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報道発表資料  2017年04月12日  労働委員会事務局

【別紙】

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 被申立人会社は、主に化学、薬学、医学の大学教科書の出版を業とする株式会社である。会社の従業員数は、本件申立時、正規従業員6名、アルバイト4名、嘱託4名の計14名である。
  2. 申立人X1は、出版産業で働く労働者で組織された産業別労働組合であり、本件申立時、103組合が加盟し、組織人員は、約5,600名である。
  3. 申立人X2(以下「組合」という。)は、会社の従業員によって、昭和49年3月に結成され、X1に加盟している労働組合であり、会社の正規従業員4名と、会社を定年退職後、継続雇用について係争中の者2名との計6名である。

2 事件の概要

  1. 会社には定期昇給の制度がないところ、会社は、平成11年以降、組合の春闘賃上げ要求に対し、賃上げなしとのいわゆるゼロ回答を繰り返しているため、11年以降、組合員の賃金は全く上がっていない。また、会社は、10年以降、一時金の支給額を切り下げ、16年以降は、組合の夏季及び冬季一時金要求に対し、「30万円±20万円」との回答を繰り返している。組合は、団体交渉において、会社に対し、財務諸表を開示するなどして会社回答の根拠を説明するよう求めたが、会社は、組合の資料開示要求には応じていない。
    会社は、26年の春闘賃上げ要求、同年夏季及び冬季一時金を議題とする団体交渉においても、従前と同様の対応を行っている。
    また、24年から26年までの夏季及び冬季一時金について、組合と会社との間で妥結しておらず、組合員にはこれら6回分の一時金が支給されていない。一方、会社は、非組合員には、これらの各一時金を支給している。
  2. 会社は、18年に、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき定年後の継続雇用制度を導入したが、その内容は、定年退職者が会社の子会社(人材派遣会社)で再雇用され、賃金は時給1,000円程度であり、埼玉県の倉庫に派遣されて書籍等の物流作業に従事するというものであった。組合は、会社に対し、定年退職者を会社本社で従前の業務で継続雇用するよう、継続雇用制度の改善を求めて、会社に団体交渉等を申し入れたが、会社は、組合の要求に応じていない。
    会社の継続雇用制度導入後、この制度に基づいて継続雇用された従業員はおらず、定年を迎えた組合員は、会社の継続雇用制度に基づく継続雇用では、職務内容が定年退職前と著しく異なっていること等から、継続雇用の申込みそのものを断念した者が多い。一方、会社は、18年4月から27年9月までの間に定年退職日を迎えた従業員のうち、非組合員で管理職であった従業員3名に対しては、取締役への就任を打診し、そのうち2名は取締役に就任して本社で従前と同様の業務に従事している。
    26年3月3日、会社は、定年退職日が同年9月22日である組合員Aに対し、継続雇用の労働条件等を通知し、継続雇用を希望する場合は申込みの書面を提出するよう求めた。これに対し、Aは、会社に意見書を提出し、定年後も会社で働く意思はあるが、本社での従前業務での就労を希望すること、会社の継続雇用制度に基づく申込みはしないが、団体交渉で対応するよう要請すること等を伝えた。
    組合は、会社に対し、Aの継続雇用を含む会社の継続雇用制度の内容と運用の改善について団体交渉を申し入れ、団体交渉が開催されたが、会社は、会社の継続雇用制度を変える考えはない、Aが会社の制度に基づく申込みをすれば、その範囲内で労働条件の交渉には応ずるが、申込みがなければ応じられない等と述べ、それ以上の交渉には応じなかった。
    9月22日、Aは、会社を定年退職し、再雇用はされなかった。
  3. 本件は、1)組合の申し入れた、26年春闘賃上げ要求、同年夏季及び冬季一時金を議題とする団体交渉に対する会社の対応は、団体交渉拒否に当たるか否か、2)会社が、24年から26年までの夏季及び冬季一時金について、非組合員に支給しながら、組合員に対して、未妥結を理由に不支給としていることは、組合運営に対する支配介入に当たるか否か、3)会社が、Aを26年9月22日の定年後、再雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当たるか否か、4)組合の申し入れた、Aの定年後の継続雇用を議題とする団体交渉に対する会社の対応は、団体交渉拒否に当たるか否かが、それぞれ争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 組合が申し入れた、平成26年春闘賃上げ要求、同年夏季一時金及び同年冬季一時金を議題とする団体交渉に、財務資料(少なくとも直近3年分の貸借対照表、損益計算書等)を提示して、速やかかつ誠実に応じること。
  2. 24年から26年までの夏季及び冬季一時金について、組合との妥結に至るまでの間の仮払として、組合員に対し、各賞与につき、それぞれ10万円を支払うこと。
  3. 組合員Aを26年9月23日以降も継続雇用したものとして取り扱い、その労働条件については、会社の従前の提案に固執することなく、次項の団体交渉を行うなどして、本命令書交付の日から6か月以内に、適切に定めること。
  4. 組合が申し入れた継続雇用制度の内容と運用の改善についての団体交渉に誠実に応じること。
  5. 文書の交付
    要旨:1)26年春闘賃上げ要求、同年夏季一時金及び同年冬季一時金を議題とする団体交渉に対する当社の対応、2)24年から26年までの夏季及び冬季一時金を組合員に対して未妥結を理由に不支給としていること、3)組合員Aを26年9月22日の定年退職後、再雇用しなかったこと、及び4)組合の申し入れた、組合員Aの定年退職後の継続雇用を議題とする団体交渉に対する当社の対応は、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  6. 第2項、第3項及び前項の履行報告

