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平成28(2016)年2月22日更新

報道発表資料

〔別紙〕

1 当事者の概要

  1. 申立人X1は、昭和43年に結成され、首都圏の事業所の従業員を中心に組織された、いわゆる地域合同労組であり、本件申立時の組合員数は約850名である。
  2. X2支部は、会社に勤務する従業員らにより、53年に結成された労働組合であり、X1の支部を構成しており、本件申立時の組合員数は約55名であったが、平成27年2月時点で十数名となっている。
  3. 被申立人会社は、昭和36年に設立され、本社を肩書地に置き、関東地区に13の営業所を有し、ユニフォームやテーブルクロス等の繊維製品の貸与、洗濯サービスを行うリネンサービス業を主たる業とする株式会社であり、本件申立時の従業員数は約230名である。

2 事件の概要

 本件は、会社と組合との間で、以下の点が不当労働行為に該当するか否かについて争われた事案である。

  1. 平成24年5月以降、会社が組合に対して財務諸表を提示していないこと。
  2. 24年12月5日の団体交渉で、会社が団体交渉への参加人数に異議を唱えたこと。
  3. 24年12月14日の会食時におけるB1専務の言動
  4. 24年12月28日及び25年1月4日に、会社が残業代清算について従業員の同意を取り付けたこと。
  5. 24年12月28日に、会社が「お年玉」を従業員に支払ったこと。
  6. 25年1月18日及び22日付けで組合の提出した車両貸出申請を会社が拒否したこと。
  7. 25年2月1日から、会社がタイムカードを廃止したこと。
  8. 25年1月30日に、会社が従業員協議会代表者選挙を実施したこと。その際、A4支部副委員長の所属する川崎営業所で選挙をしなかったこと、及びA1支部書記長が東京事業部で立候補できなかったこと。
  9. 25年2月に開催された三六協定締結のための従業員過半数代表者選挙説明会における、B1専務の組合員A2に対する言動。本社及び物流センターでの当該選挙においてA1書記長及びA5支部委員長が落選したこと。
  10. 25年6月25日付けで、会社が集会及び社内定期便の利用の禁止を通知したこと。
  11. 会社がA1書記長に対して25年7月以降の給与支給停止を通知したこと、及び7月分給与から勤怠控除したこと。
  12. 25年7月1日付けで、会社がA1書記長に対して団体交渉を経ないで人事異動を通知したこと。
  13. 25年7月8日付けで、会社がA2に対して配置転換したこと。
  14. 会社が組合員A3の復職を認めなかったこと。
  15. 会社による、組合員A6及び同A7に対する組合脱退勧奨の有無
  16. A5委員長、A1書記長、A2ほか4名に対する25年冬季一時金の支払
  17. 26年1月14日に、会社がA2に対して残業を禁止したこと。
  18. 25年10月以降、会社がA4副委員長及びA2に対して残業代を支払っていないこと。
  19. 26年7月23日に開催された団体交渉において、会社が正社員に対する26年夏季一時金の平均支給率について具体的な数字を開示しなかったこと。

3 主文(要旨)

  1. 会社は、組合に対し、経営状況が厳しいことを説明する場合は、財務諸表等必要な資料を提示し、又は具体的な数値を示すなどしなければならない。
  2. 会社は、25年6月25日付社内定期便利用禁止の通知をなかったものとして取り扱わなければならない。
  3. 会社は、A2に対する25年7月8日付配置転換命令をなかったものとして取り扱い、同人を原職若しくは原職相当職に復帰させなければならない。
  4. 会社は、組合員に対し、組合からの脱退を勧奨してはならない。
  5. 会社は、A2に対し、25年冬季一時金について、0.7か月分の支給率で計算した額に是正し、是正した額と既支払済額との差額を支払わなければならない。
  6. 会社は、組合に対し、26年夏季一時金の平均支給率を開示しなければならない。
  7. 文書の交付及び掲示
    要旨:上記2 1、4、5、6、7、8(選挙の実施について)、10(社内定期便について)、11、12、13、15(A6について)、16(A2について)、19について不当労働行為と認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  8. 2 3 5 6 7の履行報告、その余の申立ての棄却

