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報道発表資料  2017年04月27日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書の詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、平成5年12月20日に結成された、東京及び周辺地域の労働者を対象とするいわゆる地域合同労組である。本件申立時の組合員数は350人である。
  2. 被申立人会社は、ソフトウェア開発、SE派遣等を主たる目的とする株式会社であり、9月頃までの従業員数は55名であったが、本件申立て時点で会社の代表者取締役以外の従業員は全員退職し、事業停止状態にある。

2 事件の概要

平成27年12月1日、組合は、会社に対し、退職金等の支払を求めて団体交渉の申入れを行ったが、組合の抗議行動や再度の団体交渉申入れにもかかわらず会社が団体交渉に応じないことから、28年2月10日、会社の行為が正当な理由のない団交拒否に当たるとして当委員会に不当労働行為救済申立てを行った。
組合と会社及び会社の代表取締役は、6月23日、当委員会において、会社の退職金制度の一部である会社が加入する全国情報サービス産業厚生年金基金(以下、「JJK」という。)の脱退一時金等を退職者が受給するために必要な脱退手続(以下、「本件脱退手続」という。)を実施することに関して合意書を締結した(以下「本件合意」という。)。会社は、本件合意の履行期限である7月28日、当委員会において、組合員3名が会社に対し退職金等の支払を求める訴訟を提起したため本件合意を白紙撤回する旨主張し、8月6日、本件合意を白紙撤回する旨記載した書面を組合に送付し、組合は8月12日付け書面で抗議した。
8月14日、会社は、フェイスブック上で会社が運営するウェブサイト(以下、「本件サイト」という)に、組合について、「当方がインターネット等で調べたところ、いろいろとトラブルがあったようです。」、「『建造物侵入、暴行・傷害』で逮捕者がでたり、組合員に会社の個人情報、機密事項、社員の住所・電話番号、取引先の情報等を盗ませそこにユニオンがビラをまき、それを会社が咎めて懲戒解雇処分にすると、不当解雇だといって退職和解金を請求するということが頻繁に行われているようです。」、「通常ユニオンは金が取れないとわかると去っていくもののようです」等の記載をし、本件脱退手続の早期実現のため会社代表者に直接連絡するよう求める記事(以下、「本件記事」という。)を記載した。
また、退職者に対し、組合について、「東京管理職ユニオンは武闘派の外部労働組合で知られており、これまでにも『建造物侵入、暴行・傷害』で逮捕者を出し、組合員に会社の個人情報、機密事項、社員の住所・電話番号、取引先の情報等を盗ませるといった不法行為を行っている組織のようです。」等と記載した外、同封した書類を返送すれば本件脱退手続を完了させる旨記載した同月17日付書面(以下、「8月17日付け書面」という。)を送付した。
本件は、1)8月14日に会社がウェブサイトに本件記事を記載したこと、2)会社が退職者に8月17日付書面を送付したことが、それぞれ組合の運営に対する支配介入に該当するか否かが争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 会社は、組合を誹謗中傷したり、組合員に対し個別交渉を求めるなどの内容をインターネットの掲示板に記載する、又は組合員に直接文書を送付するなどの方法によって、組合の運営に支配介入しないこと。
  2. 会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、本件記事を削除すること。
  3. 文書の交付及び掲示
    要旨:会社が、平成28年8月14日に本件サイトに組合を誹謗中傷したり、組合員に個別交渉を求める内容の記事を記載したこと及び退職者に同月17日付書面を送付したことはいずれも不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないよう留意すること。
  4. 前2項の履行報告

4 判断の要旨

  1. 争点1)(本件サイトに本件記事を記載したことが支配介入にあたるか。)について
    1. 本件記事の組合に関する記載には、「ようです」との語句があるものの、本件記事を閲覧した者に対し、このような事実があることを強く印象付けようとするものであり、組合が金銭を目的に違法行為を頻繁に行っているという印象を与えるものである。
      本件記事の記載のうち、「『建造物侵入、暴行・傷害』で逮捕者がでた」との記載について、会社が根拠としたインターネット上の記事は、ジャーナリストによる記名記事ではあるが、内容の正確性を判断する材料はない上に、同記事自体に建造物侵入、暴行・傷害の容疑で家宅捜索された旨の記載はあるが、逮捕者が出た旨の記載はない。また、「組合員に会社の個人情報、機密事項、社員の住所・電話番号、取引先の情報等を盗ませそこにユニオンがビラをまき、それを会社が咎めて懲戒解雇処分にすると、不当解雇だといって退職和解金を請求するということが頻繁に行われている」との記載について、会社が根拠としたインターネット掲示板「2ちゃんねる」に掲載された匿名の書き込みは、誰が何を根拠に書いているのかも分からないものであって信用するに足りるものではないことは明らかである。
      したがって、本件記事の上記記載内容が真実であったと認めることはできず、他に上記記事の記載内容が真実であると信じる相当の事由があったともいえない。
      以上からすれば、会社は、組合が金銭を目的に違法行為を頻繁に行っていると印象付けようとしたことは明らかであるから、本件記事の上記記載は、組合に対する誹謗中傷であるといわざるを得ない。
    2. さらに、会社は、「相手方とはとことん争うつもりですが、こういった争いは2年以上かかってしまうので、元従業員の方のJJK手続きを早期に終了させたいので、X(組合支部長)を経由せずに直接当方に連絡をお願いします。」と記載している。「元従業員の方」とは、退職者を指すところ、上記記載は、会社が、組合を通して本件脱退手続の実施を求めている退職者に対し、会社と組合との紛争が長期化することを宣言した上で、早期手続の終了を口実に組合と退職者の切り離しを図り、組合活動の弱体化を図るものであると認められる。
    3. 本件記事は、労使関係が急速に悪化していく時期に、組合を誹謗中傷した上で、早期解決を口実に退職者に対して直接会社に連絡することを求め、組合と退職者を切り離し、組合の弱体化を図ろうとするものであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。
  2. 争点2)(8月17日付け書面を退職者に送付したことが支配介入にあたるか。)
    1. 上記行為は、退職者の窓口となって本件脱退手続の履行を求めていた組合を通さず、退職者に対して個別交渉を求めたものであるから、組合と退職者との切り離しを図り、組合活動の弱体化を図るものであるといえる。
    2. 8月17日付書面の上記記載は、8月17日付書面を閲覧した者に対し、組合が違法行為を頻繁に行っていると印象付け、組合を誹謗中傷するものであり、組合への参加を躊躇させるものであるといえる。
    3. 8月17日付書面は、組合を誹謗中傷した上で、退職者に対して個別交渉を求めるものであり、退職者の本件脱退手続の早期実現を図ろうとしていた組合と退職者とを切り離し、組合の弱体化を図ろうとするものであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成28年2月10日
  2. 公益委員会議の合議
    平成29年3月21日
  3. 命令交付日
    平成29年4月27日

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