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報道発表資料  2013年11月7日  福祉保健局

鳥インフルエンザウイルス(H5亜型)を50倍以上の高感度で測定できる簡易診断法を開発
―鳥インフルエンザウイルス(H5亜型)のすべてを検出可能な高感度蛍光イムノクロマト―
―米国専門誌「PLOS ONE (プロスワン)」に発表―

 東京都インフルエンザ特別研究として、(公財)東京都医学総合研究所・芝崎太参事研究員らは、従来の方法と比較し、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)を簡易に50倍以上、また季節性では100倍以上の高感度で検出できる蛍光イムノクロマトキット、およびその測定機器の開発に成功しました。
 なお、この開発は東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合(TOBIRA、理事長:田中啓二)の組合員であるシンセラ・テクノロジーズ社(代表取締役 村口和孝)、コニカミノルタ社(代表執行役社長:松崎正年)、アドテック社(代表取締役:渡辺幹雄)、および北海道大学・大学院獣医学研究科(喜田宏教授)、熊本大学・感染・免疫学(阪口薫雄教授)等の産官学医連携によるものです。
 この研究成果は、米国科学雑誌「PLOS One(プロスワン)」の11月6日(米国東部時間)付オンライン版で発表されました。

(要約)
 季節性のインフルエンザの流行期には、早期の診断とそれに基づく治療薬の投与が望ましいです。しかし、現在使用されている簡易型のイムノクロマト法による診断は、10-15分程度で診断はできますが、感染直後(1-2日以内)の段階では陰性になることが多く、発症24時間以内での治療薬の投与が難しい状況にあります。
 さらに、これまでに全世界で600名以上罹患し、60%近い致死率が報告されている高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)に対しては、パンデミックに備えた早期の診断・治療が強く求められています。
 開発した高感度簡易蛍光イムノクロマト法は、50倍以上の高感度で測定でき、しかもH5亜型ウイルスのすべてを検査可能な簡易検査法です。高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)においても早期診断を可能としました。これにより、ワクチンや治療薬の確保、医療体制の準備、早期の患者さんの隔離など、多くの対策の強化を図ることが可能となります。

1 研究の背景

 A型やB型インフルエンザウイルスによる季節性インフルエンザは毎年流行し、さらには2009年に発生したパンデミック(世界的流行)を起こしたブタ由来新型H1N1ウイルスに加え、家禽や渡り鳥の間で流行しているH5N1およびH5N2鳥インフルエンザウイルス、さらには今年中国でヒトに感染したH7N9ウイルス等があります。特にH7N9ウイルスについては、人から人に感染してパンデミックを起こす可能性も指摘されております。
 特に高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)は、全世界で600名以上に感染し、60%近い致死率が報告されており、今後パンデミックを引き起こす可能性が危惧されています。このため、H5亜型のインフルエンザウイルスすべてを高感度で検出可能な簡易検査法の確立が望まれていました。

2 開発の概要

 東京都は平成20年よりこれらの危険なインフルエンザへの対応として、診断法、治療薬の開発を進めてきました。この度、(公財)東京都医学総合研究所の芝崎研究員等は、東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合の各社、各大学、都立病院などの臨床病院との産学医連携にて、従来のイムノクロマト法の50倍以上の高感度で鳥インフルエンザウイルス(H5亜型)を検出できる方法とその検出機器の開発に成功しました。この開発には一部経産省の平成22年度「課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」による助成を受け行いました。この方法では、従来の金コロイドを使用する方法に代え、蛍光色素を抗体に結合させた蛍光イムノクロマト法を独自に開発し、さらにこの蛍光色素を高感度に測定できる小型検出機器を開発することで高感度化に成功しました。この方法は鼻咽頭拭い液を用いて、従来法と同じ手順、同じ時間内で高感度測定可能です。
 H5亜型ウイルスには、様々な抗原性の変異株があり、これまで開発された抗体では一部のウイルスにしか反応せず、ウイルス株によって検出できないリスクがありました。今回、熊本大学・阪口教授との共同研究にて開発に成功した抗H5 HA抗体は、広範囲の抗原性のウイルスと高親和性で結合し、北海道大学・喜田教授との共同研究にて行った多数のH5亜型のウイルス自然分離株での検定で、すべてのH5亜型インフルエンザウイルスを検出できることが明らかとなりました。これにより、今後発生する可能性があるH5亜型ウイルス感染症すべての診断が可能となりました。