4 判断の要旨

  1. 財務諸表の提示について
    会社は、経営陣が交代して以降、組合の力が強かった過去の労使関係が経営の障害であり、見直すべきであるという方針の下に、誤った数字が機関紙に掲載される危惧があるとして、組合に対し、財務諸表等の経営状況の分かる資料について一切開示しないことによって、組合の交渉力の弱体化を企図していたといわざるを得ず、このことは、組合の運営に対する支配介入に該当する。(救済)
  2. 24年12月5日の団体交渉の参加人数について
    団体交渉当日、B1専務が参加人数に異議を唱えたものの、引き続き交渉が行われており、また、その後の団体交渉において、会社が参加人数に固執して、交渉が進まなかった事実も認められず、支配介入に当たるとまではいえない。(棄却)
  3. 24年12月14日のB1専務の言動について
    B1専務の発言(「残業代の裁判はどう考えているのか。」、「組合のことはよく知っている。」等)の趣旨は、経営危機の打開のために、組合と率直な意見交換をするために自身の学生運動の経験を話すなどして組合活動に理解を示そうとした上で、組合から提訴の検討状況を聴取し、組合に経営の再建に向けて協力を求めたものであるとみるのが相当であり、組合を威嚇したり、動揺させようとしたものとはみられず、支配介入に当たるとはいえない。(棄却)
  4. 従業員との残業代清算の同意について
    残業代について交渉中であり、組合が会社の方針に異論を唱えている中で、個別に組合員を含む従業員に残業代清算の同意を取り付けようとする会社の行為は、組合の存在を殊更に無視したものであり、組合の運営に対する支配介入に該当する。(救済)
  5. 「お年玉」の支払について
    会社は、組合の存在を軽視し、一時金について、組合の関与を排除して決定、支給しようとして、組合からの一時金の要求を拒否した上で「お年玉」を支給しており、支配介入に該当する。(救済)
  6. 車両貸出拒否について
    使用者が、慣行として定着している便宜供与の廃止をするに当たっては、その旨を組合に提案し、交渉を尽くした上で行うべきであるが、会社は、組合との間で真摯に協議して合意形成を図る意思もなく、十分な協議をせずに車両貸出申請を拒否しており、組合の運営に対する支配介入に該当する。(救済)
  7. タイムカードの廃止について
    会社は、残業代の支払を求める組合の要求を排除し、残業代の抑制を実現するために、組合と十分な協議をせずに、一方的にタイムカードを廃止したものと評価するのが相当であり、組合の運営に対する支配介入に該当する。(救済)
  8. 従業員協議会代表者選挙について
    1. 会社は、必要性が乏しいにもかかわらず、組合の機能を代替する従業員協議会を早期に設立することで、組合との団体交渉を形骸化させ、組合の弱体化を図ったとみることができ、従業員協議会代表者選挙は、組合の運営に対する支配介入に該当する。(救済)
    2. 川崎営業所のA4副委員長は、立候補する意思を固めていたのみであり、会社が同人の意思について認識していたとまではいえないし、結局、川崎営業所の属する神奈川事業部の代表者には、組合員が選出されていることから、川崎営業所で選挙が行われなかったことが不利益取扱いに当たるとまではいえない。(棄却)
    3. A1書記長が所属する総務部人事課庶務係は本社に属するものであり、同人自身も庶務係に所属していると認識していたこと、同人は、自身の都合で当日の選挙に参加することができなかったにすぎないことから、同人が東京事業部で立候補できなかったこと及び25年1月30日に選挙を実施したことが不利益取扱いに当たるとはいえない。(棄却)
  9. 従業員過半数代表者選挙について
    1. 25年2月6日の説明会で、A2とB1専務らとの間で言い争いとなったが、その際に、B1専務が支配介入と評価され得る発言を行った事実を認めるに足りる組合からの疎明がない。(棄却)
    2. 組合から、会社が従業員に対し、特定の候補者に投票するように、又は投票しないように働きかけた事実を認めるに足りる疎明はなく、本社及び流通センターで記名投票を行ったことのみをもって、会社が組合員の選出を阻止しようとしたとまでいうことはできず、A1書記長及びA5委員長が落選したことは不利益取扱いに当たるとはいえない。(棄却)
  10. 集会及び社内定期便利用の禁止について
    1. 争議行為の際の会社敷地内、施設内の組合集会の開催が労使慣行上認められてきたことについて、組合からの具体的な疎明がなく、会社が集会を禁止したことが支配介入に当たるとはいえない。(棄却)
    2. 会社は、長年、組合が機関紙を社内定期便で輸送してきたことを認識していた上で、組合から機関紙の輸送について許可申請を求めたことがなかったのであるから、会社の了解のもとに組合による社内定期便の利用が認められていたというべきである。そして、会社は、特段の支障が生じたわけでもないにもかかわらず、組合との間で真摯に協議して合意形成を図ることもなく、十分な協議をせずに、一方的に利用の禁止を強行しており、支配介入に該当する。(救済)
  11. 組合専従への給与支給停止について
    会社は、組合に対する嫌悪の念から、組合専従として活発な組合活動を行うA1書記長の活動に大きな打撃を与えて組合を弱体化させることを企図し、労使の合意により相当期間継続してきた制度を、労使間での十分な協議もなく性急に変更して、同人への給与支給を停止しており、支配介入に該当する。(救済)
  12. A1書記長の異動について
    1. 組合からの団体交渉申入れは25年6月27日に行われており、期日に余裕がなかった。そして、7月10日にA1書記長の処遇等について団体交渉が開催されている以上、会社が不当に団体交渉開催の引き延ばしを図ったとみることはできない。(棄却)
