トップページ > 都政情報 > 報道発表 > これまでの報道発表 > 報道発表/平成25(2013)年 > 3月 > 都医学研 認知症の進行機序解明が期待される研究成果

ここから本文です。

報道発表資料  2013年3月7日  福祉保健局

認知症の原因タンパク質が正常タンパク質を異常に変換して
脳内に広がることを実証
認知症の進行機序の解明、治療法開発に期待

 (公財)東京都医学総合研究所の鈴掛雅美研究員、長谷川成人参事研究員らは、レビー小体型認知症(※1)、パーキンソン病(※2)の原因タンパク質を普通のマウスの脳内に接種すると、マウスの正常なタンパク質が異常に変換され、その異常タンパク病変が時間経過に伴って広がることを、世界で初めて実証しました。
 この結果は、普通のマウスに3ヶ月で病態を再現する画期的モデルで、認知症の進行機序の解明、さらには治療薬開発につながることが期待されます。なお、この研究は、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域による補助、及び東京都からの運営費補助金による「がん・認知症対策」特別研究の一環として、平成20年度から実施されているものです。
 この研究成果は、英国科学雑誌「Brain(ブレイン)」の3月6日(英国時間)付オンライン版で発表されました。

1 研究の背景

 アルツハイマー病やレビー小体型認知症(※1)、パーキンソン病(※2)など、脳の細胞が徐々に変性、死滅していく変性性認知症は、その症状が時間経過に伴って徐々に進行することが大きな特徴です。治療を考える上でこの「進行性」の機序を解明することは大変重要です。しかし残念なことに、この「進行性」に関してはこれまであまり議論されてきませんでした。長谷川参事研究員らは、細胞内に生じた異常タンパク質が正常タンパク質を異常に変換しながら、細胞間を伝わって広がることで病気が進行するという新しい考え方を提唱し、その検証を行ってきました。今回、レビー小体型認知症の原因である異常αシヌクレインをマウスの脳内に接種するとマウス脳内の正常αシヌクレインが異常に変換され、その病変が広がることが実証されました。

2 研究の概要

 大腸菌に作らせたαシヌクレインを試験管の中で線維化して異常構造にし、それを野生型(※3)マウスの脳内に注入しました。その結果、注入後3ヶ月でマウス脳内にレビー小体と良く似た異常αシヌクレイン蓄積が認められ(参考図1)、それが時間経過とともに脳全体に広がること(参考図2)が判明しました。また、この病変はマウス脳内の正常αシヌクレインが異常な構造に変換されて蓄積したことが証明されました(参考図3)。この結果から、微量の異常αシヌクレインが脳内に存在するだけで、正常なαシヌクレインが異常な構造に変換され、それが急速に増幅されることがわかりました。異常αシヌクレインが増幅され、脳内に広がることでレビー小体型認知症や、孤発性パーキンソン病が進行すると考えられます。

3 今後の展望

 本研究で確立したマウスモデルはレビー小体型認知症をはじめとする新規治療法開発に応用することができます。これまでの治療薬とは作用機序が異なる、病気の進行を止める薬剤の開発が期待されます。

用語説明

※1 レビー小体型認知症
 アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、神経細胞にレビー小体(Lewy Body)とよばれる異常構造物が形成されて、脳細胞が変性する病気です。レビー小体は脳に豊富に存在するαシヌクレインというタンパク質が線維化して形成されること、また、その病変の広がりと臨床症状が密接に関係することが知られています。

※2 パーキンソン病
 手足の震え、筋肉のこわばり、姿勢反射障害などをきたす進行性の神経変性疾患です。日本では人口10万人当たり100-150人の患者さんが報告されており、人口の高齢化に伴い患者数は増加しています。パーキンソン病の特徴的病理構造物としてレビー小体が知られており、αシヌクレイン遺伝子の異常によりパーキンソン病が発症する例も報告されています。

※3 野生型
 正常型ともいい、自然集団中で最も多くに見られる型の生物。この場合遺伝子改変していないマウスのこと。

参考図1 αシヌクレイン線維接種マウス脳の組織免疫染色図(抗リン酸化αシヌクレイン抗体にて染色)

イメージ

参考図2 αシヌクレイン線維接種マウス脳におけるαシヌクレイン蓄積分布図(接種後15ヶ月)

イメージ

αシヌクレイン蓄積病理(リン酸化αシヌクレイン抗体で染色)を赤点で示す。青色破線はαシヌクレイン線維の接種部位(中脳黒質)。接種部位から離れた領域にもαシヌクレイン蓄積病理が広がったことがわかる。

参考図3 αシヌクレイン線維接種マウス脳の生化学的解析図

イメージ

 ヒトαシヌクレイン線維接種後0,7,30,90日後に脳を回収し、右半球(R)と左半球(L)に分けたのち、界面活性剤サルコシルに対する不溶性画分を調製した。リン酸化αシヌクレイン抗体(#64)、ヒトαシヌクレイン特異抗体(LB509)、マウスαシヌクレイン抗体(msyn)でイムノブロットを行ったところ、接種後わずか90日で異常リン酸化されたαシヌクレインが検出され、そのバンドパターンはレビー小体型認知症(DLB)患者脳内で蓄積する不溶性αシヌクレインと同じパターンを示した。接種に用いたヒトαシヌクレイン線維は接種直後(0日)に検出されたが、その後分解されバンドは消失した。一方マウスαシヌクレイン特異抗体での解析から、内因性のマウスαシヌクレインが蓄積していることがわかった。

問い合わせ先
(公財)東京都医学総合研究所
(認知症・高次脳機能分野)
 電話 03-6834-2349
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

ページの先頭へ戻る