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令和4年(2022年)12月1日更新

令和4年第四回都議会定例会 知事所信表明

令和4年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対しましての所信の一端を述べさせていただきます。

1 はじめに

今年の6月に発表された、スイスのビジネススクールIMDによる世界競争力ランキングでは、日本は過去最低の34位。また、直近の株価の時価総額ランキングを見ると、トップ100に名を連ねる日本企業は僅か1社しかありません。私たちは、この現実を正面から受け止めなければなりません。
一方、東京には、豊かな自然と洗練された都市環境、企業や大学・研究機関などが持つ世界有数の技術力、江戸から続く歴史が育んだ英知も脈々と受け継がれています。こうしたポテンシャルを活かす具体の行動を起こせるかどうかに、私たちの未来はかかっています。
時代が歴史的な転換点を迎えている今こそ、態勢を立て直す時、ゲームチェンジの時です。首都東京が変われば、日本も変わる。世界の中を飲み込む大きなうねりの中で、新たな価値を生み出す都市へと進化するべく果敢に挑戦してまいります。

2 挑戦を支える安全・安心を確かなものにする

まずは何よりも、全ての都市活動の基盤となるのが安全・安心です。日々の暮らしに根差した消費活動から、いつ起こるとも知れない大規模災害への備えまで、しっかりと手立てを講じ、変革に挑む東京の足元を固めてまいります。

物価高騰等への対応

10月の消費者物価指数が3.6%上昇し、40年ぶりの歴史的な上げ幅を記録しました。都民生活や事業活動が苦境に追いやられる中、活路を開く戦略的な発想が求められています。例えば、輸入食料品が高騰する今こそ、日本の食卓を支えてきた米をもっと活用するべきです。国産の米や野菜を配付し生活に困窮する方々を支援するほか、日本食ブームの機を捉えて東京産食材の海外販路の開拓もサポートします。逆に、海外に展開している中小企業の国内回帰を後押しするなど、円安も追い風にして東京の稼ぐ力を高めてまいります。
また、この冬の電力需給は依然として厳しい状況にあり、不測の事態への備えが欠かせません。本日から来年3月末までを「冬のHTT推進期間」とし、都民や事業者の皆様の節電行動を促していきます。温かく、節電にも繋がるウォームビズ。都庁が率先して取り組むことで、社会に共感の輪を広げてまいります。近隣自治体や各種関係団体とも連携して、「減らす」「創る」「蓄める」の実践を呼びかけるなど、HTTの取組を一層定着させてまいります。

年末年始に向けた感染症対策の強化

続いて、新型コロナウイルス対策であります。全国的に人の往来が活発になる年末年始を見据え、先手先手で手立てを講じていくことが大切です。感染が拡大する中、季節性インフルエンザとの同時流行も念頭に置いて、必要な方に必要な医療が確実に届けられますよう、体制の整備を進めております。重症化リスクの高い高齢者の方々への対応を強化するため、介護度の高い方の受入施設を、本日から区部と多摩地域の4か所に追加で開設をいたします。コロナの治療、介護・リハビリも実施して、回復後のスムーズな日常生活への移行を図ります。併せて、自宅で安心して療養いただけるよう陽性者登録センターの対応能力を大幅に拡充をし、適切なサポートへと確実に繋げるほか、発熱時の相談体制も強化いたします。都も治験協力をした国産の経口薬が、先週、我が国で初めて承認されました。軽症・中等症患者向けに治療の選択肢が広がったことは、コロナ対策を進める上で、着実な追い風になるはずであります。
その上で、この冬をアクティブに過ごすためのポイント、それはワクチンであります。予約不要でオミクロン株対応ワクチンが接種可能な都の大規模接種会場に加えまして、生後6か月から4歳までの乳幼児向け接種の機会も拡充しております。「攻め」のワクチン、「守り」の感染防止対策、そして、検査キットや解熱剤等をあらかじめ備蓄する「備え」。この3つの徹底に向けて、改めてご協力をお願いいたします。

