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平成30年(2018年)2月21日更新

平成30年第一回都議会定例会知事施政方針表明

平成30年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。

2月4日、名誉都民である造形美術家、三橋國民さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

1 はじめに

(時代の転換点にある東京)

江戸が東京へと改称された1868年は、欧米による植民地支配の波が押し寄せる中、我が国が近代化への道を歩み始めた年であります。明治の新政府が、「智識を世界に求め」と明記した基本方針を発し、欧米的な近代政治の体裁を整えるなど、世界を見据えた改革を推し進める中で、東京は歴史の第一歩を踏み出しました。

それから150年、私たちは改めて、日本の現状と未来、そして世界の動きを直視すべき時を迎えております。国内では、戦後、右肩上がりの人口が経済成長を力強く支えた「人口ボーナス期」を経て、生産年齢人口の減少が経済に負の影響を与えるとされる「人口オーナス期」に突入をしており、持続的な成長や社会保障制度の維持が危ぶまれております。世界に目を転じれば、アメリカにおける大幅な法人税率の引下げや急速なAI技術の発展など、国際競争が益々激化する様相を見せるほか、緊張高まる北朝鮮情勢において、軍事衝突の可能性は今も消えてはおりません。東京・日本を取り巻く内外の厳しい局面を乗り越えるためには、これまでの枠に囚われることなく、為すべきことを為していかなければならない。東京は、国を覆う危機感の中でその歴史を踏み出した時と同様に、今、時代の大きな転換点にあるのであります。

(日本が一丸となって難局に立ち向かう時)

だからこそ、今改めて、東京・日本の運営やあり方を大胆に見直さなければなりません。国はもとより、東京を含めた地方がそれぞれの役割を果たし、日本全体が一丸となって難局に立ち向かうべき時であります。ところが我が国では、中長期的かつ俯瞰的に国の行く末を論じる気運は盛り上がらず、目先の対応に囚われた内向きの議論ばかりが先行しているように思われます。今般実施された、地方消費税の清算基準の見直しや、23区の大学の定員抑制は、まさに内向き、国内のパイの取り合い以外の何物でもありません。地方の財源不足の解消や地方創生の実現、そして大学教育のあり方など、本質的な議論を深めることなく、問題を「東京」対「その他の地方」の構図に押し込める、国の目先の対症療法的な手法には、強い懸念を抱かざるを得ません。

今、我が国に必要なのは、東京を強力なエンジンとし、各地方それぞれの強みも活かすことで、オールジャパンの力を最大限に引き出し、国際競争に打ち勝つという発想であります。1964年のオリンピック・パラリンピックを牽引役として、我が国が一体となって高度経済成長を成し遂げたように、東京2020大会を跳躍台に、世界をリードする成熟国家としてさらなる飛躍を遂げ、持続的な成長を実現していく姿を示してまいります。そのための助走期間は残り僅かしかなく、東京の人口減少も間近に控える中、今こそ歴史的な視点を持ち、大胆な政策を迅速に講じなければ、東京・日本は、世界の激流に埋没するほかないのであります。

(首都・東京の使命を果たす)

そうした危機感の下、私は、150年にわたり東京の発展を支え続けた「人」に着目すべきと考えます。そして、あらゆる層の、あらゆる個性を持った都民一人ひとりに活躍の場を提供し、東京の課題を本質的に克服していく源泉として、その活力を大いに引き出したいと思います。

そのために、待機児童対策や超高齢社会への対応をはじめ、働き方改革、人材育成など、「人」に焦点を当てた施策を幅広く展開いたします。また、中小企業の「稼ぐ力」の向上など、産業の活性化に精力的に取り組み、新たな成長分野にも挑むことで、都民が実感を抱ける経済成長へと繋げます。さらに、活力や成長の基盤となる東京の安全・安心を守るため、防災力や治安対策の強化等をきめ細かく進めます。

私が就任以来目指しております、「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の実現のための取組を、東京2020大会に向けて一気に加速する。そして、東京のさらなる発展を日本全体の成長に繋げるなど、首都として担うべき使命を果たしていく。そのために、国や各道府県と共に十分に連携しながら、決意新たに、東京の舵を取ってまいります。

2 東京の使命を果たすための政策と予算

(3つのシティの実現に向けた政策の強化)

山積する課題に正面から挑み、未来にわたる成長への確かな布石を打つ。その具体策をまとめたものが、先月発表いたしました「3つのシティの実現に向けた政策の強化」であります。

