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報道発表資料  2012年9月4日  福祉保健局

ヒト遺伝情報の複製のルールを決定する因子の発見
核内染色体の配置・区分けの制御を介して多能性幹細胞、がん細胞などの特性決定に関与する

 公益財団法人東京都医学総合研究所の山崎聡志研究員、正井久雄参事研究員らは、Rif1(※1)というタンパク質が、ヒト細胞のゲノム(※2)複製のルールを決定する因子であることを発見しました。Rif1は、染色体の核内における区分け・空間配置を制御することにより遺伝情報の複製のタイミングなどのルールを決定すると共に、遺伝情報の発現にも大きな影響を与え、幹細胞、がん細胞など各種細胞の特性の決定に関与すると考えられます。さらに、Rif1の操作により、多能性幹細胞の維持・誘導、各種細胞型の分化誘導、細胞のがん化の制御の可能性も示唆され、将来、細胞治療、がん細胞の診断治療などにも応用が期待できます。
 この研究成果は、欧州分子生物学機構の公式ジャーナル「THE EMBO JOURNAL」の7月31日付オンライン版で発表されました。
 また、この報告は重要な発見として、掲載誌のShort commentary【Have you seen?】に取り上げられました。

1 研究背景

 ヒトの細胞は、核内に30億塩基対もの遺伝情報(ゲノムDNA)を収納しており、これは長さにすると約2メートルにもなります。細胞増殖を行うたびに、これらDNAは正確に倍加されます。この機能は、正常な細胞のみならず、がん化した細胞や多能性幹細胞など増殖の速さや機能性に関係なく、すべてに共通する事象です。2メートルのDNAが絡み合う事なく、限られた空間(核)の中で全ゲノムを正確かつもらさず複製するため、ゲノムDNA複製は一定の空間的・時間的ルールに従って進行することが知られています。しかしながら、このルールを決定するメカニズムは知られていませんでした。

2 研究の概要

 今回、私たちはRif1というタンパク質がゲノム複製のルールを決定することを発見しました。Rif1は、核内での染色体DNAの区分けと配置を制御することにより、ゲノム複製の時刻と場所の管理―即ち、ゲノムのどの領域がいつどこで複製されるか―を決定します。このため、Rif1タンパク質を除去した細胞では、ゲノム複製における管理統制が失われ、通常とは異なる時期と場所でゲノム複製が起こることが観察されました。これに伴い、様々な遺伝子の発現パターンにも影響が生じました。

3 今後の展望

 染色体DNAの核内での配置の区分けは、巨大な染色体がコンパクトに核内に凝縮し収納するために重要ですが、この区分けの仕方は、複製のみならず、転写、組換え、修復など細胞の運命を決定する多くの事象を制御します。
 Rif1は正常な細胞に比べ、増殖スピードの速いがん細胞で一般に高い発現を示します。これは、Rif1の過剰発現による核内配置の変動が細胞のがん化、あるいは遺伝的不安定性と関連する可能性を示唆します。また、多能性幹細胞においても、Rif1の遺伝子発現は高く、Rif1の遺伝子発現を抑制すると未分化状態の維持に支障がでます。またRif1の欠損は発生異常を示します。従って、Rif1の機能解析により細胞がん化の仕組みや多能性幹細胞の全能性維持のメカニズム、細胞分化の一端が明らかになることが期待されます。

用語説明

※1 Rif1
 酵母からヒトまで広く保存され、酵母では染色体末端のテロメア(※3)に結合しその維持に関与していることが知られていましたが、動物細胞のRif1はテロメアには存在せず、その機能は大部分未知でした。

※2 ゲノム
 "gene(遺伝子)"と集合をあらわす"-ome"を組み合わせた言葉で、生物のもつ遺伝子(遺伝情報)の全体を指します。

※3 テロメア
 染色体の末端にある構造で、細胞分裂をするたびに短くなっていくことが知られており、テロメアの長さは細胞の老化と大きく関わっていると報告されています。

参考図

イメージ

問い合わせ先
(公財)東京都医学総合研究所ゲノム動態プロジェクト
 電話 03-5316-3231
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

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