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報道発表資料  2012年7月4日  労働委員会事務局

命令書交付のお知らせ

 当委員会は、下記不当労働行為救済申立事件について、本日、命令書を交付しましたのでお知らせします。

事件名 U事件(平成22年不第59号)
当事者 申立人 N(組合)
被申立人 U(会社)

問い合わせ先
労働委員会事務局審査調整課
 電話 03-5320-6992、6986

〔別紙〕

U事件(平成22年不第59号事件)命令要旨

1 命令交付の経過

(1) 申立年月日 平成22年6月11日
(2) 公益委員会議の合議 平成24年6月5日
(3) 命令書交付日 平成24年7月4日

2 当事者の概要

(1) 申立人組合は、個人加盟のいわゆる地域合同労組であり、本件申立時の組合員数は約60名である。
(2) 被申立人会社は、郵政民営化によって発足し、日本郵政グループにおいて郵便事業・物流業を担っている株式会社であり、従業員数は約10万1,000名(23年3月31日現在)である。

3 事件の概要

 21年1月5日ないし7月31日に会社のH支店で就労していた期間雇用の契約社員Xは、同支店の健康診断を5月に受診した際、健診項目のうち、胸部エックス線検査のみを受検しなかった。この未受検を理由として、会社が7月11日付けでXに雇用契約を更新しない旨通知したところ、同人は、同月22日付けで組合に加入し、組合と会社とは、21年7月30日ないし22年2月10日に組合員Xの雇用問題を議題とする団体交渉を計7回行った。しかし、会社は、組合の22年3月10日付け、4月4日及び28日付けの3回の団体交渉継続の申入れについて、既に行った7回の団体交渉で十分な説明をしてきたので、これ以上の交渉を行ったとしても進展が図れないとして応じなかった。
 本件は、会社の上記対応が正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案である。

4 主文

 本件申立てを棄却する。

5 判断の要旨

 誠実な団体交渉が行われたにもかかわらず、双方の主張が対立し、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みがなく、交渉が行き詰まりに達した場合には、それ以上の団体交渉を拒否したとしても正当な理由があるものとして、労働組合法第7条第2号の不当労働行為には該当しないと解される。そこで、本件団体交渉申入れの前提となる21年7月30日ないし22年2月10日に行われた計7回の団体交渉の内容及び経緯について、以下検討する。

