報道発表資料 [2006年3月掲載]

「首都直下地震による東京の被害想定」(最終報告)の公表について

平成18年3月28日
総務局

 平成17年5月25日の東京都防災会議を踏まえ、地震部会において被害想定の見直しについて検討してきましたが、このたび別紙のとおり最終報告がまとまりましたので、お知らせします。

(参考)

 東京都防災会議地震部会委員
 部会長 溝上 恵 東京大学名誉教授(地震学)
 委員
  翠川 三郎 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授(地震工学)
  中埜 良昭 東京大学生産技術研究所助教授(建築学)
  濱田 政則 早稲田大学理工学術院社会環境工学科教授(土木工学)
  中林 一樹 首都大学東京都市環境学部都市科学研究科教授(都市防災)

 I本編 II資料編 III手法編につきましては、総務局総合防災部ホームページをご覧下さい。

問い合わせ先
総務局総合防災部防災管理課
 電話 03−5388−2485

〔資料〕

首都直下地震による東京の被害想定(最終報告)の概要
(平成18年3月 東京都防災会議地震部会)

この概要は、最終報告で追加した項目を中心にまとめたものである。

 平成17年5月25日の東京都防災会議において、都における新たな被害想定の作成が決定されたことを受け、本地震部会(部会長:溝上恵東京大学名誉教授)で調査検討し、本報告書を取りまとめた。なお、本報告を次の東京都防災会議に報告する。

1 調査の経緯と目的

<経緯>

  • 平成9年、直下地震による被害想定を公表してから10年経ち、都市状況が変化。
  • 平成17年2月、中央防災会議首都直下地震対策専門調査会(「専門調査会」という。)が、首都中枢機能の継続性確保の視点から首都直下地震の被害想定を公表。
  • 平成18年2月、本地震部会にて、首都直下地震の被害想定(中間報告)を作成。


<目的>

○都民の生命と財産を守るための備えを確かなものにする。東京都及び区市町村における震災対策の一層の推進を図るとともに、都民の防災意識の向上に寄与するための基礎資料とする。

2 被害想定の特徴

(1)発生頻度の高い地震を想定

  • 専門調査会が想定した地震のうち、東京湾北部地震と多摩直下地震を想定。
  • 専門調査会が想定したマグニチュード7.3(以下「M」と表記する。)に加え、より発生する頻度が高いM6クラスの地震も想定(M6.9)。

(2)現実的な気象条件で想定

  • 火災に影響する風速は、専門調査会の想定した3メートル/秒、15メートル/秒に加え、冬の平均風速の約2倍の6メートル/秒も想定。
    (注)専門調査会の想定した15メートル/秒は、関東大震災時の風速で特殊な条件の下での風速。

(3)実態に即したデータを活用

  • 都及び区市町村が震災対策に活用できるよう、地盤、急傾斜地、建物、道路等について詳細なデータを活用し、区市町村別に被害を想定。
  • 消防の二次運用を見込むなど、各局・防災機関の活動実態を反映。

(4)都市型災害を想定

  • (例)エレベーター閉じ込め台数、主要なターミナル駅別帰宅困難者数

(5)首都圏初の新たな被害想定

  • 専門調査会の被害想定を踏まえた、首都圏で初の被害想定の見直しである。
    ※今後この被害想定をもとに首都圏各県市に首都圏被害想定の作成を働きかける。

3 被害想定の前提条件

(1)想定地震

  想定地震
種類 東京湾北部地震 多摩直下地震
(プレート境界多摩地震)
震源 東京湾北部 東京都多摩地域
規模 M6.9及びM7.3
震源の深さ 約30〜50キロメートル

(2)気象条件

○震災被害には、地震の発生する季節、時刻、気象条件が大きく影響するため、被害が最大になると思われる季節、時刻、気象条件を選択する。

  中間報告 最終報告
季節・時刻 冬の夕方18時 冬の夕方18時、朝5時
風速 6メートル/秒 6メートル/秒、15メートル/秒、3メートル/秒

4 想定項目(○は最終報告で追加した項目)

想定項目 想定内容
地震動 震度分布
地盤 ゆれやすさ、液状化
急傾斜地崩壊危険箇所
建物被害 ゆれによる建物被害(全壊・半壊)
液状化による建物被害(全壊・半壊)
急傾斜地崩壊による建物被害(全壊)
火災による建物被害(焼失)
人的被害 建物倒壊(ゆれ・液状化)による死傷者数
急傾斜地崩壊による死傷者数
火災被害による死傷者数
○屋内収容物の転倒・落下等による負傷者数
○ブロック塀等の転倒による死傷者数
○落下物等による死傷者数
○交通被害による死傷者数
交通 道路 ○橋梁・橋脚の被害
○細街路の閉塞状況
○緊急交通路の渋滞区間延長
鉄道 ○橋梁・高架橋の被害
港湾・空港 ○港湾施設被害
○空港施設被害
ライフライン ライフライン(電力、通信、ガス、上水道、下水道)の被害
○各ライフラインの復旧
避難者 発災直後の避難者数
○発災後の避難者数の推移
帰宅困難者 発生数
○主要なターミナル駅別発生数
その他 エレベーター閉じ込め台数
○災害要援護者
○自力脱出困難者
○震災廃棄物
☆地下街の被災、☆中高層住宅の被災 など
☆は定性的評価。

