知事の部屋

ごあいさつプロフィール施政方針記者会見活動の紹介知事と語ろう知事の海外出張交際費

施政方針

平成26年6月10日更新

平成26年第二回都議会定例会知事所信表明

 平成26年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 桂宮宜仁親王殿下におかれましては、6月8日、薨去されました。御快復を願っておりましたが、残念でなりません。ここに、都民を代表して、心より哀悼の意を表するものであります。

 都立高校の入学者選抜における採点の誤りについて、受験生とその保護者の方々をはじめ都民の皆様、都議会の皆様に、多大なご迷惑、ご心配をおかけいたしましたことを、知事としてお詫び申し上げます。今後、徹底した原因究明を行うとともに、再発防止・改善策をまとめることとしており、こうした誤りが二度と起きないよう、教育委員会において、しっかりと取り組んでまいります。

1 新しい都政運営の本格的スタート

(私が目指す都政)

 さて、知事に就任いたしましてすぐに臨みました、先の都議会において、新年度予算を可決いただき、新たな都政運営を本格的にスタートさせました。4月以降、現場にも足を運び、住民の皆様、企業の皆様、都議会議員の方々、区市町村の方々から地域の実情を伺いながら、都庁の中にいては気づかないことも、自分の目で確認しております。まさに「百聞は一見にしかず」でありまして、多様性に富んだ東京の姿、都政の守備範囲の広さ、課題の困難さを、改めて実感しているところであります。
 現実の政治・行政には、抽象的な「あるべき論」や、現場実態を無視した「机上の空論」は要りません。必要なのは、都民・国民が困っていることに真正面から向き合うこと、外部の意見にもしっかりと耳を傾けること、そして、物事を前に進め結果を出すことであります。都政のギアをトップに入れ、スピーディーかつアグレッシブな政策展開で、東京と日本の明るい未来を切り拓いてまいります。

2 新たな都政の政策展開

(首都東京の新しい姿)

〈賑わいの溢れる都市へ〉

 2020年を6年後に控えた今、東京を変えていこうという動きが、都内のあちこちで生まれております。東京の新しい顔の一つになる虎ノ門ヒルズが、明日、オープンいたします。先ほど、吉野議長と共に、オープン式典に参加してまいりました。そこを通る環状2号線は、都心部と、2020年大会の多くの競技会場や選手村ができる臨海部とを結び、いわばオリンピック・パラリンピック道路とも言うべきものであります。その新橋・虎ノ門間「新虎通り」では、東京の道路を魅力的な空間に変身させる「東京シャンゼリゼプロジェクト」の第一号となるオープンカフェが誕生します。地元区や地域の方々と一体となって、国際色豊かで活気に満ちたプロムナードをつくり上げてまいります。
 ビジネス拠点として国内外の企業が集積する丸の内・大手町地区や、日本橋地区も実際にこの目で見てまいりましたが、企業、店舗、そこで働く方々がまちづくりに積極的に関わっておられました。現場には、様々な政策の可能性が埋もれております。例えば、メインストリートである丸の内の仲通りや、和の風情を具えた日本橋室町の仲通りを歩行者専用にすれば、さらなる賑わいが生まれます。また、行幸通りの地下を、芸術のプロムナードにして、広告なども出せるようにすれば、無機質な空間も魅力的な空間へと生まれ変わります。すでに、丸の内全体の賑わい創出に向け、地元千代田区と検討を開始いたしました。合意形成を丁寧に行いながら、段階的に進めていきたいと思います。
 また、品川駅周辺も、これから大きく変わっていきます。駅自体の利便性が高まっていくだけでなく、将来、リニア中央新幹線の始発駅となることも予定されております。羽田にも近く、日本の成長を牽引する国際交流の拠点として、整備を進めてまいります。渋谷駅周辺でも民間事業者による再開発が進んでおります。この機会を捉え、渋谷川の上流部分の水流を復活させ、憩いと潤いに満ちた水辺空間にしてまいります。高度処理した再生水が、護岸の壁伝いに流れ落ちていく「壁泉」も整備するなど、民間、地元区と力を合わせ、取り組んでまいります。

