ここから本文です。

報道発表資料  2017年01月31日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、業種を問わず東京都三多摩地区を中心とする企業に雇用される労働者で構成されるいわゆる合同労組である。本件申立時の組合員は約200名である。
  2. 被申立人会社は、昭和41年に創業し、クリーニング業及び不動産賃貸業を営む株式会社である。26年9月20日現在の従業員数は、正社員20名、配送の契約社員8名、パート社員428名である。

2 事件の概要

組合は、26年7月、会社に分会結成を通知した。会社は、組合ニュースの配布等を認めない旨を通告したが、組合が配布等を続けたため、これを回収するようになった。
労使間では団体交渉が行われていたが、9月1日、組合が当委員会に不当労働行為救済申立てを行ったところ、会社は、マネージャー職、工場長職にそれぞれ就いている分会長X1、副分会長X2が、労働組合法第2条ただし書第1号の「使用者の利益を代表する者の参加」に当たるものと考えられるとし、同月16日付けでの両人の配置転換(以下「本件配置転換」という。)を行った。
本件は、以下の点がそれぞれ不当労働行為に該当するか否かについて争われた事案である。

  1. 会社が組合ニュースの配布等を認めず回収したこと。
  2. 会社のY1マネージャー又はY2マネージャーが、26年8月1日に組合員X3に対し、組合の活動等に係る発言を行ったとすればその発言
  3. 会社が本件配置転換を行ったこと。
  4. 会社が組合に対し、X1及びX2の組合員資格について、疑義をただし、見解を求めたこと。
  5. 当該配置転換について団体交渉を求めた組合に対し、会社が配置転換後の9月18日の団体交渉で交渉を行うとしたこと及び団体交渉に代表取締役が出席しないこと。
  6. 団体交渉で議題となっていた開店準備及び閉店後作業について、会社が通達を発出したこと。

3 主文

  1. 会社は、組合が休憩時間等に配布し、又は郵送した組合ニュースについて、これを回収するなどの妨害をしてはならない。
  2. 会社は、X1及びX2に対して行った26年9月16日付配置転換命令をなかったものとして取り扱い、X1に対し、同日から原職に復帰するまでの間、原職に従事した場合に得られたであろう賃金相当額と既支払額との差額を支払わなければならない。
  3. 文書の交付及び掲示
    要旨:組合ニュースを配布し、又は郵送することを一切認めずこれらを回収したこと、X1及びX2を配置転換したこと、開店準備及び閉店後作業が労働時間に当たるか否かが団体交渉で議題となっていた中で、店舗に対し「業務時間の厳守について」を発出したこと等が不当労働行為と認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  4. 前2項の履行報告
  5. その余の申立ての棄却

