ここから本文です。

報道発表資料  2017年07月26日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、業種を問わず東京都三多摩地区を中心とする企業に雇用される労働者で構成する個人加入のいわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員は、約200名である。
  2. 被申立人会社は、テフロン製品の製造加工を業とする株式会社であり、本件申立時の従業員数は、約40名である。

2 事件の概要

  1. 平成26年12月28日、会社のY社長は、会社の従業員であるXに対し、転職活動を行っているか否かを尋ね、退職するのであれば年明けに退職届を提出するよう促す発言をした(以下「本件発言」という。)。
    Xは、Y社長の本件発言は退職勧奨であると受け止め、27年1月9日、組合に加入した。同日、Xは、会社に対し、退職の意思がないことを通知し、また、組合は、会社に対し、団体交渉を申し入れた。
    1月16日、組合と会社との第1回団体交渉において、Y社長は、本件発言を撤回する一方、Xに対する特別待遇を廃止する旨を述べた。従前、会社は、Xに対し、特別待遇と称して、役職手当として月額3万2,000円(以下「本件役職手当」という。)、交通費として月額2万1,000円(以下「本件交通費」という。)を支給するとともに、通勤手段として社有車を貸与し、そのガソリン代を負担していたところ、2月支給分給与から本件役職手当を廃止し、1月20日に社有車貸与、ガソリン代の負担及び本件交通費の支給を取りやめた上、電車通勤を命じ、Xが電車で通勤することを前提とする交通実費相当額の月額2万7,480円のみを支払うこととした。
    3月2日、Xは、会社において、休憩時間中、組合への加入を呼び掛けるチラシ(以下「組合チラシ」という。)や東京都産業労働局発行の『ポケット労働法』を配布した(以下「本件配布行為」という。)。3月5日に行われた第2回団体交渉の席上、Y社長は、Xが会社内にて組合チラシを配布したことについて「会社を潰す、潰すの。」などと発言をした。
    4月13日、XとY社長とは、組合と会社とが協議していた協定書案を巡って口論となった。
  2. 本件は、(1)会社がXに対する特別待遇を廃止したこと(本件役職手当を廃止したこと並びに社有車貸与、ガソリン代の負担及び本件交通費の支給を取りやめた上、Xが電車で通勤することを前提とする交通実費相当額のみを支払うこととしたこと)が組合員であるが故の不利益取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点1)、(2)Y社長が平成27年3月5日の第2回団体交渉において組合のチラシ配布に関して発言したことが、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点2)、(3)4月13日にY社長がXの左手を蹴った事実があったか否か、このような事実があったとすれば、この行為が組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点3)が争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 役職手当の廃止及び交通費名目での支給の取りやめをなかったものとして取り扱い、Xに対し、27年2月支給分以降の上記各相当額を支払わなければならない。
  2. 組合チラシ配布を非難するなどして組合活動に支配介入してはならない。
  3. 文書掲示及び交付、並びに履行報告
    要旨:会社がXに対し、特別待遇を廃止したこと、社長が団体交渉においてチラシの配布を非難するなどしたこと並びに社長がXに対して有形力の行使をしたことは、いずれも東京都労働委員会において不当労働行為と認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないよう留意すること

4 判断の要旨

(1) 会社がXに対する特別待遇を廃止したことについて(争点1)

