〔別添〕
自殺実態調査(概要版)
−自死遺族からの聞き取り調査−
調査の概要
自殺対策を効果的に推進するためには、自殺の原因・動機や背景、遺された遺族の状況など、自殺の実態を具体的に把握し、その実態に即した自殺防止策及び遺族支援策等の対策を講じることが必要である。
そこで、自殺の危険を早期発見し、効果的な危機介入を図るための対策や、遺族が必要とする効果的な遺族支援策などの対策を検討するための基礎資料を得るため、本調査を実施した。
調査の対象
(1) 自殺者に関する調査
自殺者が、亡くなった当時に、都内に在住しているか、あるいは都内に通勤・通学していた場合
(2) 自死遺族に関する調査
自殺者の遺族であって、調査時点において、都内に在住している場合
調査対象者の募集方法
- 自死遺族向けのリーフレットを作成し、これに調査の趣旨と参加協力依頼について記載した書面をはさんで、監察医務院において遺族に対して配布した。さらに、自殺対策や自死遺族支援に関するシンポジウム・講演会が開催された際などに、調査についての情報提供と調査への参加の呼びかけを行った。
- 遺族から参加協力の申し出があった場合に、意向を確認したうえで、調査を実施した。
調査方法
調査員が二名一組となり、遺族への訪問面接により、「自殺者に関する調査」、「自死遺族に関する調査」のそれぞれ又はいずれかの内容についてのヒアリング調査を行った。
調査実施期間
平成20年8月下旬〜平成21年3月31日
調査の実施状況
(1) 調査の実人数(ヒアリングを行った遺族の人数)
訪問面接を行った自死遺族は、57名であった。
(2) 自殺者に関する調査
遺族への訪問面接を行ったうち、亡くなった当時に都内に在住しているか、または都内に在勤・在学していた自殺者は、50名であった。(男性36名、女性14名)
(3) 自死遺族に関する調査
訪問面接を行ったうち、調査時点において、都内に在住している自死遺族は、38名であった。
1 自殺者に関する調査
(1) 自殺のリスク要因
■自殺未遂の経験
○生前の自殺未遂の経験について、「あり」の方は17人(34.0%)、「なし」の方は27人(54.0%)

■身内の自殺
○故人にとっての身内の方で、自殺で亡くなった方の有無について、「いる」方は14人(28.0%)

■被虐待の経験
○被虐待の経験について、「あり」の方は8人(16.0%)
○男女別にみると、女性は「あり」の方が5人(35.7%)

(2) 自殺のサイン(亡くなる2週間前)
■自殺をほのめかす発言
○「死にたい」「消えたい」など自殺をほのめかすような発言について、「あった」方は20人(40.0%)、「なかった」方は20人(40.0%)(1))

■その他のサイン
○自殺をほのめかすような発言の他にも自殺のサインを発していたと思われる方は30人(60.0%)(2))

■サインの認識
○1)で「あった」又は2)で「思う」と答えた方36人(72.0%)のうち、その当時でもそれが自殺のサインだと思ったかについて、「思った」が8人(22.2%)、「思わなかった」が22人(61.1%)

(3) 悩み、問題に関する相談
■相談の有無
○故人が悩み、問題に関してどこかに相談していたかどうかについては、相談していた方が39人(78.0%)
■相談場所
○どこかに相談していたかどうかについては、「精神科・心療内科の医療機関」が27人(54.0%)で最も多く、次いで「その他の医療機関」が14人(28.0%)、「家族」が10人(20.0%)、「公的相談機関」が5人(10.0%)、「どこにも相談していない」は9人(18.0%)
○実数では、50人中35人(70.0%)が「精神科・心療内科の医療機関」等の専門機関※に相談をしていた。(専門機関:右図棒グラフの頭部に※がある機関。)

■相談時期
○相談をしていた39人のうち、最後に相談した時期について、「亡くなる2週間以内」の方が19人(48.7%)

2 自死遺族に関する調査
(1) 困ったこと・悩んだこと
■悩みの有無
○故人が亡くなってから半年間の間に、故人が亡くなったことにより困ったこと、悩んだことが「あった」が36人(94.7%)
■悩みの内容
○「故人が亡くなったことによって困ったことや悩んだことが「あった」方の、その具体的な内容については、「ご自身の身体、心の悩み」が26人(72.2%)で最も多く、次いで「身内・親戚との関係」が16人(44.4%)、「家族の健康状態の悩み」が11人(30.6%)、「家族内の後追いの心配」が8人(22.2%)、「死後の手続きなど」が8人(22.2%)

