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報道発表資料  2019年04月25日  生活文化局

アパレル関連商品転売の副業に係る紛争が解決しました
簡単に利益が得られるとする副業の勧誘に注意しましょう!

都内の消費生活センターには、「稼げる」と勧誘されて、いわゆる「転売ビジネス」の高額契約をしてしまったという消費生活相談が増加しています。事業経験のない消費者が、副業に関する契約をした場合の考え方や問題点を整理して、今後、同種・類似紛争の解決に役立てるため、都は、東京都消費者被害救済委員会(会長 村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)に標記紛争の解決を付託していました。
本日、同委員会よりあっせん解決したと知事に報告がありましたので、お知らせします。

紛争の概要

20代前半の申立人3名は、「短時間でできる在宅の仕事に興味はないか。」とSNSのメッセージで呼び出され、「当社のルートで海外から商品を仕入れて、フリーマーケットアプリを利用して転売することで安定して稼げる。」と説明された後に、突然、着手金30万円とサポート代月額1万円の契約を迫られ、応じてしまいました。その後、このビジネスに疑問を持ち、翌日又は翌々日にクーリング・オフを申し出ましたが、クーリング・オフは消費者には適用されるが、この契約は事業者間契約だから適用除外と言われ、紛争になりました。

あっせん解決の内容

委員会では、当該取引は、特定商取引法のアポイントメントセールス及び業務提供誘引販売取引に該当するとして、同法に基づきクーリング・オフを認め、既払金のある申立人には全額返金するとの合意が成立しました。

本件のポイント

  • 「短時間の作業で高収入が得られる」という事業者の説明は、特定商取引法で規制する断定的判断提供にあたり、行政処分の対象となり得ます。
  • 相手方が契約書に「事業者としての契約である」と記載していても、事業の経験がなく実態として消費者である者が契約した場合、消費者保護の規定が適用されるべきです。

消費者へのアドバイス “稼げる”と言われても、契約は慎重に

  • 簡単に稼げるなどと勧誘されても、すぐに契約せず慎重に考えましょう。
    周囲の方々も、若者が消費者被害にあわないよう、相談に乗るなどしてください。
  • SNSで事業者が接近してくることがあります。消費者被害に注意しましょう。
  • 副業の契約でトラブルにあったら、諦めずに消費生活センター(消費者ホットライン 電話 188)に相談しましょう。

今後の東京都の対応

1 国や関係機関への情報提供

報告書を送付し、施策や業務運営等の参考としていただくよう依頼します。

2 都内の消費生活センターへの情報提供

本件紛争解決にあたっての委員会の考え方を消費生活相談の現場などで活用してもらえるよう、情報提供していきます。

3 消費者への注意喚起

東京くらしWEBで消費者に情報提供を行うとともに、SNSなども活用して、注意喚起を行っていきます。

QRコードの画像1

特に若者に対しては、大学等への啓発リーフレット配布や、新入生ガイダンス等での出前講座の実施を通じて、消費者トラブルへの注意を呼び掛けていきます。

東京都消費者被害救済委員会「アパレル関連商品転売の副業に係る紛争」報告書の概要

東京都消費者被害救済委員会とは、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関です。

紛争の概要

申立人

3名

  • 申立人A:20歳代前半女性(給与生活者)
  • 申立人B:20歳代前半女性(給与生活者)
  • 申立人C:20歳代前半男性(学生)

相手方

アパレル関連商品転売の副業に係る業務提供事業者

契約内容

アパレル関連商品転売ビジネスに係るノウハウ情報の提供及びサポート

申立人の主張による紛争の概要

各申立人はSNSで自分のファッション等の情報発信をしていたところ、平成30年5月から6月にかけて、それぞれのスマートフォンに、SNSのダイレクトメッセージで「アパレルのバイヤーだがセンスのある人をスカウトしている。1日1時間からでも在宅でできる仕事に興味はないか。」との連絡を受けた。どのような仕事か質問のメッセージを送ると、海外から商品を仕入れて、申立人がフリーマーケットアプリを利用して販売することで、安定して稼げる仕事だと返信があった。
 詳しい説明をすると言われて、相手方が案内した日時にビルの一室の事務所に出向くと、共通して、「外国に支社があり、その国の事業者から、アパレル商品を買い付けるルートを持っている。その国のアパレル商品の通信販売サイトを閲覧し、仕入れたい商品を選び、当社に依頼すると買い付けて申立人に送るので、その商品を転売すると海外との価格差により利益が得られる。月に10万円程度は稼げる。」と説明された。
一通り説明が終わると、初めて「着手金30万円とサポート代金の毎月1万円が必要だ。」と言われ、驚いて、帰って考えたいと告げるなどしたが、すぐに契約をしないと契約の枠が埋まってしまうと言われるなどして、その場での決断を迫られ、契約を締結することとなった。
その後、各申立人は短時間の作業で儲かるビジネスという説明に疑問を持ち、翌日又は翌々日に解約をそれぞれ申し出たが、「契約書記載のとおり申立人らは個人事業主として契約しており、消費者ではないのでクーリング・オフは適用されない。サポートも開始している。」との理由で無条件での解約には応じてもらえないため、紛争となった。

