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報道発表資料  2017年01月30日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 被申立人市は、肩書地に本庁舎を置く地方公共団体で、松戸市病院事業の設置等に関する条例を制定して病院事業を行っており、同条例により財務規定等を除く地方公営企業法の規定の全部を病院事業に適用している。
  2. 申立人組合は、肩書地に事務所を置き、関東地方における各種産業に従事する労働者をもって組織された労働組合であり、本件申立時の組合員数は、約70名である。
  3. 申立人分会は、市立病院で働く職員をもって結成された労働組合である。
    なお、市立病院には、分会とは別に職員組合が存在し、その組合員数は、25年9月1日時点で約400名である。
  4. Xは、市立病院で勤務する看護師で、17年から外科外来で勤務していた。

2 事件の概要

  1. 病院は、平成25年1月29日及び5月8日の団体交渉で、組合らに対し、市立病院の看護局看護科小児科病棟への2交代勤務の導入を提案した。組合らは、病院側が現場に精通した看護局職員の団体交渉への出席を要求したものの、5月23日の本件団体交渉に看護局職員は出席せず、交渉は合意に至らなかった。一方、病院は、多数組合である別組合とは、5月1日に合意に達した。その後、病院は6月22日から2交代勤務を試行した。
  2. 26年6月23日、市立病院へ受診に来た患者の家族から、外科外来の看護師の対応について苦情があった。看護局長Yは、この対応に当たった、分会の組合員であるXに対し、7月1日に本件面談を行った。その中で、Xは苦情の事実を認めたため、病院は、Xに中央採血室への本件配転1を命じた。その後、Xは体調を崩して病気休暇を取得し、10月22日、外科外来に復帰した。11月12日、病院は、Xに外来処置室への本件配転2を命じた。
    本件は、1)本件団体交渉における病院の対応が、不誠実な団体交渉及び組合らの運営に対する支配介入に、2)本件面談、3)本件配転1及び4)本件配転2が、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか、がそれぞれ争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 文書の交付
    要旨:本件団体交渉における市の対応が、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  2. 前項の履行報告
  3. その余の申立ての棄却

4 判断の要旨

(1)本件団体交渉について

  1. 不誠実な対応に当たるかについて
    ア 組合らは、1月29日及び5月8日の団体交渉での病院の提案を受け、まずは3交代でも働き続けられるような体制にしないと2交代はできないなどとして、病院の提案に反対し、質問書で現状の勤務体制や付添いの実態などを質問した。こうしたことからすると、組合らは、まずは現状の実態や課題を把握した上で、2交代勤務導入についての協議を行おうとしていたとみられ、病棟での現場の実態を最も把握している看護局職員の出席を求めたものと考えられる。
    イ しかし、本件団体交渉の当日、看護局職員の出席はなく、病院は、現状の勤務体制について、看護基準、病床数、看護師数、定数、夜勤回数等についてはその数値を回答しているが、2交代勤務になったら夜勤は何回になるのか、との組合らの質問に明確な回答はせず、平均病床(患者)数のうち付添いは何床かとの質問にも、病院は誰も発言しなかった。また、病院は、付添いの実態については、看護行為は行っていないと回答したものの、組合らから親が看護行為を行っているのを現認した旨指摘されても、沈黙するのみで何も答えず、事実関係を確認する等、組合らの指摘に対する対応を示すことはなかった。
    ウ 団体交渉は、事前の質問に一通りの回答をすればいいというものではなく、それを基に更に踏み混んだ議論や意見交換を行い、合意に向けた交渉を尽くす必要があるが、上記イの病院の対応をみると、病院がそのような交渉ができる準備や態勢を整えて団体交渉に臨んだとは認められない。
    エ 病院は、多数組合である職員組合と既に合意しており、その合意した内容で6月1日から試行するとの姿勢で組合らとの交渉に臨んだのであり、試行まで間もなく、団体交渉を重ねる余裕もないことからすれば、本件団体交渉で組合らの理解を得るべく、現場に精通した看護局職員を出席させるなどして、十分な説明を行える態勢で臨むことが求められていたといえる。
    オ 一方、団体交渉における組合らの態度は敵対的で、病院の経営に対する批判的発言を行い、時には挑発的な発言もみられる。組合らのこうした敵対的態度が、病院の合意形成に向けての意欲を削いでいる面もあり、組合らにも自省すべきところはある。しかしそうであるとしても、このことが2交代勤務導入を提案した側である病院が沈黙を続けることを正当化することにはならない。
    カ 組合らが協議を尽くすために延期を求めても、病院は、延期ができない理由すら示さずに、ただ6月1日試行を繰り返すのみであったことからすると、結局病院は2交代勤務の実施に先立ち団体交渉を行えばよいという姿勢であったとみざるを得ず、組合らが「形式団交」と捉えたことにも相応の理由があるというべきである。
    キ 以上からすれば、病院には、自らの提案について、組合らの納得を得るような説明を尽くそうとする姿勢はなかったといわざるを得ず、本件団体交渉における病院の対応は不誠実であるといわざるを得ない。
  2. 支配介入に当たるかについて
    病院は、組合らとの間で団体交渉の出席者について覚書を締結しているが、2交代勤務導入が目前に迫った本件団体交渉において、組合らが切に求めた看護局職員の出席に応じないだけでなく、出席させない理由も本件団体交渉で説明していない。
    病院は、2交代勤務導入について、組合らと職員組合の双方に対し、同時期に提案を行っているものの、5月に提案した2交代勤務導入について、職員組合と合意した内容で6月1日から試行するとの姿勢を堅持して延期に応じず、しかも本件団体交渉における病院の対応は、上記判断(1)のとおり、説明や説得を十分に尽くさず、2交代勤務の実施に先立って団体交渉を実施すればよいというものであったのであるから、結局、病院は、多数組合である職員組合との合意さえ得られれば、組合らの理解を得られなくてもよいとの姿勢で、組合らとの団体交渉を軽視していたとみざるを得ない。
    したがって、本件団体交渉における病院の対応は、組合らの運営に対する支配介入にも当たるといわざるを得ない。