「重点政策方針2017」に掲げた、「人」に焦点を当てた8つの戦略や、「2020年に向けた実行プラン」の実施状況などを踏まえて、3つのシティの実現をより確かなものとするため、実行プランの政策の強化を行いました。「ICTで切り開く東京の未来」といった新たな切り口も加え、より鮮やかに描いた3つのシティへの道筋を、都民の皆様の共感を力に、スピード感を持って邁進をしてまいります。

(平成30年度予算案)

数々の政策を花開かせるための来年度予算案につきましても、よりメリハリの効いた内容といたしました。東京2020大会の成功とその先の未来に向けて、都政に課せられた使命を確実に果たしていく観点から、一般会計の規模は2年ぶりの増額となる7兆460億円とし、新規事業も、過去最高となる407件を計上しております。都政史上初の試みとして、都民や職員からの提案事業を反映させるなど、生活や現場に根ざした新たな発想も盛り込みました。

一方で、将来を見据えて財政の健全性を堅持するため、新たに客観的な指標、「エビデンス・ベース」に基づく評価を導入するなど、1086件の事業評価を行い、こちらも過去最高となる870億円の財源を確保いたしました。持続的な都市経営に欠かせない「賢い支出」を、引き続き徹底するものであります。

中長期的な視点も踏まえた真に有効な投資により、東京が、国家的な難局を打ち破る原動力となっていく。「賢い支出」の努力を重ね、東京が首都としての使命を果たすための予算案を仕上げることができたと考えております。そうした中、国は今回の税制改正において、都の貴重な税源を不合理に奪いました。さらに、平成31年度税制改正においては、すでに決着済みであるはずの地方法人課税の偏在是正について、新たな措置を検討するとしており、到底看過することはできません。地方が抱える巨額の財源不足に対しては、地方分権の理念の下、地方の役割に見合った税財源を拡充することこそ、目指すべき方向であります。この主張を次の税制改正へと反映させるべく、都議会の皆様と一丸となって、都民の皆様、都内自治体、他の道府県にも理解を広めながら、戦略的かつ強力に取組を推し進めてまいります。

3 都政改革の実効性を高める「2020改革プラン」

東京を取り巻く困難の中、3つのシティを確実に実現するためには、強化した政策、メリハリのある予算に加え、機能的かつ効果的な執行体制が不可欠であります。その構築に向けた「しごと改革」「見える化改革」「仕組み改革」について、これまでの成果と今後の進め方を示す「2020改革プラン」の素案を、先日公表いたしました。プランに基づき、2020年度まで毎年度、各局が成果を取りまとめ、必要な取組を追加していくことで、改革のスピードと実効性を確実に高めるとともに、改革に対する職員の自主性・自律性をより一層向上させてまいります。

プランには、監理団体改革の実施方針も盛り込みました。監理団体を、都と共に政策実現を目指す「都庁グループ」の一員と位置づけ、団体自らはもとより、団体を活用する所管局、団体指導を総括する総務局の3者が主体的に、見直すべきは見直し、伸ばすべきは伸ばすための改革を進めてまいります。

さらに今回、新たに「施設サービス魅力向上プロジェクト」の実施も打ち出しました。都民サービスのさらなる改善を通して、公園や庭園、美術館や動物園など、都有施設の魅力向上を目指すものであります。多くの皆様に、身近な場所においても「都民ファースト」の都政を感じていただけるよう、着実に取り組んでまいります。

4 「人」が輝く「ダイバーシティ」の実現

さて、東京が誕生した明治期におきましては、当時の家制度の下、女性の地位は十分に認められたものではありませんでした。今や、様々な分野で道を切り拓く女性の活力は、東京のさらなる発展に欠かせません。また、明治の日本人の平均寿命は、乳児の死亡率が高かったこともあり、40歳前後とされておりましたが、人生100年時代を迎えようとする今、高齢者の方々の意欲や経験は、東京の大きな財産であります。女性や高齢者をはじめ、「人」の持つ活力や意欲をもっと引き出し、都民と共に、持続可能な「新しい東京」を創り上げる。そのために、誰もがいきいきと活躍できる「ダイバーシティ」を実現してまいります。

(待機児童対策のさらなる推進)

女性の活躍を推進していく上で、東京の最大の課題は、待機児童対策であります。就任以来最も力を入れて取り組んでおり、昨年度、保育サービスを利用する児童数は、過去最高の1万6003名の増加となりました。今年度以降は、目標をさらに上積みし、2019年度末までの3年間で6万人分の増加を目指します。保育の質の向上にも目を配り、魅力ある子育て環境の実現のため、幅広い政策を展開してまいります。

