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報道発表資料  2016年11月08日  労働委員会事務局

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、主に中小企業で働く労働者によって構成されるいわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は約5,200名である。また、組合には会社の従業員で構成される分会があり、本件申立時の組合員数は3名である。
  2. A1は、21年1月21日、総務部の嘱託社員として、A2は、23年6月17日、営業職の嘱託社員としてそれぞれ採用され、6か月ないし1年ごとの更新を繰り返し、70歳定年制の導入に伴い、26年12月末日退職となった。
  3. 被申立人会社は、主に60歳以上の高齢者を派遣契約に基づいて派遣する事業を行う株式会社であり、派遣登録者数は約650名である。本件申立時の従業員数は26名、このうち嘱託社員は16名である。

2 事件の概要

被申立人会社において、嘱託社員として勤務していたA1は、平成24年12月末日付けで雇止めとなり、また、A2は、雇用契約期間を短縮する旨を通告されたことから、25年3月21日、申立人組合に加入した。A1は、上記雇止めについて、会社を相手取り訴訟を提起したが、和解が成立し、職場に復帰した。
26年4月1日、会社は、就業規則の改定を行い、嘱託社員の「70歳定年制」及び嘱託社員の雇用契約終了後の業務委託契約制度を導入した。A1及びA2は、就業規則改定時に70歳に達していたが、経過措置により、雇用契約は26年12月末日まで延長された。この経過措置が適用された嘱託社員は、組合員2名(A1及びA2)、非組合員である管理職3名(Z1、Z2及びZ3)の計5名であった。
会社は、上記5名のうち、A1、Z1及びZ2に対しては雇用契約終了後の業務委託契約をそれぞれ打診したが、A2及びZ3に対しては業務委託契約の打診をしなかった。なお、A1は、会社の打診を拒否した。
上記5名は、12月末日をもって雇用契約が終了したが、Z1及びZ2は、会社との間で27年1月から3か月間の業務委託契約を締結し、Z3は、27年2月から会社の100%子会社においてアルバイトとして雇用された。
本件は、会社が26年4月1日付け就業規則改定により導入した「70歳定年制」に基づき、同年12月31日をもってA1及びA2に対する業務委託契約又は雇用契約の締結を行わなかったことが、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか否かが争われた事案である。

3 主文

本件申立てを棄却する。

4 判断の要旨

(1) 70歳定年制と業務委託契約制度の導入について

  1. 会社が70歳定年制の導入について、従業員に対して初めて発表したのは、A1の雇止め訴訟で和解が成立し、同人の職場復帰に際して全従業員に対してその経緯を説明した時であるが、A1の復職に至った経緯に照らせば、会社は、組合員の早期の職場復帰に向けて一定の配慮を行っているのであり、同人の復帰を望んでいなかったものとみることはできない。
    また、それまで不明確であった更新の限度を明確にすることは、労働契約の更新を巡る紛争の予防や従業員の新陳代謝を図ることに寄与し、会社の長期的な存続にも資するものであるから、会社が70歳定年制を導入すると判断したことには一定の合理性が認められる。
    したがって、会社が導入した70歳定年制は、会社存続のための対応策の一つとみるべきものであり、A1と会社との雇止め訴訟を契機としたものであったとしても、会社が組合員であるA1に対し早期職場復帰に向けた配慮をしていることも併せ考えると組合員の排除を企図したものとみることはできない。
  2. 組合は、会社が、雇用延長があるかのような簡略な説明しか行わずに就業規則に盛り込み、組合員を排除したものであるとも主張するが、会社は、70歳定年制と業務委託契約制度を導入するに当たり、従業員に対するアンケートを行い、従業員に対する説明会や組合との団体交渉において、資料を読み上げる方式ではあるものの、就業規則改定案の説明を行っている。
    また、会社が配付した資料には、70歳を超えての雇用延長や定年退職者全員の業務委託契約の締結を期待させたり、誤解を与えるような記載はなく、会社が意図的に説明を省いたり、組合を誤導しようとしたものとはみられない。
    一方、組合は、団体交渉において、最終的に就業規則の見直しについては承知した旨回答しており、具体的な対応を一切行わずに70歳定年制についての就業規則の改定を了承している。
  3. このような経緯からすれば、会社が70歳定年制及び業務委託契約制度を導入したことは、組合員の排除を企図したものとはいえず、会社は、組合の了承を得て行ったものであるから、組合の主張は採用することができない。

