報道発表資料 [2006年3月掲載]
(←この報道発表資料のトップへ戻る)

〔参考資料〕

金属製アクセサリー類等に含有する重金属類の安全性に関する調査
〜概要〜

1 要旨

 市販されている金属製アクセサリー類※1等の中に高濃度の鉛を含有するもの及び胃酸を想定した溶液に多量の鉛が溶出するものがあることが判明した。鉛は、脳障害、神経系への影響、腎毒性、血液系への影響等強い毒性を有するが、特に、乳幼児に対しては脳障害、神経系への影響が成人よりも顕著に現れることがわかっている。それらの商品を乳幼児が口にくわえたり、なめたり、飲み込んだりすることで鉛を摂取する危険性が高まるため、健康への影響が懸念される。

2 調査目的

 2005年2月3日米国消費者製品安全委員会(米国CPSC※2)から、子供用の金属製アクセサリーの一部に高濃度の鉛が含有していることが報告され、併せて子供に対する鉛に起因する潜在的な健康上の危険性を低減する暫定方針が示された。それを受けて、2005年2月以降、米国では、CPSCの定めた基準を超える金属性アクセサリー類の回収が行われ、また、カナダでも同じ対応がとられている。
 そのため、東京都において、現在市販されている金属製アクセサリー類等について、米国CPSCの暫定方針に準拠して鉛の含有量及び酸による溶出量を測定し、併せて、人への健康影響など鉛の安全性を評価のために必要な調査を行った。

3 調査方法

(1)検体の選択及び購入

 金属製アクセサリー類等を表1に示すように都内の販売店で購入した。検体の選定は無作為に行い、金属製アクセサリー類等が子供用に購入されることを考慮して、価格を100円〜1000円程度のものとした。
 検体の生産国は、中国製(52検体)が最も多く、韓国製(12検体)、タイ製(3検体)、台湾製(2検体)、日本製(2検体)、マレーシア製(1検体)、不明(4検体)であった。

表1 検体の概要
大分類 小分類 検体数
金属製
アクセサリー類
リング 10
ネックレス又はペンダント 14
イヤリング又はピアス 7
ブローチ 4
ブレスレット 6
ヘアピン 9
小計 50
その他 携帯ストラップ 16
キーホルダー 4
ミニカー類 6
小計 26
合計 76

(2)鉛の分析

 鉛については、米国消費者製品安全委員会(米国CPSC)から2005年2月3日に出された暫定方針に準拠して、含有量試験と溶出量試験を行った。

  1. 含有量試験(検体中に含まれている鉛の濃度を求める試験。単位:重量%)
    試料50ミリグラム〜70ミリグラムを100ミリリットルのビーカーに採取し、硝酸を8ミリリットル加え、ホットプレート上で約3ミリリットルになるまで加熱した。
    冷却後、塩酸2ミリリットルを加えて攪拌し、超純水で50ミリリットルに定容し、ICP発光分光分析※3用試料とし、分析した。
  2. 溶出量試験(胃酸を想定した溶液に検体からどの程度鉛が溶け出すかを求める試験。単位:マイクログラム※4
    試料の質量を測定し、糸で試料をポリ容器に吊り下げ、0.07mol/リットルの塩酸を試料の質量の50倍量加えた。容器を37度に設定した恒温振とう水槽に設置し、振とう回数を80回/分とし、規定時間振とうした。1時間振とう後、試料を取り出し、別に用意したポリ容器に移しかえ、0.07mol/リットルの塩酸を加え、引き続き2時間振とうした。振とう後、試料を取り出し、別に用意したポリ容器に移しかえ0.07mol/リットルの塩酸を加え、3時間振とうを行った。以上の振とう操作で得られた3つの溶出液を個々にICP発光分光分析用試料とし、分析した。

4 分析結果

(1)含有量試験

 検体の種類別含有量試験結果を表2及び図1に示す。購入した76検体中57検体(75%)から鉛が検出され、検出された濃度は最高91%であった。米国CPSCの含有量の暫定指針である0.06%(600ミリグラム/キログラム)以上の濃度で検出されたものは46検体あり、そのうち32検体が50%以上の高濃度であった。検体の種類別にみると50%以上の濃度で鉛が検出された割合が高い順は、携帯ストラップ、ブレスレット、イヤリング又はピアス、リング、ネックレス又はペンダントであった。
 検体を分割した部品ごとの鉛含有量を図2及び3に示す。鉛が50%以上の高濃度で検出されたのは、部品のうち、複雑な形状に加工されている飾り類からがほとんどであった。
 以上のことから、デザインされた複雑な形状の部分には多量の鉛が使用されており、これは、加工性、コスト等の点から鉛を多く含んだ合金が用いられているためと推測された。
 今回購入した検体の範囲において、生産国別に比較すると、米国CPSCの暫定指針値の0.06%を超えて鉛が検出されたものは、中国、韓国及び台湾製のものであり、検体数は少ないが、タイ製、日本製、マレーシア製からは、0.06%以上の鉛が検出されたものはなかった。

