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平成28(2016)年8月30日更新

報道発表資料  2016年08月30日  労働委員会事務局

〔別紙

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、東京都及び周辺地域で働く労働者で構成される個人加盟のいわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は約2,000名である。分会は、法人に雇用される組合員らが結成した組合の下部組織であり、本件申立時の組合員数は10名である。
  2. 法人は、障害者自立支援法に基づき通所型の福祉サービスを提供しており、施設利用者数は約40名、平成26年7月20日当時の従業員数は21名である。

2 事件の概要

被申立人法人(以下「法人」という。)は、26年3月31日付で、A1を雇止めした。9月11日、申立人組合は、法人に対して、A1の雇止めの撤回等を要求して団体交渉を申し入れ、10月2日及び同月24日に第1回及び第2回団体交渉が行われた。
その後、法人は、A2を11月7日付けで解雇した。11月26日、第3回団体交渉において、法人は、A2については同人の代理人弁護士からの通知があるため、同弁護士の同席なく交渉はできないと述べた。12月9日、第4回団体交渉において、法人は、A1の雇止め及びX2の解雇について、法人と組合それぞれが主張する事実に食い違いがあるので、行き詰まり、デッドロックに乗り上げた、裁判所等第三者の判断に委ねるほかなく、団体交渉はしないなどと回答した。
また、法人は、12月26日に、A3に対して、同月31日付けで解雇することを通知した。組合は、法人に対して、A3の解雇の撤回を要求し、団体交渉を27年1月7日に行うよう申し入れたが、法人は、業務繁多として団体交渉に応じず、また、A3の解雇を撤回する意思がない旨を回答した。
組合は、1月9日に、A1の雇止め並びにA2及びA3の解雇に関する団体交渉を法人が正当な理由なく拒否したとして本件不当労働行為救済申立てを行い、10月2日及び28年3月1日に、A2及びA3の解雇等が不利益取扱い及び支配介入に当たるとして申立てを追加した。
当委員会は、本件申立てのうち当初の団体交渉に関する申立てを分離して審査し、これについて判断することとした。すなわち、本件分離命令は、法人が組合の申し入れたA1の雇止め並びにA2及びA3の解雇に関する団体交渉に応じなかったことが、正当な理由のない団体交渉の拒否及び組合に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文

  1. 法人は、組合が申し入れた、A1の雇止め並びにA2及びA3の解雇を議題とする団体交渉を、事実認識の隔たりを理由として拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
  2. 文書の交付
    要旨:法人が、組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  3. 前項の履行報告

4 判断の要旨

  1. 組合と法人とは、およそ1時間半から3時間をかけて本件申立てまでに4回の団体交渉を行っている。A1の雇止めについては、労使双方の認識の違いがあることが明らかとなった段階で交渉が止まっており、第3回団体交渉までに交渉が尽くされたものということはできない。
  2. 次に、A2の解雇について、第3回団体交渉において、法人は、弁護士が選任された以上、組合とは交渉できない、弁護士とのみやり取りする、弁護士が付けば法廷闘争になるので基本的には団体交渉は中断するなどと述べた。法人は、交渉できないとは言いながら、個別面談の日時や内容について述べており、また、弁護士から労使対等の立場で行う団体交渉まで禁じる趣旨ではない旨の連絡を受けた後には、弁護士の選任を理由としては団体交渉を拒否しておらず、この発言のみをもって正当な理由なく団体交渉を拒否したものとまでいうことはできない。しかしながら、法人の発言は、交渉できないとの前提のもとで、解雇理由に含まれている個別面談について断片的に触れたものにすぎず、第3回団体交渉のやり取りのみをもってA2の解雇全般について交渉が尽くされたものということができないことは明らかである。
  3. 法人は、A1の雇止め及びA2の解雇について前記のとおり交渉が尽くされていない状況にもかかわらず、第4回団体交渉直前に裁判所等第三者の判定に委ねるほかなく、団体交渉としてはデッドロックの状況にあるとの「回答書」を送信し、団体交渉において、双方の主張する事実に食い違いがあるので、行き詰まり、デッドロックに乗り上げた、団体交渉はしないなどと回答した。よって、法人は、事実認識の隔たりを理由として団体交渉に応じなかったものといえる。
  4. A3の解雇について、組合は、法人に対して、団体交渉を申し入れたが、法人は、「業務繁多につき、お受けいたしかねます」と回答した。この法人の対応は、多忙であって日程調整がつかなかったにすぎないとも考えられなくもない。しかし、法人がA3の解雇を撤回する意思はないことも回答していること、本件申立て後の第5回団体交渉において、事実認識が違えばそれは法廷で決めるしかないと述べていること、及び前記のとおりA1の雇止め及びA2の解雇について交渉を尽くしていない状況でありながら、事実認識の隔たりを理由として団体交渉を拒否したことを考えれば、法人は、A3の解雇について当初より事実認識の隔たりを理由に団体交渉に応じなかったものとみるべきである。
  5. 以上のとおり、A1の雇止め並びにA2及びA3の解雇について、法人と組合との間に事実認識の隔たりがあるところ、法人は、雇止めや解雇に至る経緯の詳細な説明をするなど事実認識の隔たりを埋めるための努力をしておらず、交渉が尽くされていない状況であるにもかかわらず、デッドロックに乗り上げた、裁判所の判定に委ねるほかないなどとして、事実認識の隔たりを理由に団体交渉に応じなかったもので、法人の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日 平成27年1月9日
  2. 公益委員会議の合議 平成28年8月2日
  3. 命令書交付日 平成28年8月30日

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