あっせん解決の内容 当事者双方があっせん案を受諾し解決

相手方は、特定商取引法に基づき申立人らのクーリング・オフを認め、相互に何ら債権債務がないことを確認する。また相手方は、申立人Cが支払った既払金3万5千円を返還する。

主な審議内容

1 本件契約は、特定商取引法の訪問販売に該当する

勧誘目的を告げずに営業所その他特定の場所へ来訪要請をすることを、特定商取引法2条1項2号では「訪問販売(アポイントメントセールス)」と定義しており、来訪要請の手段が、いわゆるSNSによる場合を含んでいるので、本件契約はアポイントメントセールスに該当する。
申立人らは、クーリング・オフの申出期間内に、契約解除を申し出ていることから、クーリング・オフが成立する。

2 本件取引は、特定商取引法の適用除外に該当しない

特定商取引法は、「訪問販売」のクーリング・オフについて、「営業のために若しくは営業として締結するもの」は適用しないとしている。相手方は、「申立人らは個人事業主として契約しており、消費者ではないのでクーリング・オフは適用されない。」と主張した。
しかし、個人がインターネットで商行為をしただけでは当然に「営業」にはならず、「業」として行っているといえるだけの、継続性また生活における重要度が必要である。
申立人らが本件契約を締結した際には、インターネットでの転売取引は初めてであり、申立人らにとって行う転売行為は「営業」とまでいえるものではなかったといえる。したがって、本件取引は、特定商取引法が適用される。

3 本件契約は、業務提供誘引販売取引にも該当する

申立人らと相手方との本件契約では、申立人らがアパレル商品転売という「業務」による利益収受を目的とし、相手方がこれを仲介するとともに、必要なサポートを随時提供するという役務提供がなされている。以上から、本件取引は、特定商取引法51条1項の「業務提供誘引販売取引」に該当する。業務提供誘引販売取引において、クーリング・オフが認められるためには、申立人らが、例えば、店舗や事業専用の場所を構えていない個人であることを要する。自宅の私用パソコンを使って業務を行う本件は、本条の適用対象となる。したがって1と同様、申立人らは、申出期間内に、契約解除を申し出ていることから、クーリング・オフが成立する。

《参考》いわゆる「転売ビジネス」に関する相談件数の推移(東京都内)

相談件数のグラフの画像
※平成30年度は速報値

同種・類似被害の再発防止に向けて

1 事業者に対して求めること

  1.  消費者保護規定の適用については、勧誘対象者の実態に基づいて判断すること
    仮に契約書面上「事業者」の契約であると明示されていても、勧誘対象者に反復して事業を継続し営業活動を行っている実態がなければ、特定商取引法の適用があることを認識するべきである。
  2. 販売目的の明示、契約書の交付等、特定商取引法を遵守すること
    SNSにより勧誘目的を告げず来訪させ、契約を誘引することはアポイントメントセールスに該当する。このような場合、特定商取引法の行政処分の対象となることがあるし、同法によって契約の取消しや解除が認められる場合もある。事案が悪質な場合、特に法定書面不交付などについては刑罰の適用の余地があることを事業者は認識する必要がある。
  3. 勧誘に際し、利益について確実であると断定的な説明をしないこと
    「1日1時間程度で月10万円程度の利益が取れる」といった説明による勧誘は断定的判断の提供として、行政処分の不利益があることを注意すべきである。

2 消費者に対して求めること

  1.  SNSでのプライバシー発信の危険性の認識
    SNSで情報発信することは、プライバシーを不特定多数の人にさらすことになる。悪質な誘引、契約をもくろむ事業者のターゲットになりかねず、消費者被害に巻き込まれかねないことを認識しなければならない。
  2. 契約する場合は、契約書面を良く読むなど慎重に
    若者にとって、インターネットを駆使したサイドビジネスは魅力的に感じるかもしれないが、事業者が示す書面を慎重に確認しないまま、契約してしまわないようにしてもらいたい。

3 行政に対して求めること

  1.  消費者に対する啓発活動、教育の推進
    SNSを利用した個人情報の発信やSNSを通じて知った第三者と直接接触することの危険性については、幼児期から教育して認識させるように努める必要がある。成年年齢が18歳に引き下げられることを踏まえ、高校生の年齢までには、インターネット上での勧誘及び契約リスクについて教育の機会を持つことが必要である。関係部門が連携し、そのような教育システムを構築すべきである。
  2. 消費生活センターにおける積極的なあっせんと情報発信
    消費生活センターでは、事業者側が「事業者として契約したものだ」と消費者法の適用を否定したとしても、実態に即した処理を行い、積極的に消費者保護に取り組む必要がある。また、注意喚起の情報発信や消費生活センターの電話番号「消費者ホットライン188」の周知を期待する。

※困ったときにはまず相談を!!
おかしいなと思ったら、最寄りの消費生活センターにご相談ください。

※別添 「アパレル関連商品転売の副業に係る紛争案件」報告書(PDF:652KB)

詳しくは東京くらしWEBをご覧ください。

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問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課
電話 03-3235-4155

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