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報道発表資料  2012年8月7日  福祉保健局

酸化ストレス・センサータンパク質の分解機構を解明
(タンパク質分解による恒常性の維持)

 東北大学大学院医学系研究科医化学分野の山本雅之教授らは、公益財団法人東京都医学総合研究所の小松雅明副参事研究員の研究グループとともに、活性酸素種や毒物などのセンサーであるKeap1がオートファジー※1機構により分解されていることを発見しました。今回の成果は、生体のストレス応答を担うKeap1-Nrf2制御システム※2の主要因子であるKeap1とNrf2が、それぞれプロテアソーム系※3とオートファジー系という異なるメカニズムによる分解を受けていることを示すものであり、ストレス応答系の分子メカニズムを理解する上で重要な発見です。本研究成果は、米国の学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)に掲載されます。

研究内容

 オートファジーは、細胞が飢餓状態に陥ったときに自分で自分の一部を食べてしまう現象として、1960年代に肝細胞の観察から発見されました。しかし、関連する機能因子が不明であったため、その詳細は長い間不明でした。その後、出芽酵母の解析からオートファジー関連遺伝子群が次々に発見され、最近ではプロテアソーム系と並ぶ重要なタンパク質分解機構であると認識され、メカニズムの解析が急速に進んでいます。従来、オートファジーは飢餓状態に陥った細胞が細胞内小器官やタンパク質を無差別に飲み込んで分解するものと理解されていました。しかし最近では、選ばれたタンパク質や細胞小器官だけが分解されるという選択的オートファジーの存在が明らかになってきました。

 Keap1-Nrf2制御システムは、生体のストレス応答機構の中心的役割を果たしています。転写因子Nrf2は様々な生体防御系遺伝子群の発現を活性化して、細胞のストレス応答能を増強します。一方、Keap1はプロテアソーム系によるNrf2分解を促進し、Nrf2の機能を抑制しています。細胞に活性酸素種や毒物などのストレスが加わると、Nrf2の分解が停止します。これによりNrf2が機能できるようになり、細胞のストレスに対する抵抗性が高まります。このように、Nrf2の機能がタンパク質分解機構と連関して制御されていることが知られていました。それに対して、Keap1機能の制御に何らかのタンパク質分解メカニズムが関与しているのかどうかは不明でした。

 本研究グループは、オートファジー全体が障害されているAtg7遺伝子の欠失マウスや選択的オートファジーに必要なp62タンパク質※4を欠失したマウスを解析することにより、Keap1がオートファジーにより選択的に分解されることを明らかにしました。この成果は、ストレス応答を担うセンサー分子Keap1と転写因子Nrf2が、それぞれ異なる経路により分解されていることを示すものであり、多様なタンパク質分解経路により生体のストレス応答が精巧に制御されていることを実証する重要な発見です。

 なお、本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金若手研究(B) 「生体防御システムの破綻と病態」(研究代表者:田口恵子、研究期間:2010~2011年度)、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究公募研究「Keap1-Nrf2システムとAktシグナルの相互作用と肝疾患」(研究代表者:田口恵子、研究期間:2011年度~2012年度)、独立行政法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST) 「炎症の慢性化機構の解明と制御に向けた基盤技術の創出」研究領域における研究課題「環境応答破綻がもたらす炎症の慢性化機構と治療戦略」(研究代表者:山本雅之、研究期間:2011年度~2016年度)、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)(研究代表者:山本雅之、研究期間:2012~2014年度)「ストレス応答性転写因子による代謝・病態制御」の支援を受けて行われたものです。

図.Keap1-Nrf2システム
図
Keap1は転写因子Nrf2をプロテアソーム系による分解に導く。Keap1自身は、オートファジー系により分解される。

図.オートファジー機能不全によるKeap1およびp62の蓄積
図
オートファゴソーム形成に必須のAtg7遺伝子の欠失によりオートファジーの機能を破綻させたマウスにおいては、p62と同様にKeap1がタンパク質レベルで蓄積した。

用語説明

※1 オートファジー(Autophagy)
 飢餓などに際して細胞内タンパク質を分解することによって、細胞へ栄養素を供給するメカニズム。細胞が飢餓条件になると作動するとされていたが、恒常的に機能していることが明らかとなってきた。オートファジーの機能障害により、肝がんや神経変性疾患が発症することが報告されている。

※2 Keap1-Nrf2制御システム
 環境ストレスに応答して、生体防御システムを活性化する制御系。Keap1は環境ストレスに対するセンサーとして働き、Nrf2は転写因子として生体防御酵素群の遺伝子発現を活性化する。通常の環境においては、Keap1はNrf2をユビキチン化して、プロテアソーム系での分解に導く。一方、細胞が活性酸素や親電子性物質などのストレスに曝されると、Keap1がセンサーとして働き、Nrf2の分解を停止するため、Nrf2が活性化する。Nrf2は核内へ移行して、生体防御遺伝子群の遺伝子発現を活性化する。

※3 プロテアソーム系
 細胞内タンパク質分解機構の一つ。ATPのエネルギーを利用して、特定のタンパク質をユビキチン化して、積極的に分解する。

※4 p62
 選択的オートファジーにより分解されることが知られているタンパク質。

論文題目

 Keap1 degradation by autophagy for the maintenance of redox homeostasis(レドックス恒常性の維持に重要なオートファジーによるKeap1分解)
 米国の学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaに掲載。

問い合わせ先
(公財)東京都医学総合研究所蛋白質リサイクルプロジェクト
 電話 03-5316-3244
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

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