舛添前知事「知事の部屋」

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施政方針

平成26年11月28日更新

平成26年第四回都議会定例会知事所信表明

 平成26年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 名誉都民である西山鴻月さんが11月3日に、同じく名誉都民である松本源之助さんが11月11日に逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

1 はじめに

(首都東京の責任)

 さて、安倍総理が衆議院を解散し、国民の信を問うことになりました。しかし、私は、首都東京のリーダーとして、都政を着実に前へと進めてまいります。日本の再浮上を確固たるものとするためにも、問題の本質を捉えた政策をスピーディーに展開し、必要があれば、国に対しても遠慮なく、声を大にして主張していく考えであります。都議会の皆様と力を合わせ、都民・国民への責任をしっかりと果たしてまいります。そして、時に大胆に挑戦し、東京が先例を創ることで日本を力強く牽引してまいります。

(地方法人課税を巡る不合理な国の措置に対抗)

 まず、地方法人課税を巡る不合理な国の措置について申し上げます。法人事業税の暫定措置や法人住民税の国税化は、受益と負担という地方税の原則に反し、地方分権に逆行するものであります。これらの不合理な偏在是正措置は、直ちに撤廃され、地方税として復元されなければなりません。また、法人実効税率の引下げにおいては、地方の歳入に影響を与えないことが大前提であります。
 私は、この不合理な偏在是正措置の撤廃に向け、関東地方知事会の会長として官房長官に、また愛知県など大都市部の5都府県市で総務大臣にも要請を行ってまいりました。都議会からも、法人実効税率引下げや不合理な偏在是正に対する意見書を提出していただいております。都議会の皆様と共に、東京選出の国会議員や特別区長会、市長会、町村会、同じ志を持つ他の自治体と一致団結し、全力を尽くしてまいります。皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

 この際、東京一極集中という批判に対して一言申し上げます。
 本来、この問題は、明治以来の中央集権体制をどう変えていくのかという、国のかたちから考え直して答えを出すべきものであります。そもそも、地方の繁栄と大都市の発展は二律背反の関係ではありません。この問題を「大都市」対「地方」の対立という図式に歪め、経済成長をリードする大都市の活力を削ぐことは、自ら国家衰退への道を選び取る愚かな選択に他なりません。東京と地方がゼロサムゲーム的に争うのではなく、プラスサム、すなわちWin・Winの関係を築くことができるよう、今後も力を尽くしていく考えであります。

(補正予算の編成)

 本定例会には、補正予算案を提案しております。都議会の皆様からの提言を取り入れながら、オリンピック・パラリンピックの準備、水素社会の実現、切実な都民ニーズがある福祉政策、危険ドラッグや災害対策といった都民の安全・安心の確保など「世界一の都市・東京」の早期実現に資する中身を計上いたしました。
 この補正予算は、2020年とその先の明るい未来に向けて、スタートダッシュを切る予算と位置づけております。そして、来年度予算ではギアをトップへと上げて、さらに政策の効果を全国的に波及させることで、日本全体の発展に繋げていくつもりであります。

2 緊急課題への対応

 2020年東京オリンピック・パラリンピックという大きな目標を前にして、ともすれば6年後ばかりに目を奪われがちでありますが、大切なのは、「東京で生まれて、東京で暮らせて良かった」、都民が実感できる街にしていくことであります。都民の暮らしを脅かす切実な課題に正面から取り組み、安全・安心という都政の礎をしっかりと築いてまいります。

(新しい危機への対応)

〈感染症との闘い〉

 エボラ出血熱が世界中を不安に陥れております。都内でも感染の疑い例が発生し、検査の結果は幸い陰性でありましたが、対応に当たって様々な課題が浮かび上がってまいりました。エボラ出血熱など一類感染症患者を受け入れる医療機関として都内で指定されておる4病院のうち、3つは都立病院・公社病院であります。都では、関係部局や保健所などによる連絡会議を立ち上げるとともに、感染の発生を想定した訓練を行うなどの対応をとっております。
 私は厚生労働大臣として新型インフルエンザの対応を経験した時に、いざ危機に直面した際には、現場からの情報、現場の経験、そこから生まれる知恵が大きな力になることを学びました。現場を持つ東京都は、国や区市町村、九都県市などとも緊密に連携しながら、引き続き、緊張感を持って対応してまいります。

