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平成27(2015)年2月19日更新

報道発表資料

〔別紙〕

1 当事者の概要

(1) 被申立人会社は、平成3年に設立され、半導体製造装置などの設計請負業を行い、取引先への従業員の派遣を行っている有限会社で、25年7月4日現在の従業員数は約10名であり、肩書地に本社を置き、大分県大分市に支社を有している。
(2) 申立人組合は、業種を問わず東京都三多摩地区を中心とする企業に雇用される労働者で構成されるいわゆる合同労組である。本件申立時の組合員は、約200名であり、そのうち、会社で勤務する組合員は1名であった。

2 事件の概要

 Aは、平成18年10月に会社に入社し、23年4月15日から、申立外Z社に派遣され、設計業務に従事した。派遣開始と同時に、会社は、Aの賃金を1か月当たり75,000円増額した。
 24年6月30日をもって会社とZ社との労働者派遣契約は終了したが、会社とZ社とは、改めて業務委託契約を締結し、7月1日以降、Aは、請負の形態で引き続きZ社で勤務することとなった。その際、会社は、派遣契約の終了に伴い、Aの賃金を派遣前の水準に引き下げた。また、会社は、Aに、6月25日支給の夏季賞与を支給しなかった。
 7月1日、Aは、組合に加入し、8月7日、組合は、会社に、Aの賃金引下げや賞与支給等6項目について団体交渉を申し入れたが、会社は、回答しなかった。
 組合は、10月22日、当委員会にあっせんを申請し、12月19日、会社は、当委員会に、これを受諾すると回答したものの、業務多忙を理由に、25年1月中はあっせん期日に出席できないと述べた。
 また、会社は、Aの12月分の賃金から、「業務不履行」を理由として25,000円を減額した。
 25年1月25日、組合は、あっせん申請を取り下げ、本件不当労働行為救済申立てを行った。
 本件は、会社が、1)24年8月7日に組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことが正当な理由のない団体交渉拒否に、2)Aの24年12月分の賃金を25,000円減額したことが、同人の組合活動あるいは組合員であるが故の不利益取扱い及び組合の運営に対する支配介入に、それぞれ当たるか否かが争われた事案である。

3 主文の要旨

(1) 会社は、組合が、平成24年8月7日付けで申し入れた要求事項について、団体交渉を申し入れた場合には、速やかに、かつ、誠実に応じること。
(2) 文書交付
 文書の要旨:会社が平成24年8月7日に組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないよう留意すること。
(3) 前項の履行報告、その余の申立ての棄却

4 判断の要旨

(1) 団体交渉拒否について

1) 会社は、24年8月7日の組合からの団体交渉申入れに対し、本件申立てに至るまで、一度も、自ら組合に連絡をすることなく、また、組合からの再三の電話連絡に対しても、団体交渉に応ずるか否かの回答をせず、いわば一貫して申入れを無視していたものであるから、団体交渉を拒否していたことは明らかである。
2) 組合が申し入れた6項目のいずれもが、Aの労働条件その他の待遇に当たることは明らかであり、義務的団体交渉事項であるといえる。それにもかかわらず、会社は、これらの要求事項について、組合からの団体交渉申入れを拒否していたものである。
 したがって、24年8月7日付団体交渉申入れに対し、会社が、本件不当労働行為救済申立て前に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。
3) 本件労使間では、本件申立て後の25年8月5日に第1回団体交渉が行われており、会社は、本件申立て後は期日の調整に応じており不当労働行為に該当しない旨主張するが、第1回団体交渉では、派遣終了に伴うAの賃金減額の件について、労使双方が互いに譲ることなく、自己の認識及び主張を述べ合うことにほぼ終始した。そして、会社は、当日の団体交渉を1時間で打ち切って席を立ったため、残りの5項目については話し合うことすらできなかった。
 また、組合は、24年7月1日以降のAのZ社における労働実態が偽装請負ではないかと追及し、8月22日まで回答するよう要求し、会社は、同日までに返事ができるか否かについて、次回の団体交渉の日程も合わせ、同月7日まで回答するとした。
 このように、第1回団体交渉は、さらに継続することを前提として終了したものといえるが、会社は、8月8日、派遣終了に伴うAの賃金減額について、これ以上話合いを続けたり説明をしたりする意思がないこと、別の議題についての話合いには応ずることを文書で回答した。組合は、その後、改めて会社に団体交渉を申し入れたが、会社は、これに対し回答せず、以後、団体交渉は開催されていない。
 結局、第1回団体交渉によってAの労働条件についての交渉が実質的に尽くされたとは到底認められず、また、第1回団体交渉後、会社が期日の調整に応じたとは評価できないのであるから、会社の主張は採用することができない。

