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報道発表資料  2017年09月27日  東京都労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 被申立人会社は、東京都品川区広町及び同八潮地区に事業所を有し、車両用機器の修繕、清掃業務等を主たる業とする株式会社である。各事業所の従業員数は、品川区広町が約130名、同八潮地区が約15名である。
  2. 申立人組合は、主に東京都の南部地域(品川区及び大田区)に職場又は住居を有する労働者により構成された、いわゆる合同労組であり、本件申立時点での組合員数は30名である。

2 事件の概要

Xは、被申立人会社との間で、平成27年4月15日から9月末日までを期間とする有期雇用契約を締結し、電車車両用機器の洗浄作業に従事していたところ、同年8月末頃、会社より、契約更新しない旨を示唆されたことから、申立人組合に加入した。
組合と会社とは、Xの雇用契約更新を主たる交渉事項として、9月28日、11月9日及び12月17日の3回にわたり団体交渉を開催し、その中で、組合は、Xが契約更新されない理由の説明を求めたところ、会社は、洗剤の拭き残しがあるなどXの洗浄作業が不十分であったためであるなどと回答した。これについて、組合が拭き残しのあった具体的な回数、日時の明示及び日誌等の資料の提示を求めたところ、会社は、何回もあった、資料を提示する必要はない等の回答を繰り返した。
組合は、12月22日、28年1月22日及び3月9日の3回にわたり、第4回の団体交渉を申し入れたが、会社は、これ以上交渉を継続しても進展はないとして、団体交渉を打ち切る旨を回答し、団体交渉開催に応じなかった。
本件は、1)Xの雇用契約更新に係る第4回の団体交渉に会社が応じなかったことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、及び2)本件に救済利益はあるか否かが争われた事案である。

3 主文

  1. 会社は、組合が平成27年12月22日付けで申し入れたXの雇用契約更新に係る団体交渉に、必要な資料を提示し、同人の契約不更新理由の根拠を説明するなどして誠実に応じなければならない。
  2. 文書交付
  3. 第2項につき履行報告

