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報道発表資料  2016年11月09日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 被申立人法人は、肩書地に法人本部を置き、淑徳大学(以下「大学」という。)、淑徳大学短期大学部、淑徳巣鴨高等学校、淑徳巣鴨中学校、淑徳高等学校、淑徳中学校、淑徳与野高等学校、淑徳与野中学校、淑徳小学校、淑徳幼稚園、淑徳与野幼稚園、淑徳日本語学校及び蘇州淑徳語言学校を設置運営する学校法人である。本件申立時の法人における教職員数は、587名である。
    大学は、総合福祉学部、コミュニティ政策学部、看護栄養学部、国際コミュニケーション学部、経営学部、教育学部及び人文学部を有する四年制大学であり、千葉県千葉市に千葉キャンパスと千葉第2キャンパス、埼玉県入間郡三芳町に埼玉キャンパス、東京都板橋区に東京キャンパスを有する。なお、国際コミュニケーション学部は、埼玉キャンパスに設けられている。
  2. 申立人組合は、法人に雇用された大学の教職員により平成27年3月23日に結成された労働組合であり、申立外東京地区私立大学教職員組合連合(以下「東京私大教連」という。)に加盟している。本件申立時の組合員数は少なくとも3名である。

2 事件の概要

(1) 27年3月26日、組合は、法人に対し、組合結成を通知するとともに、大学国際コミュニケーション学部廃止(29年3月予定)後の組合員の雇用の維持等を議題とし、大学埼玉キャンパス構内(以下「学内」という。)を交渉場所とし、東京私大教連の役員が出席する団体交渉を申し入れた。

(2) 法人は、組合に対し、交渉時間は1時間、交渉場所は大学埼玉キャンパス外(以下「学外」という。)の志木市民会館、出席者は労使同数程度、団体交渉での録音、録画は禁止し、また、今後の法人と組合間の連絡は文書を郵送する方法に限定する旨の27年4月1日付「団交申入書」を交付した。

(3) 4月16日、組合がこれに反発すると、同月22日、法人は、団体交渉ルールに関する組合の要求は受け入れられない旨を通知し、同月30日に予定されていた団体交渉は開催されなかった。また、4月22日付けで、法人は、組合に対し、学校施設は教育の場であり、労働組合活動等の場所ではない、法人と組合間のやり取りは文書郵送に限定する、組合員が就業時間中に組合活動を行うことは、「学校法人大乗淑徳学園就業規則」(以下「就業規則」という。)において禁じられているので十分留意するよう通知した。

(4) 5月9日、組合は、法人に対し、組合の見解を述べて、改めて団体交渉を申し入れたが、同月14日、法人は、団体交渉ルールに関する組合の要求は受け入れられない旨を通知し、団体交渉は開催されていない。また、5月14日付けで、法人は、組合が大学埼玉キャンパスの住所を自らの住所地としていることに対し、大学は、組合事務所貸与等の便宜供与を行っていないので、同キャンパスの住所には組合は存在しないとして、今後はこのような虚偽の住所表示をしないよう警告した。

(5) 東京私大教連が、大学埼玉キャンパスの住所を受取人住所とし、組合を受取人として送付した郵便物を、5月21日、法人は、東京私大教連に送り返した。

(6) 5月26日、組合は、法人に対し、以前に法人に提出した4月16日付「団体交渉申し入れ書(その2)」及び5月9日付「団体交渉申し入れ書(その3)」の返却又は写しの交付を依頼したが、法人は、この依頼を断り、組合に対し、必要ならば、法人本部宛てに、郵送にてその旨を要望するよう述べた。

(7) 組合は、法人に、6月2日付「抗議文」を配達証明郵便にて送付したが、法人は、大学埼玉キャンパスの住所を受取人住所とし、組合を受取人として送付された「郵便物等配達証明書」はがき(前記(5)の郵便物と併せて「組合宛て郵便物」という。)を、組合委員長の自宅に、着払の宅配便で転送した。

(8) 本件は、1)組合は、労働組合法上の法適合組合に当たるか否か、2)法人が、27年3月26日付け及び5月9日付けで組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、並びに、3)法人が、組合に対し、就業時間中及び学園施設内の組合活動を認めないなどと通知したこと、4)法人が、法人と組合間の連絡手段を郵便に限定したこと、5)法人が、組合宛ての郵便物を返送又は組合委員長の自宅に転送したこと、及び6)法人が、文書の返却又は写しの交付についての組合からの依頼に対し、郵送にてその旨を要望するよう述べて応じなかったことは、それぞれ組合運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文(要旨)

