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平成27(2015)年2月16日更新

報道発表資料

【別紙】

1 当事者の概要

(1) 被申立人Y1会社(以下「会社」という。)は、肩書地に本社を置き、石油卸売及び販売業を営み、22年12月現在の従業員数は770名である。
 会社は、本件申立時の商号はY2有限会社であったが、24年5月21日に組織を変更し、商号を会社に変更した。
(2) 申立人X1組合(以下「組合」又は「X1労自主」という。)は、昭和57年9月25日に結成された労働組合であり、会社の従業員及び元従業員で構成されている。本件申立時の組合員数は、31名である。

2 事件の概要

(1) 会社は、15年度に、職種別、職位別及び業績評価別に基本給の上限額を設定する制度を導入し、21年度に基本給上限額を引き下げた。組合員らは、既に基本給上限額に達していた、または、基本給上限額に達したため、賃上げが行われなかった。
(2) また、会社は、15年度から、専門職と事務・技能職の一時金の支給月率に差を設け、21年度の一時金の支給月率を、専門職は6.45か月、事務・技能職は4.65か月とした。そのため、当時、会社に雇用されていた組合員5名のうち、事務・技能職である4名の21年度一時金支給月率は、専門職に比べて少ない月率となった。
(3) 21年度において、会社は、組合員らを、平均を下回る業績評価に基づき、昇格させず、賃金及び一時金を支給した。
(4) 21年1月19日に、組合が、21年度賃上げ・一時金要求をして以降、22年2月8日に妥結するまでの間に、団体交渉が17回開催された。
(5) 本件は、会社が、1) 基本給及び一時金支給に関して、職種別・職位別・業績評価別に基本給上限額を設け、21年度に基本給上限額を引き下げたこと、 2) 21年度一時金について、専門職と事務・技能職の平均支給月率に差を設けたこと、 3) 21年度昇格・賃金・一時金に係る組合員の業績評価において平均を下回る評価を行ったことが、それぞれ、組合活動あるいは組合員であるが故の不利益取扱い及び組合弱体化を狙った支配介入に当たるか否か、また、4) 21年度賃上げ・一時金に係る団体交渉における会社の対応が、不誠実なものであったか否かが、争われた事件である。

3 主文の要旨

 本件申立てを棄却する。

4 判断の要旨

(1) 基本給上限額について

 職種別・職位別・業績評価別に基本給の上限額を設けたのは15年度のことであり、高齢層の基本給上限額を引き下げるように賃金制度を設定すること自体は格別特異な制度であるとはいえない。そして、基本給上限額は他組合も含む全従業員に適用されており、21年度に基本給上限額が引き下げられたことにより、組合員が殊更不利益に扱われたとの事実も認められない。また、この引下げによって、新たに基本給上限額に達することとなったX3とX4の基本給は、一時金算出基準となる月額は別として、賃上げこそなかったものの減額されてはおらず、基本給上限額を超える基本給のままであることも併せ考えれば、会社が、職種別・職位別・業績評価別の基本給上限額を設けて引き下げたことは、組合員であるが故に殊更に不利益に取り扱ったものであるとまではいえず、また、組合の運営に対する支配介入に当たるということもできない。

(2) 一時金支給月率について

1) 会社では、一般従業員を専門職と事務・技能職に分け、入社時の学歴、初任給、昇給基準、入社後のトレーニング、管理職への昇進、職務内容等が異なる雇用管理がなされており、経営判断により職種に応じた賃金体系を構築し、その結果、専門職と事務・技能職との間に一時金支給月率に差が生じたこと自体は不合理であるとはいえない。
2) そして、一時金支給月率の職種による差は、他組合の組合員も含む全従業員に適用されている。確かに、一時金支給の対象となる組合員は、1名を除いて事務・技能職ではあるが、その実数はわずか4名であって、この程度の少人数をもって、組合員を狙いうちにするために事務・技能職の一時金支給率を引き下げたものとまでみるのは無理であるから、専門職と事務・技能職の一時金支給月率に差を設けたことが、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえず、また、組合の運営に対する支配介入であるともいえない。

