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平成28(2016)年7月21日更新

報道発表資料

〔別紙〕

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、東京都国立市に事務所を置き、主として多摩地区に事業所を有する企業で働く労働者が組織したいわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は約200名である。
  2. 被申立人会社は、埼玉県入間市に本社を置き、重量物運搬、産業廃棄物収集運搬、クレーンリース、特大貨物輸送、倉庫物流加工などの業務を行う株式会社で、本件申立時の従業員数は、約140名である。

2 事件の概要

会社の従業員らは、平成22年8月31日、会社が給与減額を行ったことを機に組合に加入し、組合の分会を結成した。組合は、会社に対し、未払残業代の支払などを求めて団体交渉申入れを行い、未払残業代の支払と併せて基本給の不公平を是正するなどの内容の給与制度改正等の交渉を続けてきたが、合意には至らなかった。(1)
その後、会社は、労働基準監督官による24年3月29日の是正勧告を受けて、残業代計算方法の見直しを中心とする給与規定の改正に着手し、12月6日に、基本給の公平化などの給与制度改正を25年2月末までに一定の結論を出すことを目指すこと、その間改正給与規定は暫定適用とすることなどで合意した。しかしながら、交渉が進展しないまま推移し、会社は、経営状況の厳しさが増しているとして、25年6月21日に、基本給の公平化などの給与制度改正は見送る旨を通知した。(2)
25年12月1日、25年冬季一時金交渉において、組合の求めた経営資料の提出を、会社が拒否したことがあった。(3)
本件は、1)未払残業代を巡る会社の対応が不利益取扱い、不誠実団体交渉及び支配介入等に該当するか否か、2)就業規則・給与規定及び基本給を巡る会社の対応が、不利益取扱い、実質的な団体交渉拒否、不誠実団体交渉及び支配介入に該当するか否か、3)一時金に関する団体交渉において会社が経営資料を提出しなかったことが、不誠実団体交渉に該当するか否かが争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 会社は、組合が給与制度改正の問題に関する団体交渉を申し入れたときは、誠実に応じなければならない。
  2. 文書交付(基本給の公平化に関する団体交渉に誠実に応じなかったことは、不当労働行為であると認定された旨。今後このような行為を繰り返さないよう留意する旨。)
  3. 履行報告
  4. その余の申立ての棄却

4 判断の要旨

(1) 未払残業代を巡る会社の対応について

  1. 未払残業代に関する団体交渉について
    ア 未払残業代の総額をどのように計算するのかについては、労使間で合意があったわけではないのであるから、待機・積込み・荷卸しの平均時間を算出して残業時間を推計する方式を会社が提案したことを非難することはできないし、これは、会社から一つの提案としてなされたにとどまるのであるから、会社が、上記の提案を行ったことをもって、それまでの交渉経過を覆したとか、交渉の引き延ばしを図ったとまでいうことはできず、不誠実な対応であったということはできない。
    イ 組合が会社に提出していた未払残業代の計算結果は、分会長の一定期間の分を除いては、正確な記録や記憶に基づいて労働時間を算出したものではなく、結果として労働時間の評価については、労使間で著しく大きなかい離があった。確かに、会社は、1年以上の長期にわたって労働時間の評価に関する主張を何ら行っておらず、作業が前向きかつ迅速に進められていたとは評価し難いが、会社がこの間意識的に作業を懈怠したような事実は認められず、主張する時期が遅かったことのみをもって、会社の対応が不誠実であったとまでいうことは困難である。したがって、会社が細かい突合せをしたいと提案したこと自体が、不誠実な対応であったとまでいうことはできない。
    ウ 交渉の経緯からみて、歩合給(乗務手当)の性格について、労使間で決着済みの問題であるとの共通認識があったとみることはできない。そうすると、この間の交渉は、そうした労使の主張の隔たりを内包しながら進められてきたものといわざるを得ず、会社が「歩合給(乗務手当)が残業代に相当する」見解を持っているからといって、この問題の解決を図る姿勢を持っていなかったものと評価することはできないというべきであり、会社の対応が、不誠実な対応であったということはできない。
  2. 運転日報の「改ざん」について
    ア 会社は、生のデジタルタコグラフの記録から計算されるデータ上の運行態様が行政当局に問題視される虞があるとの意識から、当時の運輸部長の指示等により、生のデジタルタコグラフの記録を修正したものを正式な運転日報として保存していた。そして、団体交渉の担当者がこのような事実を知らずにいたため、内容が書き換えられた運転日報が組合に提出され、第一次運転日報改ざん問題が発生したものである。
    確かに、書き換えられた運転日報を組合に提出したことは問題があるが、会社が、組合との関係で自らに有利な結論を導く意図でそのようなことを行ったとは認められないのであり、また、会社は、組合の指摘を受けて、運転日報の元データを提出して、それを基に交渉を進めているのであるから、第一次運転日報改ざん問題が支配介入に当たるとまで評価することは困難である。
    イ 組合は、労働基準監督署の調査に対して、会社が修正後の運転日報を提出した第二次運転日報改ざん問題をも支配介入に当たると主張するが、これは、書類の取違えによる単なる事務手続の過誤であるとみるのが自然である。そして、会社は、後日、修正前の運転日報を労働基準監督署に提出し直し、組合にも謝罪しているのであるから、この点については、支配介入に当たるとまではいえない。
    ウ また、組合は、会社が運転日報を修正した理由について虚偽の説明をしたとも主張する。確かに、会社は、関東運輸局用に作成したと説明してはいるが、それは、会社の主張のように、同局の監査等に備えて準備しておく趣旨とも解され、具体的な監査等の事実がなかったといって、そのことが直ちに、会社の説明が虚偽であるということにはつながらないというべきである。したがって、この点についての組合の主張は、採用することができない。
    エ 以上のとおりであるから、第一次及び第二次運転日報改ざん問題とそれに関する会社の対応を総合しても、これが支配介入に当たるということはできない。
  3. 時効の援用について
    未払残業代の交渉が長期にわたっているのは事実であるが、会社に不誠実な対応があったとまではいえないことは前記1)に判断したとおりである。また、会社は、未払残業代問題等の解決のために、解決金の支払を含む解決案を提案するなど解決に向けた努力を行ってきていることが認められるのであって、会社が解決を引き延ばした上で債務の時効消滅を狙っていたものとみることはできない。

