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報道発表資料  2013年1月15日  福祉保健局

神経同士のつなぎ目である シナプスの前部と後部の発達を同調させる
新たなメカニズムを解明
神経・筋疾患の病態解明に期待

 (公財)東京都医学総合研究所の神村圭亮研究員、前田信明副参事研究員らは、ショウジョウバエを用いて、糖タンパク質の一種であるプロテオグリカンが、神経筋接合部のシナプス前部と後部の発達を同調させていることを明らかにしました。
 この発見により、神経・筋疾患の新たな発症メカニズムが明らかになることが期待されます。
 なお、この研究は文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究『神経糖鎖生物学』の一環として実施されているものです。
 この研究成果は、米国科学雑誌「The Journal of Cell Biology(ザ・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー)」の1月14日(米国東部時間)付オンライン版で発表されました。

1 研究の背景

 シナプスの形成は、シナプス前部(神経軸索)とシナプス後部(樹状突起や筋肉等)が様々なシグナル分子を正しくやり取りすることによって制御されています。このようなシグナル分子の交換に異常をきたすと、シナプス伝達が破綻し、学習や記憶、運動能力が低下することが知られています。これまでシナプス形成において重要な働きをするシグナル分子がいくつか報告されています。しかしながら、どのようなメカニズムによって、これらのシグナル分子がシナプス前部とシナプス後部にバランス良く配分されるのかは分かっていませんでした。

2 研究の概要

 プロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸やヘパラン硫酸などの長い糖鎖が結合した糖タンパク質であり、細胞表面をおおう重要な分子群です。我々は、プロテオグリカンの一種であるパールカンを欠失したショウジョウバエの神経筋シナプスを詳細に解析しました。その結果、この変異動物では、シナプス前部(運動ニューロン側)が過剰形成される一方、シナプス後部(筋肉側)は低形成を示し、著しく運動能力が低下していることを見出しました。このことはシナプス前部とシナプス後部の発達が同調して進行していないことを示しています。これまで、運動ニューロンが分泌するWntと呼ばれるシグナル分子が、神経筋シナプスの発達に重要な役割を果たしていることが知られています。そこで、パールカン欠失変異体のWntシグナルを解析したところ、運動ニューロンには過剰なWntシグナルが伝わることによってシナプス前部が過剰形成される一方、筋細胞にはWnt分子が効率よく配分されないためにシナプス後部の低形成が起こることが明らかになりました。このことから、パールカンは、運動ニューロンと筋細胞間でのWntシグナルの配分を調節することによって、シナプス前後部の発達を同調させていると考えられます。

3 今後の展望

 プロテオグリカンは糖鎖を介して非常に多くの分子と相互作用することが知られています。この中には、BMP(骨形成因子)、Wnt、ジストログリカン等、神経・筋疾患や癌などに関与する分子が多く含まれます。また、プロテオグリカンそのものの異常も様々な疾患を引き起こすことから、プロテオグリカンの機能を解析することは疾患の病態解明のために非常に重要です。今後、プロテオグリカンの詳細な解析を続けることで、これらの疾患の病因・病態の解明が期待されます。

参考図

 モデル:神経筋接合部の発達におけるパールカン(プロテオグリカン)の機能

イメージ

問い合わせ先
(公財)東京都医学総合研究所神経回路形成プロジェクト
 電話 03-6834-2367
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

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