緊急アピール
東京狙い撃ちへの反論
〜「骨太の方針2006」に向けて〜
平成18年5月
東京都
1 今なぜ、東京の財源が狙われるのか
本年6月に策定される予定の「骨太の方針2006」(経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006)では、2011年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡に向け、わが国の歳出削減に向けた具体策を明らかにすることが、最大の課題になっています。
その中で、地方交付税を中心とした地方財政の圧縮が焦点の一つとなっていますが、最近とみに高まっているのが、東京の財源を狙い撃ちしようとする動きです。
その根底にあるのは、税収が多く財政状況の良い東京は豊かであるという「東京富裕論」です。
しかし・・・
| 最近の税収の増加や財政状況の好転が、東京のすべてをあらわしているわけではなく、今ある「東京富裕論」には多くの誤解や理解不足があります。 |
2 誤解や理解不足に基づく「東京富裕論」
東京は、すでに高度に発達した日本最大の都市であり、地方に比べて財政需要は少ないはずだ。東京には、必要以上の税収が集まっている。
都民の暮らしむきは、決してすべてが満足できる水準にあるとは言えません。都民生活を改善するために、あるいは特有のコストを抱えているために、東京には多くの大都市需要が存在します。
例えば、
| 東京都 | 全国平均 | |
|---|---|---|
| 混雑時旅行速度 | 20.2キロメートル/時 | 35.0キロメートル/時 |
| 渋滞損失時間 (万人時間/年) |
36,910 | 8,102 |
| 二酸化窒素濃度の環境基準達成率 | 52.6% | 89.2% |
| 合計特殊出生率 | 1.01 | 1.29 |
| 生活保護被保護実人員 (人口1千人当たり) |
14.1人 | 10.5人 |
| 年間救急出場件数 (人口1千人当たり) |
54.6件 | 37.9件 |
| 刑法犯認知件数 | 283,326件 | 54,527件 |
| 用地取得価格 | 286千円/平方メートル | 23千円/平方メートル |
| 東京への投資は、都民だけでなく、国全体の利益につながるものです。 |
例えば、
◆羽田空港の再拡張
羽田空港を再拡張することにより、各都市から要望の強いアクセス回数の増加を実現でき、各都市と東京の往来が一層便利になります。
羽田空港が再拡張されると…
年間発着能力が、29.6万回→40.7万回に増加し、
その整備効果は、東京・首都圏だけでなく、全国に及びます。
◆首都圏三環状道路の整備
首都圏に環状道路を整備することにより、都心の通過がボトルネックとなって生じている慢性的な交通渋滞の解消を図ることができ、大きな経済効果をもたらします。
東京外かく環状道路(関越道〜東名高速区間)の整備によって…
東名高速〜東北自動車道が、最大で約85分短縮され、東海・東北間の物流が便利になるなど、年間で約3,000億円の経済効果が見込まれます。
また、交通渋滞の解消等により、年間約20〜30万トンの二酸化炭素排出量の削減効果が見込まれます。これは、東京23区の面積の約2分の1〜3分の1の植林に相当する効果です。
東京都の財政は、国や他の自治体に比べ格段に良好だ。これは、東京都が豊かである何よりの証拠ではないか。
最近の税収増に助けられた面もありますが、現在の都財政の状況は、東京都が、いち早く財政の健全化に取り組んできた成果です。
こうした成果は、国が吸い上げるのではなく、地域(都民)に還元すべきものです。
例えば
都は、国や他の自治体に先駆け、大幅な職員定数の削減を進めるなど、歳出削減に全力で取り組んできました。今日の都財政の健全性回復は、こうした厳しい努力の積み重ねの結果です。
職員数の推移

※都は職員定数、地方全体は職員数(「地方財政統計年報」による)。
国及び地方財政計画との比較(一般歳出)

歳入確保の取組
東京都は、厳しい財政状況下で税収を確保するため、全国に先駆け、自動車税・軽油引取税の徴収強化(不正軽油撲滅作戦等)、インターネット公売の実施など様々な取組を進めてきました。
この結果、都税の徴収率は、最低時の90.2%(平成7年度)から、96.8%(平成16年度)まで6.6ポイント向上し、全国平均を大きく上回っています。
徴収率の推移

地方交付税算定上の「超過財源」が1兆円あることを見ても、やはり東京は豊かなのではないか。
この「超過財源」は、全く実態から離れたものです。
例えば、
東京には300万人を超す昼間流入人口があり、その分膨大な財政需要があります。
しかし、交付税では、約70万人分の昼間流入人口しか認められていないため、2,000億円以上が算定不足となっています。
そもそも「超過財源」は、機械的な計算に基づくものであり、都財政の実態とは乖離しています。
地方交付税算定上の都の「超過財源」と普通会計決算
| (単位:億円) | |||||||||||||||
|
東京都は地方交付税の不交付団体であり、17年度の交付税算定では、基準財政収入額が基準財政需要額を1兆円上回る「超過財源」が発生しているとされています。
国からの財源配分
これまでも、「地方」は、国から手厚い財源配分を受けています。
国税の還元
1人当たりの国税の還元額を見ると、東京には都民1人当たり11万円と島根県の約6分の1しか還元されていません。
国税からの還元額(住民1人当たり)

