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報道発表資料  2017年08月23日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、平成24年4月に結成された、中小零細企業労働者及び非正規雇用労働者を主たる組織対象とした個人加盟のいわゆる地域合同労組である。本件申立時の組合員数は、約160名である。
  2. 被申立人Y1会社は、引越業務を主たる業とする株式会社である。本件申立時の従業員数は、約900名である。
  3. 被申立人Y2会社は、引越業務を主たる業とする株式会社である。本件申立時の従業員数は、約1,500名ないし2,000名である。
  4. 被申立人Y3会社(以下、Y1会社、Y2会社及びY3会社を併せて「会社ら」という。)は、引越業務を主たる業とする株式会社である。本件申立時の従業員数は、約900名である。
  5. 会社らは、会社らのほか、申立外C1会社などのグループ会社で事業を行っており、グループ会社全体の従業員数は、約4,000名である。

2 事件の概要

  1. 平成27年3月12日、組合は、Y1会社に対し、19名の組合加入を通告し、賃金から控除した車両事故の弁償金の返還等を求めて団体交渉を申し入れた。団体交渉は4月29日に開催されたが、3月から4月にかけて、13名が組合を脱退した。
  2. 27年3月3日、組合は、Y2会社に対し、A1の組合加入を通告し、賃金から控除した車両事故の弁償金の返還等を求めて団体交渉を申し入れた。団体交渉は、4月22日及び6月1日に行われたが、Y2会社は、組合員で唯一の正社員であるA1に対し、6月29日に、シュレッダー係への配転を命じ、8月11日に、懲戒解雇処分とした。また、会社らは、A1の懲戒解雇処分について、懲戒解雇理由を「罪状」などと記載した通知を会社らの社内に掲示し(以下「本件掲示物」という。)、8月号の社内報にも掲載し全従業員の自宅に送付した。この社内報には、組合支部の支部長についての記載もあった(以下「本件社内報」という。)。
  3. 組合は、Y2会社に対し、28年2月23日から3月16日にかけて、27年7月5日以降の団体交渉申入れにA1の件以外応じていないとして抗議し、改めて団体交渉を申し入れた(以下「本件団体交渉申入れ」という。)が、28年5月26日まで団体交渉は開催されなかった。
  4. 本件は、1)Y1会社が組合脱退を働き掛けた事実があったか否か、あった場合そのことが支配介入に、2)Y2会社がA1をシュレッダー係に配転したことが不利益取扱い及び支配介入に、会社らがA1の懲戒解雇について掲示したこと及び社内報を全従業員の自宅に送付したことが支配介入に、3)Y2会社の対応が正当な理由のない団体交渉拒否に、それぞれ当たるか否か等が争われた事案である。

3 主文の要旨(全部救済)

  1. Y1会社は、組合員に対し、脱退勧奨をしないこと。
  2. Y2会社は、組合が、28年2月23日付け、同月24日付け、同月25日付け及び3月16日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応ずること。
  3. 会社らは、社内報に都労委から不当労働行為であると認定されたこと等を掲載し会社らの全従業員の自宅に送付すること。
  4. 文書交付及び掲示
  5. 3及び4の履行報告

4 判断の要旨

(1)組合員の脱退について

  1. 27年3月当時の労使関係
    ア 会社らは、別法人であるが、(ア)代表取締役や副社長が同一であること、(イ)会社ら全体の重要な意思決定をする会議が開催されていること、(ウ)副社長が会社らの各支店やカスタマーに宛てて一斉メールで組合に関する指示をしていることなどから、会社らの労務政策は、多少の違いはあるにしても、おおむね同一の方針で行われていたと認められる。
    イ 27年3月頃は、組合が次々に会社らの現ないし元従業員が組合加入したとして団体交渉を申し入れた時期であり、また、団体交渉申入事項には、退職した従業員の未精算の労働条件についてのみならず、現役の従業員の労働条件が含まれていることから、団体交渉の経過が会社らの全従業員の労働条件に波及する可能性のある事態ともなっていた。
    こうしたことから、27年3月当時、会社らにとって、組合に対する対応は、緊急かつ重要な課題であったといえる。
  2. 27年3月21日に、元従業員であるA2は組合に加入したが、翌日、Y1会社は同人に対し和解金を支払った。その後、A2は、組合を脱退している。
    この間の、3月24日から同月28日にかけて、A2が組合員に対し送った文章からは、A2が、Y1会社と組合員との示談についてY1会社からある程度の裁量を持って任されていたこと等が窺える。
  3. Y1会社は、A2に脱退工作を依頼していないと主張する。しかし、27年3月24日から4月7日までという短期間の間に13名もの組合員が脱退していることと上記1)2)とを考え併せると、Y1会社が、組合の会社らに対する影響力の拡大を危惧し、A2を通じるなどの方策をとって、組合員に対して、金銭を支払って和解することと引き換えに、組合を脱退するよう働きかけたものとみざるを得ず、このようなY1会社の行為は、組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。