4 判断の要旨

  1. X1の申立適格について
    会社は、X1が本件団体交渉の当事者ではないことから、X1は申立適格を有しないと主張するが、傘下の労働組合に関する問題について、上部団体が申立適格を有することは明らかであるから、会社の上記主張は採用することができない。
  2. 26年春闘賃上げ要求、同年夏季及び冬季一時金に係る団体交渉について
    会社は、自らの回答を根拠付ける資料を開示した上で、賃上げできない理由や一時金の回答額の根拠を誠実に説明し、組合との交渉に真摯に臨むことが強く求められたというべきである。しかし、会社は、26年春闘賃上げ要求、同年夏季及び冬季一時金に係る団体交渉において、従前どおりの回答と従前どおりの説明を行うだけであり、財務資料の開示に応ぜず、回答を変えるつもりはない、付け加えることはない、これ以上の説明は必要ない等と繰り返し、回答の具体的な根拠を示して説明したり、交渉によって妥協点を見いだそうとする姿勢がみられなかった。したがって、会社が、自らの回答を根拠付ける財務資料等を提示して誠実に対応したということはできず、会社の対応は、不誠実な団体交渉に該当する。
  3. 組合員に対する24年から26年までの夏季及び冬季一時金の不支給について
    1. 申立期間について
      会社は、不当労働行為の救済申立ては、行為の日から1年を経過した事件については申立てができないのであるから、この申立ては、失当であると主張する。しかし、24年から26年までの夏季及び冬季一時金については、いずれも組合と会社との間で妥結に至っておらず、組合員の一時金についての決定がなされない状態が本件申立時まで継続しており、その結果として、組合員に対する一時金の不支給という不作為が本件申立時まで継続していたのであるから、これらの各一時金の不支給に係る申立ては、申立期間を徒過しておらず、適法な申立てである。
    2. 組合員に対する夏季及び冬季一時金の不支給について
      本件各一時金について妥結に至っていないのは、会社が、団体交渉において、「30万円±20万円(会社査定)」との同じ回答を繰り返した上、回答を裏付ける財務資料等の具体的な根拠を示さないという不誠実な対応を行ったことが主な要因であるといえる。
      しかも、会社は、未妥結であるにもかかわらず、一時金に係る団体交渉を3回で打ち切って、その後の組合の団体交渉申入れに応じていない。そして、このように、会社が、一時金交渉の妥結に向けた努力をせず、未妥結の一時金に係る団体交渉を拒否して、組合員への一時金不支給の状態を放置した結果、非組合員には一時金を支給しながら、組合員には、組合との未妥結を理由に支給していない一時金が6回分も累積しているのである。
      このような会社の行為は、一時金交渉の未妥結の状態を放置して組合の交渉力を阻害するとともに、非組合員には一時金を支給しながら、組合員にのみ一時金が支給されない状態を長期化させて、組合らの弱体化を企図した支配介入に該当する。
  4. Aを定年後再雇用しなかったことについて
    定年を迎えるに当たり、継続雇用制度に基づく継続雇用の労働条件を提案された組合員と、取締役就任を打診された非組合員である管理職との間には、定年退職後の取扱い(就労場所、賃金、業務内容等)に大きな差異があり、その結果、組合員は、全員が定年後の継続雇用を断念する一方、非組合員である管理職は、希望者全員が定年後も好条件で本社における従前の業務に従事しているのであるから、管理職と非管理職との間に一般的に考えられる職務遂行能力や職責の違いを考慮してもなお、この差異に合理性を認めることは困難であり、組合員は、著しく不利益な取扱いを受けていたということができる。
    会社と組合との労使関係は当初から良好とはいえず、労使間の長引く対立があったという事情も踏まえれば、会社が、定年を迎えた組合員に対し、継続雇用の労働条件として、非組合員である管理職と対比して大幅に低下した労働条件(就労場所、賃金、業務内容等)を提案したのは、組合ら及び組合員を嫌悪し、Aを含む組合員に対し、継続雇用の申込み、ひいては定年退職後の継続雇用を断念させることを企図したものといわざるを得ない。
    したがって、会社がAに対し、上記の提案を行った上、同人を26年9月22日の定年後、再雇用しなかったことは、同人が組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合員の継続雇用を妨げることによって組合の弱体化を企図した支配介入にも該当する。
  5. 定年後の継続雇用に係る団体交渉について
    定年後の継続雇用制度の内容は、組合員の労働条件そのものであり、明らかに義務的団交事項に該当するものであるから、組合が、継続雇用制度の内容と運用の改善を要求し、現行制度とは両立しない提案を行ったとしても、会社は、現行制度の改善や組合提案の受入れが可能かどうかを真摯に検討して団体交渉に誠実に応じなければならないのであり、継続雇用制度の改善要求に応じないとする会社の対応に合理性は認められない。
    また、Aの再雇用についても義務的団交事項に該当することが明らかであることからすれば、定年後の雇用継続制度の改善と、Aの再雇用の問題とを切り離すことに合理性が認められるとはいえず、組合の要求を、継続雇用制度の改善の要求とAの再雇用の問題とに切り離して捉えた会社の対応についても、合理性を認めることはできない。
    会社は、継続雇用制度の内容と運用の改善に係る団体交渉に応ずべきであったにもかかわらず、実質的には団体交渉に応じておらず、会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日 平成26年12月25日
  2. 公益委員会議の合議 平成28年8月23日
  3. 命令書交付日 平成29年4月12日

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