新たな取組として、待機児童の半数を占める1歳児の受入れに、緊急的に対応する施設を支援するほか、待機児童の保護者の就労のため、安心してベビーシッターを利用できる環境を整えます。また、従業員の育児休業取得に積極的に取り組む企業への助成制度を設け、1年以上の休業取得や円滑な職場復帰を後押しするとともに、男性による育休取得も促進してまいります。

こうした待機児童対策を含め、安心して子供を産み育てられる社会の確立に向けた「子供・子育て支援総合計画」の中間見直しにつきましては、都民の皆様の意見を踏まえ、年度末に公表をいたします。子供が家庭の状況に左右され貧困から抜け出せなくなる、いわゆる「貧困の連鎖」を断つための対策も盛り込んで、社会全体で、子供と子育て家庭を支援する取組を進めてまいりたいと思います。

(人生100年時代に向けて)

〈高齢者が安心して暮らせる社会の実現〉

高齢者がいきいきと輝く社会を築くためには、年齢を重ねても地域で安心して暮らせる環境の整備が不可欠であります。特に、増大する介護ニーズへの対応のため、特別養護老人ホームについては、2025年度末までの整備目標を6万2千人分へと引き上げるほか、介護老人保健施設の大規模改修への支援を開始するなど、介護サービスの基盤をさらに充実させてまいります。

介護現場の人材確保につきましては、新たに、介護職員の奨学金返済と育成をセットとした支援や、シニアの就業の後押しなどを進めます。併せて、職員の負担軽減や、施設入所者等の生活の質の向上を図る介護ロボットなど、次世代機器の導入も促進してまいります。

また、2025年には、認知症を抱える都内の高齢者数が、一昨年から約4割増加することが見込まれております。そこで、区市町村による早期発見と支援の仕組みづくりや、介護拒否・抑うつなど、認知症の行動・心理症状を改善するケアプログラムの普及を、都の研究機関と連携して新たに推進をいたします。認知症の方々を、発症段階から中重度の状態まで切れ目なく、地域で支える体制づくりを後押ししてまいります。

〈高齢者の新たなチャレンジを後押し〉

意欲溢れる高齢者の方々が、学びに仕事に、いつまでも生きがいを持ってチャレンジできる社会を創り上げたいと思います。生涯学べる「100歳大学」を実現するため、多くのシニアが切磋琢磨しながら、学びと交流を深める「首都大学東京Premium College(仮称)」を開設いたします。時には若い学生とも交流しながら、人生をより豊かにする場となりますよう、10月からプレ講座を開講し、来春には一期生を受け入れてまいります。

高齢者の就業機会の拡大に向けては、企業で「シニアインターン」として働き、スキルを習得できる仕組みを作るほか、就業応援フェアの開催や再就職への学びの機会の提供など、総合的な施策を展開し、その新たな活躍を後押ししてまいります。

(障がいのある方々が輝く社会のために)

障がい者を支える取組にも力を注いでまいります。医療的ケアを要する障がい児が、適切な支援を受けながら日々を明るく過ごせるよう、訪問看護に対応するステーションの拡大を図ります。加えて、肢体不自由特別支援学校において、看護師が添乗するスクールバスの運行を開始するなど、障がい児と家庭への支援をさらに充実させてまいります。

障がい者の自立した生活の実現に向けましては、医療機関、就労支援機関、企業等が連携して精神障がい者の就労・定着を支援するなど、雇用と就労の促進のための社会全体の取組を進めます。また、ビジネスとの両立を図りながら障がい者雇用の拡大に取り組む企業に対し、生産性の向上や、障がい者の職場環境整備・能力開発等の支援を行います。障がいのある方々のいきいきとした活躍を後押しする多面的な方策によって、将来的なソーシャルファームの実現にも繋げていきたいと思います。

今年度末には、地域生活基盤の整備、就労支援の強化に加えて、新規に障がい児支援の目標を盛り込む新たな計画を策定いたします。この計画に基づき、障がい者を取り巻く環境の変化に対応しながら、障がい者施策の一層の充実に取り組んでまいります。

(誰もが優しさを感じられるバリアフリーのまちづくり)

東京2020大会を見据え、高齢者や障がい者、外国人旅行者など、誰もが優しさを感じられるバリアフリーのまちづくりに、総合的に取り組んでまいります。障がい者の方々の意見を踏まえた、よりきめ細かな道路のバリアフリー化をはじめ、鉄道駅のホームドアやエレベーターの設置、宿泊施設のバリアフリー化、トイレの洋式化などを推進いたします。成熟都市として開催する大会にふさわしいレガシーとして、真の共生社会の実現に向けたまちづくりを進めてまいります。