(1) 上記各団体交渉における会社の対応について
1) 本件雇止めの手続に係る会社の説明について
 ア 会社は、a) 5月15日以降、Xに対して胸部X線検査を受検しなければ雇用契約を更新できないと説明しつつ、受検結果の提出を待っていた経緯があり、b) 30日前予告ができなかったのも、受検意思の最終確認期間を設けたためであるから、c) 30日前予告でなくとも本件予告通知は有効であり、本件雇止めも有効であると説明した。一方、組合の見解は、雇用契約期間満了の20日前に行われた本件予告通知は、30日前予告ではないから無効で、したがって本件雇止めは無効であるというもので、組合の立場からするとそれなりの根拠があり、理解できないわけではないが、組合が会社の説明及び見解を変えない会社の姿勢に納得していないからといって、会社の説明自体が不誠実な内容であったとまではいえない。
 イ また、組合は、会社の回答は繰り返しになっているとしているが、労使双方の見解が変わらなかったため、同様のやり取りが複数回繰り返されるという状況にあったのであるから、会社に対する組合の追及も、同じ内容の繰り返しとなっていたということができる。
2) 本件雇止め理由である未受検に係る会社の説明について
 ア 会社は、a) 特段の事情がなければ更新が予定されていたXは、社内規程等で雇入時健診の受診を義務付けられている1年以上の雇用が見込まれる者であり、b) 7月11日の最終確認において、受検意思が確認できなかったのであるから、c) 未受検を理由とする本件雇止めは有効であると説明した。一方、組合の見解は、a) 期間社員であるXには雇入時健診も定期健診も法的に受診義務がなく、b) 同人が産業医との面談を求めたことには被ばくへの不安という正当な理由があり、また、同人は、明確な受検拒否をしたわけではなく、産業医との話合い次第で受検する意思を示していたのであるから、c) 未受検を理由とする本件雇止めには正当な理由がないというもので、組合の立場からするとそれなりの根拠があり、無理からぬものともいえるが、組合が団体交渉における会社の説明や基本的見解を変えない会社の姿勢に納得していないからといって、会社の説明自体が不誠実な内容であったとまではいえない。
 イ また、会社は、社会問題としての胸部X線検査の是非や他支店での結核発生事例について、本件団体交渉で議論する内容でないなどと答えているが、Xの未受検について、既に社内規程の硬直的運用に固執しない柔軟な個別的対応をしていたのであるから、これらを本件団体交渉の対象外としたことには、やむを得ない事情があったというべきである。さらに、会社は、Xの健診の根拠規程について正確さを欠く説明をしているが、それによって交渉に混乱が生じ停滞したといった事情は特に認められない。
3) 支店長による雇止め判断の根拠に係る会社の説明について
 ア 組合は、団体交渉を重ねるうち、本件雇止めの責任者である支店長が出席して説明を行うべきであるとの要求をするに至っているが、a) 期間社員の人事権は各支店の支店長にあり、室長は、H支店の人事・厚生関係の責任者であり、b) 室長は実質的な説明や回答を行っており、本件団体交渉の進行に支障が生じていたとは認められない。
 イ また、Xが7月11日に産業医との話合い次第として受検意思を示したにもかかわらず、室長が決裁権者である支店長に対し、受検意思を示さなかったと報告したのではないか、その誤った報告によって本件予告通知が交付されたのではないかとの組合の問題提起については、会社は、意思決定のプロセスについて団体交渉で既に説明していた。
4) 組合の提案による和解を拒否した会社の対応について
 ア 会社は、Xを期間社員として継続雇用すべきであるとの組合要求には応じられない旨を繰り返し回答しているが、本件雇止めについての団体交渉そのものには応じており、本件雇止めに至る経緯を明らかにしていた。また、会社は、会社として認識している経緯等に沿って行った自らの判断について、組合の理解を得るための説明を行っていたのであるから、組合が提案した和解に応じられないとしたことをもって、会社の対応が不誠実であったということはできない。
 イ 組合の具体的な和解の提案について全く検討しようとしない会社の対応は、労使紛争の円満な解決を図るという点で問題がないとはいえないが、会社は、和解に応じられない会社の立場を、団体交渉で繰り返し説明していた。

(2) 団体交渉を打ち切った会社の対応について
 第7回団体交渉では、以下の3項目が持越しとなっていたが、a) 室長による支店長への報告内容及び支店長による本件雇止めの判断経緯については、新たに団体交渉に応ずべき事項とまではいえず、b) Xの健診に係る社内規程の確認については、未受検に係る団体交渉の一部分であって新たな問題提起とまではいえず、c) 組合提案に基づく和解の検討については、和解の協議に応じられないとしたことが不誠実な交渉態度であったとまでいえない。

(3) 団体交渉を拒否した会社の対応について
 計7回の団体交渉は、会社に特に責められるべき交渉態度があったとまではいうことができず、労使双方の主張が対立したまま平行線となっていたものであり、本件雇止めについての団体交渉を打ち切ると通告した事務折衝の段階で双方の主張の隔たりが大きく、既にいずれかの譲歩により団体交渉が進展する見通しの立たない状態にあったということができる。また、組合の3回の団体交渉継続の申入れの趣旨は、いずれも、これまでの団体交渉で組合が主張してきた内容であって、交渉の進展が見込まれるような新たな提案等がなされた訳ではない。

(4) 結論
 以上のとおりであるから、計7回の団体交渉は、継続しても交渉が進展する余地のない行き詰まりの状態に達していたものと認めるのが相当であり、したがって、会社が3回の団体交渉継続の申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。

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