〈グローバルエコノミーへの対応〉

 こうした都市再生の取組と相俟って、東京を、世界中から人材、資本、情報が集まるグローバルビジネスの場として生まれ変わらせることで、都市の活力をさらに高めてまいります。
 金融は経済の血液であります。日本が経済立国として今後も世界で主要な地位を占め続けるためには、東京の金融市場としての存在感を高めていかなければなりません。金融業界の優秀な人材の能力が活かされず、革新的な金融商品の開発が進まない中、国際的な金融機関は、シンガポールや香港などに拠点を移しております。
 そこで、金融業界を取り巻く課題を浮き彫りにするため、タスクフォースを立ち上げ、銀行、証券など金融の現場からの意見をヒアリングしております。「東京国際金融センター」の実現に向け、東京都ができることはすぐに実施し、国などに要求すべきは要求してまいります。東京をニューヨークのウォール街や、ロンドンのザ・シティと並ぶ、金融の拠点にしていきたいと思います。
 世界中の人々を病気から守り、健康を取り戻すための新薬を生み出すことは、今後、成長が期待できる分野であります。多くの製薬会社が集積する日本橋では、現在、研究機関と企業を結びつける拠点の整備が進むなど、創薬ビジネスを活性化する動きが出てきております。その本丸であります特許の分野で、東京都は、規制の緩和や軽減税率の導入を国に求めており、東京を創薬ビジネスの中心に育て上げてまいります。
 丸の内・大手町地区を見た際に、朝早くから夜遅くまで開いている認証保育所があり、大変助かっているという話を聞きました。私は、自宅近くの保育所に子供を預けるのが一番と思っておりましたけれども、海外との取引がある証券会社のスタッフなどには、比較的、電車の空いている早朝の時間帯に会社に向かう方もおられます。それなら、子供を会社近くの保育所に預けることも可能であります。これも実際に現場を見て分かったことでありまして、一つの有効な方策だと思いました。東京で暮らし、働く人々のニーズに応じた多様な保育サービスの充実に力を尽くしてまいります。
 また、明日、「東京の成長に向けた公労使会議」の第一回会合を開催いたします。経営者団体、労働者団体、行政が一堂に会して率直に意見を交わすことで、東京の経済の成長を確かなものにしていきたいと思います。

〈一人ひとりの活躍が日本を支える〉

 これからの日本経済は、女性の力なくしては立ち行きません。今、日本では出産や子育てで離職した後、仕事への復帰をためらう女性がたくさんおられます。「仕事についていけるか」「子育てと両立できるか」といった不安に応えることができていない現状が、社会で活躍したいという女性の意欲に水を差しているように思います。東京しごとセンターを、先般、視察いたしましたけれども、来月、ここに「女性しごと応援テラス」を開設いたします。しごとセンターには、託児サービスもあります。経験を踏まえた能力開発や職業紹介を行うなど、家庭と両立しながら社会で活躍したい女性の力を最大限引き出してまいります。
 センターでは、ホテル・レストランサービス科の実習など高年齢の方の職業訓練の様子も拝見いたしましたが、労働・雇用の問題は大変重要だと考えております。働き方が多様化したからといって、働く人の3分の1が非正規というのは尋常でないと思います。若者、ミドル、高年齢、世代に応じた職業訓練、就職支援など、一人ひとりをきめ細かにサポートしてまいります。さらには、グローバル企業の経営者からのヒアリングを行い、日本の労働環境や雇用の課題を浮き彫りにすることで、多くの方がさらなる活躍の機会を得られるような施策展開に繋げてまいります。