(子供と教員が輝く学校現場から未来の人材を育てる)

東京の未来を担う子供たちに焦点を当て、時代や世界をリードする人材の育成を戦略的に進めてまいります。都立高校10校において、生徒が持つスマートフォン等を活用した効果的な学習を試行し、その記録をビッグデータとして、きめ細かな指導に繋げる方策を検討するほか、ICTによる事務の効率化など、教員の長時間労働の改善を目指します。将来的には区市町村とも連携し、先端技術を学校教育のさらなる充実へと活かす「東京スマートスクール構想」を実現したいと思います。

2020年度から、全ての小学校に導入されるプログラミング教育につきましては、企業等と連携した効果的な授業方法などの検証をさらに進め、指導事例を都内の全ての公立小学校へと広めます。同じく2020年度から、小学校で正式教科となる英語につきましては、来年度より順次、専科教員を配置し、小学生の段階から「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を効果的に育成してまいります。

教育格差や不登校、就学直後の児童の環境不適応などの課題にも、適切に対応してまいります。都立高校において基礎学力の定着を図る「校内寺子屋」の拡大や、中学生の進路実現に向けた新たな学習支援など、子供が家庭の状況に左右されることなく学力を身につけられる環境を整えます。また、不登校の児童・生徒の学びの場となる「不登校特例校」を設置する区市町村への支援、全国初の取組として、5歳児から小学校低学年をひとまとまりとした教育課程の開発を進めます。さらに、先日公表した「学校における働き方改革推進プラン」に基づいて、教員の心身の健康にもしっかりと目を配り、教育委員会と力を合わせて、子供たちと教員が共にいきいきと輝く学校現場を創り上げてまいります。

(持続的な成長の鍵となる働き方改革)

女性・高齢者の就業促進や、生産性の向上に繋がる働き方改革は、人口減少期において一人ひとりの力を最大限に引き出し、持続的な成長を実現する鍵であります。昨年開始した「時差ビズ」は、認知率が70%を超え、私自身も確かな手応えを感じております。これを「新たな常識」へと定着させるべく、来年度は実施期間の拡大や、より多くの企業にご参加いただくための創意工夫などにより、官民連携で「時差ビズ」をさらに前進させ、満員電車の混雑緩和にも繋げてまいります。

働き方改革の起爆剤であるテレワークについては、現在、何らかの形で導入している従業員30人以上の都内企業は6.8%と、まだまだ広がりが足りません。これを、2020年度までに35%に引き上げることを目指し、企業ニーズに応じたきめ細かなサポートに取り組むほか、多摩地域において、通勤混雑の緩和にも有効なサテライトオフィスの設置を推進するなど、テレワークの導入をさらに後押ししてまいります。

(実効性のある受動喫煙防止対策に向けて)

受動喫煙の防止については、我が国が、たばこからの健康等の保護を目的とする国際条約、いわゆる「たばこ規制枠組条約」の締約国であることや、WHOとIOCが共同で「たばこのないオリンピック」を推進していることを踏まえ、実効性のある対策を着実に進めなければなりません。昨年、都議会の皆様の提案による「子どもを受動喫煙から守る条例」が成立いたしました。都としても、国の動きを注視しながら、都民の健康を守り、大会のホストシティとしての責任を果たすための条例案を、本定例会へ提案することを目指してきたところであります。先日、対策に関する国の考え方が改めて示されましたが、根幹の部分が従来から大きく変更され、飲食店の例外措置など、詳細につきましても明らかにされてはおりません。都民の皆様の混乱を避けるとともに、都の対策を実効性のあるものとするためには、国の対策と整合を図る必要があることから、引き続き国の動向を見極め、区市町村の意見も尊重しながら、条例案の検討を重ねてまいります。

5 安全・安心・元気な「セーフ シティ」の実現

都民の皆様が安全・安心を実感しながら、活力溢れる毎日を送る「セーフ シティ」の実現に向けて、ハード・ソフトの両面から施策を進めてまいります。

(地震に強いまちづくり)

〈無電柱化のさらなる推進〉

昨年、条例制定や基金創設により、推進体制を整えた無電柱化については、年度内に条例に基づく「(仮称)無電柱化計画」を策定し、引き続き着実に取り組んでまいります。併せて、区市町村に対し、無電柱化を促進する計画の策定、狭隘道路での着手、低コスト手法の導入を促す支援を進めます。来年度は、43の区市が都の支援を活用する見込みであり、区市道における取組が加速いたします。身近な道路において、防災機能や安全性の強化、景観の向上等の効果を都民の皆様に実感していただくことで、無電柱化のさらなる進展へと繋げていきたいと思います。