〈都民の安全を守る〉

 喫緊の課題であります危険ドラッグにつきましては、先の定例会で可決いただいた改正条例で、警察官にも立入調査権限が付与されることから、福祉保健局と警視庁が連携をより強化し、対策を進めてまいります。インターネット上の膨大なデータを解析して販売店舗を把握し、流通実態を調査するほか、プロバイダに対し販売サイトの削除を要請するなど、監視指導も強化してまいります。安易に危険な危険ドラッグに手を出すことがないよう普及啓発にも一層、力を入れていきたいと思います。
 また、交通事故による死者数が、昨年を上回りかねないペースで増加しております。都では、警視庁を中心に重点的な対策を講じておりますが、都民の皆様も事故に「遭わない・起こさない」よう、交通ルールの遵守、交通安全の推進に、特段のご理解とご協力をお願いいたします。

〈災害への備えを加速〉

 さて、昨年10月に大島で発生した土砂災害から1年が経ち、先月、追悼式に参列してまいりました。大島の方々の苦しみ、悲しみをしっかりと胸に刻み、その経験を今後の災害対策に活かしてまいります。
 土砂災害警戒区域等の指定に先立つ基礎調査を加速させ、従来の計画を2年前倒しして、平成29年度までに都内全地域の調査を完了させたいと思います。さらに、その結果を速やかに公表することで、円滑な避難行動、警戒避難体制の整備を促進してまいります。
 また、大規模自然災害等から都民・国民の命を守り、日本の首都である東京が機能不全に陥ることがないよう、「東京都国土強靭化地域計画(仮称)」の策定に着手してまいります。

〈中国漁船の違法操業への対応〉

 続きまして、小笠原諸島や伊豆諸島の周辺海域における中国漁船の違法操業について申し上げます。
 これは、我が国の領海と排他的経済水域の権益を侵すばかりでなく、地元漁業者の操業に著しく支障を来し、住民にも不安を抱かせるものであります。私は、中国政府に対し、再三、事態の改善を強く求め、また、官房長官にも会い、安倍総理に対し実効性ある対策を求めました。12月1日には、高島なおき議長をはじめ都議会の方々と共に小笠原に行って、この目で現地の状況を確認してまいります。
 現場で取り締まりに当たっている海上保安庁や水産庁の方々の努力に対し、感謝申し上げます。東京都におきましても、漁業調査指導船が海上の監視に当たっているほか、警視庁の機動隊員などが島の警備に当たっております。昨日の時点で、周辺の海域から中国漁船が姿を消したということでありますが、貴重な水産資源を守り、住民の安全・安心な暮らしを確保するため、引き続き、全力を挙げて取り組んでまいります。

(福祉の充実に向けた政策展開)

〈ノーマライゼーションの実現〉

 次に、福祉政策の充実について申し上げます。
 先般、国際パラリンピック委員会のフィリップ・クレイヴァン会長と親しく懇談する機会を得ました。「パラリンピック選手は、身体の不自由なところを気にするよりも、使える部分を最大限に活かすことを考えている」、自身も障害者であるクレイヴァン会長がその時おっしゃっていた言葉は、ノーマライゼーションの思想を表現した、大変勇気づけられるものでありました。パラリンピックの開催都市でもある東京も、ノーマライゼーションという社会福祉の基本原理が当たり前に通用する都市にしていかなければなりません。
 とりわけ、ソフト面、「心のバリアフリー」が大切だと思います。例えば、車いすの方が困っている時に、周りの人たちが少し勇気を出して手を貸せるようになれば素晴らしいことであり、そうした気運の醸成に一層力を入れていきたいと思います。
 障害者の方が地域で安心して生活できる基盤も充実させてまいります。定期借地権の一時金への補助を拡充し、借地を活用した施設整備も新たに支援することで、グループホームなどの整備を促進してまいります。さらに、既存の家屋などを借上げた短期入所施設の新設・増設も新たに支援し、在宅サービスの充実を図ってまいります。