福祉・保健・医療サービスを盤石なものにする都庁の体制強化

新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから、2年10カ月が経過しました。これまでの闘いを通じて得られた貴重な英知を最大限活かし、今後も、先を見据えた機動的な対処を行っていくためには、デジタル化の推進はもとより、保健所のあり方なども含めて、さらなる戦略的な備えが必要であります。一方、一段と進んだ少子高齢化に加え、児童虐待相談件数の増加や共生社会の実現に向けた気運の高まりなど社会状況も変化しておりまして、都民ニーズに丁寧かつきめ細かく対応することが一層強く求められています。こうした課題に正面から向き合い、福祉・保健・医療サービス、これを将来に渡って盤石なものとするべく、福祉保健局の組織を見直すこととしました。政策分野を跨ぐ機能の連携など、局が培ってきた多くの財産を引き継ぎながら、保健医療部門と福祉部門にそれぞれ独立させ、高い専門性と機動性を発揮できる新たな局へと生まれ変わります。来年7月の再編・設置を目指しまして、年明けの第一回定例会に条例案を提案できますよう、準備を進めてまいります。

強靭な都市の実現

さて、10月には、市街地の延焼を遮断する特定整備路線の補助第26号線が世田谷区三宿で交通開放されました。また、石神井川上流の西東京市と武蔵野市を跨ぐ地下調節池の整備も始まるなど、強靭な東京の骨格作りは着実に進展しております。一方で、自然災害の猛威は留まることを知らず、「数十年に一度」、「観測史上最多」といった報道が毎年のように繰り返されています。従来の防災施策を前提条件から見直し、ハード・ソフトの両面からレベルアップした「都市強靭化プロジェクト」を年内に策定しまして、都民の命・暮らしを守り抜きます。そして、防災力は、「自助・共助・公助」、これらが三位一体で機能することで初めてその真価を発揮します。これは来年、発生から100年の節目を迎える関東大震災の経験が物語るものでもあります。先人たちの知恵を大切に引き継ぎ、強靭化プロジェクトを東京が一丸となって推し進めることで、立ちはだかる脅威に屈しない力強い都市を創り上げてまいります。

3 「人」の力こそ都市に進化をもたらす最大の原動力

あらゆる人が互いを理解・尊重し合い、自分らしく活躍することで発揮されるパワー。これこそ、より豊かな都市へとさらなる発展をもたらすエンジンです。「人」の力を高め、「人」の力を引き出し、一人ひとりが主役になる東京を築きます。

未来を担う子供たちへの投資

次の世代を担う子供たちは、今を生きる私たちにとって、まさに未来そのものです。昨年の全国の合計特殊出生率は1.3。東京におきましては過去最低水準が目前に迫る1.08まで低下しています。先週、国が公表した速報値によりますと、今年の出生数は、統計史上最も少なかった前年をさらに下回っておりまして、年間で初めて80万人を切る見通しとも言われています。人口は、国家の最も基本的な要素であります。このまま少子化が続きますと、国力そのものが先細っていくことを懸念せざるを得ません。望む人誰もが子供を産み育てやすい環境を整えることこそ行政の役割であり、都はこれまでも、妊娠・出産や子育てを積極的に支援をし、国をも先導してまいりました。今後さらに、各局の垣根を越えて大胆な政策拡充に向けた検討を進め、この問題に真正面から取り組んでまいります。
可能性に溢れる子供たちの学びや経験を豊かにしていくことは、私たちの果たすべき最大の「未来への投資」であります。物事をぐんぐん吸収できる乳幼児期の体験・経験は、健やかな成長に不可欠な自己肯定感や社会性などを身につける上で、極めて重要です。全ての子供が、長い人生を歩む上で欠かせない大切な力を育めるよう、多彩な体験・経験ができる仕組みなど育ちを支える取組の抜本的な充実を図ってまいります。

英語教育の充実

グローバルに繋がる現代においても、もはや国際語である英語は、その国の国力を決定付けるインフラの一つであります。居心地の良い日本語という壁に囲まれたまま首都東京が内向き志向に陥っては、国際社会で競争力を失うばかりです。世界と繋がるこの大切なインフラを自らのものにしていく。これからの未来を生きる子供たちには、ツールとしての英語はもとより、豊かな国際感覚を身につけ、将来への可能性を広げてほしいと思います。都立高校では、様々な地域への海外派遣に力を入れ、現地でなければ得られない異文化に触れる機会を拡大してまいります。今月には、いつでも、どこでも生きた英語に触れられる学びのポータルサイトも開設します。オンライン学習教材をはじめ、都の国際教育の取組を随時発信しながら、主体的に英語を学べる環境を整えるなど、未来を切り拓く力をしっかりと育ててまいります。

