まだまだ意欲旺盛な高齢者の方々が、学び続けられる、働き続けられる「生涯現役」を合い言葉に、いつまでも生きがいを持って活躍できる社会を実現したいと思います。そのことが、一人ひとりの心身の健康を支え、地域社会が活力を生み続けることにも繋がると考えるからであります。
例えば、空き家を活用し、地域や世代間の交流を促進する社会。あるいは、人生の経験を重ねた中での、さらなる学びの欲求に応える環境。これまでの発想にとどまらず、幅広い観点で新たな知恵を絞りながら、超高齢社会のあり方を模索していきたいと思います。
その一方で、目前の課題にしっかりと手を打つべく、来年度からの3年間を計画期間とする「第7期高齢者保健福祉計画」の策定を進めております。地域で支え合いながら、誰もが安心して暮らし続けられる東京へ。介護サービス基盤の整備、高齢者向け住まいの充実、介護人材対策の推進などに向けた具体的な施策を示し、超高齢社会への対応に力を入れて取り組んでまいります。

待機児童解消に向けた追加対策

女性の力をもっと引き出すとともに、明るい未来を切り拓く新たな世代をしっかりと育てるため、就任から1年間、待機児童対策に最も力を注いでまいりました。保育所等の保育サービスを利用する児童数は、昨年度から1万6003名増加しており、引き続き平成31年度末の待機児童解消に向け、大胆に予算を配分した重層的な対策を確実に推進をいたします。
加えて、今般、現場の状況に機動的に対応するため、追加対策を取りまとめました。保育所等の建物賃借料の補助については、国が創設した新たな補助も活用し、上限額を引き上げます。業務効率化に向けた保育所のICT化もさらに加速するとともに、重大事故を防ぐベビーセンサーの導入支援など、保育の質を高める対策も怠ることなく進めてまいります。

女性の活躍を推し進める

社会における女性の活躍も、力強く支援してまいります。
事業の発展が期待でき、多くの女性の目標ともなり得る女性起業家に対し、さらなるスキルアップを目指すプログラムや、海外で研鑽を積む機会を提供いたします。託児スペースを備えた女性向け創業支援施設の整備促進と合わせ、女性起業家の活躍を後押ししてまいります。
また、特に若い女性に長期的なキャリアデザインを描くきっかけとしてもらえるよう、第一線で活躍する女性を迎えて「女性が輝くTOKYO懇話会」を年内にも開催し、その発信や提言を具体的な取組に繋げていきたいと思います。

未来の東京・日本を支える人づくり

未来の活力を支える「人」づくりにも、積極的に投資してまいります。
時事問題等を英語で話し合うなど、学校生活全体で英語の使用機会を増やす「東京イングリッシュ・エンパワーメント・プロジェクト」を、今月から都立高校20校において展開をしております。英語による実践的なコミュニケーションを体験的に学習する「TOKYO GLOBAL GATEWAY」については、1年後の開業に向け、先日、都内の学校からの予約受付を開始いたしました。
また、生産年齢人口が減少していく中、AIを活用する新たな時代にふさわしい教育の充実も求められます。プログラミング教育のあり方や、我が国のIT産業を担う人材の育成などについて、今後、教育委員会と連携しながら具体的な検討を進めてまいります。
そして、より良い教育を実現するためには、何よりも学校現場の課題に向き合うことが不可欠であります。特に小学校では、授業時数が増加傾向にあり、この先、新たな学習指導要領に移行すると、その状況は一層顕著となります。教育の質や、教員の長時間労働への影響も懸念されるこうした現状を踏まえ、先月開催した総合教育会議では、現場の教員も交えて、小学校教育の現状と今後のあり方について議論をいたしました。未来を担う人材の育成に向けて、その礎とも言える小学校教育の課題に、教育委員会と力を合わせてしっかりと取り組んでまいります。

3 都民の命を守る「セーフ シティ」の実現へ

都民の皆様が安心して生活するためには、「備え」が欠かせません。いつ発生してもおかしくない首都直下地震。猛威を振るう自然災害や、脅威を増す国際テロ。さらには、我が国の平和に深刻な影響を与える暴挙を繰り返し、核実験を強行する北朝鮮の動向。こうした現状を踏まえ、安全・安心の確立に向けて政府とも連携しながら、「備えよ、常に」の精神で不断の取組を進めてまいります。