(2) 故人を亡くしてからの気持ち
■直後の感情
○直後の感情として、最も多かったのが「悲しみ」で30人(78.9%)、次いで「驚き」が22人(57.9%)、「自分のせいではないか(自責の念)」が21人(55.3%)、「絶望感」、「悔しさ」がそれぞれ18人(47.4%)

■現在の感情
○故人の生前と比べた現在の感情については、最も多いのが「悲しみ」の17人(44.7%)で、次いで「その他」が16人(42.1%)、「悔しさ」、「自分のせいではないか(自責の念)」、「疑問」がそれぞれ14人(36.8%)、「怒り」が9人(23.7%)

(3) 直後の周囲の反応や言葉で気になったもの
○故人が亡くなった直後(亡くなってから3か月後までの間)に周囲の反応や言葉で気になったものについて、「あった」が23人(60.5%)
<主な内容>
- 親類から、「父親が死ぬほど苦しんでいたのに、なぜ気づかなかったのか」など責められた。

(4) 支援の要望
○行政、民間団体への支援の要望については、「同じ体験をした人と話がしたい」、「必要な手続き、受けられる補助などに関する情報提供」がそれぞれ16人(42.1%)で最も多く、次いで「その他」が13人(34.2%)、「相談窓口の対応改善」が12人(31.6%)
○実数では、「同じ体験をした人と話がしたい」「分かち合いの会に行きたい」が38人中17人(44.7%)であった。

<「その他」の主な内容>
- 分かち合いではなく、面と向かって一対一で話を聞いてほしい
- 実態を分かってもらいたい
- うつ病の研究をもっとしてほしい
- 子どもへの支援の充実
3 自殺防止対策・自死遺族支援の方向性について
(1) 自殺を未然に防ぐ取組について
○自殺のハイリスク者に対して適切な支援を行うことが、自殺を未然に防ぐうえで重要である。
- 自殺者の中で、前に自殺未遂の経験を持つ方が34.0%あり、未遂者への精神的ケアや継続的支援を行うしくみを構築することが必要。
- 身内を自殺でなくしている方が28.0%あり、自死遺族への精神的ケアを含めた総合的支援を充実することが必要。
- 自殺者の女性のうち、被虐待の経験を持つ方が35.7%あり、福祉・教育・保健・医療など関係各分野が連携して年少時からの継続的な支援を行うことが必要。
○自殺の直前の時期まで、相談機関等に相談や受診を行っていた方が多かった。幅広い分野の相談担当者等が、自殺に関する知識や他分野の相談機関との連携方法に関する理解を深められるよう、ゲートキーパー研修等を充実することが必要である。
○生前に何らかの自殺のサインを発していた方が7割を超えているものの、「当時は自殺のサインとは思わなかった」としている遺族が多かった。周囲の人が自殺のサインに気づき、相談機関へつなぐことができるよう、普及啓発や相談支援ネットワークを強化する必要がある。
(2) 自死遺族支援について
○特に中年男性の自殺者の場合など、急激な収入の低下や借金などの経済的な問題を抱える遺族が多く、問題解決のための情報提供や支援の充実が必要である。情報提供については、支援に関する情報が一元的に提供できることが望ましい。
○自死遺族の多く(94.7%)が、悩みや身体や心の問題を抱えており、また、悩みや問題が多岐にわたっている。保健・医療・福祉、教育、労働経済など、様々な分野が連携して、直後からの継続的、総合的な支援体制を構築する必要がある。特に、最初の発見者が子どもである場合などは、長期にわたる心のケアが重要である。
○また、「同じ悩みを持つ人と話をしたい」との意見が多く(44.7%)、分かち合いの会など、遺族同士が交流できる場の充実が求められる。
(3) 自殺についての理解を深めるための普及啓発について
○自殺対策を「生きるための支援」ととらえ、自殺に対する誤解や偏見を払しょくし、都民一人ひとりが自殺予防の取組に関心を持って取り組めるよう、普及啓発を強化する必要がある。
○自殺直後に関わる関係機関等が自死遺族に接する際に、不用意な言動等から遺族に二次被害を及ぼすことがないよう、関係機関の職員が自殺や自死遺族への対応等について、理解を深める必要がある。