4 判断の要旨

会社がXの雇用契約更新に係る第4回団体交渉に応じなかったことに正当な理由はあるか否か

  1. ア 会社は、Xとの間で雇用契約を更新しなかった理由として、Xを通常の者と対比し、洗浄に時間がかかっていたこと、洗剤が残りクレームがあったこと等を説明しており、Xの契約不更新の理由については一定程度説明していたことが認められる。
    イ しかし、第1回団体交渉において、組合がXの品質の問題について何回あったのかと質問したところ、会社は「結構あったから。」、「何回もありました。」などと抽象的な回答を行い、具体的な日にちについては「それは言えません。」と回答し、根拠資料については「それは、私どもの会社のものですから見せません。」と述べて提出を拒否した。
    ウ また、第2回団体交渉においては、組合は、会社の説明について、具体的な質問を行ったり、会社が主張する事実関係の確認が資料要求の理由であることを明示して、客観的な資料の提出を求めたりした。これに対し、会社は、具体的な説明ないし資料を提出できない具体的理由を述べることもなく、いたずらにその説明及び資料の提出を拒否した。
    エ さらに、会社は、第2回団体交渉において、Xの雇用契約不更新の根拠となる作業品質に関する何らかの資料の存在を明らかにするとともに、第2回団体交渉の場にXの雇用契約不更新に関する資料を現に持参していたにもかかわらず、組合には開示しなかった。
    オ そして、第3回団体交渉において、組合は、団体交渉が進展しないのは会社が根拠を示していないことが理由である旨述べたのに対し、会社は、提出できない理由を説明することもなく一律に提出を拒否した。
    カ 組合は、第1回団体交渉から、Xの雇用契約書には、「更新する場合があり得る」との記載があることやハローワークの求人票には「契約更新の可能性あり(原則更新)」と記載されていたことから、相当な理由がない限り更新すべきである旨を主張した。これに対し、会社は、第2回団体交渉において、求人票に記載されている「原則更新」の意味について、原則は更新であるが、契約書に書いてあるような場合には更新しないということであると述べて、Xは契約書の不更新理由に該当することから更新されなかった旨を説明した。そして、会社は、雇用契約更新をしなかった事例は1年半の間にXを含めて2名しかいないことを明らかにした。
    こうした事情からすると、組合が、契約不更新となることは異例であるとして、会社主張のXの契約不更新理由の内容を確認し、その合理性について判断するため、会社が主張する洗剤の拭き残し等、Xの作業ミスやクレームの内容・回数等につき、具体的な事実の摘示及びその根拠となる客観的な資料の提出を求めることは当然の要求であったといえる。
    ところが、会社は、自らの説明の基となる資料を所持しており、それを組合に提示することに支障があるような事情は特に認められないにもかかわらず、一貫して根拠資料の提出を拒否し、根拠資料を示さない合理的な理由も説明していないのであるから、会社が、組合から疑義のあった事実の存否やクレーム回数等につき、組合の疑義の解消を図り、組合の理解や納得を得るよう努力したということはできない。
    キ 加えて、会社は、3回の団体交渉に応じてはいるものの、第2回及び第3回の団体交渉においては、組合との話合いがまとまっていないにもかかわらず、前回よりもさらに短い交渉時間を一方的に予定し、交渉の流れにかかわらず予定した時間が経過すれば交渉を終了させるとの姿勢で臨んでいたことが窺われるのであるから、会社の対応は、団体交渉において、組合と真摯に話し合う姿勢に欠けていたといわざるを得ない。
    ク 以上の経緯からすれば、会社は、Xの契約不更新の理由について、口頭で一定程度回答してはいるものの、それ以上の説明を行う姿勢をみせず、それを裏付ける根拠として組合が求める資料も一切開示しないという不十分な対応に終始していたのであるから、組合に対し必要な説明を尽くしたとする会社の主張は採用することができない。
  2. 会社は、団体交渉が行き詰まりの状態であったと主張するが、会社が不更新理由として挙げたXの作業ミスの内容・回数、クレームの内容・回数等を示す客観的な資料を開示することにより、合意に向けて団体交渉が進展する可能性はあったといえる。
    また、そもそも上記1)の判断のとおり、会社が必要な根拠資料を一切開示しないなどの不十分な対応に終始したことが団体交渉が進展しない主たる要因であるから、主張を出し尽くして行き詰まりの状態になっていたと認めることはできない。
  3. なお、第3回団体交渉において、組合が、交渉前日に団体交渉の時間制限に関する申入れを行った際の会社の対応について、会社に対し繰り返し謝罪要求を行ったこと、それにより交渉時間の大半を費やしたことに問題がなかったとはいえないが、組合と会社との間で交渉時間について意見の対立があったこと、団体交渉における会社の対応が不十分であったことからすれば、団体交渉開始前からわずか30分という短い時間を設定した会社の姿勢に組合が反発を強めたことにも無理からぬものがあるといえ、上記交渉態度をもって、組合が交渉に入ることを自ら放棄したとまでいうことはできない。
  4. 以上のとおり、第1回ないし第3回団体交渉における会社の対応からすれば、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとはいえず、組合が団体交渉を放棄したとも認められないのであるから、会社が、交渉の行き詰まりを理由に、組合からのXの雇用契約更新に係る第4回団体交渉の申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるといわざるを得ない。

救済利益の存否について

  1. ア 会社は、本件審査手続の第3回調査期日において、組合が金銭的解決を求めるとし、更なる団体交渉を行うことは希望しない旨を述べたとして、組合が救済を求める意向を有しておらず、団体交渉を求める救済の利益は失われた旨主張する。
    イ しかし、そもそも、本件審査手続の中で和解に向けた調整を行っている場面において、組合が、会社が主張するような発言をしたとしても、当該組合の発言は、Xの雇用契約不更新問題の早期和解解決に向けて相互に譲り合うことを前提に和解案を述べたものとみるのが相当であるから、和解が成立しなかった本件において、それが組合の確定的な見解であると評価するのは相当でない。
    ウ したがって、組合が団体交渉を行うことを希望していないとの前提に立った会社の主張は採用することができない。
  2. ア 会社は、29年2月15日の審問期日後の組合の対応が、会社と折衝する機会を自ら放棄するものである旨を主張するが、組合は、Xの雇止めの撤回要求に会社が応じない限り団体交渉を再開する必要はないという対応をしたとは認められず、その後も一貫して団体交渉における会社の誠実な対応を求めているのであるから、組合が会社と折衝する機会を自ら放棄したとする会社の主張は、採用することができない。
    イ また、会社が回答した2月20日及び同月27日付けの書面には、組合が希望すれば団体交渉に応ずる旨の記載があるものの、他方で前3回の団体交渉でXの雇止め理由等に関する必要な説明は尽くしていることが記載されており、同月27日付けの書面には、「これ以上団体交渉を継続しても進展がみられない」との見解を撤回するものではないことが記載されており、本件審査手続においても、会社は、組合に対する必要十分な説明はしているとの主張を維持しているのであるから、会社に対して、誠実に団体交渉に応ずるよう命ずる必要性が失われたということはできない。
  3. したがって、組合が救済の意思を放棄したとは認められず、また、救済の必要性が失われたということもできない。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日 平成28年4月7日
  2. 公益委員会議の合議 平成29年8月1日
  3. 命令書交付日 平成29年9月27日

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