自助・共助・公助のさらなる推進

都民の理解と共感に基づく自助・共助の取組と、都による公助の取組を共に推進するべく、より分かりやすい事業計画として「セーフ シティ東京防災プラン(仮称)」を策定いたします。防災対策の効果の「見える化」、女性視点の対策の推進、熊本地震の経験の反映といった新たな視点を加え、年度末には公表してまいります。
首都直下地震発生時には517万人もの発生が見込まれる帰宅困難者について、都はこれまで、発災時の一斉帰宅抑制の呼びかけや、一時滞在施設の確保などに取り組んでまいりました。さらなる対策の推進に向け、昨日、有識者等による検討会議を設置したところであり、社会全体の「助け合い」の気運を高めるなど、取組の強化を目指した議論を進めてまいります。

水害・土砂災害へ備える

加えて、全国的に大規模な水害や土砂災害の発生が見られる中、先月視察した環状七号線地下広域調節池の整備や、都内約1万5千か所に及ぶ土砂災害警戒区域等の指定を着実に推進いたします。ハード・ソフトの両面から災害対策を展開し、都民の命を守る「セーフ シティ」の実現を加速してまいります。

4 金融・環境で世界をリードする「スマート シティ」を目指して

2020年のさらにその先の持続可能な東京を目指し、今こそ、確固たる成長の基盤を築いていかねばなりません。

国際金融・経済都市への道

経済の血液たる金融と、都内の産業を支える中小企業の活性化こそ、東京の成長戦略の中核であります。

フィンテック産業の育成による金融の活性化

金融の活性化に向けては、先日、国家戦略特区の区域会議において、設立5年未満の一定の法人に適用される税負担軽減の対象に、資産運用業とフィンテック企業を追加することを提案いたしました。また、来月からは、秋にまとめる「国際金融都市・東京」の新たな構想に繋がる取組の一つとして、都内でのフィンテック産業の育成を目指し、海外企業による先進的ビジネスの開発を支援してまいります。
こうした取組を通じて、海外のフィンテック企業の誘致やビジネス展開を加速し、革新的な金融イノベーションに繋げることで、アジアナンバーワンの国際金融都市への歩みをまた一歩進めたいと思います。

中小企業・老舗企業のチャンスを拡大

中小企業の発展にも、しっかりと目配りしてまいります。官民の入札・調達情報を集約した「ビジネスチャンス・ナビ2020」では、今年度から新たに、組織委員会や都の監理団体等が電子入札を実施できる仕組みを取り入れ、中小企業の受注機会の拡大を図っております。併せて、コーディネーターの増員や商談会の開催を通じ、受発注取引のマッチングも強化してまいります。
東京の老舗企業が誇る多彩な技やノウハウも、東京の大きな可能性であります。これに光を当て、「東京ブランド」として磨き上げていく「江戸東京きらりプロジェクト」では、先日、ブランドを牽引するモデルとなる取組を5件、決定をいたしました。今後、マーケティングなどの手法を駆使してこれらを研ぎ澄ましながら、伝統に根ざしたものづくりの技と精神を世界に発信し、新たな市場獲得にも繋げたいと思います。

ゼロエミッション東京を目指す

CO2を出さない「ゼロエミッション東京」を目指し、地球環境との調和を図ることは、持続的な発展を実現する上で重要な課題であります。

次世代自動車のさらなる普及

フランスとイギリスが、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する方針を相次いで発表するなど、世界では今、CO2を排出しない自動車への転換に向けた動きが現れ始めております。世界をリードする環境先進都市を目指す都としましても、電気自動車や燃料電池自動車などのさらなる普及のため、取組を進めてまいります。
例えば、電気自動車については、地理的に自動車での移動距離が短い島しょ地域において、普及を目指したモデル事業を実施しております。電気自動車の使い勝手や経済性を体感していただくことで、利用の拡大に繋げてまいります。
今後、次世代自動車の利用を一層進めるためには、マンション等における充電設備や水素ステーションなど、インフラのさらなる整備も必要であります。ガソリン車・ディーゼル車に替わる人々の足として、環境に優しい次世代自動車が当たり前となる未来に向け、果敢に取り組んでいきたいと思います。