〈まちの不燃化・耐震化〉

「燃えない・倒れない」まちづくりに向けては、喫緊の課題である木造住宅密集地域の不燃化のため、空き家の除却を促進するほか、都有地を活用し、コミュニティを維持しつつ権利者の移転を促すなど、新たな発想を織り交ぜた施策を進めてまいります。

住宅の耐震化については、これまで、老朽化した木造建築が特に集積するなど、甚大な被害が想定される地域を対象として、重点的に支援を進めてまいりました。当該地域における耐震化が着実に進展していることを踏まえ、今後は当該地域外にも支援を拡大し、2020年度までに住宅の耐震化率を95%とする目標に向け、取組を推進してまいります。

(都民と共に災害対策を加速する)

都民と共に、スピード感ある災害対策を進める指針となる「セーフ シティ東京防災プラン」につきましては、先月、骨子をお示しをいたしました。分かりやすさを追求し、取組の進捗状況を毎年度公表するなど、実効性を高める工夫を凝らしており、都民の皆様からの意見も踏まえ、年度末にプランとして公表してまいります。

かねて申し上げているように、これまでの災害対策においては、女性の視点が十分に活かされておりません。女性有識者をはじめ、女性の消防団員や都民の意見を踏まえまして、暮らしの中でできる対策を盛り込んだ「東京くらし防災」は、来月より、都有施設や区市町村のほか、郵便局や美容院など、街の身近な場所でも手に取れるよう準備を進めております。加えて、避難所における着替えや授乳の場の確保等、発災時の女性のニーズにもきめ細かく対応できるよう、乳児用液体ミルクの普及を推進するほか、防災の基礎知識を学ぶ女性向けセミナーや、女性防災リーダーを育てる研修を開始するなど、東京の災害対策をさらに充実させてまいります。

(テロ・治安対策の向上)

テロ対策も進化させてまいります。東京2020大会に向け、羽田空港や競技会場、選手村が所在する臨海部における対策を強化するため、警視庁に、海上からのテロに備える専門部隊を新設する準備を進めます。また、東京消防庁に、大規模なテロや災害への対応に特化した「統合機動部隊(仮称)」を創設し、現場指揮や救助活動の体制強化を図ってまいります。

都民に対する迷惑行為への規制も強化いたします。いわゆる「迷惑防止条例」を改正し、小型化する撮影機器による盗撮や、SNSによるつきまといなど、現在の規制では対応できない悪質な行為を取り締まりたいと思います。併せて、「水上安全条例」により、都内の運河や河川における水上オートバイ等の危険かつ迷惑な航行を、罰則をもって禁止いたします。いずれも本定例会に条例案を提案しており、都民の体感治安の向上のため、よろしくご審議をお願いを申し上げます。

(医療体制・救急体制の充実)

安心できる医療体制の構築も進めてまいります。今後の都立病院が担うべき役割と、それを支える経営のあり方について、先月、有識者委員会の報告書が公表されました。貴重な提言を受け止め、すぐに反映できる取組は、年度末に策定する「次期中期計画」に盛り込むとともに、経営形態に関する意見につきましては、今後、丁寧に検討を進めてまいります。

救急隊の出場件数が過去最多を更新する中で、救急体制の一層の充実も喫緊の課題であります。救命率向上の鍵となる迅速な現場到着に向け、救急隊の増設に加え、救急相談の利用促進、AIによる需要予測システムの構築など、需要抑制や効率運用の方策を組み合わせ、東京2020大会までに到着時間を7分以内に短縮することを目指してまいります。

(地域コミュニティの活性化)

地域の賑わいを生み出す商店街は、活気溢れる「セーフ シティ」の一つの象徴でありますが、昨今、消費者のライフスタイルの多様化や、後継者不在による空き店舗の増加等により、厳しい状況に直面しております。この打開のためには、一定の役割を終えた事業を見直しながら、戦略的な施策を進めていかなければなりません。これからの商店街を担う女性や若者による開業の後押し、空き店舗の解消に繋がる起業や経営承継の支援など、将来を見据えた振興策を重点的に進めてまいります。

また、年々増加する空き家につきましては、利活用に向けた普及啓発やマッチング体制の整備、公的な活用の推進など、発生抑制・適正管理・有効活用を着実に進めることで、地域の活性化へと繋げてまいります。