(2)A1をシュレッダー係の業務に就かせたことについて

  1. Y2会社は、シュレッダー係へ配転しても、A1の賃金や労働時間を含めた勤務条件に変更がなく、同人の配転は、不利益取扱いではないと主張する。
    しかし、一時期は、営業専任職としてY2会社の中で1位の成績を挙げていたA1が、正社員としてただ一人、単純業務であり、勤怠不良等とされた従業員が配転されているシュレッダー係に配属されたことは、不利益な取扱いであるといえる。
  2. Y2会社は、A1のシュレッダー係への配転理由は同人の遅刻であり、同社に不当労働行為意思はないと主張する。
    ア しかし、A1は、25年9月から26年1月にかけて、3回遅刻をし、始末書を提出しているものの、その後、同人は、従業員の指導や教育に当たることも業務に含まれている営業管理職とも称される営業専任職となっていることなどから、Y2会社では、業績の評価において、遅刻は、あまり重視されていなかったということができる。
    イ 27年7月13日の団体交渉において、組合が、配転が組合差別なのか判断するために、遅刻した他の事例についての根拠資料の提出を求めたのに対し、Y2会社は、提出するとの約束をしたが、結局、その資料を提出しておらず、A1以外の従業員の遅刻の状況やそれに対する同社の対応等は、断片的な説明が行われた以外には、何ら明らかにされていない。
    ウ 上記アないしイを考え併せると、A1をシュレッダー係に配転させた真の理由が遅刻であるとのY2会社の主張は、にわかには信じ難い。
  3. そして、時期的にみると、27年の上半期は、会社らの従業員や元従業員が次々に組合に加入し、会社らに対する組合活動が、活発化した時期であった。
  4. さらに、A1についての27年3月3日付団体交渉申入れは、組合が、会社らの現役従業員の処遇改善を求めた初めてのケースであり、同人に係る交渉の影響が他の従業員にも及び得る状況となっていた。
    シュレッダー係への配転命令があった6月29日の時点では、A1は、組合員で唯一の正社員の現役従業員であった。
  5. 6月30日の面談でのB1本部長の発言や、A1が懲戒解雇された翌日にY2会社がA1と同人の父親に送付した文書から、同社が組合に対する嫌悪感を持っていたことが認められる。
  6. 以上の点を総合的に勘案すると、Y2会社がシュレッダー係にA1を配転した真の狙いは、同人の組合加入により現役従業員の処遇改善を初めて求められた同社が、組合の会社らに対する影響力が強まることを懸念し、これを抑制することを狙って、同人に不利益な取扱いをすることにより、組合の会社らにおける組織拡大を抑止することにあったとみざるを得ない。
    このようなY2会社の行為は、A1が組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるとともに、組合の弱体化を企図した支配介入にも当たる。

(3)本件掲示物について

  1. 本件掲示物は、A1の氏名と顔写真とを掲載した上で、同人の懲戒解雇理由を「罪状」と記載するなど、同人が犯罪者であるかのように扱い、同人をおとしめるとともに、従業員に対し、A1と同じ轍を踏まないよう注意を喚起する内容の掲示物であるといえる。
    A1に係る本件掲示物の扱いは異例のことであり、Y2会社をはじめとする会社らのA1に対する強い嫌悪の情が窺われる。
    なお、本件掲示物は、A1と雇用関係にあるY2会社のみならず、Y1会社及びY3会社の各支店にも掲示されている。
  2. 会社らは、本件掲示物は、組合には一切言及しておらず、組合加入をためらわせるものではないと主張する。しかし、A1が懲戒解雇された当時、会社らは、会社らの従業員の多くが、A1が組合員であることを知っていたと認識しており、その組合員であるA1について、従来とは違う異例の取扱いがなされているのであるから、本件掲示物を見た従業員が、これを組合員に対する見せしめと捉え、組合への加入をちゅうちょすることを、会社らが企図して、本件掲示物を社内に掲示したものと判断せざるを得ない。
  3. 会社らは、正社員であるA1が組合に加入したことや、現役従業員の処遇改善を求めたり、団体交渉に出席するなどの同人の組合活動を嫌悪するとともに、その影響が他の正社員である現役従業員に波及することを危惧して、本件掲示物に係る異例の取扱いに及んだとみざるを得ない。
  4. このような会社らの行為は、組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。

(4)団体交渉について

  1. Y2会社は、28年2月23日以降の団体交渉申入れについては、5月26日に団体交渉に応じているから、団体交渉拒否は存在しないと主張するが、本件団体交渉申入れについての追加申立てが当委員会にあり、Y2会社事件の調査が行われるまで正当な理由なく3か月も日程調整にさえ応じていないことに問題があることは明らかであり、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。
  2. 救済利益の有無について
    Y2会社は28年5月26日に団体交渉に応じており、このことから、団体交渉拒否は存在しないと主張するが、それ以後の本件結審時までの団体交渉の状況等を考慮しても、団体交渉拒否によって生じた状態が既に是正され、正常な集団的労使関係秩序が回復されているとは認められず、団体交渉申入れに係る救済利益が失われたということはできない。