(2) 本件面談について

  1. 病院は、組合らがXを組合員であると明らかにした26年9月19日まで同人を組合員として認識していなかったと主張する。
    Xは、9年から2年間、分会長を務め、15年及び17年にはXの配転問題などが労使紛争に発展し、当委員会にあっせん申請された経緯や、Xの配転問題を協議した8月11日の団体交渉の中で、病院はXが組合員であるか否かを問いただしていないことからすると、病院が9月19日に至るまでXを組合員として認識していなかったとすることに疑問の余地がないわけではない。
    しかしながら、少なくとも近時においてXが活発な組合活動を行っていた形跡はなく、26年7月1日までの間、Xが団体交渉に出席した事実も認められない。
  2. 本件面談は、26年6月23日に、外科外来に通院している患者の家族より苦情を受けたことから、当該患者家族の対応を行ったXに対し病院が事実確認を行ったものであり、病院がこのような対応を執ることに何ら不自然な点はなく、面談の内容や態様も、事実確認の域を超えるものではなく、組合らが主張するような、Xに対し大きな苦痛、恐怖、不安を与えるような言動があった事実は認められない。
    したがって、本件面談は、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、組合の運営に対する支配介入に当たるということもできない。

(3)本件配転1について

  1. 本件配転1は、本件面談において、Xが本件苦情の事実を認めた後にXに打診したものであり、当該患者の予約が26年8月上旬に入っていたことから、病院が、当該患者とXが接触し新たなトラブルが生じないよう、本件配転1を命じたことには、やむを得ない事情があったといえる。
  2. 病院は、25年12月20日の面談でXに注意指導を行っていたのに改善がみられなかったことも理由に挙げているところ、この面談は、医師等から、Xを外科外来から配転してほしいとの要望書がY看護局長に提出されたことを受けて行われ、Y看護局長は、Xに対し、良好なコミュニケーションがとれていないことを指摘し、改善を求めて注意、指導し、これに対するXの「改めるべきところがあれば改める。」との発言を受けて、同人の外科からの配転を思いとどまったとの経緯がある。こうした経緯に加えて、25年12月の要望書の後も、医師からのXを配転してほしいとの要望は引き続き出されていたことも踏まえると、本件面談の際にY看護局長が、医師や看護師との調整を余りしなくてよいなどとして中央採血室への配転を打診したこともやむを得ない判断であったとみられ、こうした経緯をみると、本件配転1は業務上の必要性に基づいて行ったものといえる。
  3. 以上要するに、前記(2)1. のとおり、Xが活発に組合活動をしていたとは認められず、他方、病院は業務上の必要性に基づいて本件配転1を行ったといえるから、本件配転1が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
  4. 組合らは、本件配転1が組合らの運営に対する支配介入に当たるとも主張するが、前記(2)1. のとおり、Xが活発な組合活動を行っていたとは認められず、本件配転1は、業務上の必要性に基づいて行ったものであることに照らせば、本件配転1は組合らの運営に対する支配介入にも当たらない。

(4) 本件配転2について

  1. 本件配転2に至る経緯をみると、まず、医師等からY看護局長に提出された要望書(前記(3)2. )には、Xと折り合いが悪く、配転を希望した看護師らが多数いるなどとの記載がある。
    また、Xが外科外来に復帰してから、同職場で勤務していた看護師らが、Xと同じ職場では働けず、担当業務を変更してほしいとの希望が出された。その後、外科外来を担当する職員の人員確保や応援体制について話し合うため、カンファレンスが開催されたが、外科外来に配属されることに反対する発言が多数なされた。
    こうした事実からすると、本件配転2が命じられた当時、外科外来では医師や看護師とXとの間の確執が相当深刻化していたことが窺われ、外科外来の体制をいかに恒常的に確保するかは、病院における喫緊の課題であったということができる。
    加えて、25年12月の要望書の後も、医師からのXを配転してほしいとの要望は引き続き出されていたことからすると、病院が、Xを外科外来から配転することを決めたことにはやむを得ない事情があったというべきである。そして、病院は、本件面談で、Xが中央採血室より外来処置室を希望していたことを踏まえ、本件配転2を命じたものである。
  2. 以上の事実に照らせば、病院は業務上の必要性に基づいて本件配転2を行ったということができ、本件配転2は、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。
  3. 組合らは、本件配転2が組合らの運営に対する支配介入に当たるとも主張するが、前記(2)1. のとおり、Xが活発な組合活動を行っていたとは認められず、本件配転2は、業務上の必要性に基づいて行ったものであることに照らせば、本件配転2は、組合らの運営に対する支配介入にも当たらない。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成25年9月3日
  2. 公益委員会議の合議
    平成28年12月6日
  3. 命令書交付日
    平成29年1月30日

※「本件配転」の数字の正しい表記はローマ数字です。

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