道路特定財源の配分
ガソリンなどへの課税を財源とする道路特定財源の東京への配分は、負担に見合ったものになっていません。
全国に占める東京のシェア

3 狙われる東京の財源
最近、東京の財源を狙って、次のような意見が聞こえます。
意見1
法人二税(法人住民税・法人事業税)について、分割基準を見直すべきだ。あるいは、別の配分基準を設けるべきだ。
これまでに・・・
国は、これまでも法人事業税の分割基準を度々見直すことにより、東京都の財源を吸い上げ、本来、国税で行うべき地方の財源調整を行ってきました。
その結果、毎年1,700億円の減収に。
2011年(改革期間終了時)までに、1兆円が東京都から地方へ。
さらに加えて・・・
今また、この分割基準等に手を加えることで、東京都からさらに財源を吸い上げようという考えがあります。
※「分割基準」とは、複数の地方自治体にまたがり事業活動を行う法人の事業税や住民税を関係都道府県や市町村に配分するための基準です。
影響額を試算すると・・・
法人住民税の分割基準の見直し※1→1,000億円の減収
法人二税を分割基準ではなく、新たに人口基準により配分※2→1兆2,000億円の減収
※1 法人住民税の分割基準を、現行の法人事業税と同様の基準を適用するものとして試算。
※2 法人二税を都道府県等の「人口」に基づき配分するものとして試算。
反論
- 分割基準等を地方自治体間の財源調整の手段として用いることは、地方自治体の課税権の侵害。
- 法人事業税は「事業活動規模」に応じ、また法人住民税は事業活動の成果としての「所得」に応じて課税するものであり、人口を基準として税収を配分することは、その課税根拠を全く無視したもの。
合理的な理由のない分割基準の見直しや、課税根拠のない配分基準の導入は、税制の姿をゆがめるもの。
意見2
地方税の税目は、地域間の偏在性の高い法人二税の比重を減らし、偏在性の低い地方消費税の比重を高めるべきだ。
その中身は・・・
東京都など大都市部に集まる法人二税→(一部)国税移管
地域間の偏在性の比較的低い消費税→(一部)地方税移管
影響額を試算すると・・・
法人二税を(一部)国税移管→1兆円の減収
消費税を(一部)地方税移管→5,000億円の増収
差引で、5,000億円の減収
※消費税を現行の国:地方=4:1から2.5:2.5になるように地方へ移管し、それと同額の法人二税を国税に移管するものとして試算。
反論
- 法人は、事業活動を行うために自治体から様々な行政サービスを受けており、地域の構成員として応分の負担をすべき。地方の基幹税である法人二税の国税への移管は、非常に不合理。
- 法人二税の比重を減らせば、税収確保に向けた企業誘致、産業振興等に対する自治体のインセンティブが失われるおそれ。
国と地方を通じた税制の見直しにあたっては、国と地方の事務分担について抜本的な議論を行い、受益と負担の関係を踏まえた税目のあり方を検討することが不可欠。
旺盛な事業活動に伴う財政需要
東京都及び大都市部に法人二税が集まっている事実のみを捉え、問題視する声があります。
しかし、この主張は、法人による旺盛な事業活動や、昼間流入人口に伴って生ずる膨大な財政需要を無視した一面的なものです。
「人口1人当たりの法人二税の税収」を指標化し、単純に他の道府県と比較することも意味がありません。
| 人口(A) | 昼間人口(B) | (B)/(A) | |
|---|---|---|---|
| 東京都(23区) | 834万人 | 1,113万人 | 1.33倍 |
| 政令指定都市計 | 2,100万人 | 2,198万人 | 1.05倍 |
※人口は、平成15年10月時点の推計人口であり、昼間人口は、平成12年10月時点(国勢調査)による。
意見3
東京都は、地方交付税の不交付団体であり、財源が余っている。これを他の自治体へ回すべきだ。
その中身は・・・
・地方交付税の算定における不交付団体の「超過財源」を拠出させ、他の自治体に配分(水平的財政調整)
<水平的財政調整のイメージ>

※「基準財政需要額」「基準財政収入額」とは、地方交付税の算定のため、総務省が一定の算式に基づき、個々の自治体ごとに算定した歳出と歳入です。
影響額を試算すると・・・
23区を含んだ影響額→1兆円の減収
※平成17年度の交付税算定における東京都の「超過財源」を、そのまま水平的財政調整の財源に拠出するものとして試算。
反論
水平的調整により財政調整を行うことは、受益と負担の関係をさらに弱め、財政運営の責任を不明確にするなど、明らかに地方分権に逆行するばかりか、地方自治の本旨にもとるもの。
東京都の行政サービスの財源として徴収した税金を、他の自治体のために拠出することは、全く合理性がない。
過去の「水平的財政調整」制度
かつて、都区財政調整制度において、「納付金」という「水平的財政調整」の仕組みがありました。しかし、「納付金」は、特別区間の財政調整を徹底する反面、特別区の課税権、財政運営の自主性を制約するなど問題が指摘され、地方自治法の改正(平成12年4月施行)において、廃止されています。
こうした過去の制度の変遷を見ても、「水平的財政調整」の実施は、地方分権の流れに逆行するものであることは、明らかです。
4 単なる数合せでなく、骨太の議論を
合理性のないまま、東京の財源を吸い上げれば、東京の活力が削がれるばかりか、わが国の活性化にも悪影響を及ぼします。
これまで東京は、日本の「機関車」として、わが国の成長の原動力となってきました。東京への投資は、東京だけが利益を受けるものではなく、日本全体の活性化、国際競争力の向上、国民生活の利便性の向上に結びつきます。
大切なことは、日本全体が発展することであり、東京においても必要な財源は確保されなければなりません。
- 財政構造の見直しにあたっては、目先の数合せではなく、国家としての長期的な戦略をもって臨むことが必要です。
- 地方財政の見直しについても、地方分権の視点から根本的な制度改革の議論を行うべきです。