6 世界をリードする「スマート シティ」の実現

世界をリードする環境先進都市であり、国際金融・経済都市である「スマート シティ」を実現することで、日本全体の持続的な成長を牽引していく東京の使命を果たしてまいります。

(スマートエネルギー都市を実現する)

〈「ゼロエミッション東京」を目指す多面的な取組〉

CO2を排出しない環境先進都市、「ゼロエミッション東京」を目指して、多面的な取組を進めます。

世界の潮流となりつつある次世代自動車、「ゼロエミッション・ビークル」の普及に向けましては、エネルギー確保やインフラ整備などの課題を整理し、次世代自動車への転換による産業構造の変化への対応も見据えながら取り組んでまいります。電気自動車の普及のため、新たに集合住宅への充電設備の設置を促進するほか、燃料電池自動車につきましては、導入経費の補助を継続いたします。都におきましても、更新期を迎えた庁有車を電気自動車へと切り替え、都営バスへの燃料電池車導入を拡大するなど、率先して行動をしてまいります。

東京が誇る島しょ地域をターゲットに、「ゼロエミッション・アイランド」への取組も進めてまいります。今年度実施した「電気自動車普及モデル事業」につきまして、八丈島において規模を拡大して継続するほか、島ごとに、電気自動車の使用環境や地理的条件等の詳細な調査を進め、その本格的な普及へと繋げてまいります。加えて、豊かな自然も活かしながら、島の電力を再生可能エネルギーで100%賄うことを目指した検討を進めるなど、幅広い方策を進めてまいります。

まちづくりの分野における取組も欠かせません。現在、一定規模の建築物の環境性能を評価・公表している「建築物環境計画書制度」については、自治体として初めて、最高ランクの評価基準となる「ゼロエネルギー・ビルディング」を導入するべく、制度の再構築を検討いたします。都におきましても、この水準を目指し、改築中の公文書館の整備を進めるなど、建築物における環境配慮を一層推進し、都市全体のさらなる省エネルギー化へと繋げてまいります。

また、東京2020大会後に、水素を活用したスマートエネルギーのまちづくりを目指す選手村地区におきましては、年度内にエネルギー事業者との基本協定を締結し、水素パイプラインの工事に着手いたします。水素供給システムの一部稼働を含め、大会時に先進的な日本の環境技術を世界にアピールするプレゼンテーション事業についても、具体的な検討を開始し、「水素社会の未来」に向けた取組を着実に進めてまいります。

〈キャップアンドトレード制度のさらなる進化に向けて〉

2010年度に導入したキャップアンドトレード制度において、昨年度、対象事業所の総CO2排出量は、基準年度に比べて26%の削減となりました。今後、東京の温室効果ガス排出量を、2030年までに2000年比で30%削減するとの目標を達成するためには、制度の第三計画期間となる2020年度以降の取組の進化が欠かせません。2020年は、パリ協定に基づき、世界が「脱炭素社会」に向けて行動を開始する新たな出発点でもあり、これらの背景を踏まえて、2020年度からの制度の詳細について、来月より専門家による検討を進めてまいります。

(東京の緑を守る)

東京の緑の総量を、これ以上減らさない。「都市づくりのグランドデザイン」に掲げたこの目標の達成には、生産緑地の保全・活用が重要であります。2022年に指定から30年が経過する生産緑地は、農地としての管理義務が解除されることから、宅地化等による大幅な減少が懸念されます。そこで、区市が公園として整備するために生産緑地を買い取る経費を補助するほか、シニア向けのセミナー農園を開設し、超高齢社会における生産緑地の活用モデルを提示するなど、緑を守る取組を推進してまいります。

11月には、皇族殿下の御臨席を賜り、東京では初となる全国育樹祭を開催いたします。この大会も契機に、緑を育み守る気運を一層高め、都民と共に、東京の緑を次世代へ受け継いでいきたいと思います。

(東京の産業の発展を力強く支える)

持続可能な成長を確固たるものとするため、東京の産業のさらなる発展を力強く後押ししてまいります。その中核となる中小企業の活性化に向けましては、優れた発想や技術を持ち、新たな市場の開拓を模索する企業が、大企業の人材や販売力等を活用しながら革新的な事業を進める仕組みを構築いたします。また、IoTやAIなど最先端技術の導入・活用を支援し、生産性の向上や新たな製品開発を促進してまいります。

加えて、中長期的な課題を見据え、引き続き効果的な中小企業支援を展開していくべく、2019年から概ね10年間を対象とする新たなビジョンを策定いたします。今月より、有識者を交え、中小企業を取り巻く現状や環境の変化を踏まえた議論を始めており、来年1月を目途にビジョンとしてまとめてまいります。

