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施政方針

平成27年2月18日更新

平成27年第一回都議会定例会知事施政方針表明

平成27年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

1 私が目指す世界一の都市の姿

(平和な社会、基本的人権が尊重される社会を守る)

 まず、中東で起きた日本人人質殺害事件について申し上げます。亡くなられた湯川遥菜さん、後藤健二さんのお二人に対し深く哀悼の意を表するとともに、ご家族の方に心からお悔やみを申し上げます。強い憤りを感じております。テロ行為は絶対に許されることではありません。同時に、都政の最高責任者として、2020年も控え、都民の生命・身体・財産を守るため、全力を挙げてテロへの備えを固める思いを強くしております。

 さて、今年で戦後70年を迎えますが、この70年の歴史を私なりに振り返りながら、日本の平和と繁栄を築いた先人たちの努力に思いを馳せました。
 第二次世界大戦の戦勝国により創られた国際秩序は、1989年のベルリンの壁崩壊で大きく変化いたしました。イデオロギー対立の時代が終わって米ソ中心の二極体制が崩れ、EUの誕生、中国など新興国の台頭によって世界は多極化しております。敗戦から立ち直り、アジアの経済大国へと成長した日本は、今や、国連をはじめ安定的な国際社会の秩序形成にも積極的に参画していくべき時代に入っていると思います。
 国際政治が複雑化する中で、先人が築き上げてきた平和を、次の世代にいかに引き継ぐのか、これは現代を生きる政治家の大きな責任であると思います。そうした意味でも、寛容の精神が薄れ、極端なナショナリズムや排外主義が跋扈する今日の状況に、強い危惧を感じております。ユダヤ人を排斥したナチズムが不幸な戦争への序曲であった歴史を忘れてはなりません。それゆえ、特定の民族を侮蔑的に攻撃するヘイトスピーチを許してはならないという態度を早い時期から示し、東京だけでの対策では限界があることから、安倍総理にも直接話をいたしました。今、ヘイトスピーチを問題視する動きは、社会に広がりを見せております。
 東京都は、平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックの開催都市として、大きな責任を有しております。これからも、平和で基本的人権が尊重される社会を守る姿勢を貫いてまいります。

(機会の平等を追求すべき)

 パリ経済学校のトマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」という本が世界的に論争となっております。ピケティ氏は、先般、来日もしておりましたが、その説には賛否両論があります。この本の主題とも言える資本主義と格差の問題を考えたときに、必ず「平等とは何か」という問いが出てくるのであります。
 それに対する私の答えは「機会の平等」を追求すべきであるというものであります。もし「結果の平等」を推し進めれば、モラルハザードを招き、活力が損なわれ、社会の発展は望めません。しかし、行き過ぎた自由は、格差を著しく拡大し社会階層を固定化させ、「機会の平等」の基盤を揺るがす危険を有しております。人々の不満が溜まり、他者への寛容さも薄れ、社会に修復しがたい亀裂を生むことになるのです。

(真面目に一生懸命生きる人が必ず報われる公正な社会)

 「自由と平等」、この二つのバランスをとりながら、一人ひとりが自分の力を遺憾なく発揮し、活力に満ち、豊かで、安定した営みができるようにすること、これこそが私の、政治・行政の役割について考える原則でございます。
 仕事をして安定した生活を送りながら自己実現を図る。途中で子育てや介護があっても仕事を続けられる。年を重ね、あるいは病気になっても、しっかりとした福祉・医療を受けられる。他人の人生を台無しにするような卑劣な犯罪は許さない。真面目に一生懸命生きる人が必ず報われる公正な社会を私は築いてまいりたいと思います。
 都民・国民の生活水準を全体的に押し上げ、豊かな生活を実現していくためには、それを支える新たな富を創り出していく必要がございます。都政の力を成長戦略の実行、経済活性化にも積極的に動員してまいります。都市の再開発やインフラ整備により国際競争力も高め、必要があれば規制も緩和し、東京の可能性を最大限引き出してまいります。

2 長期ビジョンと平成27年度予算案

 世界一の都市の姿とは、生活習慣・文化・価値観など人間の多様性が尊重され、誰もが幸せを実感できる都市、誰もがそこに住み続けたいと心から感じることができる都市であります。
 10年先を見据えて策定した「東京都長期ビジョン」は、世界一の都市・東京を目指す都政の大方針であります。ビジョンには、都が独自に行う先進的な政策や、経済を盛り上げる政策も数多く盛り込みました。透明の水の上に、青いインクを一滴垂らすと、それが水面に大きく拡がってまいります、その最初の一滴こそが東京であるべきだと思っております。我々の政策が成功すれば、それを全国で展開する。東京の経済が良くなって地方経済にも波及していく。2020年はゴールではありません。2020年を跳躍台にして、日本の未来を切り拓く新しい動きを、東京から創り出してまいります。

