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平成27(2015)年4月8日更新

報道発表資料

〔別紙〕

1 当事者の概要

 (1) 被申立人法人は、明治21年に設立され、肩書地において、小学校、中学校、高等学校を運営する外、東京都町田市において、四年制大学を運営する学校法人である。本件申立時の教職員数は約130名である。
 (2) 申立人組合は、法人に雇用される教職員によって組織された労働組合であり、本件申立時の組合員数は64名である。

2 事件の概要

 法人は、平成22年5月27日、理事会において、懲戒処分に係る就業規則改正を決定し、翌5月28日に組合に通知した。以後、組合と法人とは団体交渉を行ってきたが、23年6月13日の第8回団体交渉において、法人は、交渉を尽くしたなどとして、組合の団体交渉継続の要求に応じなかった。7月29日、法人は、組合の意見書を付さずに就業規則の変更を渋谷労働基準監督署長及び八王子労働基準監督署町田支署長に届け出た。
 その後も、組合は、法人に団体交渉申入れを続け、24年3月13日及び5月29日にも法人に団体交渉を申し入れたが、法人は、いずれの申入れに対しても、就業規則改正については、組合と交渉を十分に尽くしており、労働契約法第10条に定める合理的な変更であると理解しているなどと回答書を出し、団体交渉に応じなかった。
 本件は、法人が、24年3月13日付け及び5月29日付けで組合の申し入れた就業規則改正に関する団体交渉について、既に交渉を十分に尽くしたとして拒否したことが、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文