〈三環状道路と総合的な交通体系〉

 活発な都市活動を支えるためには、東京の機能性を向上させなければなりません。今月28日、首都圏の交通の大動脈となる三環状道路の一つ、圏央道の高尾山インターチェンジと相模原愛川インターチェンジとの間が、開通いたします。関越道、中央道、東名高速が都心を経由することなく直接繋がります。この道路を最大限活用するためにも、都心に用事のない車を外側の環状道路に誘導する料金体系の構築を、関係自治体と連携しながら、国や高速道路会社に求めてまいります。車の流れを変えることで都心の渋滞を緩和し、物流の信頼性を高める三環状道路はなくてはならないインフラであります。今年度末には中央環状品川線が開通を予定しております。外環道の関越道・東名高速の間についても、2020年早期の開通を国に求めていきます。
 先般の視察では、南多摩尾根幹線道路も見ましたが、現在は片側1車線のみが暫定的に開通しております。この道路は、将来的にリニア中央新幹線が開通したときには、品川からの最初の停車駅となる橋本方面にも接続する予定であります。こうしたネットワーク上重要な幹線道路を一日も早く完成させるべく、整備を進めていきたいと思います。
 かねてから申し上げているように、東京の最大の弱点は交通体系であります。鉄道とバスの関係一つをみても、これまでは、両者を有機的に捉えるという発想がほとんどなかったのではないでしょうか。環状道路や南北道路の開通によって道路事情が良くなり、一方、高齢化が進む中で、例えば、身近な足であるバスの役割は、益々増してくると思います。自転車も、もっと活用できると考えております。利用者目線で、ターミナル駅などのタクシー乗り場を使い易くし、また、空港とのアクセスもより便利に変えなければなりません。先般、第一回目の総合的な交通政策のあり方検討会を開催いたしました。都市再生とも連係を図りながら、交通機関ごとの敷居をなるべく低くすることでシームレス化を進め、東京の交通体系を利用者本位のものに変えてまいります。

〈クリーンでスマートな都市・東京〉

 東京は、電力の大消費地として、エネルギー政策にも真剣に向き合う必要があります。省エネ・節電にしっかりと取り組むことはもちろん、「Economy(経済)」「Energy(エネルギー)」「Environment(環境)」、この「三つのE」をどうバランスさせるか、賢明で現実的な方策を考えていかなければなりません。
 公約に掲げました「再生可能エネルギーの利用割合20%」の実現に向けまして、先週、新たに設置しました検討会に出席し、学識経験者や企業などから直接話を伺いました。20%という目標は相当高いものでありますが、専門家の知恵を借りながら、利用拡大に向けた具体策を練り上げたいと思います。
 東京都の事業でも、率先して再生可能エネルギーを活用していきます。水道局では、今年度設置を予定しております金町浄水場をはじめ、朝霞や東村山などの大規模浄水場に、太陽光発電を次々と導入していきます。下水道局の森ヶ崎水再生センターでは、汚泥を処理する過程で発生するガスや水の放流落差を利用した発電により、施設で利用する電力の2割を、すでに賄っております。来年度、その森ヶ崎と南多摩の水再生センターにメガワット級の太陽光発電を導入するほか、汚泥焼却時の廃熱を利用した新たな発電や下水の持つ熱エネルギーの利用拡大などを図ってまいります。
 低炭素社会への切り札として注目されるのが、水素エネルギーであり、東京を水素社会のモデルにしていきたいと考えております。水素を燃料とした燃料電池車に、私も先般、実際に乗車いたしました。音も静かで非常に快適であります。CO2を排出しませんし、資源小国の日本にとっては大きなメリットでもあります。さらに、燃料電池車は、災害時の非常用電源にもなり得ます。しかし、価格の高さや、水素ステーションの設置に関する規制という課題もあります。早速、先月、メーカーやエネルギー関連企業からメンバーを集めました戦略会議を設置し、検討を開始しました。さらに、東京都自身も、普及の旗振り役として、2020年大会では、選手や大会関係者の輸送への活用や、都営バスへの導入も検討いたします。日本の技術力を世界にアピールする絶好の機会になります。先月の九都県市首脳会議では、こうした水素の利用拡大を提案し、共同して取り組むことにしました。車に県境はありません。水素ステーションの設置など首都圏全体での展開が、普及への弾みになると思います。今後も、都議会の皆様方と手を携えまして、急ピッチで取り組んでまいります。