国際金融都市の実現に向けましては、昨年取りまとめた構想に具体的に着手いたします。海外の金融系企業の誘致を加速する、官民一体のプロモーション組織の設立準備や、新興資産運用業者を育成し、金融の活性化へと繋げる「東京版EMP」の導入など、本質的な課題に鋭く切り込む新たな施策を、スピーディーに進めてまいります。

(鉄道新線建設等準備基金の創設)

東京の成長を支える基盤、そして、誰もが快適に移動できる都民の足である鉄道ネットワークを一層充実させるべく、具体的な取組を進めてまいります。国の審議会より「事業化に向けて検討を進めるべき」とされた6路線につきまして、来年度予算案では、都が事業主体となる多摩都市モノレールの箱根ケ崎延伸などの検討に向けて、調査費を計上いたしました。また、6路線の事業等の財源として、新たに「鉄道新線建設等準備基金」を創設する条例案を、本定例会に提案しております。この基金を効果的に活かせるよう、今後、課題の検討や、関係者との協議・調整を加速してまいります。

7 オリンピック・パラリンピックの成功に向けた取組を加速

年が変わり、いよいよ開催まで2年となった東京2020大会につきましては、オールジャパンで実務を加速させるフェーズに入りました。準備のアクセルを踏み込み、大会気運につきましても、ラグビーワールドカップ2019とともに大いに高めてまいりたいと思います。

(大会準備の着実な推進)

昨年12月、総額を1兆3500億円とする大会経費のバージョン2が公表されました。都の負担額となる6000億につきましては、今回、平成29年度補正予算により開催準備基金への積立てを行うことで、その9割を超える財源を確保することとなります。また、このたび、バリアフリー化、ボランティアの育成・活用、東京・日本の魅力発信など、大会を契機として4年間で取り組む事業の経費が約8100億円となることをお示しいたしました。東京の価値をなお一層高めるため、都として行う将来への投資の全体像を明らかにしたものであり、大会の成功と大いなるレガシーの創出に向けて、引き続き邁進してまいります。

先月には、これまでの準備の進捗とこれからの実務的な連携を確認するため、組織委員会、国、JOC、JPCとの調整会議に出席いたしました。私からは、都が整備する新規恒久施設の状況や、気運醸成の取組等について報告をし、各機関の状況も伺う中で、オールジャパンによる準備が着々と進んでいる、そう手応えを感じたところであります。そして、都民・国民と共に大会を成功させる上で大きな役割を担うボランティアにつきましても、9月から、組織委員会と合わせて11万人の募集を開始いたします。先行して募集が始まるラグビーワールドカップのボランティアと併せまして、男性も女性も若者もシニアも、障がいの有無にかかわらず、多くの皆様にご活躍いただいて、ボランティア文化がレガシーとして東京に根付くよう準備を進めてまいります。

大会に向けて展開する東京文化プログラム、「Tokyo Tokyo FESTIVAL」は、今月1日から、その中核となる事業につきまして、斬新で独創的な企画の公募を開始いたしました。同じく今月、パリでスタートした「パリ東京文化タンデム2018」では、両都市の文化の魅力を世界に広く発信してまいります。引き続き、文化プログラムの取組を国内外で盛り上げ、「文化の祭典」としての大会準備も着実に進めてまいります。

(大会気運のさらなる向上)

〈ラグビーワールドカップと東京2020大会を共に盛り上げる〉

連日熱戦が続く平昌2018大会におきましては、世界のアスリートが全力を尽くす姿、私たちに大きな勇気と感動を与えてくれています。来月のパラリンピックまで、全てのアスリートがその力と技を存分に発揮されるよう応援したいと思います。現地では、組織委員会と共に「Tokyo2020 JAPAN HOUSE」を開設し、世界中から訪れる観客やメディアに対して、東京・日本の魅力や、復興に向けて力強く歩む被災地の姿などをアピールしております。併せて、区部や多摩地域、被災地において、平昌大会のライブサイトを順次実施しており、平昌の熱気を東京への期待に繋げていきたいと思います。

ラグビーワールドカップの盛り上げも忘れてはなりません。来月よりいよいよ、東京を含む開催都市の住民の方々を対象に、通常チケットの先行抽選販売が開始となります。このタイミングを捉え、街灯フラッグや横断幕で都内を飾り、気運を高める「シティドレッシング」を実施いたします。来年度には、500日前、1年前など節目を捉えたイベントや、様々なメディアを活用した広報を幅広く展開するなど、他の11の開催都市と共にしっかりと連携しながら、間近に迫る世界的な大会への期待を大いに高めてまいります。