(平成27年度予算案)

 そのビジョンに具体的な息吹を吹き込むのが、平成27年度予算案であります。私の政治の原点であります福祉の分野は、1兆1000億円を超えます予算を組み、予算全体に占める構成比も過去最高であります。また、2020年大会を控えた施設整備や防災性の向上のための投資的経費も10%以上伸ばすなど、積極果敢な予算を編成いたしました。
 幸いにして、来年度の税収は堅調と見込まれております。しかし、都の税収は、常に景気の荒波に翻弄されてまいりました。それゆえ、予算編成に当たりましては、施策の見直しによる都政改革の推進と、中長期を見据えた強固な財政基盤の構築に目を配っております。
 各局が自ら事業を見直した場合に倍額の予算要求を認めるなど施策の新陳代謝を促した結果、前年度の1.6倍に当たる410億円の財源を確保いたしました。さらに、330件の新規事業も立ち上げました。今後もスクラップ・アンド・ビルドを徹底してまいります。また、福祉、防災、水素社会、文化など7つの重点分野につきましては新たに基金を創設し、戦略的、安定的に政策を推進できる体制を整えてまいります。

(東京と地方が共に栄える国づくりを)

 今回の税制改正で、法人事業税の暫定措置や法人住民税の国税化という不合理な措置が継続され、来年度予算では3000億円の減収という影響が出ております。この制度の撤廃をこれからも強く要求してまいります。また、法人実効税率の引下げも予定されておりますが、代替財源の確実な確保を求めてまいります。
 かねてより申し上げておりますとおり、地方財政の財源不足や地方創生の問題を「大都市」対「地方」の対立に歪める考え方自体が間違っております。この問題に対処するには、本来、この国のかたちを根本から考え直すことが必要であると思います。
 先週末、石破茂地方創生担当大臣と会談し、東京にとっての地方創生について意見交換してまいりました。私が考えるポイントは、「国と比べれば東京も地方であるんだ」と、しかし「我が東京は日本国の首都」であります。そして「今や世界中で都市間競争が起こっている」、この3点を強調してまいったわけであります。東京が世界の都市間競争に敗れれば、国全体が傾くのであります。この熾烈な競争を勝ち抜くために、東京は全力を尽くしてまいりますし、東京以外の地方にも努力していただかなければなりません。一方で、電力供給にせよ、食料供給にせよ、「東京は他の地方に支えられている」と、このことも忘れてはなりません。大都市も地方もそれぞれの力を活かして伸ばすという方向で、石破大臣とも見解が一致しておりまして、今後、「東京都長期ビジョン」を基に、国が求める総合戦略の策定にも対応してまいります。東北の被災地復興にも引き続き尽力し、東京と地方が共に栄える国づくりに貢献していく。この姿勢で都政運営に臨んでまいります。

3 「世界一の都市」東京に向けた重点施策

 次に、都政の主要政策について申し述べたいと思います。

(世界一の福祉先進都市への挑戦)

 日本社会は、少子高齢化、人口減少という大きな地殻変動に晒されております。この変動に対処し、都民生活を向上させるのが、福祉政策であります。「世界一の福祉先進都市」、この大きな目標に向かって、全力で取り組んでいきたいと思います。

〈東京の福祉を支える体制の構築〉

 東京の福祉を考える上でネックとなりますのが、土地と人材の不足であります。土地については、すでに都有地を中心とした活用方策を打ち出し、昨年、可決していただきました補正予算による対策も進めております。今後、新たに設置する福祉貢献インフラファンドも活用し、例えば、子育て支援施設や高齢者向け施設、賃貸住宅などを集約しました「東京都版CCRC」とも言える建物の整備を支援するなど、多面的に取り組んでまいります。
 介護や保育を担う福祉人材については、キャリアパスに大きな問題があると思います。現場での頑張りが将来に繋がり、人生設計の見通しが立つということでなければ、技術・経験の豊富な人材が離職することにもなりかねません。いくら施設を整備しても、人材を欠いていては福祉先進都市にはなれません。そこで、東京都は独自に、先進的な取組を展開し、職員のキャリアアップと処遇改善に取り組む事業者を支援してまいります。保育士については、キャリアパス制度の導入を条件に、モデルケースでは、国の処遇改善加算9千円に加えまして、都がさらに2万1千円補助することで、月額平均で3万円の給与改善に繋げます。介護職員につきましても、国のキャリア段位制度を活用して、キャリアパスの仕組みを構築し、職員の介護スキルに応じた手当を支給する事業者を支援いたします。この取組によりまして、段位取得者一人につき月額2万円程度の処遇改善に結びつけてまいります。福祉人材に関する情報を一元的に管理する「人材バンクシステム(仮称)」も、この2年間で構築し、福祉のプロフェッショナルを質・量ともに充実させたいと思っております。

