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報道発表資料  2018年08月29日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 被申立人Yは地方公共団体であり、平成28年4月1日現在の職員数は、一般職(正規職員)475名、特別職(非正規職員)441名(非正規率約5割)、合計916名である。
  2. 申立人組合は、業種を問わず主に中小企業に雇用される労働者で構成されるいわゆる合同労組である。本件申立時の組合員は約200名であり、そのうち、Yに勤務する組合員はA1名である。

2 事件の概要

Yの消費生活相談員(委嘱期間1年の嘱託員)であるAは、組合に加入し、労働条件に関する団体交渉、ビラ配布などの組合活動を行っていた。組合は、YがC職員組合(職員団体)に便宜供与を行っていることを踏まえて、29年1月13日付けの要求書により、Yに対し、組合掲示板設置、組合事務所貸与、内線電話の設置・利用、郵便物取次ぎ、就業時間内の短時間組合用務の黙認などの便宜供与(本件便宜供与一式)を行うよう要求した。
本件は、組合が本件便宜供与一式を要求したことに対し、組合員が1名であることなどを理由として、Yがこれを拒否したことが、組合の運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文

本件申立てを棄却する。

4 判断の要旨

(1)却下を求めるYの主張について

30年3月31日をもってAの委嘱期間は終了したが、Yに組合の組合員が存在しなくなったことによって直ちに救済利益が失われるものではなく、組合が本件申立てによる救済を求めているのであるから、却下を求めるYの主張は、採用することができない。

(2)本件便宜供与一式の拒否について

  1. 同一企業内に複数の労働組合が併存する場合、使用者は、各組合に対して中立的な態度を保持し、合理的な理由がない限り、組合の性格、傾向等によって差別的な取扱いをすることは許されないといえる。これを本件についてみるに、職員団体と組合とでは、組織規模に大きな違いがあり、Yの施設を利用する必要性等の事情も異なるであろうことなどを考慮すれば、直ちに組合に本件便宜供与一式が認められるべきであるとまでいうことはできない。そして、団体交渉において、Yが本件便宜供与一式の拒否理由として説明した内容についても、一概に不合理な理由であると断ずることはできない。
    また、情宣活動の重要性は理解できるところではあるものの、その手段には様々なものがあり、情宣活動のために組合掲示板設置が不可欠であるとまではいうことができない。そして、Yが、本件申立て後の団体交渉において、組合掲示板設置の代替案として置きビラの提案を行い、これを認めるための具体的な条件について協議に応じていることを考慮すると、組合掲示板設置を拒否することによって、Yが殊更に組合の情宣活動を制約しようとしているとか、組合の団結権を軽視しているなどとみることもできない。
  2. 本件便宜供与一式の具体的内容は多様なものであったところ、比較的軽易で使用者の負担も軽いと思われる事項について、職員団体への便宜供与を認める一方で、組合に対しては一切認めないYの対応には疑問がないではない。しかしながら、組合は、職員団体と同じ扱いにするよう求めており、本件便宜供与一式を一括して要求していることから、Yの回答は、こうした組合の要求方式に対応したものとみることができる。そして、組合は、団体交渉において、組合が最重要視していた組合掲示板設置以外の個別の事項について、切り離して要求する姿勢をみせてはいない。
  3. 本件申立て前に行われた団体交渉では、Yと組合との団体交渉は、話合いにより相互に歩み寄り、合意可能な事項から順次解決するなど、一定の成果を上げていたものとみることができる。さらに、上記1. で述べたとおり、Yは、組合掲示板設置の代替案として、置きビラを提案して具体的条件の協議に応じているのであるから、およそYに労使間の交渉の場で解決していこうという姿勢がなかったとまではいうことができない。
  4. 以上のことから、Yが本件便宜供与一式の組合要求を拒否したことは、職員団体と比べて組合を差別的に取り扱ったものとまではいえず、支配介入に当たるということはできない。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日 平成29年2月22日
  2. 公益委員会議の合議 平成30年7月17日
  3. 命令交付日 平成30年8月29日

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