〈国家戦略特区に関する一部の誤った認識〉

 国家戦略特区に関しましては、規制緩和という手段がいつの間にか目的化してしまい、都民・国民の利益という本来の目的を置き去りにした残念な議論が一部で展開されております。私は、現場を回り、それぞれの地域を素晴らしいものにしようと懸命に頑張っておられる方々の声を直接伺いました。人々が努力を積み重ねる中で、邪魔になる規制があれば、本来は国会で法律を改正すべきであります。しかし、その暇がないのであれば、特区制度を使って規制を無くす、これが特区の役割であります。
 東京は、ビルが林立する大都会だけではありません。先週訪れました御岳渓谷のような美しい山や川もあれば、海に囲まれた島々もあり、23区や多摩には、生活の場である住宅地もあります。それぞれの長所が合わさることで、世界一の都市になることができるのであります。当然、地域によってニーズも異なり、それを無視して、東京全域を特区にしようなどという議論こそ、まさに「机上の空論」に他なりません。特区はいわば、東京を世界一の都市にするための道具の一つに過ぎず、使い勝手が悪ければ、使う必要などありません。本当の現場は、現場は、上から目線で、「象牙の塔」や「霞ヶ関」から見下ろす光景とは、全く違うと考えております。先ほど申し上げました環状2号線「新虎通り」にしても、実に68年の歳月と関係者の方々の大変な努力を要したのであります。汗を流す方々を応援し、地に足のついた政策をつくっていく、これが東京都知事の仕事でございます。今後も、このスタンスを貫いてまいります。

(2020年東京オリンピック・パラリンピック)

 次に、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた動きについて申し上げます。
 今月、コーツ副会長をはじめIOC委員の方々が、再度来日されます。その際、是非とも東京特産の食材をふんだんに使った料理を堪能してもらおうと考えております。多摩地区を巡った際に味わいましたウドや豚のトウキョウX、東京しゃもや東京産の牛乳といった特産品があります。東京愛らんどフェア「島じまん2014」では、ブースを回りまして島々の味覚を楽しみました。これだけ海の幸・山の幸に恵まれているのは、東京の大きな魅力であります。小松菜の栽培など区部の農業も大変伝統のあるものでございます。東京が生み出すブランド食材をはじめ開催都市としての魅力をアピールしてまいります。
 2020年に向けまして海外から東京を訪れる外国人も増えてまいります。こうした方々に東京の魅力を感じていただくため、観光情報などに手軽にアクセスできる環境が必要であります。先日、民間事業者からのヒアリングを行いましたが、ここでの議論を、Wi−Fiをはじめとする情報通信基盤のさらなる強化に繋げてまいります。
 また、文化の祭典としても成功を収めるため、文化プログラムの策定に向け、芸術文化評議会の検討部会を設置し、議論を始めました。組織委員会が来年2月、IOCに提出する開催基本計画に反映させてまいりたいと思います。
 東日本大震災からの復興は、大会成功の大前提であります。今年も、被災地を縦断する1000キロメートルリレーの走者が、青森から東京に向けて出発します。復興の現状を伝える場所を巡ることで、大震災の記憶を風化させることなく、全国と被災地との絆を深める機会にしてまいります。

(防災対策は世界一の東京を支える礎)

 2020年大会の成功も、首都東京の発展も、都民・国民の生命と財産を守ることなくして実現できません。防災対策こそ世界一の東京を支える礎であります。

〈防災プランの策定〉

 危機管理に終わりはありません。スピード感を持って、取り得る手立てを次々と講じてまいります。まず、大島の土砂災害の教訓や南海トラフ巨大地震の被害想定などを踏まえ、防災対策の幹となる地域防災計画を修正いたします。
 首都直下地震などの大災害時に、東京都、区市町村、自衛隊、警察、消防などが迅速に総合力を発揮するための初動対応マニュアル「首都直下地震等対処要領」を策定いたしました。この要領に基づいた災害対応を効果的に実施し、自助・共助・公助が一体となった対策を推進するため、行政、都民、企業が準備すべき取組や東京都の枠を越えた首都圏全体での対策を盛り込んだ「防災プラン(仮称)」を年内に策定いたします。この中で、オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年までの目標と具体的な道筋を明らかにしていきます。また、震災時には、企業の協力が不可欠なことから、先般、東京商工会議所と協定を結び、帰宅困難者対策をはじめ防災対策に連携して取り組むことにいたしました。
 さらに、住民が参加する防災訓練を充実し、季節ごとにテーマを決め、年4回に増やします。春は風水害、夏は首都直下地震、秋は南海トラフ地震、冬は帰宅困難者の発生、それぞれを想定した訓練を行います。早速、今月22日には、第一弾として、奥多摩町と合同で風水害対策訓練を実施いたします。訓練を機会に、家庭や企業における備蓄品を点検してもらうなど都民の防災意識を高めてまいりたいと思います。
 こうした対策に加え、先般、防災担当大臣と会談し、都と国とで首都直下地震対策に関する合同検討チームを立ち上げることにしました。首都東京の命運は、国家の命運を左右すると言っても過言ではありません。情報連絡、備蓄、帰宅困難者対策など様々な観点で、政府とも協力し、首都の防災力を徹底強化してまいりたいと思います。