〈安心して生活できる環境を整える〉

 高齢者支援では、適切な医療・介護・予防・生活支援・住まいが一体的に提供される地域包括ケアシステムを構築してまいります。また、多様なニーズに応じた施設や住まいを確保するため、2025年度末までに特別養護老人ホームを6万人分、介護老人保健施設を3万人分、認知症高齢者グループホームを2万人分、サービス付き高齢者向け住宅等を2万8千戸整備するという目標を掲げ、着実に取組を進めてまいります。認知症に対しては、認知症疾患医療センターの設置や支援コーディネーターの配置をさらに進めていくなど、総合的に取り組んでまいります。
 障害者の支援につきましても、3年間でグループホームを2000人分、通所施設等を4500人分増やすなど、生活の基盤を着実に整備し、地域で安心して生活できる環境を整えてまいります。

〈子供が健やかに育つ都市に〉

 子供たちを、安心して健やかに育てるための取組も進めてまいります。
 昨年4月現在で8600人いる待機児童を今後3年間でゼロにするため、保育サービスを利用する児童の数を4万人分増やすことを打ち出し、各年度の工程表を示しております。学童クラブの登録児童数も6年間で1万2千人分増やすなど、積極的に取り組んでまいります。
 一方で、児童虐待の相談件数が増加しております。児童相談所の体制を強化し、急激に増加している一時保護の必要に対応するため、施設の受入定員も増やします。グループホームの設置も促進し、子供を守り自立を支援する社会的養護の取組を強化してまいります。
 先般、荒川区で「2020年に向けた子供の健全育成・地域の力・スポーツの力」をテーマに、都民の方々とシンポジウムを行いました。改めて思いましたのは、子供の健やかな成長のためには、地域のコミュニティを活性化すること、他者への思いやりの心を育むこと、この二つが大切だということでありました。2020年の「おもてなし」にも繋がっていくことであります。こうした視点を都政の様々な政策に盛り込んでいきたいと思っております。
 なお、本定例会には、子供の声などに関して、環境確保条例の改正案を提案しております。子供が元気に遊び回る声を、数値で機械的に規制するのではなく、話し合いやコミュニケーションの中で必要な対策を講じ、解決を目指す仕組みに変えてまいります。そのことで、より良い地域、より良い保育環境の形成にも繋げていきたいと思います。

(東京を誰もが夢と希望を叶える舞台に)

 資源小国である日本にとって、人材こそが最も貴重な資源であります。その力を引き出し、東京を、誰もが夢や希望を叶える舞台とするため、雇用と教育、この二つに重点的に取り組んでまいります。

〈雇用施策〉

 家庭が暗くなる大きな原因は、家族が病気になること、そして、失業することであります。安定した仕事がなければ、将来の展望も描けません。それゆえ、非正規雇用から正規雇用への転換を図ってまいります。
 来年度から、新たに都独自の非正規雇用者への支援プログラムを実施し、また、社内での正規雇用への転換に取り組む企業に対する助成金制度も創設するなど、積極的な支援を展開いたします。非正規の方を年間5000人、3年間で1万5千人、正規雇用にすることを目指します。8年後には正規雇用を希望して求職活動を行っている約17万人の非正規雇用者の数を半減させたいと思っております。
 これからの東京と日本の経済を発展させていく原動力は、女性だと思います。「女性しごと応援テラス」の利用者同士が情報交換するインターネット交流サイトを立ち上げ、さらに、製造業や建設業など、女性の就業が進んでいない分野への進出も後押ししてまいります。家事援助等の生活支援サービスも活性化させるなど、総合的な取組で女性の活躍を応援してまいります。
 労働分野の様々な課題への対策をさらに進めるため、先般、塩崎恭久厚生労働大臣との間で雇用対策協定を締結・調印いたしました。教育や福祉などの現場を持つ東京都の総合力と国の機関である東京労働局のネットワークを組み合わせ、より実効性の高い取組に繋げていきたいと思います。