    2. 会社は、過去の組合専従者が職場に復帰する際とは異なり、一方的に人事異動を通知して、組合の存在を軽視するとともに組合の弱体化を企図した支配介入行為を行ったといえる。(救済)
  13. A2の配置転換について
    労使慣行や労使協定からすると、本件のように、新たに新規顧客開拓のための直販課を設置し、組合員が配属対象となる場合には、当該組合員の意思を考慮するとともに、事前に組合の了承を得る必要があるにもかかわらず、そのような手続きがなされていない。そして、会社は、人事異動等について組合との合意が必要であったことを経営の支障と考え、組合の存在を軽視して組合の関与を排除することを企図し、その上で、組合の中心的な存在として会社の方針に異を唱えるなどしていたA2に対する嫌悪の念から、入社以来従事してきたルート営業を外して同人の評価を下げるとともに、職場内で孤立させることを企図して本件配置転換を実施したものとみざるを得ず、不利益取扱い及び支配介入に該当する。(救済)
  14. A3の復職拒否について
    A3の病状をみると、会社において、正社員としての通常の業務を行うことが難しい状態であり、組合が期限までに復職に当たっての検査の申入れをしていない経緯からすると、会社が同人の復職を認めないことはやむを得ないものといわざるを得ず、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。(棄却)
  15. A6及びA7の組合脱退について
    1. A6については、25年11月28日に、上司であるB2次長が、「やっとA6さんが組合辞めてくれたよ。」と発言しており、また、その場にいたB3次長は、部下のA8に対し、「A8も組合辞めるか。」と発言していることから、A6が組合脱退届を提出したのは、B2次長が会社の指示を受けてA6に対して脱退勧奨したことによるものとみざるを得ず、支配介入に該当する。(救済)
    2. A7については、自身が組合脱退の意思を有して上司に相談したことにより、脱退届が交付されたのであることから、A7の上司が脱退届を交付したことをもって、直ちに、会社がA7に対し、組合からの脱退を勧奨したということはできず、支配介入に当たるとはいえない。(棄却)
  16. 25年冬季一時金の支払について
    1. A5委員長ほか2名について
      組合から、各人の冬季一時金の支給率について何ら疎明されておらず、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。(棄却)
    2. A1書記長ほか2名について
      組合から、評価対象期間である6月から11月までの期間における各人の具体的な勤務状況、成績等についての具体的な疎明がなく、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。(棄却)
    3. A2について
      A2への支給率は0.23か月であり、会社のいう基準の0.7か月よりも低かった。会社は、組合及び組合の中心的な存在として会社の方針に異を唱えていたA2を嫌悪し、会社から排除すべく、同人が異動前の業務も兼務する中でそれなりに良好な勤務成績を上げていたにもかかわらず、恣意的な評価基準により、協調性に欠けることなどを理由に評価を下げたものとみざるを得ず、同人に対する25年冬季一時金の支払は、組合活動を理由とした不利益取扱いに該当する。(救済)
  17. 残業禁止について
    当時、A2が時間外労働をせざるを得ない勤務内容、状況、業務量であったことについての組合からの具体的な疎明はなく、また、他の従業員に対しても会社が残業しないように呼びかけをしていることからすると、会社がA2に残業してはならないと伝えたことは、不利益取扱い当たるとはいえない。(棄却)
  18. 残業代不払について
    1. A4副委員長については、残業代の計算を巡り、26年5月9日及び8月11日に会社が金額を提示し、7月10日、同月23日、8月8日、同月27日などの団体交渉において、組合と会社とが協議した上で、12月に、同人が、残業代の支払について会社と合意しており、不利益取扱いに当たるとはいえない。(棄却)
    2. A2についても、残業代の計算を巡り、5月9日、8月11日及び9月2日に会社が金額を提示し、7月10日、同月23日、8月8日、同月27日などの団体交渉において、組合と会社とが協議しており、会社がいたずらに協議を遅延させている形跡も窺われないことから、会社と協議中であったものと評価することができ、会社が同人に残業代を支払っていないことをもって、不利益取扱い当たるとはいえない。(棄却)
  19. 26年夏季一時金平均支給率の回答について
    一時金の支給率は、組合にとって具体的な交渉を行うに当たって必要な情報であるといえ、26年夏季一時金の交渉においてその情報を開示しようとしなかった会社の姿勢は、組合と団体交渉で妥結しようとする意思を欠いたものであり、一時金の交渉における従来の慣行を一方的に変更して団体交渉を無力化することにより、組合の弱体化を企図したものであるとみざるを得ない。このような会社の対応は、組合の運営に対する支配介入及び不誠実団体交渉に該当する。(救済)

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成25年3月1日
  2. 公益委員会議の合議
    平成28年1月19日
  3. 命令書交付日
    平成28年2月22日

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