(2)24年12月の減給処分について

 本件減給処分について、組合は、Aの組合加入あるいは同人及び組合の組合活動に対する報復であると、一方、会社は、同人から一切の業務報告がなく、特に、派遣終了後の24年7月ないし11月の5回の業務命令不履行と、工数に関する説明を求めたにもかかわらず無視したことによるものであると主張するので、この点につき、以下検討する。
1) Aが24年7月1日以降Z社で引き続き勤務するに当たり、会社が、同人に対し、6月29日、毎月末か月初めは事務所に寄るようEメールで指示したほかに、何らかの指示をした事実は認められない。
 また、会社は、Aに12月12日付及び同月27日付Eメールを送信し、実績工数(移動時間などの間接時間も含めた勤務時間の総合計)に対し売上工数(会社がZ社に請求する料金の積算の根拠となる作業時間の合計であり、この数字と時間単価の積がZ社へ請求する料金である。)が少ない状況について報告するよう指示し、報告がないことは処分の対象になる旨連絡しているものの、同人は、派遣期間終了に伴い、7月1日以降はZ社から付与されたメールアドレスを使用することができなくなっていたため、これらのEメールを見ることはできなかった。
 そして、会社は、AがこれらのEメールを見たか否かを確認することもなく、また、工数について、Eメール以外の手段で同人に連絡をしたり、事実確認をすることもなく、本件減給処分に及んでいる。
 したがって、本件減給処分は、そもそも、処分の前提となる指示を欠いていた上、適正な手続にのっとったものであるということもできない。
2) 一方、Aは、7月以降、毎月1回は会社に立ち寄り、会社の業務実績報告書に業務内容と作業工数、勤務日ごとの出社時間及び退社時間を入力したが、業務実績報告書に入力する項目以外に、今後の業務内容及び予定などを報告することはなかった。
 24年7月から12月にかけて、Aの実績工数に対し売上工数が少ない状況が続き、同人は、このことは、会社にとってみれば従業員を遊ばせている状況に等しく、この状況を把握しないと今後の方針が立てられないとの会社と同様の認識を有していたが、報告するように指示がなく、また、必要であれば連絡があると考え、会社に報告していなかった。
 Aがこのような態度に終始していたこともまた、適切とはいい難く、特に、会社としては、Eメールにより、工数について報告するよう指示し、報告がない場合には処分の対象となると連絡しているにもかかわらず、Aがこれを無視したものと理解していたのであるから、報告をしない同人の態度を重大な問題ととらえ、何らかの制裁が必要と考えるに至ったこと自体はやむを得なかった面もある。
 したがって、本件減給処分は、上記1) のとおり適正な手続にのっとったものとはいえないものの、会社の認識を前提とすると不合理なものとまでいうことはできない。
3) ところで、Aが組合に加入する以前から、会社と同人との間では、同人の派遣終了に伴う給与減額、24年夏季賞与の未払いなどのトラブルが相次ぎ、会社と同人との関係は悪化の一途をたどっていたといえる。
 一方、24年7月1日、Aが、組合に加入して以降、会社から、組合又は同人の組合活動を批判したり妨害するような言動は特段なく、また、同人も、目立った組合活動は差し控えていた。
4) また、会社は、Aが組合に加入する以前の23年に、組合員ではない従業員Cに対し、同様の理由で処分を行ったが、Aに対する減給処分が、Cに対する処分との均衡を失するほど厳しいものであったと断ずることはできない。
5) 会社が本件減給処分を行った時期は、組合が24年10月22日に当委員会にあっせん申請を行い、会社が、当委員会に対し、応諾すると回答した直後であった。このことに照らせば、本件減給処分はXの組合加入あるいは同人及び組合の組合活動に対する報復であるとの組合の主張も理解できないわけではない。
 しかし、会社が、12月12日付EメールでAに業務報告を求めてから、12月29日支給の給与から減額をする間の時間的な流れについて、特段、不自然な点は認められず、組合の当委員会へのあっせん申請の時期と本件減給処分の時期が近接していたことは、必ずしも、組合の上記主張の裏付けということはできない。
 むしろ、前記2)及び3)のとおり、会社とAとの間では、同人の組合加入以前からトラブルが相次いでいたこと、組合加入後に会社から同人や組合の組合活動を批判したり妨害するような言動はなかったこと、同人は、業務報告書以上の報告をしないという態度に終始し、工数について会社に報告しなかったこと、組合員以外の従業員と比較して同人に対する処分が殊更に厳しいものであったとまではいえないことを考慮すれば、本件減給処分は、同人の組合加入あるいは同人及び組合の組合活動に対する報復というよりも、従前から続いていた会社と同人との対立が深刻化し、双方が、必要最低限行うべき連絡や報告を怠った結果、同人がEメールによる指示を無視したと会社が一方的に断定し、処分に及んだものとみるのが相当である。
 したがって、本件減給処分は、Aの組合活動又は同人が組合員であるが故の不利益取扱いであるということも、また、組合の運営に対する支配介入であるということもできない。

5 命令交付の経過

(1) 申立年月日 平成25年1月25日
(2) 公益委員会議の合議 平成27年1月20日
(3) 命令書交付日平成27年2月19日

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