〈少子高齢化への対応〉

 少子高齢化社会への対策にも積極的に取り組んでまいります。
 整備を促進している特別養護老人ホームについては、土地の値段が高いことに加え、資材価格の高騰もネックとなってきており、建築価格の上昇に対応するための支援策を緊急的に講じてまいります。また、「地域医療介護総合確保基金」を新たに造成し、その一部を直ちに事業化して、在宅療養の基盤整備や医療従事者の確保も進めたいと思います。
 待機児童ゼロに向けた保育サービスの充実にも取り組んでまいります。来年度の「子ども・子育て支援新制度」の開始に向けて、事業所内保育施設が地域の子供たちを受け入れ、認可施設へと移行するために必要な改修の費用などを支援してまいります。さらに、保育人材を確保し、離職防止を図るため、保育従事者のための宿舎借上げを支援することで働きやすい環境を整えてまいります。

(雇用就労対策)

 続いて、雇用就労対策についてであります。「恒産なければ恒心なし」、安定した職業という基礎があればこそ、人々は豊かさを実感できます。私は、働く人の3分の1が非正規という状況は尋常ではないと、そういう強い問題意識を持っております。安定した仕事に就きたいと望む非正規の方々への就職支援を、今後の都の重点政策に位置づけてまいります。都が積極的に動いて、国も巻き込んでいくことで、非正規の方々の正社員への転換を強力に推し進めていく考えであります。
 大都市東京では、フリーターをはじめとする若者の就労の問題、例えば高校を中退した若者が就職も復学もしないまま、フリーターになってしまう問題、あるいは福祉分野における人手不足など、様々な課題が顕在化しております。これらの課題に総合的に取り組むため、産業労働局、福祉保健局、教育委員会など都の関係部署が連携し、総力を挙げて対策を進めてまいります。国の機関であります東京労働局と協議する場も創設するなど、雇用就労対策には一層力を入れていきたいと思います。

3 世界に開かれた魅力ある都市・東京の実現

(オリンピック・パラリンピックの準備を加速)

〈ロンドン・ベルリンを訪問〉

 先月、ロンドンとベルリンを訪問いたしました。18世紀、19世紀にパクス・ブリタニカを築き上げたイギリスの首都、ロンドンは、その後の歴史の激動の中で、様々な困難を克服して、その活力を再び取り戻し、今日の地位を築きました。ボリス・ジョンソン市長とは、2020年大会開催に向けてのサポートや都市マネジメント分野などで、今後、協力関係を築いていくことで合意いたしました。
 ベルリンも、そのロンドンと鎬を削ってきた都市であります。東京とは友好都市20周年であり、今後、都市づくり、環境、文化交流の分野で協力を進めていくことで、クラウス・ヴォーヴェライト市長と合意書を交わしました。

 世界の国々、世界の都市との友好関係を築くことで、オリンピック・パラリンピックを成功に導き、さらに、防災・テロ対策、少子高齢化、環境、観光振興、文化振興など東京都が進める政策を後押しする観点からも、都市外交を効果的に展開するための基本戦略を検討しておりましたが、先般、その素案を発表いたしました。特に、都市外交の要諦は、人と人との活発な交流であり、新たに人材育成のための基金を創設したいと考えております。年内には最終的な方針をまとめ、都民生活の向上に資する都市外交を進めてまいります。

〈競技会場整備計画の見直し〉

 2012年大会が大成功を収めたロンドンでは、元ロンドン大会組織委員会CEOのポール・ダイトン卿のお話を直接伺ったほか、オリンピックパークをはじめ多数の会場の大会後の姿を自分の目で確認してまいりました。6月の所信表明以来、組織委員会の森会長と共にIOCをはじめ国内外の競技団体とも意見を交換しながら、2020年大会の会場計画の再検討を慎重に進めてまいりました。そして、都が整備を受け持つ10の競技会場について、東京の将来に責任を持つ知事として、確実に大会を成功させる責任を持つ開催都市の長として、決断いたしました。
 夢の島ユースプラザ・アリーナA、Bと若洲オリンピックマリーナの3施設については、新設を中止して既存施設を活用することにいたします。海の森水上競技場は整備内容を大幅に見直し、また、葛西臨海公園のカヌー・スラローム競技会場については、自然環境等に配慮した結果、隣接地を活用して整備することにいたしました。その他の施設は、現計画地において整備をいたしますが、今後も、既存の公園施設などへの影響について検討を継続してまいります。
 再検討に当たりましては、選手第一という視点に十分配慮をしております。また、見直しを行わなかった場合と比べ、全体として概ね2000億円程度の整備費圧縮も可能と見込んでおります。今後も関係者の協力を得ながら、整備費の縮減に努めてまいります。しかし、それだけに目を奪われて、大会後も都民に利用され喜ばれる施設にするという見直しの本来の目的を忘れてはなりません。この二つのバランスを常にとりながら、会場計画をさらにブラッシュアップしていく計画であります。