(2) 組合員2名の雇止めについて

  1. 分会結成直後においては、会社が組合を警戒しているとみられてもやむを得ない対応があったといえるが、組合と会社との間では、会社施設の使用や年間休日等を内容とする確認書を締結しており、団体交渉は順調に進展していたことが認められ、会社は、組合との良好な関係を築くべく努力しているといえ、その姿勢からは組合や組合活動を嫌悪する様子は窺われない。
  2. 会社の取引先であるTグループの売上げは、全体の7割ないし8割を占め、同グループを担当する営業第一部の管理職は、T出身者であることが極めて重要な条件であったことからすれば、会社は、Tグループ出身者の人脈により同グループとの取引を継続するとともに、新たな取引先の開拓を行うことによって売上げを維持していたものといえる。
    また、Z1及びZ2に対し業務委託契約を打診した時点において、その後任は一切決まっておらず、両名の12月末日の退職までの間に引継ぎを行うことは極めて困難な状態であったことが認められ、会社にとって重要な取引先を担当する取引先件数や売上げの多い管理職2名について、その後任が決まらないまま退職し不在となれば会社の売上げに大きな打撃を与えることは必至であるから、会社がそれを回避すべく2名に対し後任決定までの間の業務委託契約を締結したことには、相応の理由があるといえる。
  3. 会社は、A1に対し、1か月の業務委託契約を打診しており、この提示した契約期間にも相応の理由があること並びにZ1及びZ2とは、業務内容、会社売上げへの影響等において事情が異なることからすれば、A1に打診した契約期間が不合理なものであったということはできない。
    また、A2については、担当する取引先は従前から引き続くものであったこと、同じ部署の嘱託社員が後任として決まっていたこと、同人は後任者に引継ぎを進めていたことが認められ、後任がT出身者である必要がある管理職と比較すると後任は容易に確保でき、同人の退職までに円滑な引継ぎが可能であったとみることができるから、会社と同人との間で業務委託契約を締結する必要性はなかったといえる。
  4. 会社は、Z1及びZ2の後任決定直後には両名に対し3月末日をもって契約を終了する旨を伝えていること、実際に両名は3か月で業務委託契約を終了していることからすれば、その時点における後任探しの進捗状況に応じて業務委託契約期間を判断しているものとみることができ、会社と両名との間で業務上の必要性とは無関係に半年間の業務委託契約締結の約束があったとはいえない。
  5. 以上によれば、会社が、組合や組合活動を嫌悪している事実は認められず、Z1及びZ2と業務委託契約を締結したことは、後任の配置状況等業務上の必要に応じた措置であったとみることができ、A1に対しても業務委託契約を打診していることを併せ考えると、業務の必要に応じて必要な期間の業務委託契約を締結するという会社の姿勢は、組合員であるか否かにかかわらず一貫しているといえる。
  6. また、会社の子会社において、アルバイトとして雇用されているZ3について、会社は採用の決定に関与していないこと、その他再就職のあっせんは行っておらず、その取扱いは組合員も同様であることが認められ、組合員と非組合員との対応に異なる点はないのであるから、組合員を差別しているとみることはできない。

(3) 以上の次第であるから、会社が、26年4月1日付け就業規則改定により導入した70歳定年制に基づき、同年12月31日をもってA1及びA2に対する業務委託契約又は雇用契約の締結を行わなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いとはいえない。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成26年11月10日
  2. 公益委員会議の合議
    平成28年10月4日
  3. 命令書交付日
    平成28年11月8日

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