〈パラスポーツを力強く応援〉

東京を挙げてアスリートを力強く応援し、パラリンピックを成功に導くことは、東京が、真の共生社会として都市の成熟度をさらに高めることに繋がります。パラスポーツの応援プロジェクトである「TEAM BEYOND」の登録者数は、先月、ついに100万人を突破いたしました。引き続き、競技観戦機会の充実や、メディアとの連携による効果的な情報発信などにより、パラスポーツ応援の気運を高めてまいります。

また、学校現場におきましても、特別支援学校と小・中・高等学校のパラスポーツによる交流大会の種目を拡大し、来年度はボッチャに加えてフロアバレーボールを実施することで、障がい者への理解とパラスポーツの普及を一層進めてまいります。

8 多摩・島しょ地域の発展に力を尽くす

「多摩の振興プラン」や、「東京宝島推進委員会」による提言等に基づき、多摩・島しょ地域の活性化をさらに加速してまいります。地域振興の取組を一層後押しするべく、市町村総合交付金の充実を図り、待機児童対策や電気自動車の普及など、都と各市町村が連携して進めるための「政策連携枠」を設けました。先週、全市町村長と個別に実施した意見交換も踏まえ、各自治体それぞれの課題に寄り添うとともに、広域的な課題の解決に向けた連携をより深めることで、400万の都民が暮らす多摩・島しょ地域の発展に引き続き力を尽くしてまいります。

今年は、小笠原諸島がアメリカから返還されて50年の節目であります。様々な記念事業を実施するほか、島しょ地域全体の魅力向上を目指し、専門家の派遣等による観光資源のブランド確立の支援や、近年人気のグランピングなど新たな観光事業の創出に取り組みます。それぞれの島が誇るべき魅力を掘り起こし、広く発信することで、多くの人々で賑わう「宝島」の実現に繋げてまいります。

9 豊洲市場への移転

市場の豊洲移転につきましては、今年の10月11日に実施することで、業界団体の皆様と合意をいたしました。先週末、業界の皆様に直接お会いして御礼を申し上げ、また、移転に向けて率直な意見交換をしてまいりました。ここに至るまでのご尽力に対し、改めて感謝の意を表したいと存じます。

移転前に様々な問題点を洗い出し、しかるべき対策を踏まえた上で開場の運びに至ったことは、50年、100年の「鳥の目」で、あり方を考えるべき市場にとって必要な対応であったと考えます。引き続き、追加対策工事の着実な実施により豊洲市場の信頼を高めるとともに、先週開催した魅力発信ツアーやワークショップなど、新市場からの情報発信にも積極的に取り組んでまいります。加えて、千客万来施設などによる賑わい創出に向けて地元区とも連携しながら、豊洲市場を日本の中核市場とすべく、業界の皆様、地元の皆様と共に歩んでまいりたいと思います。

また、築地の魅力を最大限に活かした再開発につきましては、「築地再開発検討会議」において、引き続き有識者の方々に自由な発想でご討議いただいております。築地が培った伝統や地域の特性を基に、民間の智恵を活かした新たなまちづくりに繋げていきたいと思います。

10 おわりに

現在開催中の平昌オリンピックでは、日本選手の皆さんの素晴らしい活躍ぶりに、日本中が感動をしております。続くパラリンピックでも、障がいを越えて活躍する日本の選手の皆さんに、大いなるエールを送ろうではありませんか。

そして、平昌大会が終わりますと、いよいよ東京2020大会の番となります。オール東京で、オールジャパンで、大会開催に必要な準備を着実に進め、アスリートには「記録」が、都民と国民、そして世界の皆さんには「素晴らしい記憶」と「レガシー」が残る大会といたしましょう。

そして、2020年のその先に、誰もがいきいきと輝く持続可能な都市・東京を実現していく。人口減少、超高齢化のうねりの中、この使命を完遂するための道筋を明確にしたものが、このたびまとめた「実行プランの政策の強化版」であり、この「平成30年度予算案」であります。都議会の皆様、都民の皆様のご理解とご協力をいただきながら、丁寧かつ大胆に、「東京大改革」を推し進める。施政方針表明の結びに当たりまして、改めて決意する次第でございます。東京の明るい未来に向け、皆様と共に、道を切り拓いてまいりたいと存じます。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案32件、条例案65件など、合わせまして120件の議案を提案いたしております。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

以上をもちまして、私の施政方針表明を終わります。

ご清聴、誠にありがとうございました。

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