(2) 就業規則・給与規定改正及び基本給等を巡る会社の対応について

  1. 24年4月25日の解決案の提案について
    就業規則の改正や賃金規定の改正については、会社と組合との間で協 議していくと会社が述べている中で、24年4月25日の会社の提案には、解決金を支払う条件として、まだ提案もされていない新就業規則及び新賃金体系が施行されることが記載されていたのであるから、組合がこれに対して不信感を持つことも無理からぬものがある。
    もっとも、この提案は、5月末日までに施行できるよう労使双方協力して協議していこうという趣旨であるとの会社の主張も、表現の適切さはともかくとして、理解できないものではなく、また、会社は、上記の対応について謝罪した上で、5月19日及び同月25日には、上記の条件を削除した協定案を提案しているのであるから、会社が、上記の提案をしたことをもって不誠実な対応であるとまではいえない。
  2. 改正給与規定の実施通告等について
    組合は、会社が、数回にわたり改正給与規定を実施予定であると通知したこと、9月20日に改正給与規定を実施する旨通知したことなどが不誠実な団体交渉及び支配介入に当たると主張する。しかしながら、この間一定の交渉経過を経て、12月6日には、改正給与規定を暫定適用とすることで労使が合意している。こうした経過をみると、組合の主張するような個々の事実は、全体の交渉過程の一部たるに止まり、組合の主張は、一旦は合意に至った交渉過程の一部を交渉全体の流れから切り離して殊更に非難するものであるといわざるを得ず、こうした会社の個々の対応をとらえて不誠実な団体交渉ないし支配介入に当たるとまでいうことは困難である。
  3. 基本給の公平化に関する交渉等について
    ア 従前の経過と24年12月6日の合意内容をみれば、会社には、具体的な会社案を組合に示して、労使間の検討課題であった基本給の公平化について、前向きかつ具体的に協議を進めることが求められていたということができる。
    イ ところが、その後の会社の対応をみると、会社は、給与テーブルの運用の内規ないし基準やそれを組合員適用した場合の試算結果について、度々組合に提案する意向を表明しながら結局それを行わず、なぜそのような結論に至ったのかについても十分な説明を行わなかったといわざるを得ない。
    ウ そして、会社は、6月21日には、経営状況が厳しさを増していることを理由に基本給の検討は見送る旨を通知し、9月27日の団体交渉では、基本給の検討の延期期限については、見通しが示せない旨を述べた。会社が、基本給の公平化について、会社として前向きに検討した上、具体的な会社案を組合に示すことが求められていたことを踏まえると、会社の対応は、労使合意の内容を実行しないまま、実質的に交渉を打ち切ったものとみざるを得ない。
    エ 会社は、やむを得ない事情で延期するとはいっても検討は継続していると主張するが、会社の対応をみれば、会社が、基本給の公平化に関する交渉を継続する意思を持ち、誠実な対応を行っていたものとはいえない。
    オ したがって、会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たる。
    カ 組合は、給与制度に関する団体交渉における会社の対応は、交渉権限のない担当者が交渉を意図的に引き延ばしたものでもあるとも主張するが、これに関する会社の対応は、交渉員の交渉権限の問題というよりも、言を左右にするかのような会社の交渉姿勢そのものに問題があったというべきであり、会社の不誠実性を根拠付けているものと考えられる。
    また、組合は、会社が「100万円の売上げで、50万円も60万円も給料を支払わなくて済む方法」を提示するよう求めたことが、不誠実な対応であり、支配介入にも当たると主張する。しかしながら、上記のとおり、この事実は、会社が給与制度改正に関する交渉を継続する意思を持っていたものとはいえないと評価し得る事情ではあっても、この提案を行ったこと自体は、原資がなくとも給与テーブル適用のルール作りはできるとの組合の発言を受けた形でなされたものであるから、不当労働行為に当たるとまでいうことはできない。
  4. 25年4月16日付けの時間外調整金算出方法の変更通知について
    組合と会社とは、24年12月6日に、25年2月を目途として基本給の改 正を目指すとともに、残業問題に関する就業規則・給与規定の改正の暫定実施を合意したのであるから、給与規定に反する誤った運用がなされていれば、会社がそれを改めるのはやむを得ない措置であったというほかはなく、会社が上記の通知をしたことが不当労働行為に当たるということはできない。

(3) 一時金に関する団体交渉において経営資料を提出しなかったことについて

25年冬季一時金の交渉に当たり、会社が、組合の求めた経営資料の交付を拒否したのは、組合の要求した経営資料が25年冬季一時金の対象期間と一致していなかったためであった。
対象期間が誤っていることを告げずに経営資料の提出を拒んだ会社の対応は、いかにも不親切であるといわざるを得ないが、会社が、経営資料の提出を拒否したことが、不誠実な交渉態度に当たるとまでいうことはできない。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成24年5月30日
  2. 公益委員会議の合議
    平成28年6月21日
  3. 命令交付日
    平成28年7月21日

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