(5)本件社内報について

  1. 本件社内報は、本件掲示物の記載内容と同様のA1に関する記事と組合の支部長であるA3に関する記事が掲載されており、会社らの全従業員の自宅に送付され、本件社内報の内容は、従業員のみならず、その同居人にも広く知られる可能性がある。
  2. 前記(3 4.のとおり、本件掲示物を会社らの社内に掲示したことは、組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。
  3. 会社らは、A3についての記載は、組合の記載はあるものの、マルチ商法の勧誘に対し注意喚起する内容にとどまっており、不当労働行為意思に基づくものではなく、支配介入ではないと主張する。
    しかし、本件社内報は、これを読んだ者に対し、労働組合への加入をちゅうちょさせる内容となっている。
  4. 本件社内報に、A3の退職後約2年間経過した時期に、掲載する必要性は見いだし難い。
  5. 組合は、27年3月12日に、A3が支部長であることや同人の労働実態を記載した上で、A3ら19名についてY1会社に団体交渉を申し入れており、その後、Y1会社の従業員又は元従業員が、次々組合に加入した。また、A3を含む組合員ら12名は、7月31日に、Y1会社及びY3会社を被告として、車両事故の修理代の支払等を請求する訴えを提起した。
  6. 前記1)1.アのとおり、会社らの労務政策は、おおむね同一の方針で行われていたと認められる。
  7. 上記2.のとおり、支配介入に当たる内容と同様の記事や、上記3)4)のとおり、掲載の必要性が見いだし難い組合加入をちゅうちょさせる内容の記事を社内報に掲載し、会社らの全従業員の自宅に送付し同居人にも広く知られる状況にしたのは、前記(2 3.や上記5)のような、当時の労使関係を考慮すると、会社らが、組合の会社らに対する影響力が高まることを懸念し、会社らの従業員の組合加入を抑制し、組合の会社らにおける影響力を減殺することを狙ったものとみざるを得ない。
    このような会社らの行為は、組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。

5 救済方法

  1. A1をシュレッダー係の業務に就かせたことについて
    Y2会社が、A1をシュレッダー係の業務に就かせたことについては、不利益取扱い及び支配介入であると認められるが、同人と同社との間では、同社が同人に対して謝罪することを含む和解が裁判所において成立し、既に同人は、営業専任職に復職している。
    しかしながら、本件の証拠に表れているだけでも、24名の組合員が組合を脱退しており、組合が大きな打撃を受けていることが認められる。こうした視点からみれば、裁判所において和解が成立したことによっても、組合員に対するシュレッダー係への配転という不利益な取扱いによって損なわれた組合の団結権の回復措置は何らなされておらず、この点の救済の利益が消滅したとはいえないことから、本件の救済としては、Y2会社に、文書交付及び掲示を命ずるのが相当と考える。
  2. 本件掲示物について
    会社らが本件掲示物を会社らの社内に掲示したことについては、支配介入に当たるところ、A1とY2会社との間では、Y2会社が同人に謝罪し、本件掲示物が掲示された場所に謝罪文を掲示することを内容とする和解が裁判所において成立している。
    しかし、裁判所の和解における謝罪文には、A1が組合員であることについての言及もないなど、本件掲示物が組合の活動に対して及ぼした悪影響を取り除くような記載はないので、裁判所における和解が成立したことによっても、本件掲示物の掲示についての組合に対する救済の利益が消滅したとはいえないことから、本件の救済としては、会社らに、文書交付及び掲示を命ずるのが相当と考える。
  3. 本件団体交渉について
    本件団体交渉申入れでは、A1を営業専任職として勤務させることなどを求めていたところ、A1とY2会社との間で、A1が営業専任職に復職することなどを含む和解が裁判所で成立し、団体交渉申入れの交渉事項の一部について解決が図られている。しかし、交渉事項のうち、A1の未払賃金についてはいまだ解決しておらず、また、A1の件以外の交渉事項についても解決されていないことから、Y2会社に対し、団体交渉に誠実に応ずること並びに文書交付及び掲示を命ずるのが相当と考える。
  4. 本件社内報について
    会社らが本件社内報にA1及びA3についての記事を掲載し会社らの全従業員の自宅に送付したことについては、支配介入に当たるところ、A1とY2会社との間では、同社がA1に謝罪し、謝罪文を同社の従業員に送付する社内報に掲載することを内容とする和解が裁判所において成立している。
    しかし、裁判所における和解が成立しても、裁判所の和解における社内報に掲載する謝罪文には、A3についての言及がないことから本件社内報のA3についての記事に係る救済の利益は失われていない。また、本件社内報のA1に係る記事についても、裁判所の和解における社内報に掲載する謝罪文には、A1が組合員であることについての言及がないことなどから、本件社内報への掲載と会社らの全従業員への送付についての組合に対する救済の利益が消滅したとはいえないことから、本件の救済としては、社内報へ掲載し、会社らの従業員の自宅に送付することを命ずるのが相当と考える。

6 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成27年3月23日
  2. 公益委員会議の合議
    平成29年7月18日
  3. 命令書交付日
    平成29年8月23日

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