〈教育は都市の発展の礎〉

 将来を担う子供たちの教育では、国際的な感覚を肌で感じる環境を提供するため、英語しか使えない場所での生活を体験する東京型の英語村「東京グローバル・スクエア(仮称)」の開設に向け、検討を始めたいと思います。また、より多くの生徒が、都立高校などで英語以外の言語を学べる機会を増やすため、外国語科目の授業を拡大いたします。この4月には、都立国際高校のバカロレアコースに第一期生が入学いたします。グローバル人材の育成を、さらに加速させてまいります。
 なお、法律の改正により、来年度からは、知事が総合教育会議を招集し、東京都の教育の根本方針となる総合的な大綱を策定することとなっております。私は、例えば、高校中退の問題などは、先ほどの雇用の問題にも繋がる大きな課題だと思っております。知事と教育委員会が、さらに力を合わせ、子供の可能性を伸ばし、引き出してまいります。

(安全・安心な都市の実現)

 都民生活を向上させる基盤が安全・安心であります。都知事として、首都、そして都民の安全・安心を最優先に政策を実行してまいります。

〈災害への備え〉

 今年は、阪神・淡路大震災から20年になります。その後も、東日本大震災をはじめ、数々の震災が発生いたしました。危機感を持ちながら弛まぬ努力を重ねる、その裏付けとして今年度の最終補正予算案で「防災街づくり基金」を新設し、1000億円を計上いたしました。
 防災の取組は、都民の皆様の理解なくしては進みません。来年度予算にも、緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化や道路の無電柱化、木密地域の不燃化特区推進の予算を計上しております。これを進めるためには住民の方々の理解や防災意識の向上、主体的な取組が必要不可欠であります。防災訓練も、東京都が区市町村と共に実施する年4回の住民参加型訓練に加え、町会・自治会などの訓練を支援し、10年間で延べ2000万人の参加を目指します。各家庭には9月1日の防災の日を目途に、家庭の防災指針となる「防災ブック(仮称)」も配布し、自助・共助を高める取組に全力を挙げてまいります。
 行政が担う公助の取組も充実させてまいります。高層住宅や多摩などの山間部、島しょ地域での救出・消火活動を機動的に展開すべく、空からの救助部隊・エアハイパーレスキューを創設いたします。東京港内の船舶災害への対応力も強化するため、タグボート型消防艇の国内初の配備に向け、設計に着手いたします。近年多発する局地的な集中豪雨への対応では、地下調節池や下水道幹線、ポンプ所の整備など、普段目に見えないところでの対策もしっかりと進めてまいります。

〈大都市に現れる新たな危機に迅速に対処〉

 東京は、治安上の危機が常に新たな形で発生する最前線とも言えます。都民・国民の生命・身体・財産を守るため、サイバーテロも含めたテロ対策を徹底的に強化してまいります。2020年大会開催時のセキュリティは、極めて重要な課題であります。テロへの対処を重視して、都の国民保護計画の見直しを進めており、今年度内に計画を変更したいと思います。さらに、レガシー委員会の下で、セキュリティに関する具体的な検討に着手しております。大会組織委員会や政府と緊密に連携し、民間とも協力しながら、自然災害も含めて、リスク対応に万全を期していく考えであります。
 世界一安全な都市を目指す東京にとって、およそいかなる犯罪も許せませんが、なかでもシンボリックなものが、高齢者を騙す振り込め詐欺などの「特殊詐欺」と「危険ドラッグ」であります。「特殊詐欺と危険ドラッグを東京から撲滅する」、そういう強い意志で対策を講じてまいります。特殊詐欺の検挙対策を強化し、被害防止に向け、子や孫の世代をターゲットにした注意喚起も集中的に行ってまいります。危険ドラッグに対しても、知事指定薬物の指定にかかる期間を短縮し、鑑定職員や分析機器を増強することで捜査効率も高め、徹底的な撲滅作戦を展開いたします。
 悪質・巧妙な手口の消費者被害も後を絶ちません。学生や若者を狙った被害や、複数の事業者が関与する劇場型勧誘といった新たな手口も出てきております。現行法のすき間に当たる事例でありまして、本定例会に消費生活条例の改正案を提案しております。条例の規制対象となる取引類型の拡大や、立入調査権限の強化を図っていきたいと思います。
 感染症対策につきましては、2020年大会の準備を進める上で、大きな柱の一つと捉えております。エボラ出血熱への対応では、指定医療機関相互の情報共有や、医療従事者などの感染リスクを減らす新たな装備の導入、訓練もさらに積み重ねるなど、対応力の強化を図ってまいります。デング熱も、蚊の発生を抑止し、検査・医療体制を整備するほか、医学総合研究所では新しいワクチンの開発に乗り出したいと思います。新たな感染症の発生にも目を配りながら、対策を着実に進めてまいります。

(日本の成長を支える国際経済都市の創造)

