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報道発表資料  2012年1月17日  福祉保健局

世界初 テーラーメイド疼痛治療の開始
~遺伝子検査で鎮痛薬適量を予測~

 (財)東京都医学総合研究所の池田和隆参事研究員、東京歯科大学の福田謙一准教授らのグループは、鎮痛薬の感受性(効きやすさ)に関連する遺伝子多型(※1)を特定し、それをあらかじめ調べることにより、患者個々人に合った鎮痛薬の投与量を予測することを世界で初めて可能にしました。
 この予測に基づいたテーラーメイド疼痛治療を、東京歯科大学水道橋病院で下顎形成外科手術(※2)を受ける患者さんを対象に開始いたします。
 今後、さらに改良を加え、将来的には、がん患者さんの疼痛治療等においても同様のテーラーメイド疼痛治療を行うことを目指します。
 なお、この研究は東京都からの運営費補助金により「がん・認知症対策」特別研究の一環として平成21年度から実施されているものです。

1 研究の背景

 鎮痛薬に対する感受性には大きな個人差があり、臨床での疼痛管理において大きな問題となっています。世界保健機関(WHO)によるがん性疼痛治療指針の五原則の一つに、「患者ごとに適量を求めること」が挙げられていることからも、鎮痛薬感受性が個々人で異なり、患者さんごとの鎮痛薬感受性を把握することが疼痛治療の現場においてきわめて重要であることがうかがえます。今までは、患者さんの鎮痛薬感受性は、時間、コスト、労力をかけた試行錯誤によって調べられてきました。

2 研究の概要

 この個人差が発生する原因の一つに、遺伝的要因(各個人の遺伝子配列の違い)があります。近年の遺伝子解析技術の進歩により、鎮痛薬感受性の個人差に寄与しうる遺伝的要因を特定することが可能になりました。池田研究員らのグループは、下顎形成外科手術に注目し、その術後疼痛管理に必要な鎮痛薬量と、患者さんの遺伝子多型との関連を調べ、いくつかの遺伝子多型が鎮痛薬の感受性に関連することを見出しました(特許出願済み)。
 これらの鎮痛薬感受性関連遺伝子多型を患者さんごとにあらかじめ調べることにより、患者個々人に合った鎮痛薬投与量を予測することが世界で初めて可能となりました。

3 テーラーメイド疼痛治療の方法

 東京歯科大学水道橋病院で下顎形成外科手術を受ける際にテーラーメイド疼痛治療を希望する患者さんを対象とします。手術の約1~2週間前に行われる手術・麻酔説明の終了後に、水道橋病院の担当者(歯科医師)が患者さんの口腔粘膜を綿棒で擦過して患者さんのサンプルを採取します。また、手指氷水浸漬法(※3)で疼痛感知潜時(何秒で痛みを感じ始めるか、150秒でカットオフ)も測定します。このサンプルと手指氷水浸漬法の測定結果は、速やかに東京歯科大学水道橋病院個人情報管理者による連結可能匿名化を経て、東京都医学総合研究所(都医学研)に送られます。
 その後、都医学研において、遺伝子型の解析を行い、IV-PCA法(※4)における1回投与量を、下顎形成外科手術228症例のデータ分析の結果導き出された予測式を用いて算出します。なお、この具体的な予測方法についても、別途特許出願を行いました。

4 今後の展望

 今回開始する下顎形成外科手術におけるテーラーメイド疼痛治療は、数十例実施後に従来法と比べて有用であるかどうかを検証するとともに、より正確に鎮痛薬感受性を予測できるように今後も改良を加えて行きます。さらに、がん性疼痛やその他の手術後の疼痛などに対しても、同様のテーラーメイド疼痛治療を行えるように、システムの開発を継続いたします。

【用語説明】

※1 遺伝子多型
 集団のゲノム塩基配列中で塩基配列が変異(置換、欠損、挿入)した多様性がみられ、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られるとき、これを遺伝子多型と呼ぶ。
※2 下顎形成外科手術
 うけ口などの歯の噛み合わせの問題を矯正する手術の一つ。患者は術前には痛みを持たない健常者であり、手術の術式は確立しており画一的な手術が施されるので同程度の痛みが加えられると考えられる。従って、術後の疼痛管理においては、鎮痛薬感受性の個人差がはっきりと表れる。
※3 手指氷水浸漬法
 手指を氷水につけて痛みを感じたら引き出してもらい、氷水に手指をつけている時間(秒)を測定することで疼痛感受性を評価する。今回は150秒をカットオフタイムとし、手指へのダメージを最小限とした。
※4 IV-PCA法(intravenous-patient-controlled analgesia)
 患者さん自身が痛みを感じたときに専用のPCAポンプのボタンを押すことによって予めプログラムされた一定量の麻薬性鎮痛薬を静脈内自己投与できる鎮痛法

【参考図】

テーラーメイド疼痛治療のイメージ

イメージ

 現在では、上段のように時間、労力、コストをかけて鎮痛薬の適量を求めていますが、テーラーメイド疼痛治療では、鎮痛薬感受性と関連する遺伝子多型をあらかじめ検査することによって最初から適量での疼痛治療を行うことが可能になります。

問い合わせ先
(財)東京都医学総合研究所
依存性薬物プロジェクト
 電話 03-6834-2379
事務局研究推進課
 電話 03-5316-3109

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