4 判断の要旨

  1. 組合が組合ニュースを工場内で配布し、又は店舗に郵送したことに対し、会社が施設管理権を理由として、これを認めず回収したことが、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点1)
    1. 組合ニュースの配布は、会社の許可を得ずに行われたものであるが、その発行は、約7か月の間に5号までという程度の頻度であったこと、工場での配布については、休憩時間や作業終了後にごく短時間で行うよう配慮し、また、工場での業務に従事した経験のあるX1を含む分会員によりなされたこと、店舗では、従業員が顧客対応をしていないのを確認した上で短時間に手渡しされ、又は郵送されていたことからすると、実質的にみて、業務上の支障が生ずるおそれがあったとまではいえない。
    2. 一方で、会社は、業務上の支障を理由に組合ニュースの配布を認められないとして、スタッフに宛てて郵送されてきた組合ニュースを受領しないよう指示するにとどまらず、あえて回収まで行うよう指示した。また、会社は、従業員が1名で勤務する店舗でその所定労働時間が6時間を超える場合、来店客のいない時間帯に随時休憩を取得するよう指示しているが、法定された休憩時間の取得についてかかる指導をしておきながら、来店客のいない時間に組合ニュースを手交することをとりわけ問題視するのも一貫性を欠くものといえる。
    3. したがって、会社が、実質的にみて、業務上の支障が生ずるおそれがないにもかかわらず、組合ニュースの配布や郵送を一切認めずこれらの回収を行ったことは、組合ニュースが従業員の手に渡ることを妨害する意図で行ったものとみざるを得ず、これは支配介入に当たる。
  2. Y1又はY2が、26年8月1日にX3に対し、組合の活動等に係る発言を行ったか否か。行ったとすれば、その発言が組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点2)
    1. Y1がX3に対し、組合ニュースに目を通してどう思ったかと聞いたことについては当事者間に争いがないが、組合の主張するY1及びY2のその余の発言については、その事実を認めるに足りる疎明がない。そして、Y1が組合ニュースに目を通してどう思ったかを聞いたことのみをもって、Y1がX3に対し組合に加入しないよう働きかけたとまではいえないし、この発言が会社の意を体したものであるということもできない。
    2. したがって、Y1及びY2が、8月1日にX3に対して支配介入に当たる発言をしたとはいえない。
  3. 本件配置転換が、組合員であること若しくは労働委員会に対して不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とした不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点3)
    1. ア 工場長及びマネージャーの職務権限については、そもそも、会社にはこれらの職務権限について定めた規程が存在せず、慣行によっていた。
      工場長の職務権限としては、物品の購入や機械の修理も、高額な予算措置が必要なもの以外のいわば日常の業務の運営に伴う程度のものであった。従業員の採用についても、自らが勤める工場のパート社員及び契約社員の採用については一定の権限があるが、それは欠員が生じた際に、会社で決まっていた最低賃金の条件で補充するだけのものであった。また、正社員の採用については、最終的な採否はY3専務が決定していたとみるべきである。
      マネージャーの職務権限としては、担当エリアの店舗の運営管理等を行うこととされていたが、マネージャーに認められていたパート社員の採用権限についても、認められているのは従業員に欠員が出た時の面接の責任者という程度のものであった。
      また、会社は、X1及びX2がそれぞれ出席している工場長会議やマネージャー会議では、機密情報も共有され、事業戦略の討議、出店や閉鎖の決定等を行っていると主張するが、会社が主張するような高度な経営方針等に係る実質的な協議がなされていたことを窺わせる事情は認められない。
      そして、X2には固定残業代が支給され、X1の時給は他のパート社員より高額とはいえ、950円であった。
      これらの事情に照らすと、工場長やマネージャーがある程度の監督的権限を有していることは否定できないとしても、上記の程度の職務権限や工場長会議及びマネージャー会議の実態をもってしては、これらの職務が組合員資格と両立し得ないものとはいえないのであるから、X1及びX2が労働組合法第2条ただし書第1号に定める「使用者の利益を代表する者」に当たるとはいえず、会社が主張する本件配置転換の理由に合理性を認めることはできない。
      イ 会社は、本件配置転換について、不利益な点がないと主張するが、X1には本件配置転換による直接的な経済的不利益があったといわざるを得ず、マネージャーとしての職を剥奪されたことも不利益な取扱いに当たる。また、X2が工場長としての職を剥奪されたことも不利益な取扱いに当たる。
    2. 当時の労使関係について
      組合の公然化から2か月足らずの間に、労使間の対立は急速に先鋭化していたことが窺えるところ、会社は、本件申立ての直後、本件配置転換を実施した。
    3. 上記1.及び2.からすると、本件配置転換については、労使間の対立が先鋭化する中で、不当労働行為救済申立てを行うという組合の意思が書面や団体交渉の中で示され、実際に申立てがなされたことが決定的な契機となって、会社が本件配置転換を強行したとみるのが相当であるから、会社が本件配置転換を命じたことは、X1及びX2が組合員であること及び本件申立てがなされたことを理由とする不利益取扱いに当たるとともに、支配介入にも当たる。
  4. 会社が組合に対し、X1及びX2の組合員資格について、疑義をただし、見解を求めたことが、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点4)
    労働組合の組合員の範囲は、本来、労働組合が自主的に決定する事柄であることからすれば、会社には、一層慎重な対応が求められる。
    それにもかかわらず、会社は、組合からの8月27日付けの回答を受けた後、組合と特に意見交換等をすることもなく、組合員が工場長やマネージャーの地位に就くべきではないという自己の見解を本件配置転換によって直ちに形に表した。
    そうすると、この質問書は、単に組合の見解を求めたものではなく、会社が、組合の回答のいかんによらず、本件配置転換を行う前提で、X1及びX2の組合員資格に係る自己の見解を実質的に押し付けたものといえ、暗に、X1及びX2の組合脱退を求めたものとみられてもやむを得ないものであった。
    したがって、会社が、組合に対し、X1及びX2の組合員資格について、疑義をただし、見解を求めたことは支配介入に当たる。
  5. 本件配置転換について、会社が配置転換後の9月18日の団体交渉で交渉を行うとしたことが、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。また、団体交渉に代表取締役が出席しないことが、不誠実な団体交渉に当たるか否か(争点5)
    1. Y3専務は、組合が団体交渉の開催を求めた時点で、既に次回団体交渉の予定日が目前に迫っている状況において、その団体交渉で話をすると答えているのであるから、会社が、組合の求めに応ぜず次回団体交渉で協議をするよう回答したことをもって、正当な理由のない団体交渉の拒否であるということはできない。
    2. 団体交渉には、必ずしも代表権限を有する者の出席を要せず、実質的な話合いがなされる限り、交渉権限の委任を受けた者が出席すれば足りる。
      Y4社長は団体交渉に出席していなかったが、会社は、第2回団体交渉では、冒頭で第1回団体交渉の際に組合から要求のあった雇用契約書等のひな形を提示し、また、8月分からは毎月末日に時間外割増賃金を支払う旨を約し、労使間で一定の合意形成ができたのであるから、会社側の交渉員に交渉権限が与えられていなかったとみることはできない。
      したがって、本件団体交渉に代表取締役が出席していなかったことは、不誠実な団体交渉には当たらない。
  6. 開店準備及び閉店後作業が労働時間に当たるか否かが団体交渉で議題となっていたにもかかわらず、会社が26年8月26日付「業務時間の厳守について」を店舗に対し発出したことが、不誠実な団体交渉又は組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点6)
    団体交渉の記録によれば、依然として、労使間の議論、交渉が尽くされたとはいえないものであったのだから、8月26日付けで会社が通知を発出した段階で引き続き労使間での協議が求められるものであった。
    しかも、通知の後に行われた団体交渉において、組合がこの問題を取り上げると、会社は、「もうそれは結構です。」、「とにかく通達どおりにやっていただければ、それで結構です。」などと述べ、既に議論が決着したかのように対応している。
    以上からすれば、会社が8月26日付「業務時間の厳守について」を発出したことは、組合との議論、交渉が十分に尽くされるのを待たずに、会社の方針に沿った運用を強行しようとするものであり、組合との交渉を軽視し、又は無視するものであるといわざるを得ず、よって、不誠実な団体交渉及び支配介入に当たる。

5 命令交付までの経過

  1. 申立年月日 平成26年9月1日
  2. 公益委員会議の合議 平成28年12月6日
  3. 命令交付日 平成29年1月31日

ページの先頭へ戻る