 今、日本経済にとって最も必要なものは、確固たる成長戦略であります。良い政策で景気を上向かせ、日本経済を成長軌道に乗せる、そこから生まれた富が政策のさらなる充実に繋がり、都民・国民の生活を豊かにする。政策と経済の、このような好循環を実現したいと思います。

〈国際経済の潮流を捉える〉

 グローバル経済の時代にありましては、付加価値の高い分野への集中的な取組が必要であります。現在、東京を国際金融センターへと蘇らせる施策を進めております。首都大学東京のビジネススクールに高度金融専門人材の養成講座を開設する準備を行ってまいります。国際金融会議の開催・誘致に向けても取り組むことで、金融分野に欠かせない人材・情報の集積を図っていきたいと思います。
 創薬をはじめとするライフサイエンス産業も、今後の国際経済の中で成長が見込まれ、都市への集積が力を発揮する分野であります。日本橋では産・学・公の連携によるビジネス交流拠点の形成に向けて動き始めております。都としても、この動きを後押ししてまいります。
 ライフサイエンス分野は、東京の中小企業にとっても大きなチャンスであります。先日、八王子にあります中小企業を訪れ、そこが開発し、ベンチャー技術大賞の特別賞を受けた介護予防のトレーニング機器を、私自身が体験してまいりました。この会社では、その他にですね、前立腺がんを診断する装置や試薬の開発にもチャレンジしておりました。こうした優れた企業を、これからもより多く輩出していくため、ライフサイエンス系のベンチャー企業に対して、創業、特許出願、販路開拓などを新たに支援していきたいと思います。

〈中小企業の力をさらに引き出す〉

 まさに、東京の中小企業が持つ技術は、未来への大きな可能性を秘めているのであります。今後、ロボットや医療機器などの成長が見込める分野について、中小企業の参入を戦略的に支援していくことで、豊かな生活に資する製品の開発にも繋げてまいります。また、2020年には、東京と日本に国内外の注目が集まります。東京はもちろん、全国の中小企業が持てる力を存分に発揮できるよう、2020年大会に関する発注情報などを一元的にインターネットで提供し、受注機会の拡大を図ってまいります。
 さらに、成長著しいアジアの旺盛な需要を取り込むため、東南アジアのハブとも言えるタイのバンコクに中小企業振興公社の現地拠点を開設いたします。都立産業技術研究センターの現地拠点とも連携しながら、技術・経営の両面から海外への販路開拓を後押ししてまいります。

(東京の発展を加速させる)

 東京の発展を加速し、国際競争力を高めていくため、国家戦略特区というツールを最大限活用してまいります。10地区の国際的ビジネス拠点を整備するプロジェクトでは、昨年の日比谷に続きまして、竹芝地区や虎ノ門四丁目地区の都市再生も動き出します。スピーディーな事業展開を後押しすることで、魅力的なビジネス環境の整備と都市の活性化を図ってまいります。
 さらに、来月7日には、中央環状品川線が開通し、三環状道路の最も内側の輪が初めて完成いたします。羽田空港や臨海部へのアクセス向上、都心の渋滞緩和、大規模災害発生時における物資輸送ルートの強化など、その波及効果は計り知れないと思います。今後も、外環道をはじめ、都市活動を支える道路ネットワークの強化に取り組んでまいります。
 東京の発展に欠かすことのできない羽田空港の機能強化につきましては、昨年、国から都心上空を飛行する案が示されました。2020年大会に向けた利用者の増加やその後の航空需要に応えるためには、羽田空港の容量拡大が不可欠でありまして、何とか実現したいと思います。先般、国に対しまして、安全性や騒音防止措置などについて住民の方への丁寧な説明を行い、地元の懸念にしっかり対応するよう、要請をいたしました。都は、地元の理解が深まり、機能強化に関する協議が円滑に進むよう、積極的に協力してまいります。
 公園も、都市の重要なインフラであります。私がこれまで申し上げてきました公園への保育所整備につきましては、先般、政府の国家戦略特区の諮問会議で、前向きに検討するという方向性が示されました。こうした動きは評価できますが、まだ十分ではありません。さらなる多面的な活用を図るべきだと思います。貴重な緑を守ることはもちろん、保育などの福祉施設、防災用の備蓄倉庫、賑わいの創出など、現代の都市生活に見合った多彩な機能を持つ公園づくりにチャレンジしてまいります。
 先ほどの中央環状線は計画から完成まで約50年、虎ノ門周辺の環状2号線には約70年の歳月を要しました。都市づくりは、相当長期的な時間軸をもって取り組む必要があります。それゆえ、「長期ビジョン」という都政の大方針の下、さらにその先の2040年代を見据えた都市像を「都市づくりのグランドデザイン(仮称)」として取りまとめてまいります。少子高齢化・人口減少や技術の進歩など、様々な社会の変化を視野に入れて、検討いたします。グランドデザインという名にふさわしく、行政の縦割りを越えた総合的な見地から、しっかり時間をかけ、東京のまちづくりについて骨太の議論を行ってまいります。