水素エネルギーの活用

水素エネルギーの活用に向けましては、官民両輪によるムーブメントを醸成すべく、この秋、民間団体や都内自治体と共に「Tokyoスイソ推進チーム」を発足いたします。先進事例の情報共有、共通の情報発信など、志を同じくする官民の多くの団体と共に、水素普及のための取組を広く展開してまいります。
2020年大会の選手村地区においては、実用段階としては日本初となる住宅棟への水素供給の実施など、水素社会のモデルを目指したまちづくりを進めてまいります。昨日、この地区でエネルギー事業を手掛ける民間事業者が決定し、年度内には水素パイプラインの敷設工事に着手いたします。大会時には水素供給システムの一部を稼働するなど、先進的な日本の環境技術を世界にアピールしていきたいと思います。

気候変動問題への対応

エネルギーの大消費地である東京は、世界が直面する気候変動問題に積極的に対応していかなければなりません。都は、世界大都市気候先導グループ「C40」に参加しており、10月下旬にパリで開催される会合に私も出席することを予定しております。気候変動対策の推進に向け、世界の各都市との連携を深めてまいります。
今後、都としてCO2削減対策をさらに加速すべく、キャップアンドトレード制度の一層の推進をはじめ、エネルギー効率の強化を図ってまいります。併せて、他の自治体や民間事業者とも連携しつつ、再生可能エネルギーの利用拡大についても検討を進めてまいります。

世界基準の「東京グリーンボンド」を発行

金融と環境の両面で世界をリードする「スマート シティ」の実現に向け、環境・社会・ガバナンスの3つをベースにしたESG投資を活発にしたいと思います。都はこの秋、国内の自治体としては初めて、環境事業に要する資金を調達する債券である「東京グリーンボンド」を発行いたします。
先日、世界的な権威のあるドイツのESG調査機関から、「東京グリーンボンド」の対象事業は社会面・環境面で価値があり、持続可能性も良好との評価を受けました。グリーンボンドの発行に当たりまして、この機関による評価を取得した自治体は、東京都が世界で初めてであります。まさに世界基準と言える「東京グリーンボンド」を、総額200億円の規模で発行し、都の環境施策に対する都民の皆様の理解や共感をさらに育むとともに、金融や投資の活性化にも繋げていきたいと存じます。

5 オリンピック・パラリンピックの準備と東京の進化

オリンピック・パラリンピックを契機に、様々な観点から東京の成熟度を高め、その先の持続的な成長へと繋げてまいります。

大会成功に向けた着実な準備

知事就任以来、大会経費の妥当性、準備体制の透明性を総点検してまいりました。都の施設の整備費用削減などを通じて、大会の成功だけでなく、そのレガシーを東京の持続的な発展に最大限活用していく視点が広く共有されたことは、大きな成果であったと考えます。
5月には、大会の役割分担及び経費分担に対する基本的な方向につきまして、都、組織委員会、国、関係自治体の間で合意をいたしました。組織委員会には一層の増収努力をお願いするとともに、財源確保の一つの手段として、今般、関係自治体と共同で、宝くじによる追加支援等の要望を行ったところであります。併せて、組織委員会及び国と共に、大会運営経費の削減をはじめ、コスト管理と執行統制の強化を図るための「共同実施事業管理委員会」を設立するなど、オールジャパンの体制が整う中、大会成功に向けた具体の準備を加速してまいります。
バドミントン、車いすバスケットボール等の会場となる「武蔵野の森総合スポーツプラザ」は、11月に開業を迎えます。世界一流の力と技がぶつかり合い、人々の記憶に刻まれる場となることを期待するとともに、隣接する東京スタジアムと合わせ、スポーツ振興や地域の賑わいに貢献する多摩の一大拠点として発展させてまいります。本定例会には、指定管理者の指定のための議案を提案いたしております。よろしくご審議のほどお願いいたします。
また、この夏の東京は一時期、天候不順が続きましたが、大会期間中の暑さ対策は大きな課題であります。マラソン、競歩などの競技コースにおける遮熱性舗装の整備をはじめ、厳しい暑さを緩和する対策を進めてまいります。その他、世界各地で多発し、決して他人事ではないテロへの備えの強化や、街中の様々な場面での多言語対応など、大会まで3年を切った今、さらなるスピード感を持って、一つひとつの取組を着実に推進してまいります。

