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平成27(2015)年6月25日更新

報道発表資料

〔別紙〕

命令書の概要

1 当事者の概要

  1.  被申立人会社は、昭和50年6月に設立され、学習塾である「Z1学院」、「Z2予備校」を設置するとともに、「Z3塾」のフランチャイズ教室の運営を行うなどして、中学校、高等学校及び大学への受験指導等の教育サービス事業を行う株式会社である。本件申立時の従業員数は、約750名である。
  2.  申立人組合は、43年12月に結成された、主に首都圏の企業の従業員の個人加盟をもって組織するいわゆる地域合同労組である。本件申立時の組合員数は約850名である。
  3.  申立人支部は、Z1学院の講師により平成24年12月に結成された労働組合であり、組合に加盟している。本件申立時の組合員数は8名である。
  4.  A1は、昭和63年4月に専任講師(現在の呼称は「常勤講師」である。)として採用され、Z1学院の教室で主に小中学生の受験指導を担当していた。A1と会社との雇用契約は、契約期間を1年とする有期雇用契約であり、本件結審日に至るまで複数回更新されている。
     A2は、平成3年春に非常勤講師として採用され、5年9月に一旦雇用契約が終了したが、7年3月から専任講師として再度採用され、Z1学院の教室で主に理科系科目の受験指導を担当していた。A2と会社との雇用契約は、契約期間を1年とする有期雇用契約であり、常勤講師の上限である満50歳に達する26年2月28日まで複数回更新されていた。
     A3は、3年11月1日に採用され、4年3月からは専任講師として、Z1学院の教室で主に小中学生の受験指導を担当していた。A3と会社との雇用契約は、契約期間を1年とする有期雇用契約で複数回更新されていたが、満50歳に達したため、25年2月28日、期間満了により終了した。その後、A3は、3月1日付けで嘱託教務社員として再雇用された。

2 事件の概要

  1.  24年12月13日、Z1学院の講師らは、賃金減額の撤回及び労働環境の改善等を求め、支部を結成し、執行委員長にA1が、書記長にA3がそれぞれ就任した。25年1月16日、支部は、会社に公然化を通知した。また、2月8日、支部は、会社に対し、A2の組合加入を通知した。
  2.  支部と組合は、新聞社や雑誌社等に対して会社の労働条件や労使関係等についての情報提供を行った。また、A3は、柏労働基準監督署長に対し労働基準法違反の申告を行うなどした。さらに、支部は、ストライキや数度にわたる会社の門前等での情宣活動を行った。
  3.  会社は、A1に対して、25年度の夏期講習及び通常の担当授業数を削減するとともに同人の賃金も減額した。また、A2に対して、26年2月28日で同人との間の雇用契約を終了させ、嘱託教務社員として再雇用しなかった(以下「本件再雇用拒否」という。)。さらに、会社は、A3に対し、26年2月28日で同人との間の雇用契約を期間満了により更新しなかった(以下「本件雇止め」という。)。
  4.  本件は、1)A1に対する担当授業数削減及び賃金減額、2)A2に対する本件再雇用拒否及び3)A3に対する本件雇止めは、同人らが組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合の運営に対する支配介入に、それぞれ当たるか否かが争われた事案である。

3 主文(要旨)

  1.  A1に対し、25年3月1日から26年2月末日までの間に追加コマが割り当てられたものとして取り扱い、同期間中に追加コマが割り当てられなかったことに伴い得られなかった賃金相当額を同人に支払わなければならない。
  2.  A2を26年3月1日付けで嘱託教務社員として再雇用したものとして取り扱い、同日から同社員として職場に復帰するまでの間の賃金相当額を同人に支払わなければならない。
  3.  A3との雇用契約を26年3月1日付けで更新したものとして取り扱い、同人を原職に復帰させるとともに、同日から原職に復帰するまでの間の賃金相当額を同人に支払わなければならない。
  4.  文書交付及び掲示(A1に対し、25年3月1日から26年2月末日までの間に追加コマを割り当てなかったこと、26年3月1日付けでA2を再雇用しなかったこと及び同日付けでA3との雇用契約を更新しなかったことがいずれも不当労働行為であることの確認)
  5.  履行報告