  1. 法人は、組合が平成27年3月26日付け及び5月9日付けで申し入れた団体交渉について、団体交渉の開催場所を学園施設外に限定するなど、法人の求める団体交渉ルールに従うことに固執して、これを拒否してはならない。
  2. 法人は、組合に対し、学園施設内の組合活動を認めないなどと通知すること、法人と組合間の連絡手段を郵便に限定し文書や口頭による申入れを受け付けないこと、及び組合宛ての郵便物等を返送又は組合委員長の自宅に転送することにより、組合の運営に支配介入してはならない。
  3. 文書掲示(団体交渉を拒否したこと、学園施設内の組合活動は認めないなどと通知したこと、法人と組合間の連絡手段を郵便に限定し文書や口頭による申入れを受け付けなかったこと、及び組合宛ての郵便物を返送又は組合委員長の自宅に転送したことが不当労働行為と認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないよう留意すること)
  4. 履行報告
  5. その余の申立てを棄却する。

4 判断の要旨

(1) 団体交渉について

  1. 一般に、団体交渉の時間、場所、出席者等の団体交渉ルールは、労使双方の合意によって決められるべきものであるから、双方が互いの希望を提示しあうこと自体は、特に問題があるものではない。しかし、団体交渉ルールについて事前に合意に至らなくても、団体交渉ルールそのものを議題として団体交渉を行うことはできるのであるから、団体交渉ルールの合意を開催条件として、合意がないことを理由に団体交渉を開催しない場合には、正当な理由のない団体交渉の拒否となり得るものである。さらに、使用者が、合理的でない条件に固執し、そのために団体交渉が行われないような場合には、原則として、正当な理由のない団体交渉の拒否に該当するというべきである。
  2. まず、法人の示した交渉条件に合理性があるか否かについて、以下検討する。
    ア 法人は、団体交渉を1時間とする理由を特に示してはいないが、1時間との提案が不合理であるとの事情も、本件においては特に示されていない。
    イ 法人が、法人側の団体交渉の出席者数を3名程度と予定し、組合も同数程度とするよう求めたことに対し、組合は、具体的な異議を述べてはいない。
    ウ 団体交渉の出席者は、原則的に各側で選定すべきであり、法人は、別組合との団体交渉でも理事は出席していないとして、理事は出席しない旨を述べている。そして、理事が出席しなければ実のある団体交渉が行えない理由について、組合は何ら示していない。
    エ 録音・録画を行うことが団体交渉においては一般的であるとはいえず、組合も、録音・録画を行う以外に交渉記録を保存する方法がないなど、それが、本件にあっては特に不可欠であるとの理由を示しているわけではない。そして、法人は、別組合との団体交渉でも録音・録画はしていないとの事情を説明してこれを拒否している。
    オ 以上のように、法人の示した条件は、労使間で十分なやり取りがなされているとはいえないことから、現時点において、不合理なものであると断ずる根拠を欠くものであるといえる。
  3. しかしながら、団体交渉の場所については、組合が、労使双方の利便性、別組合との間では学園施設内で交渉を行っている事実があることなどを挙げて、学内での交渉を求めているのに対し、法人は、学校施設は教育の場であり、労働組合活動等の場ではないとの抽象的な理由を示すのみで、学内で団体交渉を行えない具体的な理由を示していない。そして、勤務時間の内外を問わず、学園施設内における組合活動を一切禁止する法人の姿勢が支配介入に当たることは後記(2)のとおりであるから、法人が団体交渉の場所を学外としたことも、そうした不当な姿勢の一環であるとみるべきであって、本件にあっては、合理性のない条件を付したものと評価すべきである。また、学外でなければ団体交渉を行わないとの法人の条件は、学園施設内における組合活動を一切禁止する法人の姿勢を問題視していた組合にとって、到底受け入れ難いものであったことも、理解できるところである。
  4. 法人が4月1日付「団交申入書」で開催条件としているのは録音・録画の禁止だけである。しかし、法人は、5月14日付「回答書」では、法人が示した条件で組合が団体交渉できないならば、団体交渉の開催は困難であると述べている。法人は、団体交渉の時間については、1時間と申し入れているが、1時間を1分たりとも超えないという趣旨ではないとして、組合のいう「常識的な時間」を具体的に示すよう求めており、この点についてのみは譲歩の姿勢を示しているといえるものの、その他の点については、団体交渉のルールに関して双方の見解が対立している中で、法人の提示したルールに組合が全て合意しなければ団体交渉を開催しないという姿勢であったといわざるを得ない。
  5. 以上のとおり、本件において、法人は、団体交渉のルールを巡って労使双方の見解が対立している中で、法人の提示したルールに組合が全て合意しなければ団体交渉を開催しないという姿勢を示しており、その団体交渉ルールの提示において、学外でなければ団体交渉を行わないという、合理性がなく、組合にとって容易に受け入れ難い条件に固執していたのであるから、このような法人の対応によって、団体交渉の開催に至らなかったものと解するほかない。
  6. したがって、法人が、3月26日付け及び5月9日付けで組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

