ここから本文です。

平成28(2016)年7月28日更新

報道発表資料

〔別紙〕

1 当事者の概要

  1. 被申立人会社(以下、「会社」という。)は、肩書地に本社を置き、一般印刷及び加工、特殊印刷、企画及び宣伝に関する制作業務等を営む株式会社であり、本件申立て時の従業員数は、約70名である。
  2. 申立外Y2は、会社の肩書地と同じ場所に本社を置き、会社から製版業務の発注を受けていたところ、平成24年9月14日、東京地方裁判所に破産手続開始決定の申立てをし、同日、同決定を受け、25年1月29日、破産手続が廃止された。
    破産手続開始決定申立て当時のY2の従業員は、正社員が13名、パート及びアルバイト社員が3名、嘱託社員が2名であったところ、Y2の破産手続開始決定に伴って、全員が解雇された。
  3. 申立人X1(以下「組合」という。)は、首都圏を中心にして、産業・職種・雇用形態の違いを超えて労働者を組織する、いわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は、約4,000名である。
  4. 申立外X2(以下「分会」という。)は、組合の分会組織である。本件申立て及び追加申立時、分会には、Y2の従業員であった組合員及び会社の従業員である組合員が所属していた。

2 事件の概要

 申立外Y2は、被申立人会社(以下「会社」という。)代表者の親族が経営する会社であり、会社から製版業務を委託され、会社の社屋のワンフロアを賃借して業務を行っていたところ、平成24年9月14日、破産手続開始決定を受けた。同決定後、申立人組合及び同組合X2(以下「分会」といい、これらを合わせて「組合ら」という。)は、会社に対して、Y2で働いていた労働者の雇用について責任があるとして、Y2を解雇された労働者の会社における雇用を求めて団体交渉を要求した。ところが、会社は、2度の話合いの場を設定したものの、団体交渉に応じる必要はないとして、団体交渉を拒否した。
また、会社は、分会所有のロッカーの撤去を求め、その後、設置場所を移動し、さらに、組合掲示物を撤去し、組合員の社内への立入禁止を通告するとともに、分会所有の組合旗等を持ち去った。
本件は、(1)会社は、Y2の従業員である組合員の労働組合法上の使用者に当たるか否か、(2)使用者に当たる場合に、会社が、組合らの雇用問題に関する団体交渉申入れに応じていないことが、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、(3)ロッカーの撤去要請及び移動、掲示物等の撤去並びに会社施設への組合員の立入禁止等の措置が支配介入に当たるか否か、(4)会社が分会所有の組合旗等を持ち去ったこと等が支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文

 本件申立てを棄却する。

4 判断の要旨

(1) 会社の使用者性と雇用問題に関する団体交渉の拒否について

 Y2は、会社経営者の親族が経営する会社であり、また、会社はY2の大口の取引先であるから、会社は、Y2の経営に対して一定の影響力を有していたとはいえる。
しかし、会社は、Y2の破産申立て当時、Y2の破産申立て及びこれに伴うY2の従業員の解雇に関与していたとは認められないし、また、Y2の従業員の賃金、労働時間等の基本的な労働条件等の決定に関しても関与していた事実は認められない。さらに、Y2の破産申立て当時、会社がY2従業員の雇用に関与している事実は認められないし、また、Y2の従業員の転職又は再雇用のあっせんなどの便宜を図った等の疎明もない。
したがって、会社は、組合員らの雇用に関して、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位を有していたとは認められず、Y2の従業員との関係で、労働組合法上の使用者に該当しない。
このように、会社がY2の従業員との関係で、労働組合法上の使用者に該当しないのであるから、会社が、組合らの雇用問題に関する団体交渉申入れに応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当しない。

