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平成27(2015)年5月28日更新

報道発表資料

〔別紙〕

命令書の詳細

1 当事者の概要

(1) 申立人組合は、肩書地に事務所を有し、東京北部地域(文京区、豊島区、北区、板橋区及び練馬区)で働く労働者等で構成する、いわゆる合同労組で、本件申立時の組合員数は約50名である。
 組合の下部組織として、法人で働く職員で結成したX2分会(以下「分会」という。)がある。
(2) 被申立人法人は、平成2年に設立され、練馬区等で、特別養護老人ホームのY2苑、Y3苑等を運営する社会福祉法人である。
 申立人組合の組合員らが勤務するY3苑では、短期入所生活介護事業(ショートステイ)、通所介護事業(デイサービス)等を行っているほか、同施設内に訪問看護ステーションを設けて、訪問看護サービスも行っている。本件申立時の従業員数は、約350名である。

2 事件の概要

 被申立人法人が運営する施設の訪問看護ステーションで、訪問看護師として勤務するX2とX3は、利用者の家族が訪問看護の記録を見たいと要求していることを伝え聞き、これが開示されると利用者と家族の関係が悪化するのではないかと不安になり、平成22年7月15日、申立人組合に相談し、同日加入した。7月16日、組合は、看護記録の開示の件など、業務に関する申入れを法人に行い、22日、法人は、開示予定がない旨等を文書で回答した。
 その後、看護記録の開示や職場環境の改善等についての団体交渉が行われたが、法人は、組合の質問や要求に対し、「業務の中で回答する。」、「個人情報のことをもとに話はできない。」などと発言した。
 法人は、その後三回にわたり文書を組合に交付し、その中で組合が団体交渉で利用者の個人名を発言したこと等について、組合及び組合員に対し、守秘義務及び個人情報保護義務の遵守を求めた。
 23年3月31日、法人は、管理者不在のため、訪問看護ステーションを休業した。
 本件は、1) 本件団体交渉における法人の対応が、不誠実な団体交渉及び組合の運営に対する支配介入に、2) 法人が交付した一連の文書が、組合の運営に対する支配介入に、3) 法人が23年3月31日に訪問看護ステーションを休業したことが、組合の運営に対する支配介入に、それぞれ当たるか否かが争われた事案である。

3 主文

 本件申立てを棄却する。

4 判断の要旨

(1) 本件団体交渉について

 1) 本件団体交渉で議題となった看護記録の開示問題は、利用者の個人情報に密接に関連するため、交渉を続行すれば利用者の個人情報に踏み込んだ議論にならざるを得ず、団体交渉には法人の職員ではない組合員が出席していたことからすると、法人が、利用者の個人情報が第三者に伝わることを懸念して、団体交渉ではなく業務の中で話し合おうとしたことも、労使間で個人情報を外部に漏らさないとの合意がなされていない以上、やむを得ない状況にあったといえる。
 このようなことから、法人が、団体交渉の場ではなく業務の中で話をすると述べたことにも、相応の理由があるといえる。

 2) 法人は、訪問看護ステーションの定例会において、施設長又は課長が出席し、組合から指摘があった職場環境の改善等について話合いを行い、訪問の編成を見直すなど対策を講じていることが認められる。

 3) また、法人は業務の中で回答すると言いながらも、全く組合の質問に応じていないわけではなく、本件団体交渉において、看護記録の開示問題の経過や定例会で話し合ったことなどについて、説明を行っているほか、職場環境の改善について、話合いが進展しているところも認められる。

4) 以上の事実からすると、法人が、業務の中で回答するとの対応により、組合との実質的な交渉を妨げたとする事情は見当たらず、法人の対応は、不誠実な団体交渉とはいえない。

(2) 法人が交付した文書について

 1) 組合は、22年7月22日に法人が組合に交付した文書が、組合の運営に対する支配介入に当たると主張する。しかし、同文書は、看護記録の開示について、開示を前提とした話にはなっていないこと、安心して働ける職場環境の構築するに当たって、報告、相談、連絡が不足していること、それによって今回のような職場が混乱した事態の再発を防止することを記載したもので、組合員の団結を妨げる意図である旨の組合の主張は、採用することができない。

 2) 組合は、10月4日、11月30日及び12月29日に法人が組合に交付した文書が、組合の運営に対する支配介入に当たると主張する。しかし、これらの文書の主な内容は、組合が団体交渉で利用者の個人名を発言したこと等について、守秘義務及び個人情報保護義務の遵守を求め、法人の見解を述べるにとどまるものであり、その記載内容も、法人が定める個人情報保護規程、倫理規程及び個人情報管理手順書の趣旨に沿ったもので、殊更、組合活動を制約するものとは認められず、組合の主張は、採用することができない。

 以上のとおり、法人が交付した文書は、組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。

(3) 訪問看護ステーションの休業について

 1) 休業の理由について
 訪問看護ステーションを休業するに至った発端は、管理者が勤務を継続することができなくなったことであり、管理者が不在となることで、法令に規定する基準を満たさなくなり、休業に至ったと認められる。そして、管理者が勤務を継続することが困難となったのは、団体交渉等で、管理者に対する責任追及がなされ、第3回団体交渉で管理者に対する不適任の申立てがなされたことが原因と考えられ、訪問看護ステーションが休業することになった一因を法人が意図的に作出したとは認められない。

 2) 管理者を確保できなかったことについて
 組合は、法人が、管理者の求人に当たって、「管理者経験者」という条件を付し、意図的に厳しく設定したと主張する。
しかし、訪問看護ステーションでは、求人当時、職員間の対立が深刻化していた状況にあり、管理者に対する責任の追及が激しく行われていたことからすると、法人が管理者の人選について慎重になり、管理者経験者との条件を付したことも無理からぬところであり、法人が、この条件を付し、これを維持したことには、相応の理由があったといえ、意図的に条件を厳しく設定したとは認め難い。

 3) 休業が組合の解体を目的としていたとの主張について
 法人は、訪問看護ステーションの休業後も、同ステーションで勤務する組合員を含む非常勤看護師全員に対し、引き続き雇用できるよう努力すると通知し、実際に、新たな雇用場所として、訪問看護ステーションと同じ施設内の勤務場所等を非常勤看護師全員に提示している。X3は、継続雇用を希望せずに退職したが、継続雇用を希望したX2については、法人は、X2の希望を聞きながら団体交渉を重ね、最終的に訪問看護ステーションと同じ施設内で雇用している。その後2年間、X2が、自らの意思で退職するまで、法人は同人を継続雇用している。したがって、法人が組合員を法人から放逐し、組合を壊滅させようとしたとは考え難い。

 4) 結論
 以上のことからすれば、訪問看護ステーションが休業に至った経緯には特段不自然な点はなく、求人の募集条件に管理者経験者との条件を付し、これを維持したことには法人として相応の理由があり、組合員を含む非常勤看護師全員に対し継続雇用の機会を提示し、X2については、訪問看護ステーションと同じ施設内で引き続き雇用していることを併せ考えると、法人が23年3月31日に訪問看護ステーションを休業したことが、組合の運営に対する支配介入に当たるということはできない。

5 命令交付の経過

  • (1) 申立年月日
     平成23年1月20日
  • (2) 公益委員会議の合議
     平成27年4月21日
  • (3) 命令書交付日
     平成27年5月28日

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