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イムノクロマトチップ 蛍光イムノクロマト測定装置

3 今後の展望

 今回開発した高感度蛍光イムノクロマト法とその測定機器は、H5亜型インフルエンザウイルスだけでなく、抗体が利用可能であれば、最近問題になっているH7N9インフルエンザウイルス感染症、さらにはがん、生活習慣病など幅広い疾患の簡易診断への応用が期待されています。

用語解説

1) イムノクロマト法

(参照:http://www.acute-care.jp/learning/course/immunoassay/ria/ic.html
 セルロース膜上を被検体が試薬を溶解しながらゆっくりと流れる性質(毛細管現象)を応用した免疫測定法である。検体中の抗原は検体滴下部にあらかじめ準備された金属コロイド等で標識された抗体(標識抗体)と免疫複合体を形成しながらセルロース膜状を移動し、セルロース膜状上にあらかじめ用意されたキャプチャー抗体上に免疫複合体がトラップされ程色し、それを目視により判定する。妊娠やインフルエンザ診断等で応用されている。

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図3 イムノクロマト法の原理
  1. キット上に検体を滴下する
  2. 一定時間放置する
  3. 目視による定性判定する(コントロールラインを必ず確認する)

メリット

  • 目視判定による定性判定が可能な項目がある
  • 装置を必要としない(一部読み取り装置有り)
  • 簡便である
  • キットの保管方法が簡便(多くは室温保存)
  • 必要な検体数だけ取り出して実施できるため無駄が無い

デメリット

  • 目視による判定のため、個人による判定誤差が見られる
  • 定量試験向きではない
  • 測定時間を厳守しないと、陰性、陽性の判定が異なることがある
  • ロット間差、試薬間差が存在する

2) 高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)

参考資料
 ア 厚労省、鳥インフルエンザ緊急総合対策(H16年3月16日)
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/02-01.html
 イ 東京都感染症情報センター
 http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/avianflu/
 ウ Yahoo ヘルスケアー
 インフルエンザ対策関連情報2012-2013から
http://health.yahoo.co.jp/column/influenza/

インフルエンザと新型インフルエンザはどう違うのですか?
 A型のインフルエンザはその原因となるインフルエンザウイルスの抗原性が小さく変化しながら毎年世界中のヒトの間で流行しています。これを季節性インフルエンザと呼んでいます。時として、この抗原性が大きく異なったインフルエンザウイルスが現れ、多くの国民が免疫を獲得していないことから全国的に急速にまん延することによって、国民の健康と生命、生活に、場合によっては医療体制を含めた社会機能や経済活動にまで影響を及ぼす可能性があるものを新型インフルエンザと呼んでいます。直近では、新型インフルエンザは、大正7(1918)年(スペインインフルエンザ)、昭和32(1957)年(アジアインフルエンザ)、昭和43(1968)年(香港インフルエンザ)、平成21(2009)年(インフルエンザ(H1N1)2009)に発生しました。しかし、世界に流行が拡がり、多くのヒトが新型インフルエンザに対して免疫を獲得するにつれ、このような新型インフルエンザも、季節的な流行を繰り返すようになっていきました。パンデミックインフルエンザ(H1N1)2009についても、平成23(2011)年4月からは、季節性インフルエンザとして取り扱われることになりました。
 次の新型インフルエンザウイルスはいつ出現するのか、誰にも予測することはできませんし、H1N1とは異なる亜型のウイルスがパンデミックを起こすことになります。
 平成21(2009)年にインフルエンザ(H1N1)2009ウイルスが流行した時には、人々が免疫を持っていなかったため秋季を中心に大規模な流行がおき、他の型や亜型のインフルエンザウイルスによる患者の発生はほとんどありませんでした。
 平成22(2010)年には、インフルエンザ(H1N1)2009ウイルスに加え、A香港型やB型のインフルエンザウイルスも流行しており、季節性インフルエンザとは異なる時期に大きな流行が発生する等の特別な状況は確認されませんでした。
 このような状況を踏まえ、厚生労働省は、平成23(2011)年3月31日、当時「新型インフルエンザ」と呼ばれたインフルエンザ(H1N1)2009ウイルスについて、通常の季節性インフルエンザとして扱うこととし、対応も通常のインフルエンザ対策に移行しました。