(持続可能な都市・東京)

 首都東京を、省エネルギーで環境に優しいスマートエネルギー都市にするため、力を尽くしてまいります。とりわけ、資源小国・日本が発展していくために期待が大きいのが、東京都が国に先駆けて取り組んできた「水素社会の実現」であります。今回の予算案にも、先進的で意欲的な施策を盛り込んでおります。
 例えば、燃料電池バスの導入を加速するため、事業者に対して購入費用の補助を行います。国の補助と合わせることで、通常のバスと同程度の金額で購入できるようにしました。2020年までに100台以上の導入を目指します。災害時の非常用電源としての活用も期待できると思います。燃料電池車の購入や水素ステーションの設置も力強く支援してまいります。さらに、新たな基金を創設することで、水素社会実現に向けた強い意欲を示すと同時に、継続的な取組を担保していきたいと思います。
 スマートエネルギー化や再生可能エネルギーの拡大も進めます。コージェネレーションシステムを活用し、街区全体でエネルギーの効率化や防災力の強化を図る取組を新たに支援してまいります。また、省エネ性能を高める住宅のリフォームと、それと併せて行う太陽光発電の導入を共に支援してまいります。さらに、地中と地上の温度差を熱源としてビルの冷暖房に活用する地中熱利用の拡大にも取り組んでまいります。

4 史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現

(2020年まで5年)

〈準備に総力を挙げる〉

 さて、2020年まであと5年となりました。間もなく、大会開催基本計画がIOCとIPCに提出されます。いよいよ準備作業が本格化いたします。私が直轄するレガシー委員会でしっかりと進行管理し、総力を挙げて取り組んでまいります。都が新規に整備する恒久施設につきましては、競技会場整備計画の見直し結果に基づき、有明アリーナなどすでに今年度、基本設計に入っている3つの施設に加え、来年度は、残りの3施設についても基本設計に入ります。引き続き無駄は排し、整備費の縮減に努めてまいります。同時に、競技施設は、大会のレガシーとして都民の新たな財産となるものであります。後利用を十分考え、都民に親しまれる施設となるよう、民間の知恵も取り入れ、整備を進めてまいります。
 先ほど申し述べましたセキュリティ対策と並んで重要なのが、大会期間中の観客や関係者の輸送の問題、競技施設やインフラ工事期間中における交通混雑の問題であります。こうした問題についても、都民生活への影響に十分配慮しながら、早めの準備を行ってまいります。
 競技会場周辺や主要な観光地の自転車推奨ルートの整備も進めていきます。国や区市などと連携して4月に計画を策定することで取組を加速し、対象エリアも、順次、都内全域へと展開してまいります。さらに、シェアサイクルにつきましては、都と千代田・中央・港・江東の4区で広域利用の推進に向けました基本協定を結ぶ運びとなりました。今後も、区市町村の取組を力強く後押しし、さらなる展開へと繋げてまいります。
 また、地域のスポーツ振興や国際交流など大会後のレガシーに繋げていくため、区市町村が独自に行う事前キャンプの誘致や2020年大会を盛り上げる取組を支援していきたいと思っております。

〈パラリンピックと文化には特に力を入れる〉

 昨日、元ロンドン大会組織委員会CEOのポール・ダイトン卿が、都庁にお越しになりました。10月末にロンドンでお会いして以来の再会であります。ダイトン卿は、「ロンドン大会の最も重要なレガシーのひとつがパラリンピックの成功だ」と、おっしゃっておりました。
 まさに、2012年のロンドンパラリンピックでは、国民全体が一つとなって大いに盛り上がり成功を収めました。2020年の東京パラリンピックを、ロンドンを超える素晴らしい大会にしていくため、全力を挙げて取り組んでまいります。
 区部に続きまして、多摩の障害者スポーツセンターの改修にも、来年度着手し、2019年度の完成を目指します。競技体験プログラムなどパラリンピックに向けた普及啓発や心のバリアフリーに力を入れ、「パラリンピックを成功させるんだ」と、そういう気運を高めていきたいと思っております。さらに、オリンピック・パラリンピック準備局に「パラリンピック準備課」と「障害者スポーツ課」を新たに設置し、体制も強化いたします。
 文化の面でも史上最高のオリンピック・パラリンピックにしてまいります。このたび、2020年大会に向けました文化プログラムの先導的な役割を果たし、都の芸術文化振興の基本指針となる「東京文化ビジョン」の素案を策定いたしました。世界クラスの都市型総合芸術フェスティバル「東京芸術祭(仮称)」や障害者アートプログラム、外国人・子供向けの伝統文化体験など、これまでにない多彩なプロジェクトを展開いたします。また、上野、池袋、六本木といった文化拠点の魅力向上など、都市の成長、発展の柱として、芸術文化を位置づけてまいります。都議会の皆様との議論を踏まえ、年度内に最終的な取りまとめを行い、芸術文化面での都市戦略となるこのビジョンを、世界に発信してまいります。