【参考】

首都直下地震の切迫性

イメージ

南関東における過去30年間のM6以上の地震
マグニチュード 最大震度 震央地名
1975〜        
1978 4 7 6.1 4 千葉県東方沖
1980 9 25 6.0 4 千葉県北西部
1981        
1983 2 27 6.0 4 茨城県南部
1984 9 19 6.6 4 房総半島南東沖
1985 10 4 6.0 5 茨城県南部
1986 6 24 6.4 4 房総半島南東沖
1987 12 17 6.7 5 千葉県東方沖
1988        
1989 3 6 6.0 5 千葉県北東部
1990 6 1 6.0 4 千葉県東方沖
1996 9 11 6.4 4 千葉県東方沖
  11 20 6.2 3 房総半島南東沖
1997〜        
2000 6 3 6.1 5弱 千葉県北東部
2002 12 11 6.1   房総半島南東沖
2004 5 30 6.7 1 房総半島南東沖
2005 4 11 6.1 5強 千葉県北東部
  7 23 6.0 5強 千葉県北西部

5 想定結果の概要

(1)全体の傾向

<地震動>

  • 震度6強は、東京湾北部地震で区部東部を中心に発生する。

<建物被害>

  • 建物被害は、東京湾北部地震、多摩直下地震でいずれも規模(M7.3、M6.9)を問わず、区部の木造住宅密集地域を中心に発生する。

<人的被害>

  • 人的被害は、死亡は火災を原因とするものが多く、負傷は建物倒壊及び屋内収容物の転倒を原因とするものが多い。

<交通被害>

  • 道路や鉄道の橋梁などの被害は区部東部の震度6強のエリア内で発生する。
  • 鉄道はほとんど一時運行停止し、また緊急交通路の渋滞も発生する。

<ライフライン>

  • ライフラインは、東京湾北部、多摩直下地震を問わず区部東部に被害が多い。

<避難者>

  • 避難者は、発災直後より、ライフラインの停止などの影響の出る1日以後にピークを迎える。

<帰宅困難者>

  • 鉄道等の運行停止により、大量の帰宅困難者が発生するとともに、ターミナル駅に乗客等が集中し、混乱する。

<エレベーターの閉じ込め>

  • エレベーターの閉じ込めが都内全域にわたり発生する。

(2)人的被害(風速6メートル/秒)

1)冬の夕方18時の場合

  • 東京湾北部地震M6.9の場合、約2,800人が死亡。このうち約51%の約1,400人は火災が原因で死亡。
  • 負傷者は約75,000人であり、このうち約11,000人(約15%)が重傷者。
    負傷の原因としては、建物倒壊によるものが約32,000人(約43%)、屋内収容物によるものが約24,000人(約32%)。
  • M7.3では、約5,600人が死亡し、約159,000人が負傷。
  • 多摩直下地震M6.9の場合、約1,500人が死亡し、約51,000人が負傷。
    M7.3では、約3,400人が死亡し、約86,000人が負傷。

2)冬の朝5時の場合

  • 都民の多くが自宅で就寝中に被災するため、建物被害と屋内収容物による死傷者は多いが、火災による死者は少ない。
  • 東京湾北部地震M6.9の場合、約1,700人が死亡し、このうち約77%の約1,300人は建物倒壊が原因で死亡。
    負傷者は約87,000人であり、このうち建物倒壊によるものが約58,000人(約66%)、屋内収容物によるものが約26,000人(約30%)。
    M7.3では、約4,500人が死亡し、約163,000人が負傷する。
  • 多摩直下地震の場合、約700人が死亡し、約54,000人が負傷する。
    M7.3では、約1,700人が死亡し、約105,000人が負傷する。

(3)交通被害

1)道路被害

ア 道路橋梁・橋脚被害

  • 道路橋梁・橋脚被害は、震度6強エリア内に発生。
  • 東京湾北部地震M6.9の場合、震度6強エリア内にあり被害を受ける橋梁・橋脚は288箇所であり、このうち復旧に長期間を要する大被害は10箇所。
    M7.3の場合、被害を受ける橋梁・橋脚は607箇所であり、大被害は22箇所。
  • 多摩直下地震M6.9の場合、震度6強エリア内にあり被害を受ける橋梁・橋脚はないが、M7.3の場合は12箇所被害を受ける。

イ 細街路の閉塞(メッシュ数割合)

  • 東京湾北部地震の場合、閉塞率15%以上の高い地域は区部東部では荒川沿いに、区部西部では環状7号線沿いに集中。
  • 多摩直下地震の場合、M6.9ではほとんど閉塞は発生しないが、M7.3では閉塞率15%以上の地域が多摩地区を中心に約25%発生。