 本件申立てを棄却する。

4 判断の要旨

(1) 就業規則第39条第4号(降職・降格)について
 1) 法人は、降職・降格を必要と判断した事例、他の学園の調査状況、能力の問題として人事異動により対応できない理由等の説明をしていることが認められ、組合に、一応の説明を行い、さらに、交渉の結果、法人は、降職・降格を事務職のみに適用し、5等級までは対象外とする旨の回答もするなど、それ相応の対応をしている。
 2) 第8回団体交渉では、法人は、5等級までの自動的に上がる号俸より下げるわけにいかないとした上で、900万円というのは一つの例であると述べている。このことから、5等級の事務職員を念頭において、900万という例を挙げた旨を述べているとみられるのであるから、その場限りの説明に終始したとの組合の主張は採用することができない。
 3) 組合は、法人が、事務職に限る、5等級までは対象とはしない内容を盛り込むと述べたにもかかわらず、実際には盛り込まれなかったと主張する。
 しかし、組合は、降職・降格処分にふれること自体に反対している状況だったのであり、降職・降格の対象を事務職に限り、5等級までは適用しないのならば了解するという姿勢だったわけではなかったことに鑑みると、法人が、上記発言を盛り込まなかったことだけを取りあげて、問題にするのは適当ではない。また、これ以上、議論が進展する見込みがあったと認めるに足りる疎明もなく、法人が、結果として上記発言を盛り込まなかったことをもって、団体交渉の継続を必要とする理由とまでは認めることはできない。
(2) 就業規則第40条及び第41条の懲戒事由について
 1) 法人は、第4回団体交渉までの組合とのやり取りを経て、就業規則の表現を変更している。第6回団体交渉以後では、第41条第8号「犯罪を犯したことが明白で」に関するやり取りが行われている
 そして、組合は、第8回団体交渉で、「まだまだ質問がたくさんありますので・・・。」とも述べている。その一方で、第8回団体交渉以前から、組合は、法人の事前の質問事項や議案の提出要求などにも、検討します、努力している、などと回答しているものの、法人の要求に応じ、質問事項や議案を提出した事実は認められない。すなわち、組合は、新たな事由についての質問や意見を表明していないのであるから、協議や質疑応答がされていないとはいうことはできない。
 2) 組合は、第5回団体交渉で、改正前の就業規則第28条と第40条及び第41条の懲戒事由が重複している、矛盾していると混乱するなどと指摘し、比較表の作成を要求した。
 しかし、その後、法人は、検討の結果、矛盾点はなかったことを説明しており、比較表の作成は必要なくなったとして、法人が比較表の作成をしなかったことを約束違反とまでは、いうことはできない。
(3) 就業規則第42条(管理監督者の責任)について
 1) 法人は、第39条の文末を第42条と同様の表現に変更した理由については、第6回団体交渉において、組合が管理監督者に甘く、一般教職員と差があるということだったため、公平性を保った旨を答えている。その前の第5回団体交渉では、組合が、管理監督者に甘く、一般教職員と差があると主張しているとも受け取れる発言をしている。
 このため、第39条の修正は、法人なりに組合の意見を取り入れて、組合及び法人の双方が受け入れることができる案を示したものとみられ、法人が合意達成に向けた努力の一環で行ったものと評価することができ、論点をすり替え、独断的に変更を行ったとの組合の主張は採用することができない。
 2) 第42条の条文から「管理監督者の指導の怠慢または管理不行き届きにより」の24字を削除したこと(以下「24字削除」という。)について、組合は、法人が改めてその理由を説明し、組合の理解を求める必要があったと主張している。
 第7回団体交渉においては、部下の非違行為と管理監督者の指導の怠慢あるいは管理不行き届きに因果関係があった場合に、管理監督者に対しても懲戒処分を行うべきとする組合の主張と、管理監督者に懲戒処分を必ずしも行うとは限らないという法人の主張とが対立していた。法人は、24字削除を行って、組合の主張と法人の主張の対立の解消を図ろうとしたものであったとみられる。また、組合が、24字削除の説明が分からないと答えたり、明確に反対したような事実も認められない。このような団体交渉の経緯に鑑みると、この点についていまだ交渉が尽くされていないとはいえない。
(4) 就業規則第44条(懲戒委員会)及び懲戒委員会規程について
 組合は、法人が資料を示していないため、交渉を続ける必要があると主張する。
 1) 理事長は懲戒委員会に入らないという要求に対する法人の対応は、現場の責任者である学長、校長、事務局長が入って懲戒処分を決定すべきと考えていること、副校長や副学長を委員にできないのは理事ではないためであること、委員を理事とする理由は懲戒処分は経営に責任のある理事が行うべきであると考えていること、理事長が現場の長を兼務せざるを得ない現状、及び他の学園の状況を説明している。また、組合の意見を受けて、懲戒委員会を諮問機関とすることとし、兼務する場合に限り理事長は委員となること、構成員に配慮した運用をしていきたいと述べるなど、一定の譲歩の姿勢もみせている。そして、これらの説明、譲歩内容について資料提示が必要であるとの事情は特段窺えない。上記法人の対応を考慮すると、資料は示していないものの、兼務している理事長が入ることについては、双方の見解の相違というほかなく、議論は平行線になっていたものと認められる。
 2) 複数の教職員を懲戒委員会の委員にするという要求に対する法人の対応は、懲戒処分は、経営側が決めるものであるとの理由だけで組合要求を拒否しているものではなく、理事だけで委員が構成されている学園があること、理事が情報を多く持っていること、除斥規定の明文化、懲戒解雇は理事会で決議することとしたことなどから、組合の主張する公平性や中立性の確保に法人なりには応じているのであるから、さらに資料提示の必要性は認められず、この点についての交渉は尽くされているといわざるを得ない。
(5) 組合が申し入れた就業規則の懲戒処分に関する各条項及び懲戒委員会規程について、いずれも交渉が尽くされていると評価することができ、団体交渉の継続を必要とする事情は認められない。
 さらに、法人が、1) 意見書の提出期限を、複数回延長したこと、2) その間に団体交渉を8回行ったこと、3) 団体交渉を効率的なものとするため、事前の質問事項や議題の提出を繰り返し要求等していること、4) 団体交渉の結果、変更案を複数回提示していることをも考慮すると、法人の団体交渉における対応が不誠実とはいえず、法人が、24年3月13日付け及び5月29日付けで組合が申し入れた団体交渉に応じていないことには正当な理由があるといわざるを得ず、法人が団体交渉を拒否したことは、正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。

5 命令交付の経過

 (1) 申立年月日 平成24年12月14日
 (2) 公益委員会議の合議 平成27年3月3日
 (3) 命令書交付日 平成27年4月8日

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