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令和元年(2019年)9月5日更新

報道発表資料

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 被申立人会社は、昭和62年4月1日、日本国有鉄道改革法に基づき、日本国有鉄道が経営していた旅客鉄道事業のうち、主として東海地方及び東海道新幹線の事業を引き継いで発足した会社であり、本件申立時の従業員数は約1万8,000人である。
  2. 申立人X1(以下「組合」という。)は、主として会社の従業員らで組織されている労働組合であり、本件申立時の組合員数は約270名である。
  3. 申立人X2(以下「地本」という。)は、組合の下部組織であり、会社の新幹線鉄道事業本部(東京都千代田区。以下「新幹線本部」という。)内に勤務する組合員で組織されている。
  4. 申立人X3(以下「分会」という。)は、地本の下部組織であり、会社の東京仕業検査車両所、東京交番検査車両所(以下「東京車両所」という。)及び東京修繕車両所に勤務する組合員で組織されている。

2 事件の概要

  1. 平成28年9月、会社の新幹線本部東京車両所に勤務するX4組合員が、入院手術のため年次有給休暇(以下「年休」という。)取得を申請し、これが付与された後、東京車両所の助役は、X4に診断書の提出を求めた。
    地本は、会社に対し、年休取得に理由の明示及び診断書の提出は必要ないと抗議したが、会社は、診断書の提出は必要であると述べた。
    9月21日、X4は、会社に対し、診断書の提出には納得できないとして、会社の制度にのっとり苦情申告をしたが、この申告は却下され、苦情処理会議は開催されなかった(以下、X4の年休取得時の診断書提出をめぐるこれら一連のやり取りを「本件診断書提出問題」という。)。
    11月1日、地本は、会社に対し、年休取得時に診断書の提出を求める根拠を明らかにすること等を議題とする団体交渉開催を申し入れた。11月24日、会社は、地本の申入事項は、組合と会社との基本協約第250条に規定する6項目の団体交渉開催事項(以下「団体交渉事項」という。)に当たらないので団体交渉は開催しないが、X4の求める苦情処理会議を開催したいとの見解を示した。
    12月19日、29年2月3日及び3月9日、組合は、会社に対し、本件診断書提出問題に関する団体交渉申入れを行ったが、会社は、団体交渉事項に当たらないとしてこれらいずれにも応じなかった。
  2. 7月14日、組合らは、当委員会に本件不当労働行為救済申立てを行った。
  3. 本件申立て後、組合と会社との間で毎年定期的に行われている新賃金及び夏季手当交渉並びに「協約改訂交渉」において、本件診断書提出問題について労使双方でやり取りがあった。
  4. 本件は、1)地本が28年11月1日付けで、また、組合が12月19日付け、29年2月3日付け及び3月9日付けで申し入れた団体交渉に、会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、2)本件申立て後、定例の団体交渉において本件診断書提出問題について団体交渉が実施されていることから、本件申立ての救済利益が失われているか否かが争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 会社は、組合及び地本から、組合員が私傷病を理由として年次有給休暇を取得する際の診断書の取扱いについて団体交渉の申入れがあった場合には、これまでの解説書等の内容とは異なる会社の基本協約や就業規則等の解釈について、その異なる理由を、根拠資料等を示して具体的に説明するなどして、速やかにこれに応じなければならない。
  2. 文書掲示及び交付
    要旨:会社が、地本からの平成28年11月1日付け並びに組合からの12月19日付け、29年2月3日付け及び3月9日付けの団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為と認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  3. 前項の履行報告

4 判断の要旨

  1. 会社が団体交渉に応じなかったことについて
    1)会社は、会社と組合との団体交渉事項は基本協約第250条において第1号から第6号までの6項目に限定されており、本件申入事項はそれら6項目のいずれにも該当しないから、団体交渉事項にはならないと主張する。確かに、組合らが申し入れた事項は、年休取得時の診断書提出に関連する規定の解釈及び運用の問題であり、基本協約の6項目の団体交渉事項のいずれかに直接該当するものではないが、本来、組合員の年休取得の方法は、義務的団交事項であるから、基本協約の団体交渉事項に該当しないことを理由として、会社が個別の団体交渉応諾義務を免れるといえるためには、実質的に組合の団体交渉権が担保されているといえる必要がある。

    2)会社は、一旦、X4の苦情申告を却下したものの、地本からの団体交渉申入れを受け、幹事間折衝において、改めて苦情処理会議の開催を提案し、これに応ずるよう組合及び地本に促しているが、地本はこれに応じていない。しかし、地本は、上記苦情申告の手続における会社の対応を踏まえ、X4個人の苦情処理会議のやり直しではなく、労働組合として団体交渉開催を求めるという判断に至ったものであり、このような地本の対応には無理からぬ理由があるといえる。
    したがって、会社が、地本との幹事間折衝で、改めて、地本に苦情処理会議の開催を提案したことをもって、団体交渉応諾義務を免れるものではない。
    3)従前の解説書によれば、勤務割指定後の年休申請による休暇付与も欠勤にはならないという理解が文理解釈としてはかなっており、組合が解説書の交付を受けた当時は、基本協約について、少なくとも、勤務割指定前に申請した年休は欠勤に含まれないとする解釈が労使共通の認識であったと考えるのが自然である。したがって、勤務割指定前に申請した年休を、会社が欠勤扱いとして診断書の提出を求めたことに対し、組合が、会社が一方的に基本協約の解釈、運用を変更したのではないかとの疑念を抱くのは当然であるが、それにもかかわらず、会社は、幹事間折衝や本件申立て後の団体交渉において、組合らが基本協約や就業規則の条文解釈や運用について当然に抱く疑問に対し十分な説明を行わない姿勢に終始していたのであるから、会社の対応をもって、組合の団体交渉権を担保するに足りるだけの実質的な交渉が行われたものとみることはできない。
    4)結局、会社は、苦情申告、幹事間折衝及び本件申立て後の定例の団体交渉という手続の全体にわたり、個別の団体交渉義務を免れる程度にまで誠実に対応したということはできず、実質的な団体交渉が行われたものと評価することはできないから、会社が組合らからの団体交渉申入れに応じなかったことは、いずれも正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

  2. 救済利益について
    本件診断書提出問題に関連する現行の規定に関し、会社は、本件申立て後の定例の団体交渉においても、自らの解釈を一方的に告げることを繰り返すのみで、組合らに、その解釈の根拠や合理性を示して説明をしていないのであるから、本件の救済利益は失われていない。
    なお、組合は、本件申立て後、会社が診断書提出の根拠としている条項を含む基本協約の締結に応じているが、これに先立つ団体交渉において、同条項の解釈について労使間の認識が異なり、対立状態にあることが明らかとなり、この問題は何ら解決していないのであるから、本件において組合が基本協約を締結したことをもって直ちに救済利益がなくなったということはできない。

5 命令書交付の経過

  1. 申立年月日 平成29年7月14日
  2. 公益委員会議の合議 令和元年7月16日
  3. 命令書交付日 令和元年9月4日

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