(グローバル都市・東京に進化させる)

 昨年末、東京都の都市外交の基本的な考え方と政策の方向性を示す「都市外交基本戦略」を策定いたしました。東京が抱える都市の課題を解決し、都民生活を豊かにするには、同じ課題を抱える海外都市との協力、交流を通じ、その知恵も取り込んでいくことが必要であります。さらにオリンピック・パラリンピック大会を成功させるには、海外都市との友好関係を深め、新たな関係も築いていかなければなりません。今月3日には、朴元淳ソウル特別市長が東京を訪れ、二都市間の関係強化に関する共同コミュニケを発表いたしました。早速、道路陥没に関する技術協力を通じ、実務的な交流を加速させたいと思います。また、100名近い在京の各国大使や諸外国・地域の代表との親交を深める意見交換会を、先月、江戸東京博物館で開催し、江戸文化にも触れていただきました。世界との繋がりを強化し、東京をグローバル都市へと進化させてまいります。

〈ウォーターフロントの魅力向上〉

 そのためにも、東京の魅力を世界にアピールし、新たな魅力を開拓していきたいと思います。東京のウォーターフロントの素晴らしさというのは、海外では、残念ながらあまり知られておりません。臨海部には2020年大会の競技会場もたくさんできます。来年度、まずは、羽田を発着点とした水上ルートを設定するための調査を行い、さらに今後、色々なルートの可能性を検討していきたいと思っております。また、現在の新東京丸は老朽化が著しいことから、新たな視察船の建造にも着手いたします。
 浜離宮恩賜庭園では、近代日本最初の迎賓施設であった「延遼館」を復元したいと思います。海外からのお客様への和のおもてなしに活用するだけでなく、延遼館の歴史や当時の貴重な文書等を展示するなど、訪れた方々が東京の歴史に触れられるような工夫もしてまいります。

〈観光政策の展開〉

 昨年、日本を訪れた外国人旅行者は、1300万人を突破し、過去最高を記録いたしました。都は、東京を訪れる外国人旅行者を2024年までに年間1800万人とする大きな目標を掲げております。この達成のため、2020年大会を機に、東京の魅力を強く印象づける「東京ブランド」を確立してまいります。今年度末までにブランディング戦略を策定し、来年度はロゴやキャッチコピーの作成に取り組んでいきます。メディアも活用しながら、世界へ強力に発信してまいります。来年度から、ボランティアの方が外国人旅行者に声をかけ外国語で案内する「街なか観光案内」を、まず新宿と上野で開始いたします。また、新たに創設する基金を活用し、区市町村や民間事業者とも連携しながら、多言語対応や無料Wi−Fiなど外国人旅行者の移動・滞在を支える基盤を都内全域で整備してまいります。広域の観光ルート作成や全国物産展の開催など、日本全体での旅行者誘致も、さらに進めてまいります。

〈受動喫煙防止対策〉

 受動喫煙防止対策につきましては、来年度から、新虎通りへの喫煙ボックスの設置や、飲食店における対策の実施状況と効果などを調べる実態調査に取り組みます。また、外国人旅行者が快適にホテルや飲食店を利用できるよう、分煙化のモデル事業にも取り組んでまいります。様々な立場の方の意見を踏まえ、対策を着実に進めてまいります。

5 多摩・島しょ地域の振興

 続きまして、多摩・島しょ地域の振興について申し上げます。

(多摩地域の振興)