「都立工科高校」から次世代のトップランナーが羽ばたく

都立工業高校は、来年度、次なるステージ、「工科高校」として新たな一歩を踏み出します。あらゆる業界で活躍が期待されるDX人材を輩出するため、ロボティクス、食品サイエンス、都市防災技術など、時代が求める先進的な学科へと順次リニューアルします。最先端の環境の下で学ぶ3年間は、ものづくりの奥深さを知るかけがえのない経験となることでありましょう。都立工科高校から、次世代のトップランナーが、日本そして世界へと羽ばたいてほしいと思います。

デジタルの力で誰一人取り残さない学びを推進

バーチャル空間に設立した学び舎で、子供たちの学ぶ機会を確保します。不登校等で通学に困難を抱えている、外国から転入したばかりで日本語が上手く理解できない。こうした支援を要する子供たちが、オンライン上に設けられた教室で、支援員の個別のサポートにより無理なく学べる新たな居場所を創り上げます。まずは、新宿区と連携しながらデモ版の運用を開始し、今後、その輪を広げることも視野に入れ、効果的な取組を展開してまいります。

一人ひとりが輝くことで、都市の力は格段に高まる

女性の力を遺憾なく発揮する

都市の活力を高めるには、性別を問わず幅広い視点や多様な意見が必要です。私が初めて都知事に就任した平成28年、都の重要政策を方向付ける審議会での女性任用率は、僅か20%台でした。東京から社会を変えていく、その強い想いで取組を推し進め、今年度末までといたしていた40%の目標、これを半年以上も前倒しで達成をいたしました。今後も、様々な分野で女性の参画を促していくためには、とりわけ子育て世帯が直面する、仕事か家庭かの二者択一も変えていかなければなりません。子育てに勤しむパパ・ママを周囲ががっちりとバックアップする。そうしたメッセージを込めて、衝撃を柔らかく吸収し力を分散するハニカム構造をモチーフに育業のロゴマークを作成いたしました。育業の精神を社会に浸透させ、仕事も家庭も大切にできる環境を整えてまいります。

自分らしく暮らせるまちを実現

多様性に溢れた東京を象徴するパートナーシップ宣誓制度が開始されました。先月の運用開始から300組を超える申し込みがあり、制度ヘの期待の大きさを実感しています。多様な性への理解が進み、当事者の方々がいきいきと暮らしやすいまちにする。昨日公表いたしました「性自認及び性的指向に関する基本計画」の改定案でも、そうした社会の実現を目指す施策を示したところであります。さらに、障がいのある方の社会進出も一層後押しをするため、国や業界団体と連携し、200社を超える企業が参加する大規模な就業マッチング支援を実施します。幅広い取組を通じて、誰もが自分らしく暮らせるダイバーシティ東京を実現してまいります。

悩みを抱え込まない社会へ

孤独・孤立を抱える人々の悩みは複雑化・多様化しています。都のひきこもり支援プログラムの全面的な刷新に向けまして、新たなガイドラインの策定に着手しています。中高年層を含む全ての世代を対象に、当事者やその家族が自己肯定感を抱けるよう、就労や自立支援に囚われず最適な支援に繋げてまいります。
併せて、都の自殺対策におきましても、計画改定を進めております。40代以上の働き盛りの男性、コロナ禍の影響がとりわけ顕著な女性などにフォーカスを当てまして、悩みを一人で抱え込まない仕組みづくりが求められています。様々な支援機関と連携を強固にしながら、総合的に施策を展開してまいります。

アーティストが活動しやすい都市

東京の豊かな芸術文化を生み出すのも「人」の力に他なりません。デジタルテクノロジーを使った新たな表現の創造拠点「シビック・クリエイティブ・ベース東京」のオープニングセレモニーに、私も3DのCGを駆使したアバターとなって参加をいたしました。アーティストの表現方法も日々、広がっていることを実感しています。今後も、担い手となるアーティストたちの継続的な活動を支援する仕組みづくりや、都内の劇場や芸術文化団体等と連携した子供たちの創造力を育む機会の提供など、この東京が誇るソフトパワーにさらに磨きをかけてまいります。