〈伊豆大島の復旧・復興〉

 続きまして、昨年10月の台風26号で大きな被害を受けました伊豆大島の復旧・復興について申し上げます。元町地区で発生した土砂災害について、この梅雨に間に合うよう急ピッチで進めてきた応急対策は完了いたしました。今後も、専門家からなる「伊豆大島土砂災害対策検討委員会」の報告に基づき、土砂が集落に流れ込まないように導く導流堤の整備や大規模な斜面対策工事などを進めてまいります。
 現在、大島町は、9月末までの復興計画策定に向けて取り組んでいるところであります。都は、平成26年度当初予算で措置いたしました75億円の大島復旧・復興事業を着実に進めてまいります。東京都の職員も大島町に派遣しており、町道の復旧業務や町の復興計画の策定を支援するなど、今後とも大島を全力で後押ししてまいります。

(福祉先進都市に向けた着実な歩み)

〈大都市の実情に合った福祉を推し進める〉

 東京を世界一の福祉先進都市にする。これが、私が担う都政の大眼目であります。その一年目である今年は、折しも、高齢者、子育て、障害者に関する三つの重要な計画の策定年度であります。かつて厚生労働大臣として培った経験を活かし、さらには、母親の介護、そして、子育ての体験も存分に活かしていきたいと思います。都民や区市町村の意見を取り入れながら、リーダーシップを発揮してまいります。
 政策の出発点は、常に現場にあります。千歳烏山にあります公社住宅や、建物の老朽化と居住者の高齢化に直面する多摩ニュータウンでは、現地にお住まいの方、商店街の方、デイサービスや保育園の方々とも直接お話をいたしました。古い住宅の建替えにより高層化して創出したスペースに、子育て支援施設や高齢者支援施設、あるいはサービス付き高齢者向け住宅などを整備し、街を再生していく。そして、若い人々や子供が街に戻ってきて、高齢者と一緒に、多世代で交流できる環境、個々人の状況に応じ、様々な福祉サービスを選択できる環境をつくっていきたいと思います。ハード・ソフト、あらゆる分野の施策を総動員しながら、大都市の実情に合った福祉を進めてまいります。

〈安心を守る医療体制〉

 8月には、都立墨東病院の新たな病棟がフルオープンいたします。他の病棟から独立して感染症患者に対応できる入院・外来機能を整備いたします。また、今ある建物も改修して、脳血管疾患、心疾患に対応する集中治療室も充実させるなど、医療水準の向上を図ってまいります。さらに、新棟に非常用発電設備を増設して、72時間分の燃料を確保するなど、災害対応力も強化いたします。
 来年度には、地域のニーズに合わせて医療を効果的に提供するための「地域医療構想」の策定も控えており、都民の皆さんが安心できる医療体制を構築すべく、力を尽くしてまいります。

(東京ならではの都市外交を積極的に展開)

 次に、都市外交について申し上げます。外交と安全保障が国の専管事項であることは十分認識した上で、私は、「東京都としての外交」を推し進めたいと考えております。東京が都市問題に取り組んできたノウハウや技術は有力な外交資源であります。一方、東京も、例えば、オリンピック・パラリンピックを開催した都市のレガシーを見聞きするなど、教わりたいことが、たくさんあります。「教え、教えられる」双方向の関係を構築してこそ、都市の友好は深まり、都民の利益にも繋がります。
 さらに、都市外交は、経済、芸術など様々な分野で、民間交流を進めるための基盤づくりにもなると思います。例えば、大学で、その国の将来を背負って立つ若者と交流することは、日本への関心を高め、未来の知日派を増やすことにもなり、必ず日本全体の利益に繋がると思います。東京が日本の首都である、そういう重みも加わりまして、様々に良い影響を与える、これこそが私の目指す「都市外交」「首都外交」であります。