 私は、多摩地域の発展は、東京を世界一の都市に押し上げるために必要不可欠だという姿勢で都政に臨んでおります。知事に就任して最初に訪れた現場も、多摩地域でありました。昨年、圏央道を介して、関越道、中央道、東名高速が直接結ばれ、首都圏における多摩の位置づけは格段に向上いたしました。多摩のさらなる発展のためにも、府中所沢・鎌倉街道線をはじめ南北を結ぶ道路のほか、東西を結ぶ新青梅街道の整備も進めるなど、道路ネットワークの一層の強化を図ってまいります。
 地域の実情に即した雇用政策にも取り組んでまいります。「しごとセンター多摩」をはじめとする、雇用関係の施設を再編し、新たに多摩地域における雇用就業支援拠点を整備するため、基本設計に着手いたします。また、多くの大学や中小企業が立地している特性を活かして、学生と経営者が交流する場を提供し、地元企業への就職も促してまいります。
 世界有数の大都市にもかかわらず、多様な農産物が生産され、新鮮な食材が提供されることが、東京ならではの魅力であります。オリンピック・パラリンピックは、こうした魅力を国内外に発信するチャンスだと思います。都は、大消費地を抱えるという特性を活かしながら、農業経営を支援してまいります。付加価値の高い農産物を生産することで、市場競争力を高め、収益性の向上に繋げていきたいと思います。これに加えまして、国家戦略特区の区域を、区部・多摩地域の都市農業が盛んな地域にも拡大し、その生産基盤である農地の保全と流動化を進めるなど、都市農業の一層の振興を図ってまいります。国家戦略特区の担当でもある石破大臣にも、その重要性について、直接、話をしてまいりました。さらに、青梅畜産センターの改修に着手し、東北地方の畜産農家の協力も得て、トウキョウX豚など、ブランド畜産品の大幅な生産拡大を図ってまいります。

(島しょ地域の振興)

 今月9日、高島なおき議長をはじめ都議会の方々と共に小笠原を訪ね、島民の皆様の声を直接伺い、その深刻さがひしひしと伝わってまいりました。都はすでに、中国漁船が違法操業をしていた海域を中心に、漁業調査指導船による漁場への影響調査を行っております。伊豆諸島を管轄する漁業調査指導船「やしお」の更新を機に、小笠原海域まで航行可能で、最新の調査・監視機器も備えた船舶を建造して、海上監視活動を一層強化いたします。政府と連携し、今後もしっかりと対策をとってまいります。
 島しょ地域の観光振興にも力を入れてまいります。昨年、大島、三宅島、御蔵島を訪ねましたが、島の自然に圧倒される思いがいたしました。海外から多くの人が訪れる2020年を見据えて、客船ターミナルや空港に、無料Wi−Fiや多言語案内板を整備するなど、外国人旅行者の受入環境を充実させてまいります。
 また、大規模な土砂災害に見舞われた大島につきましては、土砂災害警戒区域等の指定を来年度中に完了させるなど、防災性向上に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。

6 ケンブリッジ公爵殿下の訪都

 さて、英国政府の要請により、来日が予定されておりますケンブリッジ公爵殿下を、来週26日におもてなしすることになりました。大変、名誉なことであります。初来日される殿下が、伝統と革新が共存するこの都市の魅力を満喫され、東京と日本に素晴らしい印象を残していただけるよう、万全の準備を尽くしてまいります。
 都民を代表して、都議会の皆様と共に、歓迎の気持ちをしっかりとお伝えしてまいります。同時に、ロンドン大会を大成功させた英国を代表する王室の皆様から、東京大会へのご支援を賜りたいと思っております。

7 民主主義の根本

 これまで、私の政治方針である長期ビジョンと平成27年度予算案に盛り込みました政策について申し述べてまいりました。世界一の都市・東京の実現は決して楽な道ではないと思います。都議会の皆様と現実に立脚した質の高い議論を交わしながら、共に困難を乗り越えてまいりたいと思います。就任1年を迎えた今、その決意を新たにしております。皆様のお力添えを改めてお願い申し上げます。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものも含め、予算案30件、条例案85件など、合わせて130件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 最後に申し上げます。都議会の皆様と議論を重ね練り上げました政策も、実際に前に進めるには、都民の皆様の協力が不可欠だと思っております。
 関東大震災が起きた時と昭和の初期、二度にわたりまして東京市長を務めた永田秀次郎が、震災からの復興を成し遂げた昭和5年10月1日の自治記念日に、当時230万の東京市民に向けて出した「帝都市民諸君に告ぐ」という小冊子があります。その結語には次のような一節があります。

 「東京市を救ふものは東京市民である。東京市政の利害得失を眞ともに受けるものも亦二百三十萬市民である」

 まさに「民主主義の根本」を表した箴言だと思います。1300万都民にとって「東京の未来」が大いなる関心事であって欲しいと願うのであります。そして、「東京の未来」は「日本の未来」に直結しております。都政に対する都民の皆様の協力を切に願い、施政方針を締め括りたいと思います。
 ご清聴、誠にありがとうございました。