(2) 就業時間中及び学園施設内における組合活動の禁止について

  1. 就業時間外に、法人の業務や施設管理に具体的な支障が生じない態様で行われる組合活動について、合理的な理由もなく、学園施設内で行われることを唯一の理由として一律に禁止するということであれば、組合の運営に対する支配介入に当たると解すべきである。
  2. 本件において、法人は、団体交渉に関する連絡も、就業規則が禁止する就業時間中又は学園施設内における組合活動に当たるとしている。しかしながら、同一の職場に存在する労使が、就業時間外に、企業内で、平穏な態様で、団体交渉申入書等の文書の授受を行ったり、口頭で事務連絡等を行ったりすることは、使用者の業務や施設管理に支障を生じさせるものではなく、かつ、労使のコミュニケーションの手段として一般的に行われていることである。したがって、就業規則で学園施設内における組合活動が禁止されているとしても、就業時間外に行われる、団体交渉に関する連絡のようなことまでも学園施設内における組合活動として禁止し、わざわざ郵便を連絡手段とすることに、合理的な理由は認められない。
  3. また、法人が、組合員らが、就業時間外に、学内で、組合に関する立ち話をすることや、組合の文書を他の組合員の学内の研究室に持っていって渡すことも学園施設内における組合活動に当たり、就業規則違反であるとしていること、学内に組合事務所がないことをもって、学内の組合の存在を否定していること等も考慮すると、法人の、4月1日付並びに同月22日付、同月30日付及び5月14日付通知は、就業時間外に、組合員間の組合に関する立ち話程度のことも含め、法人の業務や施設管理に具体的な支障が生じない態様で行われる組合活動を、学園施設内で行われることを唯一の理由として一律に禁止する趣旨であるといわざるを得ない。
  4. したがって、法人が、(ア)組合に対し、学園施設内の組合活動を認めないなどと通知したこと、(イ)法人と組合間の連絡手段を郵便に限定したこと、及び(ウ)文書の返却又は写しの交付についての組合からの依頼に対し、郵送にてその旨を要望するよう述べたことは、いずれも、組合の活動に制約を加え、組合の弱体化を意図した支配介入に当たる。
    なお、法人が、就業時間中の組合活動を認めないと通知したことについては、就業時間中の組合活動は、職務専念義務との関係で制約を受けることから、通知したこと自体が支配介入に当たるとまでいうことはできない。

(3) 組合宛て郵便物等の返送又は転送について

  1. 組合宛て郵便物等を直接組合に渡す義務が法人にあるわけではないが、本件においては、法人の行為が支配介入に当たるか否かは、このような義務の有無によってではなく、法人の行為が組合の弱体化を意図したものであるか否かによって判断すべきである。
  2. 法人においては、私用であっても、教員個人宛ての郵便物を当該教員のレターボックスに入れるという取扱いがなされているにもかかわらず、とりわけ組合宛て郵便物等を異なる取扱いにすることは、組合及び東京私大教連を嫌悪し、両者間の連絡を妨げることが目的であると捉えられても仕方がない。
  3. また、法人は、淑徳巣鴨中学校及び淑徳巣鴨高等学校では、申立外淑徳巣鴨中学高等学校教職員組合(以下「淑徳巣鴨中高教組」という。)宛ての郵便物を、返送又は同教組委員長の自宅に転送することなく、同委員長に渡している。一方、組合と淑徳巣鴨中高教組との間で異なる取扱いをする合理的理由についての疎明はない。
  4. さらに、組合宛て郵便物等を私用の郵便物と同様に組合委員長のレターボックスに入れることによって、法人の業務に具体的な支障が生じる等の疎明はない。一方、組合においては、組合宛て郵便物を返送又は転送されることによって、組合活動に具体的な支障が生じている。
  5. 以上の事実を総合的に判断すると、法人が、組合宛て郵便物の受取を拒否し、東京私大教連に返送し、又は組合委員長の自宅に転送したことは、組合を嫌悪し、組合の弱体化を意図したものとみざるを得ず、支配介入に当たる。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成27年8月6日
  2. 公益委員会議の合議
    平成28年10月4日
  3. 命令書交付日
    平成28年11月9日

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