報道発表資料 [2007年3月掲載]
(←この報道発表資料のトップへ戻る)

子ども用衣類の安全確保について
〜商品等の安全問題に関する協議会報告の概要〜

1 子ども用衣類の安全対策の必要性

 子ども用衣類の安全対策について、欧米等の諸外国では子どもが関係した事故情報を収集・分析し、安全対策を講じているが、我が国においては、安全対策はもとより、子ども用衣類に関連した事故情報の収集・分析が行われていない。

2 子ども用衣類の安全対策の現状

 欧米等の諸外国では、子ども用衣類に関連した事故情報を収集・分析している。「米国消費者製品安全委員会(CPSC)によるガイドラインの公表」、「米国材料試験協会(ASTM)による安全規格の作成」や「英国規格協会(BSI)による子ども用衣類のデザインに関する安全規格の作成」などにより、子どもの衣類に起因する事故が著しく減少している。
 一方、日本国内では、安全対策は講じられておらず、子ども用衣類に起因する事故の実態調査や事故原因の分析は、今まで一度も把握されたことがないのが現状である。

3 子ども用衣類が関係した危害・危険の実態を調査するに当たって

 子どもの事故は、親が保護・注意を怠ったという一つの原因だけで起きているのではなく、様々な「潜在危険」が重なり引き起こされている。事故を防止するためには、「潜在危険」を取り除くことが重要である。
 調査に当たっては、危害に至らず表面に表れない「ひやり・ハッと」を含めた多くの事故情報を収集、事故原因となった「潜在危険」を特定し、事故の傾向を分析することとした。

4 子ども用衣類が関係した危害・危険の特徴と課題

(1)消費者アンケート調査結果とその課題

 ア 事故(危害、危険、ひやり・ハッと)を経験した人は、全体の77%を占めており、そのうち、6人に1人の割合で危害(怪我をした)にあった経験をしていた(図1)。
 イ 最も多かったのが、「靴下やタイツを履いてフローリングの床等で滑って転んだ(68.9%)」、次が「上着の胴体のファスナーで顔や首を引っかいた又は皮膚を挟んだ(34.7%)」、「上着の裾が物に引っかかって転んだ(26.6%)等であった。
 ウ 危害等の発生原因については、「衣類に何らかの問題があった」と考えた人が24.2%で、以下「衣類の選び方が適切でなかった(23.5%)」、「衣類は関係なく、大人の不注意だった(22.8%)」等であった。
 エ 「衣類に何らかの問題があった」、「衣類の表示・取扱い説明書に問題があった」と回答した人であっても、ほとんどの人(96%)が、どこにも苦情を申し出ていなかった(図2)。
 オ 消費者は「安全・安心を念頭においた衣類設計」、「事故情報の公開・注意喚起」、「消費者の『危険を回避する』意識と能力の育成」、「苦情相談窓口の整備」等を求めていた。

図1 危害、危険、ひやり・ハッしたことの有無

基数:回答者全員(N=1,163)
グラフ

図2 苦情の申し出先(複数回答)

基数:衣類・表示・取扱説明書に問題があった全人数計(N=297)
グラフ

(2)事業者アンケート調査結果とその課題

 ア 製造事業者の51%、販売事業者の40%が、消費者からの苦情を受けたことがあり、製造事業者は、消費者からの苦情が多い「ファスナー」、「飾り」の危険性について注意を払っていた(図3、4)。

図3 消費者からの苦情内容(複数回答)

(単位:件)
グラフ

図4
製造事業者:デザインするときに注意する点(複数回答)
販売事業者:消費者に対して販売時にアドバイスする点(複数回答)

(単位:件)
グラフ

 イ 事業者は、「社内の安全基準・安全点検マニュアル」や「アパレル業界統一の安全基準」作成の必要性を感じていた。

(3)くらしの安全情報サイトによる都民意見募集の結果及びその課題

 事業者からは、「服の付属物の安全基準を検討したい」。消費者からは、「フード、飾り、紐などで色々なところに引っ掛けている」、「保育園では、保護者に紐を取るよう伝えている」、「あまりにファッションを重視した物はいらない」、「自転車でズボンの紐が絡まった」等の意見が寄せられた。