夢や感動を届ける国際大会の実現へ

人々の胸に、夢や感動、勇気を育むスポーツの力。とりわけ、その最大の発露となる国際的な大会において最も重要なのは都民・国民からの信頼です。そうした中、東京2020大会に関して組織委員会が発注した業務の契約を巡り、司法当局による捜査が及んだことは誠に遺憾であります。清算法人には、全面的に協力するよう伝えました。都も、既に潮田副知事をトップとする調査チームを立ち上げておりまして、当該契約に係る手続き、意思決定過程等についてしっかりと確認してまいります。
2025年には、東京で世界陸上とデフリンピックが開催されます。国際的なスポーツ大会を通じて人々に明るい希望の光を届けていく。そのためにも、新たに設置する有識者会議で今後の国際大会におけるガバナンスや情報公開、都の関与のあり方など議論を深めまして、ガイドラインを策定してまいります。改めるべきものは改め、引き続き、東京2020大会を通して得られた数々のレガシーを、より良い東京の未来のために活かしてまいります。

4 脱炭素化という人類共通の課題に立ち向かう

さて、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27が幕を閉じました。途上国を支援するための基金の創設は、COP史に残る重要な合意だったといえましょう。一方で、各国が計画通りにCO2の排出を抑えましても、パリ協定で掲げた「1.5℃目標」の達成には程遠く、依然として乗り越えるべき大きな壁がそびえ立ったままです。私は、気候変動対策の最前線に立つ都市の首長として、各国の首脳陣が顔を揃える会議の場で、改めて東京のリーダーシップを強調し、共に一丸となってこの問題に立ち向かうべきだと国際社会に呼びかけました。持続可能で美しい地球を未来に残す。都は新たなステージへと飛躍し、実効性ある政策を練り上げ、行動を起こしてまいります。

環境確保条例の改正

象徴的な取組となるのが、本定例会に提案している「環境確保条例」の改正案です。その柱は、大手住宅供給事業者等に対して、住宅等の新築中小建物への太陽光発電設備の設置等を義務付ける全国初の制度であります。1400万人が居を構える住宅の屋根。この屈指のポテンシャルを開花させ、都は、日本の先頭に立ち、脱炭素化への行動を牽引します。住宅産業にかつてないグリーンシフトを促す本制度を確かな軌道に乗せるために、「心・技・体」を兼ね備えた都の支援策を講じます。まずは、「心」。多面的な広報活動でムーブメントを醸成し、都内各地でのセミナーの開催や講師派遣、ワンストップ相談窓口の設置などを通じて、制度への理解と共感を呼び起こします。続いて、「技」。環境性能の高い住宅モデルの開発等を支援するほか、狭小住宅でも設置可能な小型軽量ソーラーパネルの普及を図るなど、制度の円滑なスタートダッシュを切るための準備を進めます。最後に、「体」。太陽光パネルのリサイクルルートの確立に向けた体制づくりや、再エネ機器のグループ購入を促進することで都民が割安に設備を導入できる仕組みを構築してまいります。併せて、安定した再生可能エネルギーとなる地中熱の住宅利用の拡大を図るなど、あらゆる可能性に視野を広げながら、来年度予算を待つことなく、本定例会に提案している補正予算案にも必要な経費を盛り込みました。人々の共感を得る、技術を磨く、体制や制度・予算を整える。この心・技・体、三つの側面から多彩な支援を展開することで、事業者と都民、そして都が一体となって本制度を推進いたします。同時に、こうした施策展開を支える安定的な財源の確保にも努め、2030年のカーボンハーフを確かなものにし、その先の「ゼロエミッション東京」の実現へと繋げてまいります。

ZEVの普及拡大

建物の次は、モビリティです。電気自動車のF1とも言われる「フォーミュラE」の2024年の春の開催を起爆剤に、ZEVの普及を一気に加速しなければなりません。そのために欠かせないインフラとなる充電設備を充実するため、環境確保条例の改正などを通じて設置を拡大するほか、EVバイクの普及に向けて、新たにバッテリーシェアサービスも開始いたしました。また、先日は、都庁通りや新宿中央公園などを会場にZEVの魅力を多くの方に実感・体感していただくPRイベントを展開いたしました。こうした様々な取組を展開しながら、身近なモビリティとして東京中に浸透させてまいります。