大会への気運醸成

大会に向けたオールジャパンの一体感もさらに高めてまいります。特に、一昨日、私も車いすバドミントンなどを体験した「チャレスポ!TOKYO」など、パラスポーツの楽しさを広める取組に一層力を入れてまいります。
被災地を含む全国との連帯も欠かせません。都内、被災地、競技会場所在都市を巡ってきたフラッグツアーは、今後、南北2ルートにて全国を巡回いたします。先日の3年前イベントに続き、10月、11月に行う1000日前カウントダウンイベントなど、節目を捉えた気運向上も進めてまいります。
なお、本日は、ラグビーワールドカップ2019が開幕するちょうど2年前に当たります。ワールドカップの熱狂が、翌年のオリンピック・パラリンピックにおけるさらなる興奮と感動に繋がるよう、両大会の一体的な盛り上げも図っていきたいと思います。
さらに、東京文化プログラムの展開、被災地支援や復興の発信、先端技術の活用など、大会の成功と東京・日本のさらなる成長を目指す「ホストシティTokyoプロジェクト」を全庁一丸で推し進め、都民・国民の皆様と共に、2020年とその先の未来に向かって力強く歩んでまいります。

受動喫煙防止対策のための条例の検討

大会のホストシティとしての責務を果たすとともに、何よりも都民の健康を確保する観点から、受動喫煙防止対策をより一層推進していかなくてはなりません。法制化に向けた国の動向が未だ見通せない中、都は先日、条例の制定に当たっての基本的な考え方を示しました。
多数の人が利用する施設は、一定の小規模飲食店に配慮をしつつ、原則屋内禁煙とする。自治体、都民、保護者、施設管理者がそれぞれ担うべき役割を明確にする。違反した喫煙者や施設管理者に対しては罰則を適用する。「人」を守るとの信念の下、こうした方向性で条例化する内容の精査を重ね、広く都民の意見も伺いながら、ラグビーワールドカップまでの施行を目指して検討を進めてまいります。

都市の成熟を示すレガシー

1964年の東京大会は、新幹線や首都高速道路など、高度経済成長を牽引するレガシーを生み出しました。2020年大会では、都市としての成熟を示すレガシーを遺していきたいと思います。
そのために取り組むべきことは、第一に、インフラの「見えない化」であります。道路の無電柱化については、先の定例会で可決いただいた「無電柱化推進条例」が今月施行となり、都道全線において電柱新設が禁止となりました。この条例を梃子として、区市町村の取組の支援や、コスト縮減に繋がる技術開発のほか、11月10日の「無電柱化の日」に合わせた啓発など、官民一体で無電柱化を推し進めてまいります。
同じく、「見えない化」により東京の価値を高める取組として、日本橋周辺の首都高の地下化を進めてまいります。先の東京オリンピックの際、日本橋上空に架けられた首都高を、快適・ゆとりの高度成熟都市を目指す中で作り替えていくことは、東京の進化を表す一つの象徴となると思います。老朽化に伴う更新の機会を捉え、国や首都高速道路株式会社と共同で、日本橋周辺のまちづくりと連携して取り組み、品格ある景観を未来に遺したいと思います。
第二に、障がい者や高齢者にやさしい社会・まちづくりであります。パラリンピックは、障がい者や高齢者がいきいきと生活していく社会づくり、まちづくりに繋がります。街の段差の解消に加え、都営バスでは、車内の通路段差を解消し、誰もが車内後方までスムーズに移動できるフルフラットバスを、日本で初めて導入いたします。来年には営業運行を開始し、新たな路線バスのモデルとして全国にも発信してまいります。
第三は、仕事の生産性を高めるための働き方改革であります。世界中から人々を迎える2020年大会を控え、鉄道の混雑緩和を進めなくてはなりません。7月に行った時差ビズでは、約320社もの企業に共感をいただき、時差出勤やテレワークが一斉に実施されました。鉄道各社には、オフピーク時間帯における特典付与や列車増発の協力をいただくなど、快適通勤のムーブメントは確実に広がっております。この秋には、積極的に取り組まれた企業・団体を「時差ビズ推進賞」として表彰をし、その取組を広く紹介するなど、引き続き、生産性を高めるための時差ビズを新たな常識として定着させていきたいと思います。
通勤混雑の緩和にも有効なテレワークについては、特に中小企業への普及を目的に、体験セミナーやモデル事業を実施してまいります。都においても、今月から毎月「テレワーク・デイ」を設定するほか、フレックスタイムの試行を踏まえ、より柔軟な勤務時間制度の構築を進めます。都が多様な働き方を先導することで、誰もが働きやすく、生産性の高い労働環境を広げていきたいと思います。