〈いかなるレガシーを遺していくのか〉

 改めて申し上げるまでもなく、2020年は終着点ではありません。その先も東京と日本が発展するための通過点であります。オリンピック・パラリンピックが終わった後で、整備した競技会場が使われず、周辺の街もゴーストタウンのようになっては、大会自体がいくら盛り上がったところで、成功とは言えません。
 来月お示しする長期ビジョンで東京の将来像を形づくる有形無形のレガシーを、まず明らかにする考えであります。そのレガシーを具体化していくため、同時併行的に立ち上げた「レガシー委員会」が動き出しております。この委員会は、私が直轄して、私の責任の下で、東京の未来像を描きます。選手村や競技会場を整備する臨海部などでは、まちづくりと一体となった総合的なプランが必要であり、民間の智恵や地域の声を集め、検討を進めてまいります。委員会での検討内容を反映させ、レガシーの全体像を「レガシービジョン(仮称)」としてまとめてまいります。

 さらに、そのレガシーを、インフラや拠点の整備、防災都市づくりはもとより、環境、文化などの観点も加えながら、今後の都市づくりに効果的に組み込み、都市の持続的な発展に結びつけるための検討を続けてまいります。国や区市町村などとも連携し、最終的には、2020年大会のさらに10年後、さらに20年後を見据えた東京全体の「都市づくりのグランドデザイン(仮称)」として明らかにしたいと思います。

〈観光施策のさらなる進展〉

 多くの海外からのお客様をお迎えするため、観光施策も積極的に進めてまいります。東京の玄関口・羽田空港内の観光情報センターを24時間化するなど、案内機能を強化したいと思います。また、外国人旅行者が多く集まる街なかで、ボランティアの方が外国語で案内する「街なか観光案内」を来年度から実施する準備を進めてまいります。
 この「街なか観光案内」を含む観光ボランティアにおいては、参加する人がチームとして一体感を感じられるようなユニフォームの作成やチーム名の公募を行いたいと思っております。2020年大会に向けてメディアも活用しながら、ボランティア気運の醸成に繋げていきたいと思います。
 政府や民間団体と共に検討を重ねてまいりました多言語対応協議会は、一昨日、交通機関や飲食店、宿泊施設などでの取組方針を固めました。例えば、飲食店では、食材をピクトグラム化し、アレルギーや宗教上の理由で食べられない食材が入っていないか視覚的に分かるようにいたします。今後、全国知事会とも連携して、この取組を日本中に広げてまいります。
 Wi−Fiの整備やデジタルサイネージの活用も含め、こうした外国人観光客の受け入れ環境の整備を、今後5年間で官民一体となって集中的・計画的に進めるため、新たな指針を年内に定めたいと思います。
 また、東京を訪れた旅行者が日本各地に足を伸ばし、その魅力を味わっていただくことは、リピーターを増やし、東京にとっても、日本全体にとっても、メリットが大きいと思います。まずは、東北6県と仙台市、さらに民間を交え、広域の観光ルート作成などについて協議を始めます。東京が先頭に立ち、日本全体での旅行者誘致を進めてまいります。