〈北京市を訪問〉

 こうした外交の第一弾といたしまして、4月に北京市を訪問してまいりました。北京市長の招待で都知事が訪問するのは実に18年ぶりでありまして、東京と北京の21世紀の友好の扉が、ようやく開かれたというのが実感であります。王安順北京市長とは、PM2.5や廃棄物といった環境問題、交通渋滞、上下水道などで協力関係を発展させていくことを合意いたしました。私の方からは、北京などからの留学生のための東京都の宿舎であります太田記念館が、来年、開設25周年を迎えることから、その記念事業にお招きしたいと伝えたほか、アジア大都市ネットワーク21への復帰も促しました。古くからの友人であります元外務大臣の唐家せん(=王へんに施)中日友好協会会長や、さらには汪洋国務院副総理とも会談し、日中関係の現状に対する忌憚のない意見を交わすこともできました。
 そして、北京の首都師範大学で行った講演では、学生が皆、輝く目で話を聴き、活発に質問をしてくれました。こうした若者たちが日本と中国の間で交流すれば、日中両国は共に発展していけるはずであります。先ほど申し上げました太田記念館も先般訪問いたし、留学生と懇談する機会を持ちました。東京都と北京市との友好関係をさらに発展させていくため、卒業した寮生や在寮生に呼びかけ、ネットワークづくりを進めていきたいと思います。また、環境問題など、都市が抱える課題を研究する留学生を積極的に受け入れるため、より有利な条件で入居が可能となるよう考えていきたいと思います。
 今回の北京訪問をきっかけに、民間の経済交流や日中の地方レベルの交流が、再び活発になることを期待しております。

〈多様な都市外交の展開〉

 今年は、東京とベルリンが友好都市を提携して、20周年を迎える記念すべき年であります。ベルリン、あるいは、東京が世界一の都市を目指すに当たって当面のライバルでありますパリには、芸術文化、観光振興、都市計画など、参考にすべきものが多く存在します。世界をリードする都市の首脳同士、率直な意見交換を重ねていきたいと思っております。
 お隣の韓国・ソウルはアジア大都市ネットワーク21の一員であり、姉妹友好都市でもあります。この秋には、そのネットワークの総会がロシアのトムスクで開かれます。こうしたアジア諸都市との外交にも引き続き尽力してまいります。

3 おわりに

(長期ビジョンの策定と健全な財政運営)

〈長期ビジョンの策定〉

 これまで述べてきました政策をはじめ、私の掲げた公約について、すぐに実現可能なものは実現し、現場から生まれてきた新しい発想は現実の政策へと仕上げてまいります。そして、これらを取りまとめ、長期ビジョンとして年内に公表いたします。9月には、東京の将来像、政策の目標を明らかにした中間報告を示し、都議会の皆さんと十分に議論を重ね、都民の皆様や区市町村からの意見もいただいた上で、策定したいと思います。
 私は、政治のリーダーの役割とは、夢と希望をビジョンとして描き、都民・国民に明るい、説得力のあるメッセージを届けることだと考えております。2020年オリンピック・パラリンピック開催時と、今から10年後の2024年の東京の姿を明らかにしてまいります。そして、可能な限り目標を数値化して、課題解決に向けたスケジュールも具体的に示すことを、お約束いたします。さらに、数値化されたものだけを見るのではなく、そこから見える当事者の顔を思い、自らの痛み、喜びとして感じ取りながら、都政を運営していくつもりであります。

〈健全な財政運営〉

 同時に、健全な財政なくして、ビジョンの実行は不可能であります。歳入の根幹をなす都税収入は、景気変動に大きく左右され、東京都は地方交付税の不交付団体でもありますので、他の自治体以上に自律的な財政運営が必要であります。私は、東京が抱える様々な課題の解決に果敢に取り組むため、都財政の舵取りをしっかりと行う決意であります。
 地方法人課税を巡り、東京からさらに財源を奪う動きは、予断を許しません。法人事業税の不合理な暫定措置は確実に撤廃・復元することはもとより、地方法人税など、都市の財源を狙い撃ちにした偏在是正措置について、都議会の皆様と力を合わせ、全力で国に対抗してまいります。
 また、現在、経済財政諮問会議等において、法人実効税率のあり方が議論されております。その引下げは、日本の国際競争力の強化に資するものと考えます。しかし一方、地方法人課税は、企業活動を支える行政サービスに必要な財源を賄うため、法人に対して応分の負担を求めるものでありまして、地方の基幹税目として不可欠なものであります。今後、税率の引下げが行われる場合、全ての地方自治体の歳入に影響を与えることのないように、他の自治体と共に代替財源の確保など、国に強く求めてまいります。