4 判断の要旨

(1) A1に対する担当授業数削減及び賃金減額について

  1.  支部公然化後におけるA1の25年度の年収は大幅な減額となっているが、同人が支部公然化前の24年12月7日に会社から示された賃金のシミュレーションの範囲内に収まっており、ある程度予定されていたものと評価することができる。
     しかし、A1が、24年12月7日に会社から25年度は追加コマが付きやすい小学部を担当することを勧められ、実際小学部を担当したにもかかわらず、追加コマが割り当てられなかったこと(及び追加コマ分の賃金が支給されなかったこと)は、支部公然化前に想定されていた「追加コマの担当」が公然化後に反故にされたということができ、同人に対する不利益な取扱いに該当するものといえる。
  2.  会社は、A1に対して追加コマを割り当てなかった理由として、ア)25年度の契約締結の遅れ、イ)能力不足を挙げ、これらの理由により追加コマを割り当てなかったのであり、組合員であることを理由とするものではない旨主張するが、いずれも採用することができない。
  3.  A1の支部執行委員長としての積極的な活動や労使関係の緊迫化に照らせば、会社が支部執行委員長である同人を嫌悪したため、同人に対して追加コマを割り当てないとの取扱いをしたと推認せざるを得ない。
  4.  以上を総合的に勘案すれば、会社が、A1に対して追加コマを割り当てずに担当授業数を削減したことは、同人が支部執行委員長であることを理由とした不利益取扱いに当たるとともに、支部執行委員長に不利益を課すことにより、支部の影響力の減殺を図ろうとした支配介入にも該当する。

(2) A2に対する本件再雇用拒否について

  1.  会社は、本件再雇用拒否の理由は、A2の能力不足によるものであると主張するが、同人が嘱託教務社員として再雇用し難いほど能力が不足していたとは認め難い。
  2.  契約終了に関する面談における、A2に対する組合を脱退すれば嘱託教務社員として再雇用する可能性があることを示唆するような会社の一連の発言は、同人が組合を脱退すれば、嘱託教務社員として再雇用される可能性があることを示唆したものであるということができる。
    こうした経緯を考慮すると、A2の能力不足を理由として本件再雇用拒否に及んだとする会社の主張は、採用することができない。
  3.  以上のとおり、会社が、A2に対し、本件再雇用拒否に及んだことは、同人が組合員であることが理由であると推認することができ、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるとともに、支部組合員を職場から排除することにより、支部の弱体化を図ろうとした支配介入にも該当する。

(3) A3に対する本件雇止めについて

  1.  A3は、常勤講師として1年契約を20年間更新し、その間の勤務成績は良好であり、25年度は嘱託教務社員として再雇用されている。
     会社においては、嘱託教務社員として再雇用された者は、本人が希望すれば嘱託教務社員の契約を更新されている例が多く、また、A3も、本件雇止めの直前である26年2月19日の面談において、26年度も雇用継続して個別授業を担当することを提案されている。
     これらのことからすると、A3が、嘱託教務社員の1年目の更新時期に雇止めとされたことは、極めて不自然である。
  2.  会社は、A3の嘱託雇用契約を終了させたのは、同人に対するクレームなどにみられる問題行動が原因で、改善の見込みがないと判断したためであると主張する。しかし、クレームの内容であるA3の暴言について、同人と保護者との言い分が異なっており、会社が、同人から事情聴取をしたなどの事情も認められないから、会社の主張は採用することはできない。
  3.  A3は、柏の葉教室の過半数代表者に選出されて以降、36協定の締結を拒否し、従前の未払賃金の支払を求めるなど、会社に対して対立的な行動をとっている。これを受け、会社も、A3の集団授業を全て外すなど強硬な対応に出ており、過半数代表者としてのA3の活動を嫌悪していたと認められる。さらには、A3は、支部公然化以降労使関係が緊迫した状況で、支部書記長として組合活動に参加していた。
    これらのことからすると、本件雇止めは、支部書記長であるA3を排除することを意図していたものと推認せざるを得ない。
  4.  以上からすれば、本件雇止めは、保護者からのクレームを口実に、会社がA3を排除することを目的として行ったものとみるのが相当であり、同人が支部書記長であることを理由とした不利益取扱いに当たるとともに、支部書記長を職場から排除することにより、支部の弱体化を図ろうとした支配介入にも該当する。

5 命令交付の経過

  1.  申立年月日
     平成25年12月27日
  2.  公益委員会議の合議
     平成27年6月2日
  3.  命令書交付日
     平成27年6月25日

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