世界を牽引する水素社会の実現に向けて

エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立に向け鍵を握るのが水素です。高度な技術の集約が必要であり、様々な主体と知恵を寄せ合いながら、普及拡大を目指します。10月には、気候危機行動ムーブメント「TIME TO ACT」、この一環として海外先進都市のトップらと会談をしまして、共に連携を深めていくことを確認いたしました。国内では、山梨県との間で協定を結んで、県で作られたグリーン水素を都有施設で実際に活用するなど、着実に実装事例を蓄積してまいります。さらには、昨日、民間事業者との「ラウンドテーブル」におきまして、パイプライン等の水素供給方法について議論を行ったところです。将来に向け、海外から運んできた水素を、そうしたネットワークにより都内に供給する仕組みについて検討を進めてまいります。

5 世界から選ばれるバイタリティ溢れる東京の実現

全国旅行支援、さらには、もっとTokyoも本格実施され、東京に本来の活気が戻りつつあります。感染症対策と社会経済活動の回復との両立を図る。今こそ蓄えた力を解き放ち、新たな成長のチャンスを掴み取ることで、世界から選ばれるバイタリティ溢れる都市を実現してまいります。

新たな成長を生み出す

何度でも訪れたくなる観光都市へ

今年発表された世界経済フォーラムの観光魅力度ランキングでトップに輝いた日本に、各国から熱い眼差しが送られています。直面する円安も、インバウンドを呼び込む絶好の機会であり、MICEの誘致を推し進めるなど、東京の多彩な魅力を世界に売り込んでまいります。その最たる例が、「食」の豊かさです。新鮮な東京野菜、島で水揚げされた地魚など、この秋に開催した「東京味わいフェスタ」では、都内で収穫された旬の食材を使った料理の数々に、多くの方が舌鼓を打ちました。また、現代や未来にも通じる「江戸」の英知を掘り起こし、歴史・文化を軸にした東京の奥深い魅力を再発見する取組も始めました。今後も、外国人旅行者が何度でも訪れたくなる観光都市を目指し、戦略的に施策を展開してまいります。

新たな成長分野を育て産業構造の転換を加速

新しい成長の先導役となるのがスタートアップです。「Born Global」、海外市場への飛躍も視野に、従来とは一線を画す支援体制で、未来を開拓する挑戦者たちを全力でバックアップします。先日には、東京都の本気度を示すため、新たな戦略を発表しました。国内外のプレイヤーが混ざり合う「場づくり」として、海外事例も参考にした「Tokyo Innovation Base」の設立に向けた検討や、開発した製品・サービスの実証フィールドとして公共調達の活用を図るなど、スタートアップがいきいきと躍動できる環境を整えてまいります。
数多くの大学でひしめき合う東京は、培われた知の集積や逞しい創造力を開花させ、世界と伍するイノベーションの一大拠点とならなければなりません。自主自律の精神を力の拠り所とする大学経営を抑えつけていては、我が国の競争力はいつまで経っても国際社会に水をあけられたままでありましょう。都は、未知なる世界に果敢に挑む「人づくり」を推進をして、大学発のスタートアップを次々と誕生させてまいります。
競争力の強化には、気候危機を背景に注目が高まるグリーン分野の成長が鍵を握ります。そこで、今月、都が60億円規模で出資するファンドを呼び水に、脱炭素化に取り組む革新的なベンチャー企業に資金が流れる仕組みを構築します。都市の課題解決に貢献する企業の活動が、市場で評価され、さらなる投資を呼び込む好循環の創出に繋げていきます。さらに、こうした成長産業への人材シフトを促進するため、都の職業能力開発センターのバージョンアップを図るとともに、時代のニーズを捉えた職業訓練と就労支援による一体的なサポートを展開してまいります。

大きく動き出した都心部・臨海部のまちづくり

今月、環状第2号線が全線開通するほか、渋谷・新宿の副都心を繋ぐ環状第5の1号線も交通開放されます。都心部・臨海部を舞台に、世界に誇る魅力的な都市づくりが進んでいます。クリーンエネルギー、自然との共生、デジタル先進都市。皆さんが頭の中に描いた未来像が、現実に、着実に形作られようとしているのであります。