(4)海外の文献調査から得られる課題

 海外の安全規格(基準)は、事故防止の専門機関はもとより、消費者、事業者、学識経験者等が協力して事故情報を収集・分析・評価し、策定した統一規格であることがうかがえる。我が国においても同様に、安全規格(基準)を策定する必要がある。

(5)国及び関係機関における課題

 子ども用衣類の安全対策を事業者の自主性に委ねているのが現状。海外の取組みを参考にし、行政機関あるいは第三者機関が主体となり、安全対策を強力に推進する必要がある。

(6)製造・販売事業者における課題

 製造・販売事業者が連携して消費者からの事故情報を共有し、子ども用衣類の安全に対する意識を高めることが必要である。

(7)デザイナー・パタンナー育成教育機関における課題

 将来のデザイナー・パタンナーとなる学生に対し、早急に衣類の安全性を考慮したデザイン等を教材やカリキュラムに取り入れ、安全意識向上につなぐ授業を実施する必要がある。

(8)保育所、幼稚園、小学校の教育機関及び地域、家庭における課題

 ア 子どもが意見を出す場がないため情報が集まらないこともあり、自ら考え行動し安全を確保するといった危険回避につながりにくい。
 イ 過度にリスクを排除すると、子どもの想像力の育成や小さな怪我を安全に体験することによる危険回避能力発達の機会を損ねてしまう懸念がある。子ども達に夢を与え想像力を育成するデザインと重大な事故を防止する安全に配慮したデザインを両立させる必要がある。

(9)東京都における課題

 東京都や都の関係機関は連携して、消費者及び教育関係者に対し、衣類に関する注意喚起や情報提供をする必要がある。

5 関係団体の取組み

(1)国及び関係団体の取組み

 ア 国(経済産業省)は、平成18年6月、少子化社会対策会議で、子どもの事故防止対策の推進を掲げ、各省庁が協力して子どもに関する事故情報の収集・分析・共有等を行う。また、平成18年11月「消費生活用製品安全法」を改正し、今後、事業者への重大事故の報告を義務化し、広く国民に公表する。
 イ 独立行政法人産業技術総合研究所は、平成19年度から経済産業省の協力を得て、「子どもの事故予防」に関するJISを3年間で3規格策定する予定であり、初年度は、「遊具の安全規格(基準)」を、平成21年度までに「子ども用衣類の安全規格(基準)」を策定する予定である。
 ウ キッズデザイン協議会は、経済産業省等と連携し、子どもの安全安心の向上、健やかな成長発達に役立つ製品等に「キッズデザイン賞」を授与する制度を平成19年度から創設する。

(2)製造事業者等業界の取組み

 全日本婦人子供服工業組合連合会は、今後、子ども用衣類の安全対策を推進するため、安全・安心なモノづくりのためのガイドライン作成に取組んでいく予定である。

(3)デザイナー・パタンナー育成教育機関の取組み

 子ども用衣類が関係した海外の事故及び安全基準を認識するための解説を、今後作成するテキストに取り入れ、学生に対する教育を充実していく予定である。

(4)消費者団体等の取り組み

 ア みらい子育てネット東京は、親子の集い等の場で、TPОに合わせた衣類の選び方、危険回避力を身につけるプログラムを考え、実施することを検討していく予定である。
 イ 子どもの危険回避研究所は、以前から消費者に対し衣類や紐の危険性について注意喚起の被害防止講習を実施しているが、今後、衣類と周囲の環境でどのような危険があるかを考えさせるイラストを使用した教材作り等を検討する予定である。
 ウ (社)全国消費生活相談員協会は、今後、都及び関係団体等と積極的に連携を図り、講座やホームページ等を通じ、「子ども用衣類の安全確保」についての情報提供を行っていく予定である。
 エ 幼稚園等では、保護者に衣類が原因で起こる事故の情報を伝え、通園に適した服装のポイントと選び方について話し合い、施設・設備の安全点検等を実施する。

