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報道発表資料  2012年10月2日  福祉保健局

C型肝炎ウイルスのヒト脂質代謝を利用した増殖メカニズムの解明
治療薬、治療法開発に期待

 (公財)東京都医学総合研究所の平田雄一研究員、小原道法副参事研究員は、慶応大学の池田講師、中部大学の田口教授、中外製薬の須藤正幸研究員らとの共同研究によって、C型肝炎ウイルスが感染したヒト肝細胞のスフィンゴ脂質代謝(※1)を自己に有利に利用し増殖していることを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、C型肝炎ウイルスの増殖メカニズムの新たな面を解明したと共に、さらには新たな治療薬開発につながることが期待されます。
 この研究成果は、米国科学雑誌「PLoS Pathogens」の8月号で発表されました。

研究背景

 C型肝炎ウイルス(HCV)は、本邦では約200万人が感染していると推定されており30%程度の患者さんが肝硬変に至り、年間5~7%で肝細胞癌が発生することが知られています。近年、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法やプロテアーゼ阻害薬の登場により治療効果は向上しました。しかし、依然として本邦で最も多いとされるGenotype 1b高ウイルス量の患者さんでは治癒できないケースがあります。さらに、これら薬剤による治療は血球減少などの副作用を伴い、高齢の患者さんが多いとされる本邦では治療の完遂が難しいことがあります。このため、より副作用の少ない効果的な薬剤が求められています。
 我々は、HCVがその生活環で利用する宿主因子に着目し、これらを標的とした薬剤のスクリーニングを行ってきました。その中から、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ阻害薬(SPT阻害剤)がHCV複製を抑制することを発見しました。さらに、そのメカニズムはHCVが複製する場(複製複合体)を構成するスフィンゴミエリン(SM)(※2)が、SPT阻害剤により抑制され、その結果HCV複製ができなくなることを報告してきました。しかし、細胞や組織内のSMを同定し定量することが技術的に難しいため、HCVが肝細胞に感染することでSMがどのように変化しているのかは明らかでありませんでした。また、SMには複数の分子種が存在することが知られていますが、どのSM分子種とHCVが関係しているのかは明らかでありませんでした。

研究の概要

 本研究では、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を使用し、肝細胞におけるスフィンゴ脂質の各分子種の同定および定量解析を試みました。さらに、肝細胞内のスフィンゴ脂質代謝およびSM各分子種に対するHCV感染の影響、SM各分子種とHCV複製の関係性を明らかにすることを試みました。
 その結果、HCV感染によりSM合成酵素(SGMS)1/2の発現が上昇し、SM量が増加していました。さらに、これら2種の酵素のうちSGMS1がHCV複製に重要であることを見出しました。
 次に、肝細胞に4種のSM分子種が存在することを同定し、HCV感染によって複製複合体の分画でSM量が増加していることを見出しました。このSM各分子種とHCV複製の関係を解析した結果、主としてd18:1-16:0、d18:1-24:0がHCV複製に寄与していることが示されました。
 以上の結果から、HCVは肝細胞に感染することによりSGMS1/2発現を上昇させ、SM量を上昇させ、そのうちの2つのSM分子種(d18:1-16:0、d18:1-24:0)が複製に寄与していると考えられました。

今後の展望

 ウイルスを制御するには、どのようにウイルスがヒトの体の中で増殖し、それに対してヒトの体がどのように反応しているのかを明らかにすることが重要です。今回、HCVが感染した人の肝細胞のスフィンゴ脂質代謝を調整し、HCVの増殖に利用していることを明らかにしました。さらに、このスフィンゴ脂質を標的とした阻害剤が効果的であることも示しました。これらの発見は、新たな治療薬の開発につながることが期待されます。

用語説明

※1 スフィンゴ脂質

 生体膜の主要な構成成分であり、近年の研究から、細胞膜ミクロドメイン(細胞の膜に存在する微小な領域)の必須な構成分子であり、さらには細胞内外で働く情報伝達分子として、細胞機能や生存に関わる重要な膜脂質であることが明らかにされている。

※2 スフィンゴミエリン(SM)

 スフィンゴ脂質の一種。動物の細胞膜中に存在しており、ヒトにおいては、体内に存在するスフィンゴ脂質全体量のうちの85%近くがスフィンゴミエリンである。

参考図

 C型肝炎ウイルスが感染したヒト肝細胞のスフィンゴ脂質代謝を自己に有利に利用し増殖している模式図を示します。

イメージ

問い合わせ先
(公財)東京都医学総合研究所感染制御プロジェクト
 電話 03-5316-3232
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

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