都心部のまちづくり

まずは、旧築地市場跡地のまちづくりです。伝統を持つ食文化、浜離宮や隅田川など、その地にまつわる多様な魅力を活かし、新しい文化を創造・発信する拠点としてまいります。昨日、民間事業者の募集要項を公表したところであり、知恵や工夫を凝らした優れた提案を引き出してまいります。
歴史や文化に裏打ちされた品格ある街並みの顔・日本橋。その姿を燦燦と輝く太陽の下に開放する首都高地下化の取組も着実に進めます。さらに、銀座を走る東京高速道路を「人」中心の空間に再生するKK線プロジェクトでは、この夏に視察いたしましたニューヨークのハイラインのように、訪れるたびにワクワクするような緑溢れる空中回廊として甦らせます。来年の春には、KK線を歩いて楽しめるイベントを実施をしまして、多くの方にウォーカブルな都市空間の魅力を体感していただきたいと思います。

臨海部のまちづくり

ベイエリアでは、自然と便利が融合したまちづくり「東京ベイeSGプロジェクト」が走り出しています。「中央防波堤エリア」を最先端技術の実装フィールドとして開放する先行プロジェクトの実施事業者が決まりました。いよいよ未来に向けた壮大な都市づくりの始まりです。さらに、東京2020大会で世界のアスリートを迎えた晴海の選手村跡地では、2024年春のまちびらきに向け、水素ステーションや住宅棟などの整備が着実に前へと進んでいます。多くの方々から愛される葛西臨海水族園も、自然との共存をコンセプトに全く新しいベイエリアの拠点として生まれ変わるベく、令和9年度の開設に向け、整備に着手してまいります。

二つのエリアを繋ぐ交通ネットワークを強化

そして、大きく動き出した二つのエリアが一体となることで、まちの魅力は格段に向上します。都心部・臨海地域地下鉄の計画が具体化していきます。先般、国の参画も得た検討会におきまして、ルートや駅の位置などを示した事業計画案がまとめられました。これを基に都は、持続可能な成長を牽引する本路線の早期事業化に向け、計画のブラッシュアップと事業主体の検討を加速してまいります。

多摩・島しょ地域のさらなる発展

続いて、多摩・島しょ地域についてであります。緑豊かな自然と都心への良好なアクセス性を併せ持つ多摩地域は、子育て世帯などから、改めてそのポテンシャルが注目されています。より一層の発展に向け、多摩都市モノレールや南多摩尾根幹線道路を地域の魅力と成長を支える交通ネットワークの軸に加えるなど、新たな多摩のまちづくり計画の検討に着手いたします。一方、東京の島々も、無電柱化やDXの推進といった島民の生活を支える様々な取組のほか、「東京宝島」のブランド化、上質な宿泊施設の誘致など島の付加価値の向上にも取り組んでいるところです。こうした、個性溢れる多摩・島しょは、コロナ禍で注目が集まる多様な働き方や暮らし方を望む人々の「第二のふるさと」となる可能性を秘めています。専属スタッフによるワンストップ相談、市町村と連携したセミナー開催などに加え、今後も移住・定住を後押しするさらなる方策の検討を進め、共に地域を盛り上げる仲間を増やしてまいります。

6 おわりに

さて、今からおよそ170年前、鎖国を続ける海に囲まれた島国が、突如迫られた開国。しかし、それを境に、我が国は明治維新も経て、一気に近代化を成し遂げました。今、ガラガラと音を立てて変わりつつある時代は、私たちが生きるこの現代社会がさながら第二の開国とも言うべき歴史的な転換点にあることを教えてくれています。東京の未来、私たちの暮らしの未来を考える時、もはや海の向こうに目を向けることなくして、確かな道筋を描くことはできないのであります。
海を超えて行き交う知恵や技術、アイデア。それらが東京のポテンシャルと出会い、混ざり、溶け合う時、都市の課題を解決する新たな力が生まれてきます。だからこそ、「Sustainable High City-Tech.Tokyo」、すなわち「SusHi Tech Tokyo」を旗印として、テクノロジーに代表される東京の強み、挑戦を続ける東京の姿、これらを、力強く発信し続けていく。来年2月に開催する、スタートアップとのオープンイノベーションを促進する国際イベント「City-Tech.Tokyo」と、国際都市間ネットワーク「G-NETS」の首長級会議は、まさにその最初の一歩となるものであります。
東京を世界に開く。そして、東京は変わる。厳しい時を共に乗り越え、力を合わせて持続可能な都市への進化を成し遂げてまいりましょう。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案が2件、条例案15件など、合わせまして64件の議案を提案しております。よろしくご審議の程、お願いを申し上げます。

以上をもちまして、私の所信表明を終わりといたします。
ご清聴、誠にありがとうございました。

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