(2) ロッカーの撤去要請及び移動、掲示物の撤去並びに組合員の立入禁止措置について

(1) ロッカーの撤去要請及び移動について

 分会は、Y2破産申立て以前、長期間にわたり本件ロッカーを設置していたが、仮に本件ロッカーの設置を認める便宜供与が労使慣行となっていたものとしても、それは、組合らとY2の間に形成されたものとみるべきであって、会社と組合らとの間で、本件ロッカー設置に関する労使慣行が成立していたとはいえない。そして、Y2の破産手続開始決定により、フロアの賃貸借契約が解除されたのであるから、賃貸人である会社が、残置物の所有者である分会に対し撤去を求めることには正当な理由があるし、また、この要請にもかかわらず、その後3年もの間、組合らは本件ロッカーを撤去しなかったのであるから、会社がロッカーの設置場所を移動させたことにも正当な理由があるといえ、組合の弱体化を図るものとはいえず、支配介入に該当するとはいえない。

(2) 掲示物、横断幕、のぼり等の撤去について

 掲示板の貸与については、会社と組合らとの間で労使協定が締結されているものの、この労使協定においては、掲示板以外の場所に文書やビラの掲示はしないこと、及び掲示不許可事項が定められている。
分会は、掲示板以外の場所にも掲示物を掲載し、横断幕、のぼりを掲げる等、労使協定に違反する行為を行い、また、上記掲示物等は、不特定多数の者が認識し得る態様で掲示されており、その記載内容には、会社の信用性やその代表者の名誉を傷つける記載があった。
これに対して、会社は、組合らに対し、労使協定に違反する掲示物、横断幕、のぼり等の撤去を再三要請したが、組合らがこれを拒否し続けたことから、やむを得ず、掲示物、横断幕等の撤去に至ったものである。
上記経緯に鑑みると、会社が、労使協定に違反する行為を是正し、会社の信用及び代表者の名誉の毀損を防止するために組合らの掲示物、横断幕等の撤去をしたことには相応の理由があり、組合の弱体化を図るものとはいえず、支配介入に該当するとはいえない。

(3) 組合員の立入禁止措置について

 組合らは、断続的に、会社の敷地及び建物内で、ビラ配布、拡声器を用いた宣伝活動を行い、会社社長を取り囲む、社内で大声をあげる等したことから、会社は、口頭で会社施設に無断で立ち入らないよう求めたものの、組合らは聞き入れることなく、上記行為を継続した。そこで、会社は、組合員の立入禁止を通告したものである。
また、会社は組合員の立入禁止を通告したものの、実際に、組合員が会社に立ち入らないようにする具体的措置を執ったとの疎明はない。
上記経緯に鑑みると、会社が施設管理や秩序維持等のために組合員の立入りを禁止したことにも相応の理由があるというべきであって、こうした会社の対応は、支配介入に該当するとはいえない。

(3) 組合旗等の持ち去りについ

 掲示物に関しては、会社と組合らとの間で労使協定が締結されており、この労使協定においては、掲示板以外の場所に文書やビラの掲示はしないことが定められている。これによれば、組合らが、門柱に組合旗等を設置する行為は、掲示物に関する労使協定に違反する行為である。
これに対して、会社は、組合ら対し、再三、組合旗等を撤去するよう求めたが、組合はこれに応じなかったことから、組合らが組合旗を、掲示許可場所以外の場所で掲示することを防いで労使協定違反行為を是正し、会社の施設管理や秩序維持等を図るために、門扉両脇から組合旗等を撤去して保管し、また、返還するに当たっては、今後、組合らが、門扉両脇に組合旗を設置しないよう誓約書の提出を求めたものであり、会社の対応には相応の理由がある。
上記経緯に鑑みると、会社が組合旗等を持ち去ったこと等は、組合の弱体化を図るものとはいえず、支配介入に該当するとはいえない。

5 命令交付の経過

(1) 申立年月日

 平成24年10月1日

(2) 公益委員会議の合議

 平成28年7月5日

(3) 命令交付日

 平成28年7月28日

ページの先頭へ戻る