6 目指すべき未来の東京の姿

都市づくりのグランドデザイン

2020年大会の大いなるレガシーの下で成長を続け、その先に目指す都市像はどうあるべきなのか。「東京の未来を創ろう」をキャッチフレーズに策定した「都市づくりのグランドデザイン」では、2040年代の東京の新しい姿と、その実現のための方策を打ち出しました。
「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の礎となる都市づくりに向けて、分野横断的な視点から定めた7つの戦略と30の政策方針に基づき、具体的な取組を進めてまいります。積極果敢に都市づくりを進める姿勢を明確にするため、「震災時の燃え広がりゼロ」「緑の総量を減らさない」など、取り組むべき「挑戦」も掲げました。都民、民間事業者、区市町村など多様な主体と連携しながら、新たな価値を生み続ける高度成熟都市を築き上げ、未来を担う子供たちにより良い東京を引き継いでいきたいと思います。

多摩の振興プラン

東京の未来像を考える上で、研究開発型の企業や大学の集積、豊かな自然、多彩な観光資源などのポテンシャルを有する多摩地域をいかに発展させていくかは、重要な視点であります。グランドデザインと同じく2040年代を見据え、多摩の目指す地域像とそのための施策の方向性を示す「多摩の振興プラン」を、先週公表いたしました。道路交通ネットワークが充実し、産業振興により地域活性化が図られ、豊かな自然と共生する。こうした将来像に向けた施策を、多摩の各地域の特性や課題も踏まえながら、より効果的、重層的に展開をしてまいります。

「宝島」の魅力を発信

島しょ地域のさらなる活性化も進めてまいります。島々の隠れた魅力を再発見し、付加価値をつけて広く発信することを目指す「東京宝島推進委員会」においては、現地の視察等を踏まえ、課題の洗い出しが行われております。新鮮な魚介類や温泉など、強みとなる特産品や観光資源は数多く、それらを活かした島しょ地域のブランド化に向け、有識者と共に多様な観点から検討してまいります。
船舶で島々を訪れる「婚活ツアー」は、今月の大島を皮切りに、他の島でも順次開催されます。また、食を通じて伊豆諸島の歴史と文化を学ぶツアーなど、多摩・島しょ地域の自然を活かした新たな余暇を体験できる取組も展開をいたします。さらにこの秋には、島しょ地域での宿泊や買い物等の際、スマートフォンで利用できる特典付き旅行商品券を発行するなど、多くの人々が宝島の魅力に触れるきっかけづくりを幅広く行い、島々の一層の賑わいを創出していきたいと思います。

7 豊洲市場への早期の移転を目指す

次に、築地市場の豊洲への移転について申し上げます。先の都議会臨時会では、熱心なご議論をいただき、豊洲移転への道筋をつける補正予算を可決いただきました。今後、安全・安心を確保するための追加対策工事や、施設の使い勝手の向上をはじめ、「豊洲市場への早期移転」に向けた取組を加速いたします。併せて、正確な情報を分かりやすく発信するなど、都民の皆様、市場業者の皆様の理解と安心を得るための努力を重ねてまいります。その一環として、先日、地元住民の皆様と共に豊洲市場を視察をいたしました。
追加対策工事の完了後は、専門家会議によりその有効性を確認し、農林水産大臣に対して認可申請を行うなど、移転に向けたステップを着実に踏んでまいります。正確な情報をお伝えしながら、豊洲市場の安全・安心の確保に必要な全ての手続きを完了することで、業者の皆様、地元の皆様にご納得いただける環境が整うものと考えております。なお、具体的な移転の時期につきましては、業者の皆様の意向も尊重しながら真摯かつ丁寧に協議を重ね、早期に決定したいと思います。
一方、市場移転後の築地においては、まずはオリンピック・パラリンピックに向け、環状第2号線の地上部道路や輸送拠点の整備を進めます。これと並行して、大会後の築地再開発について、「築地再開発検討会議(仮称)」での議論を来月から開始いたします。再開発の具体的な姿は段階的に検討を進め、民間の力を最大限活用しつつ、今後5年以内のできるだけ早い時期に着工できるよう努めてまいります。
これらにより、基本方針を具体化し、東京の持続的な成長に繋げていく取組を、着実に前へと進めてまいります。