(3) 業績評価について

1) 会社では、昇格、賃金及び一時金は、業績評価により異なる仕組みになっている。
2) 組合員5名の業績評価は、いずれも平均を下回ったが、過去の組合員の業績評価をみると、組合員全体が常に平均を下回る評価を受けているわけではない。
3) X2の業績評価を、相対的に平均以上の業績評価を受けるに相当する業績を上げたと認めるに足りる具体的事実の疎明はなされておらず、頸肩腕障害によって勤務できなかったことにより、仕事量が少なくなったことを理由として、低い査定をすることが、組合活動を理由として殊更に不利益に取り扱ったものとはいえず、会社が、X2の業績評価を平均を下回るものとしたことが、組合に対する差別に基づくものと判断することはできない。
4) X3が、会計手続のための予防的手順を開発し、会社が、同人の貢献に感謝の意を表した事実は認められるものの、その他に、既に一般職の専門職としては最高の職位にある同人について、相対的に平均以上の業績評価を受けるのに相当する業績を上げたと認めるに足りる具体的事実の疎明はなされておらず、業績評価の前提となるEADSの記入を一部にとどめて自らの業績評価を改善する機会を自ら放棄していることも併せ考えれば、会社が、同人の業績評価を平均を下回るものとしたことが、組合に対する差別に基づくものと判断することはできない。
5) X4が、煩雑な業務を行い、電話対応が改善したという事情があったとしても、迅速に処理しなければならない業務上の必要が生じた際に、残業は組合と相談してから行うという対応で結果的に会社が同人に命ずることができず、その業務は他の従業員がやらなければならない状況であり、相対的に業務量が少なかったとみられること、及び業績評価の前提となるDレポートの記入を一部にとどめて自らの業績評価を改善する機会を自ら放棄していることを併せ考えれば、会社が、同人の業績評価を平均を下回るものとしたことが、組合に対する差別に基づくものと判断することはできない。
6) X5は、ヒヤリ・ハット・キガカリ・レポートの提出を上司から求められても提出しないなど大量の危険物を扱っている職場の安全活動に必ずしも積極的とはいえないこと、組合とではないが36協定の締結されている職場において夕礼の途中でも退社していること、業績評価の前提となるDレポートの記入を一部にとどめて自らの業績評価を改善する機会を自ら放棄していることなども併せ考えれば、会社が、安全確保の姿勢などを理由に、同人の業績評価を、平均を下回るもととしたことは、あながち不合理なものともいえず、組合に対する差別に基づくものと判断することはできない。
7) X6について、就労した期間に平均評価とすべき貢献をしたとの具体的事実の疎明はなく、Dレポートの記入を一部にとどめて自らの業績評価を改善する機会を自ら放棄していることも考慮すれば、会社が、X6について、1か月の病欠期間を除く評価期間に殊更高い貢献があったわけではないとして、業績評価を平均を下回る評価としたこと自体は、特に不合理であるとはいえない。
 X6は、8年から19年までの業績では、平均評価となったほか、9年11月には、上司から管理職になることを打診され、定年退職後は再雇用され、13年度から19年度は平均評価となった事実もある。
 以上を併せ考えれば、会社が、X6の業績評価を、平均を下回るものとしたことが、組合に対する差別に基づくものと判断することはできない。
8) 会社と組合との間に多数の訴訟や申立てが行われており労使関係は必ずしも良好とはいえないが、本件審査において、会社が、組合員であるが故に差別を行ったとする、組合を嫌悪していることを窺わせるに足りる具体的な事実の疎明はなされていない。
9) 以上を総合して考えれば、本件組合員に対する業績評価が平均を下回ったことは、組合活動あるいは組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえず、また、組合の運営に対する支配介入ともいえない。

(4) 21年度賃上げ・一時金の団体交渉について

1) 21年1月19日に、組合が、21年度賃上げ・一時金要求をして以降、22年2月8日に妥結するまでの間に、団体交渉が17回開催された。
2) 組合は、会社が、団体交渉において、ア TRサーベイの結果を開示しないこと、イ X3及びX4の総報酬が高止まりとする根拠を示していないこと、ウ ターゲットラインを示さないこと、エ あるべき姿の具体的内容を示していないことが不誠実な対応であると主張した。
3) 賃金交渉において、使用者がどのような資料等を提示すべき義務を負うかは、交渉の具体的な内容との関係で、その資料等が交渉にどの程度必要であるかによって異なる。
4) 会社は、総報酬(以下「TR」という。)で見て日本の一流企業と遜色ないレベルの処遇を、中長期的に安定して実現していく方針であり、処遇を決める際には、総報酬だけでなく、マーケットの動き、他社動向、従業員の貢献、組合要求等を総合的に判断し、交渉を通じて決めていくと述べ、TRサーベイを総合的な経営判断の一要素として使用するとの方針を伝え、賃上げに関しては基本給上限の制約のない者は平均で約1.7%の賃上げを実現し、一時金についてもレベル是正措置の対象とならない者は昨年と同一の月率を支給すると説明している。
 組合が、賃上げ率の根拠を問うたのに対し、会社は、上限にかからない人は1.65%程度、3分の2位の人が基本給上限額に達していないなどと答え、両者の質問と答えは必ずしもかみ合っているとはいえないが、その後、組合が、更に追及した事実は認められない。
5) また、会社が説明資料とした「全産業の年齢別平均所定内賃金」は、所定内賃金についての資料にすぎず、一時金ないし総報酬を引き下げる根拠とするには、十分とはいえないものの、高年齢層の賃金水準を是正する必要性についての説明資料を提出していると一応評価することができる。
 こうした事実を総合的に勘案すれば、会社は、高年齢層の賃金水準を是正する必要性について、組合の理解を求める努力をしているものとみることができる。
6) さらに、会社は、基本給上限額を超過した分の再配分先について説明し、ターゲットラインを示してはいないが、配分の仕方の概要についても説明しており、高年齢層の賃金水準を是正した分の原資を再配分する仕組みの概要は説明している。
7) 以上の経緯からすれば、会社は、賃上げ額、一時金月率について、一応の根拠を示し、高年齢層の賃金水準を是正する必要性について組合の理解を求める努力を行い、高年齢層の賃金水準を是正した分の原資を再配分する仕組みの概要を説明しているのであって、これに対する組合の対応を考えれば、会社がTRサーベイの結果を開示しないこと及びターゲットラインを示さないことをもって不誠実な対応であるということはできないし、前年以前の交渉でTRサーベイは、実施会社との関係で公表できない旨を説明していることも併せ考えれば、X3及びX4の総報酬が高止まりであるとする根拠について、組合の理解を得る努力を行っていないとはいえない。
 なお、「あるべき姿」については、明確な基準として団体交渉の中で取り扱われていた文言であるか不明である上に、22年以降の是正の必要性についての議論の中で出てきたものであり、21年度の賃上げ・一時金の団体交渉については「あるべき姿」の開示が不可欠なものとはいえないのであるから、会社がこれを示さなかったことをもって不誠実であるとまではいえない。

5 命令交付の経過

 (1)申立年月日 平成23年2月4日
 (2)公益委員会議の合議 平成27年1月13日
 (3)命令書交付日 平成27年2月16日

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