ウ 緊急交通路の渋滞区間延長

  • 走行速度が時速20キロメートル以下で渋滞する区間は、緊急交通路延長距離747.4キロメートルのうち、渋滞区間延長距離は240.8キロメートル(約32%)。

2)鉄道被害

  • 鉄道橋梁・高架橋被害は、震度6強エリア内に発生。
  • 東京湾北部地震M6.9の場合、被害を受けるのは316箇所。このうち、復旧に長期間を要する大被害は14箇所。
    M7.3の場合、663箇所が被害を受け、このうち大被害は28箇所。
  • 多摩直下地震の場合、M7.3で、21箇所被害を受け、大被害は1箇所。

3)港湾施設被害

  • 東京湾北部地震の場合、総バース158箇所のうち被害を受けるのは、M6.9では61箇所、M7.3では87箇所。
  • 多摩直下地震の場合、被害を受けるのはM6.9では19箇所、M7.3では44箇所。

4)空港施設被害

  • 羽田空港は、B滑走路の液状化対策を終了しているが、他の滑走路は液状化対策が未実施であり、地震により使用不能となる可能性が高い。
  • 調布飛行場は液状化しないため、滑走路は使用可能である。
  • 東京へリポートは、着陸帯の一部などが液状化対策を終了しており、震災時にも使用可能である。

(4)ライフライン復旧

  • 東京湾北部地震M6.9の場合の復旧日数は、電力は6日、通信は14日、ガスは22日、上水道は21日、下水道は21日。
  • 多摩直下地震M6.9の場合の復旧日数は、電力は6日、通信は14日、上水道は11日。

(5)避難者(冬の夕方18時 風速6メートル/秒)

  • 発災直後に建物の被災が原因で避難する者は、東京湾北部地震M6.9の場合、約166万人、M7.3では約287万人。
  • 避難者数のピークは、エレベーターの運転停止や上下水道の被害による生活支障の影響が大きくなる1日後であり、約271万人。

(6)帰宅困難者

  • 震度5強の場合には鉄道等ほとんどの交通機関が停止する。このため、いずれの地震規模でも都全体で外出者(都内滞留者)約1,144万人のうち、約392万人(約34%)の帰宅困難者が発生。
  • 方面別の帰宅困難者は、埼玉県方面で約89万人、神奈川県方面で約85万人、千葉県・茨城県南部で約79万人。
  • 発災直後の主要なターミナル駅は、約10〜20万人の滞留者で混乱。最終的に帰宅できない帰宅困難者数は、東京駅が約14万人、渋谷駅が約10万人、新宿駅や品川駅がそれぞれ約9万人。
  • 観光ビジネスなど国内各地から東京を訪れる者約55万人、海外からの訪問者約7,900人も帰宅困難者となる。これらを合わせると、帰宅困難者数は約448万人となる。

(7)災害要援護者(冬の夕方18時 風速6メートル/秒)

  • 東京湾北部地震M6.9の場合、災害要援護者約142万人のうち、死者は851人。

(8)自力脱出困難者

  • 東京湾北部地震では、M6.9で約9,400人、M7.3で約22,700人の自力脱出困難者が発生。
  • 多摩直下地震では、M6.9で約2,500人、M7.3で約7,500人の自力脱出困難者が発生。

(9)震災廃棄物(冬の夕方18時 風速6メートル/秒)

  • 東京湾北部地震M6.9の場合、震災廃棄物は2,320万トン(1,605万立方メートル)発生。これは、平成15年度の産業廃棄物約2,360万トンとほぼ同じ。

(10)主要な地下街の被災

  • 地下街の滞留者が階段に殺到し、全ての地下街で負傷者が発生。

(11)中高層住宅の被災

  • 中高層住宅では、地震によりエレベーターの停止や断水など生活に支障が生じて生活することができなくなり、中高層住宅の住民は避難せざるを得ない。
  • 古い中層住宅では高置水槽が多いことから、これが被害を受けたときは断水となり、水道が復旧するまでには時間がかかる。

〔別紙〕

東京都防災会議専門委員(地震部会)名簿
  氏名 専門分野等 職等
部会長 溝上 恵 地震学 東京大学名誉教授、東京都防災顧問、東京都火災予防審議会委員
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」委員
東京都防災会議専門委員(平成6〜9年)
  翠川 三郎 地震工学 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授
東京都火災予防審議会委員
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」委員
  中埜 良昭 建築学 東京大学生産技術研究所助教授
東京都火災予防審議会委員
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」委員
  濱田 政則 土木工学 早稲田大学理工学部教授
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」委員
  中林 一樹 都市防災 首都大学東京大学院都市科学研究科教授、東京都震災復興検討会議座長
東京都火災予防審議会委員
東京都防災会議専門委員(平成6〜9年)

これまでの検討の経過

  平成17年7月14日 第1回地震部会 基本方針及び調査項目の検討について
平成17年9月13日 第2回地震部会 調査項目及び調査手法について
平成18年2月8日 第3回地震部会 中間報告について
平成18年3月28日 第4回地震部会 最終報告について