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報道発表資料  2012年9月12日  福祉保健局

難病ALSや若年性認知症の患者に蓄積する
異常TDP-43の解析、病態を解明
治療薬、治療法開発に期待

 (公財)東京都医学総合研究所の長谷川成人参事研究員は、筑波大学神経内科の辻浩史講師、玉岡晃教授、東京都健康長寿医療センター、愛知医科大学、国立精神・神経医療研究センター、マンチェスター大学らとの共同研究によって、難病ALSや若年性認知症の患者さんの脳、脊髄に蓄積するTDP-43(※1)の構造異常の違いがその患者さんの病型を決めていることを世界で初めて明らかにしました。
 この結果は、神経難病や認知症の進行機序の解明、さらには治療薬開発につながることが期待されます。なお、この研究は東京都からの運営費補助金により「がん・認知症対策」特別研究の一環として平成20年度から実施されているものです。
 この研究成果は、英国科学雑誌「Brain(ブレイン)」の9月11日(英国時間)付オンライン版で発表されました。

1 研究の背景

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンの変性により筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患です。また若年性認知症の主要なタイプである前頭側頭葉変性症は、脳の前頭葉や側頭葉が強く冒され、萎縮する疾患です。これらの疾患では、正常では細胞の核に存在する蛋白質であるTDP-43(TAR DNA binding protein of 43kDa)が神経細胞やその突起、あるいは核内に異常な構造物を形成して蓄積すること、またそれが神経細胞の変性に深く関与していることが示されています。TDP-43はこれら以外の様々な認知症疾患―たとえばアルツハイマー病など―にも蓄積し、その異常構造物の形態から主に4種類に分類されています。しかしながら、疾患のタイプによって、蓄積する異常TDP-43の性質が本当に違うかどうか、また一人の患者さんにおいて、脳や脊髄の異なる部位に蓄積した異常TDP-43の性質が常に同じかどうか、などについては不明でした。

2 研究の概要

 ALS、若年性認知症、さらにはアルツハイマー病などの多数例の患者さんの脳脊髄に蓄積するTDP-43を、特異的抗体等を用いて生化学的に調べました。その結果、病気の種類、タイプ(病型)ごとに蓄積する異常なTDP-43の生化学的特徴が異なること、また一人の患者さんについて調べてみると、脳や脊髄のどこの部位を調べても必ず同じ特徴を持つ異常TDP-43が蓄積していることを見いだしました。それぞれの異常TDP-43の違いは、異常プリオン(※2)を検出する場合によく用いられるプロテアーゼ耐性バンドを比較する方法を用いると、より明確になることから、TDP-43の構造異常の違いがその患者さんの病型を決めていることが示されました。また、TDP-43は複数の異常構造をとりうるにも関わらず、一人の患者さんでは同じ(単一の)異常構造しかみられないことから、一カ所で生じた異常TDP-43が、プリオン病の場合と似たメカニズムで、正常TDP-43を異常TDP-43に次々と変質させて脳や脊髄全体に広がり、病気が進行すると考えられます。

3 今後の展望

 実際の疾患脳脊髄を解析して得られた知見ですので、実験室モデルの解析からの推測とは異なり、ヒトの病気で起きている現象そのものを直接明らかにしました。病気の発症原因だけでなく、進行機序を考える上で重要な意味をもっています。すなわち、この異常なTDP-43が正常なTDP-43を変質させて広がるプロセスを阻害する薬剤や治療法を開発することで、これら難病の根本治療が可能になると考えられます。

用語説明

※1 TDP-43

 TDP-43(TAR DNA-binding protein 43 kDa)。核に局在する不均一核内リボ核酸蛋白(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein:hnRNP)の一種で、RNAや他の核蛋白質などと作用し、RNAの安定化や転写調節なとのプロセスに関与する分子。

※2 プリオン

 prion:proteinaceous infectious particle (タンパク性感染因子)
スタンリー・B・プルシナー博士が、蛋白質のみからなる感染因子を想定し、この感染性因子を「プリオン」(prion)と命名した。新しい概念を提唱した功績により、1997年、ノーベル生理学医学賞を受賞した。

参考図

 認知症やALS等の神経変性疾患の発症、進行機構を説明する新しい考え方「細胞内異常蛋白質の伝播」仮説の模式図を示します。

イメージ

問い合わせ先
(公財)東京都医学総合研究所認知症・高次脳機能分野
 電話 03-6834-2349
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

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