(主な議案について)

 続きまして、本定例会に提案しております主な議案について申し上げます。
 「いじめ防止対策推進条例」は、いじめを防ぐため、学校や教育委員会、児童相談所、警察といった関係機関同士が緊密に連携するための組織と、重大事案が発生した際の調査体制などを整えるためのものであります。いじめは、子供の健全な成長と人格の形成に重大な影響を及ぼします。昨日、子供家庭総合センターも見てまいりましたが、学校や保護者だけでなく社会全体の責任として、この問題に取り組んでいきたいと考えております。
 次に、電気事業会計の補正予算案であります。これは、奥多摩と青梅にあります都営の水力発電所が生み出した電力について、東京電力に売却する契約を解約したことによる民事調停に関するものであります。以前の知事の時代から懸案となっていた問題でありますが、解決金にかかる裁判所の提案に基づいて、東京電力との調停を成立させたいと思っております。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

(世界一の都市・東京の実現に向けた体制の構築)

 さて、この間、都政の舵取りを担う中で痛感いたしましたのは、都庁に根付いた組織の風土を変え、知事を支える機能を強化しなければ、世界一の東京の実現はとても覚束ないということであります。そのため、都庁の司令塔の体制を刷新すべく、本定例会に組織条例の改正案を提案しております。現在の知事本局を廃止して政策企画局を置き、新たに任命した「知事補佐官」を軸に、都政全般を鳥瞰図的に捉えながら、16万5千人もの職員を擁するこの巨大組織を効果的に動かす体制をつくります。
 これにより、困難な課題にも積極的にチャレンジする強い組織へと変え、今までにない新しい政策を生み出していきたいと思います。同時に、全体への目配りも十分できるようにすることで、これまで以上に、都議会の皆様と意思疎通を図ってまいります。そして、共に手を携え、世界一の東京の実現に向けて力強く進んでまいりたいと思います。皆様のご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 最後に、2020年東京オリンピック・パラリンピックについて、私から皆様に申し上げたいことがございます。
 私が知事に就任して4か月が経ちましたが、就任直後からソチ冬季大会の視察、IOCプロジェクトレビュー、北京市訪問などの機会を通じ、開催都市の長として招致計画をどのように実現していくべきか、考えてまいりました。オリンピック・パラリンピックは、世界最大の国際競技大会であるだけでなく、開催都市の社会や文化にも大きな変革をもたらす一大イベントであります。それゆえ、大会の成功はもとより、大会後の東京に有形無形の財産を残し、都民生活の向上に結びつける確かなビジョンを持って取り組むことが求められております。
 今後、開催基本計画の策定にあたり、招致の時点で作成した会場計画が、都民の理解を得て実現できるよう、私は知事として、改めて自らの視点で、内容を再検討してまいります。その視点として、例えば、招致計画では、東京都は10の競技会場を新たに整備することとしておりますが、これらの施設整備が大会後の東京にどのようなレガシーを残せるのか、広く都民の生活にどのような影響を与えるのか、現実妥当性をもって見定めていく必要があります。加えて、顕在化してきました建設資材や人件費の上昇など、整備コストの高騰への懸念にも対応していかなければなりません。今後、こうした視点から早急に見直しを行い、大会準備に支障をきたさないよう、改めるべき点は、適切かつ速やかに改めてまいります。
 この間、大会組織委員会の森会長とも同様の視点から協議を重ねた結果、会場計画全体についても見直すべきとの結論に至りました。大会組織委員会と東京都は、緊密な連携の下、再検討作業を進めていきたいと考えております。
 東京は、安全確実な大会開催とアスリートファーストの理念を掲げて、厳しい招致レースを戦い、開催都市の栄誉を勝ち取りました。今後、大会組織委員会と共に再検討を進めていく過程で、IOCや国内外の競技団体とも真摯に議論を行い、招致段階の理念を具現化していくことで、史上最高の大会としていく決意でございます。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものも含めまして、予算案1件、条例案11件など、合わせて22件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどをお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。ご清聴ありがとうございました。