6 協議結果(提言内容)

 協議会は、子ども用衣類のデザインの安全性を確保し、死亡や重傷等の事故を防止するため、今後、国、関係機関、事業者団体、東京都、消費者が取り組むべき事項を、次のとおり提言している。

(1)デザイン面の安全規格(JIS等)・基準の策定

 ア 国及び関係団体は、消費者、事業者、学識経験者等と協力し、「子ども用衣類のデザインに関する安全確保の提案」を参考に、子ども用衣類のデザインに関する安全規格(日本工業規格(JIS))として策定することを検討すること。
 イ 製造・販売事業者団体は、関係する団体と協力し、「子ども用衣類のデザインに関する安全確保の提案」を参考に、子ども用衣類における業界の自主基準として実現を図るよう検討すること。

(2)安全基準適合マーク等の表示

 ア 製造・販売事業者団体及び関係団体は、消費者が安全に配慮した子ども用衣類を安心して選択し購入できるよう、安全基準適合マークを創設し、子ども用衣類に表示することを検討すること。
 イ 製造・販売事業者団体は、商品に、TPОに合わせて安全に利用するための方法や着脱の際の取扱い等について記載した注意表示を添付すること。

(3)品質管理(検査)体制の充実強化

 ア 製造・販売事業者団体は、品質管理(検査)を徹底し、品質管理部門の充実強化を図ること。
 イ 製造・販売事業者団体は、安全に配慮した衣類を安定して供給するため、安全点検マニュアルの作成を検討すること。

(4)事故情報の収集・分析・評価体制等の整備・充実等

 ア 製造・販売事業者団体は、消費者相談窓口を設置し、事故情報収集体制を整備するとともに、事故情報の分析・評価体制の充実を図ること。
 イ 製造・販売事業者団体は、団体加盟事業者と協力して、事故情報の共有化を図り、連携して事故の未然防止に努めること。
 ウ 製造・販売事業者団体は、事故の未然防止・拡大防止のため、消費者に対して収集した事故情報を迅速に公表すること。
 エ 製造・販売事業者団体は、事故の未然防止のため、収集・分析・評価した事故情報を基に、安全性に配慮したデザインの研究開発を推進すること。

(5)デザイナー・パタンナー育成カリキュラムの充実

 デザイナー・パタンナー育成教育機関は、学生に対し、子ども用衣類のデザイン面の安全確保に関する教材、カリキュラムを提供し、安全に対する意識の向上を図ること。

(6)事業者の子ども用衣類に関する安全意識の向上

 ア 製造・販売事業者団体は、各団体加盟事業者に対し、子ども用衣類に関する事故、安全規格等を周知し安全に対する意識の向上を図ること。
 イ 製造・販売事業者団体及び関係団体は、安全性に優れた子ども用衣類のデザイン表彰制度の創設を検討すること。

(7)消費者の子ども用衣類に関する安全意識の向上

 ア 製造・販売事業者団体は、消費者に対し、「育児雑誌」、「育児書」、「ファッション雑誌」等による事故防止の注意喚起を実施すること。
 イ 東京都は、消費者及び教育関係者に対し、関係機関と協力し、子ども用衣類が関係した事故の実態、TPОに合わせた衣類の選び方、着用時の取扱いに関する注意事項について、消費者に分かりやすい事故防止パンフレット等による事故防止啓発の充実を図ること。
 ウ 東京都は、消費者に対し、事業者や消費生活センター等に事故情報を通報するよう働きかけること。
 エ 消費者は、自らの安全を確保するため、安全確保に関する情報を通じ、危険について認識し、自ら危険性を判断して安全性の高い商品を選択すること。