(2)鉛溶出量試験

 含有量試験の結果において、米国CPSCの暫定指針値の0.06%を超えた試料のうち、分類及び販売元を考慮して選択した21検体について、溶出量を測定した結果、21検体中17検体から鉛の溶出が確認された。そのうち、14検体において溶出量が、米国CPSCの暫定指針値の175マイクログラムを超えており、最大9900マイクログラム(暫定指針値の56倍)であった。検体の種類別鉛含有量試験結果を表3に示す。
 また、溶出が確認された検体については、鉛の含有量が同程度であっても、鉛の溶出量が大きく異なっている(溶出率:0.0009〜0.6%)ものがあった。これは、鉛を含んだ本体にめっき等による表面加工が施されており、更にガラス等の非金属のものが接触しているため、その表面の処理や形状により溶出液(酸)と鉛を含んだ部分との接触が一様でないことが原因と考えられる。

表2 種類別鉛含有量試験結果
種類 検体数
(個)
検出数 不検出数
(0.01%未満)
(個)
最高値(注1)
(%)
50%以上
(個)
0.06%以上
50%未満
(個)
0.01%以上
0.06%未満
(個)
リング 10 4 1 3 2 76
ネックレス又はペンダント 14 5 7 1 1 79
イヤリング又はピアス 7 3 1 2 1 86
ブローチ 4 1 0 0 3 85
ブレスレット 6 4 1 0 1 91
ヘアピン 9 3 2 1 3 71
携帯ストラップ 16 12 2 2 0 83
キーホルダー 4 0 0 1 3 0.038
ミニカー類 6 0 0 1 5 0.014
合計 76 32 14 11 19 91
57
基準値超過(注2) 46 基準値以下(注2) 30

(注1)各検体を分割した部品のうち、最も濃度の高いものについてまとめた。
(注2)米国CPSCの基準値は0.06%。

グラフ
図1 種類別含有量試験結果
グラフ
図2 部品別含有量試験結果(飾り類)
グラフ
図3 部品別含有量試験結果(鎖等)

表3 鉛溶出量試験結果
種類
(個)
検出数
(個)
検体数

不検出数(注2)
(個)

最高値(注3)
175マイクログラム以上(注1) 175マイクログラム未満(注1)
リング 2 1 1 0 236
ネックレス又はペンダント 4 2 0 2 4130
イヤリング又はピアス 3 2 1 0 7500
ブローチ 1 1 0 0 9900
ブレスレット 4 3 1 0 399
ヘアピン 3 2 0 1 2890
携帯ストラップ 4 3 0 1 1100
合計 21 14 3 4 9900
17

注1)米国CPSCの基準値は175マイクログラム。
注2)不検出とは定量下限未満のことである。本試験では、定量下限値は検体ごとに異なっており、不検出となった検体の定量下限値は10マイクログラム〜42マイクログラムである。
注3)各検体を分割した部品のうち、最も濃度の高いものについてまとめた。

5 鉛の安全性に関する調査結果

 鉛の安全性について調査した結果、子供特有の生理的な特徴として、次の情報が得られた。

(1)鉛は蓄積性のある強い毒性を示す物質であり、脳障害、神経系への影響、腎毒性及び血液系への影響などが主なものである。胎児、幼児はもっとも有害な健康影響を受けやすい。

(2)成人は食物中に含まれている鉛のおよそ10%を吸収するが、幼児は成人の4〜5倍多く鉛を吸収する。

(3)鉄、カルシウム、リンの食事からの摂取が少ないと、鉛の吸収が増加する。鉛の吸収が増加すると貧血を引き起こす。

(4)小腸で吸収された鉛は赤血球によって運ばれて、種々の器官に分布(血液、肝臓、肺、脾臓、腎臓、骨髄などの組織)する。特に骨に分布した鉛の代謝は遅く、血液中での半減期は36〜40日間であるのに対し、骨格中では17〜27年間である。また、鉛の生物学的半減期は子供の方が成人より長いという報告がある。

【備考】

※1 金属製アクセサリー類
 今回、東京都が調査した金属製アクセサリー類とは、宝石・貴金属を用いて造られた装身具類(いわゆるジュエリー)を除くアクセサリー類である。

※2 米国CPSC(The U.S. Consumer Product Safety Commission)
 米国消費者製品安全委員会(CPSC)は、消費者製品安全法に従って消費者製品に関する傷害及び死の不合理な危険から国民を保護することを目的として1972年に設立された中央政府機関。

※3 ICP発光分光分析(ICP-AES Atomic Emission Spectrometry、又はICP-OES Optical Emission Spectrometry)
 ICP発光分光分析は、アルゴンガスに高周波をかけて生成させたプラズマ炎(高周波誘導結合プラズマ:ICP Inductively Coupled Plasma)によってサンプルを原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際の発光スペクトルから元素の同定・定量を行う方法である。大部分の元素が分析可能であり、一度に何種類もの元素を分析することが可能である。主に金属元素の分析に用いられている。

※4 マイクログラム
 マイクロとは、10の-6乗のこと。1マイクログラムは、0.000001グラム。