現在国内で流行しているインフルエンザはどのような種類ですか?
 インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、A型、B型、C型に大きく分類されます。このうち大きな流行の原因となるのはA型とB型です。現在、国内で流行しているインフルエンザウイルスは、A/H1N1亜型とA/H3N2亜型(いわゆる香港型)、B型の3種類です。このうち、A/H1N1亜型は、インフルエンザ(H1N1)2009と同じものです。A/H1N1亜型のウイルスの中でも、平成21年より前に季節性として流行していたもの(いわゆるAソ連型)は、平成21年のパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009発生後はほとんど姿を消しました。
 これらの3種類のインフルエンザウイルスは、世界中で流行していますが、流行するウイルス型や亜型の割合は、国や地域で、また、その年ごとにも異なっています。国内における流行状況の詳細は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページ(外部リンク)をご覧ください。

インフルエンザにかかったらどうすればよいのですか?

  • 具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう。
  • 安静にして、休養をとりましょう。特に、睡眠を十分にとることが大切です。
  • 水分を十分に補給しましょう。お茶でもスープでも飲みたいもので結構です。
  • 咳・くしゃみなどの症状のある時は、周りの方へうつさないために、不織布製マスクを着用しましょう。
  • 人混みや繁華街への外出を控え、無理をして学校や職場などに行かないようにしましょう。また、小児・未成年者では、インフルエンザの罹患(りかん)により、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロと歩きまわるなどの異常行動を起こすおそれがあるので、自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、小児・未成年者が1人にならないよう配慮しましょう。

インフルエンザの治療薬にはどのようなものがありますか?
 インフルエンザに対する治療薬としては、下記の抗インフルエンザウイルス薬があります。

  • オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)
  • ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)
  • アマンタジン塩酸(商品名:シンメトレル)
  • ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ)
  • ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル)など。

 ただし、その効果はインフルエンザの症状が出はじめてからの時間や病状により異なりますので、使用する・しないは医師の判断になります。抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、ウイルス排出量も減少します。なお、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。効果的な使用には用法、用量、期間(服用する日数)を守ることが重要です。

東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合(Tokyo Biomarker Innovation Research Association; TOBIRA [通称:とびら])
http://www.tobiraproject.or.jp/index.html
 (公財)東京都医学総合研究所は「予防・早診完治、健康増進」を目標に、診断・医療機器の開発を加速させるため、東京都にある地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターや公立学校法人首都大学東京に加え、国立大学法人東京農工大学と連係して本組織を設立しました。H23年8月31日に経済産業省の大臣認可を受け本格的な活動を開始しました。日本各地の特色ある技術を有する企業やバイオベンチャー11社が組合員として参加しています。都立病院等との医療連携により高病原性インフルエンザの遺伝子診断の簡易・高速遺伝子診断法、遺伝病であるファブリー病の早期診断や子宮頸がんワクチン効果判定、高齢者リハビリ効果や筋萎縮を定量的に評価する診断システムや高速画像診断システム等の研究開発に取り組んでいます。将来的には医療IT分野、医工連携による医療機器の研究開発にも取り組みます。

問い合わせ先
(公財)東京都医学総合研究所分子医療プロジェクト
 電話 03-5316-3299
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

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