8 都政改革のさらなる展開

2020改革の推進

知事就任以来、私が推し進めてきた「東京大改革」の要諦は、都政を透明化し、都民と共に進める都政を実現することであります。そのことが、都民一人ひとりが輝き、活力を生み続ける東京を実現するために不可欠と考えるからであります。
そのために、私自らを本部長とする都政改革本部を設置し、知事選の公約にも掲げたオリンピック開催費用の見直し、情報公開制度や入札制度の改革などを進めてまいりました。また、予算編成の透明化に向けて、都独自の手順であったいわゆる「政党復活予算」の廃止などにも切り込んでまいりました。
そして、今年の春からは、これらの活動をバージョンアップさせた「2020改革」を開始いたしました。「しごと改革」「見える化改革」「仕組み改革」の3点セットで、都政改革を意識と制度の両面から推進しております。特に、監理団体及び報告団体については、各局の政策の執行機関としての機能強化や団体のあり方など、抜本的な見直しを進めてまいります。
これらの改革の進捗状況は、都政改革本部会議において都民の皆様に公開をいたします。そして、今年度末には、都政改革本部を司令塔に数年にわたり改革を推し進めるための「2020改革プラン(仮称)」を策定してまいります。

都民、職員による事業提案制度

また、幅広い意見を都政の施策形成に活かす試みとして、予算編成過程に都民、職員の声を直接反映させる手法を導入いたします。子育て支援や高齢化対策など、喫緊の課題の解決に向けた事業を都民の皆様からご提案いただき、行政にはない新たな発想の活用を目指してまいります。併せて、職員が担当分野にかかわらず事業を提案できる制度も実施をし、一人ひとりの経験や知識を活かした実効性の高い施策を立案するとともに、職員の改革マインドのさらなる向上にも繋げてまいります。

9 名誉都民の選定

さて、このたび名誉都民の候補者として、有馬朗人さん、猪谷千春さん、草間彌生さん、黒栁徹子さんの四名の方々を選定させていただきました。
有馬朗人さんは、物理学の研究で優れた業績を残すとともに、俳人、東京大学総長、文部大臣など、多方面において活躍してこられました。
猪谷千春さんは、日本人初の冬季オリンピックメダリストとなり、長きにわたりIOC委員としてスポーツ振興に寄与してこられました。
草間彌生さんは、水玉や網目模様などによる独創的かつ個性的な作品を次々と発表し、前衛芸術家として時代の最先端で活躍されておられます。
黒栁徹子さんは、テレビ草創期から第一線で活躍され、ユニセフ親善大使を務めるなど、社会貢献活動にも精力的に取り組んでおられます。
四名の皆様は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。

10 おわりに

「家庭の問題を理解できる女性ならば、国家を運営する問題をより理解できる」。こう述べたのは、イギリス初の女性首相であるマーガレット・サッチャー氏であります。家庭も国家も「人」から成り、それぞれの問題を理解するための鍵も「人」にある。その意味で、この夏、過去最高の36名の女性議員の皆様が誕生したことは、心強く感じるところであります。都においても、女性幹部の登用をさらに進めてまいりました。これまで以上に女性の目線が活かされ、「人」に焦点を当てた都政を展開していく環境が一層整ったと感じております。
「人口減少」「超高齢化」という時代の節目を迎える今、議会と執行機関が競い合うかのように処方箋を次々と作り上げていくことが肝要であると思います。これからも、東京の持続的な成長を実現するチャンスを、皆様と活かしていきたいと切に願っております。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、条例案9件、契約案15件など、合わせて31件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどお願いを申し上げます。

以上をもちまして、私の所信表明を終わりとさせていただきます。
ご清聴、誠にありがとうございました。

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