  1. 特別待遇の廃止が通告されたのは、Xの組合加入から間もない第1回の団体交渉であったこと、この団体交渉においてY社長は、Xが同社長に直接相談することなく組合に加入したことを繰り返し非難していること、同社長は、Xに退職する意思がないのであれば、仕事上の支障などについて話し合えたはずであるなどと述べているにもかかわらず、Xが組合に加入した第1回団体交渉時点においては、話合いを行う意向を全く示さないまま、特別待遇を廃止する旨を述べていることを併せ考えれば、Y社長は、Xが組合に加入し、組合が申し入れた団体交渉において本件発言を撤回することとなったことによって、特別待遇を廃止するとの具体的な意欲を持つに至ったものとみざるを得ない。
  2. 会社は、特別待遇を廃止した理由は、Xが転職する意向であることを聞いたことによりY社長の信頼が裏切られ、また、Xの協調性を欠く仕事ぶりから特別待遇を維持するのが困難となったためであると主張する。
    確かに、Y社長は、過去に一旦退職したことがあるXの転職活動を知ったために本件発言を行ったことが認められ、また、平成25年頃、Xの働きぶりについて不満を抱いていた会社従業員がいたことがうかがわれるところ、Y社長としてもXは他の従業員との折り合いが悪いという認識を有していたのであり、これらのことが、Y社長が特別待遇の廃止を決定した動機の一部となっていることは否定できない。
    しかし、Xが再入社して以降、組織変更に伴う手当の廃止を除き、特別待遇の廃止又は切下げが行われたことはなく、会社からそのような意向が示されたこともないこと、第1回団体交渉に至るまでの間、団体交渉に同席していた役員が特別待遇の廃止時期を知らなかったこと、少なくとも特別待遇が廃止されるまでの直近1年半は、会社が同人の仕事ぶりに注意や指導を行ったなどの事情が見当たらないことからすると、Xが組合に加入するより前に、同人の協調性を欠く仕事ぶりを理由として特別待遇を廃止するとの動きが会社内であったと認めることはできない。
    以上の判断に加え、前記1)で判断したところも併せ考えれば、会社として、Xが組合に加入しなかったとしても、会社の主張するような理由によって特別待遇を廃止したと認めることはできない。したがって、会社の主張は採用することができない。
  3. 以上のとおり、Y社長は、Xが同社長に直接相談せずに組合に加入したことに不満を抱き、第1回団体交渉において、本件発言を撤回するのに併せて特別待遇の廃止を通告したものであって、Xが組合に加入し、組合が申し入れた団体交渉において本件発言を撤回することとなったことによって、特別待遇を廃止するとの具体的な意欲を持つに至ったものと認められる一方、特別待遇の廃止はXの組合加入や団体交渉申入れとは無関係であるとする会社の主張はいずれも認められないのであるから、会社がXに対する特別待遇を廃止したことは、Xが組合に加入したこと故の不利益取扱いに当たるとともに、会社従業員に組合加入を躊躇させる支配介入にも当たる。

(2) Y社長が第2回団体交渉において組合のチラシ配布に関して発言したことについて(争点2)

  1. 27年3月2日にXが行った本件配布行為は、組合チラシや『ポケット労働法』を従業員に手渡したもので、組合チラシは、労働者一般に申立人組合への加入を促す内容であった。
    そして、配布の場所は、会社占有の敷地内であったものの、組合チラシを配布したXも、それを受け取る従業員も休憩時間中であって、会社の業務遂行に具体的な支障が生じたとの事実も認められない態様であったといえる。しかも、会社の就業規則の規定を見ても、組合チラシの配布を直接禁じたものということはできない。
    したがって、Xが行った本件配布行為は、正当な組合活動の範囲内のものというべきである。
  2. これに対して、Y社長は、第2回団体交渉において、本件配布行為に関連して、「会社を潰す、潰すの。」、「こういうやつをやって何かを引き出そうとしているのか。何なの、何のためにやってるの。」、「会社嫌なのかなって思っちゃう。」と述べたり、働き続けるために組合活動をしているとの組合書記長の発言に対し、「良くしたいのかどうかは分からないけどね。」などと述べたりした。
    こうした発言内容からみれば、Y社長の発言は、単に組合チラシの配布に当たって許可を取るよう求めたものとはいえず、組合加入の勧誘を強い調子で非難したものであり、組合の組織拡大を嫌い、これをけん制することを意図したものであるといわざるを得ない。
    よって、第2回団体交渉における、組合チラシ配布に関するY社長の発言は、組合の運営に対する支配介入に当たる。

(3) 4月13日にY社長がXの左手を蹴ったか否か、蹴ったとすればこの行為が支配介入に当たるか否かについて(争点3)

  1. Y社長は、XがICレコーダーを所持していたことに怒り、自らの足を蹴り上げ、その足はXの手又は同人が手に持っていたICレコーダーに当たったものと認められる。
  2. 上記行為は、協定書の締結を巡る口論に端を発するものであるから、就業時間中のことではあっても、Xの組合活動に対して行われたものである。そして、会社の代表者であるY社長が有形力の行使を行ったのであるから、組合活動に対する抑止効果が全くなかったということはできない。このことに加えて、組合活動については労働組合法第1条第2項において、「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」と定められていることも踏まえると、Y社長によるXに対する本件行為は、組合の運営に対する支配介入に当たるというべきである。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成27年5月22日
  2. 公益委員会議の合議
    平成29年6月20日
  3. 命令書交付日
    平成29年7月26日

ページの先頭へ戻る