〈世界中から訪れる人をおもてなしする〉

 海外からのお客様へのおもてなしをテーマに、先般、小金井市で都民の方々とシンポジウムを行いました。会の最初にですね、こういう質問をしたんです。「外国人が話しかけてきたら、おもてなしできますか」、ほとんどの方が「自信がない」、そっちの方に手を挙げた。しかし、英語の寸劇で道案内の事例を紹介しました。私もエキストラとして、その寸劇に参加いたしました。そうしますとですね、会の終わりに、同じ質問したら、ほとんどの方が「それぐらいなら私だってできますよ」と、こう手を挙げてくださったんです。まあ、こんなほんの小さなきっかけとやる気で、気持ちを十分伝えることが外国人にできるわけでありまして、こうした動きを、さらに盛り上げていきたいと思いますし、都議会の先生方のご地元においても、是非そういう取組を盛んに進めていただきたいとお願いいたしたいと思います。
 2020年には、大会運営に当たるボランティアが約8万人、観光案内や交通案内を行うボランティアが1万人以上必要になると想定しております。今後、ボランティアの裾野を拡大するための戦略を策定し、組織委員会や区市町村、民間企業と密接に連携しながら、気運醸成を図っていきたいと思います。
 世界中の方々をおもてなしするに当たり重要なことは、安全・安心と快適さを両立させることであります。2020年大会に向けてテロ対策を強化し、その質をさらに高め、東京が誇る最高の治安の中で、お客様が東京の街を楽しめるようにしていきたいと思っております。

(環境問題への果敢な対応)

〈水素社会の実現〉

 1964年のオリンピックでは新幹線が初めて走り、日本の社会のかたちが大きく変わりました。そして、2020年、この変革に当たるものが水素社会の実現だと思っております。ロンドンに参った際に、チャタムハウス(王立国際問題研究所)やジャパンソサエティで、「東京、何考えてんだ」ということを、直接、英語で発信させていただきました。その時に出た質問が「舛添知事、新幹線が50年前に遺りましたね。あなたは、2020年の後、何遺すんですか。」まあ、私の答えは、水素社会。つまり、この水素社会っていうのは、先般、実際に燃料電池車に試乗して、都庁の周りを走りましたけれども、ものすごく静かですね。非常に静かで、加速していただくとガソリン車と全く遜色ありませんでした。東京オリンピック・パラリンピック大会では、競技会場と選手村の間の輸送には、燃料電池車や電気自動車等の次世代自動車だけを走らせたいと思っております。
 燃料電池車は、国を挙げて普及を推し進める段階に入っておりまして、東京都は、今般、目標数値を定め、取り組むべき方策をまとめました。まず、都内に水素ステーションを、2020年までに35か所設置し、その後5年間で80か所に増やします。まあ、35か所あればですね、最寄りのステーションまでの到達時間は大体15分程度でありまして、十分、実用に耐え得ると思います。燃料電池車も、2020年までに6千台、その5年後には10万台普及させ、都自らも都営バスに率先して燃料電池バスを導入し、民間を先導してまいります。さらに、家庭用燃料電池を2030年には100万台にまで増やしたいと思います。実用化の初期段階を強力にバックアップすることで、普及を加速させてまいります。
 この水素で走る自動車について、利点。車1台のその設備で、直下型地震、例えば起こって停電した時に、お家一軒分の電力は、その車で賄えます。都バスが、もし、そうであれば、小学校一つ分の電池が賄えます。そういう危機管理の役にも立つということを強調しておきたいと思います。

〈再生可能エネルギーと省エネルギーの新たな目標〉

 さて、再生可能エネルギーにつきましても、消費電力に占める割合を現状の6%から、2024年には20%にまで高めたいと思っております。私は、何とか2020年までに20%ということを申し上げておりました。しかし、検討会で、専門家の皆様方とよくよく検討すると、「ちょっとそれは不可能に近い」ということで、10年後の2024年に20という数字、これでも非常に大胆な数字だと思いますが、都民の皆さん、そして都議会の皆さんのご協力をいただいて、必ずこの数字を実現したいと思っております。そして、環境問題に取り組む上で忘れてはならないのが、使用するエネルギーの総量を減らして、可能な限り自然への負荷を減少させるということであります。
 2020年までに2000年比で比べて20%の省エネを実現するという現在の目標については、これまでの取組を着実に実施すれば、達成できると見込んでおります。そこで、さらに意欲的な取組に踏み込むべく、今後、2030年までに、2030年までに2000年比で30%削減するという新たな省エネ目標を定めました。建物の断熱性能の向上や燃料電池の普及など、家庭、産業、業務、運輸それぞれの部門の省エネ対策を支援しながら、目標達成に向けて取り組んでまいります。

 スマートシティの試みは、神奈川県で行われております。ベルリンを見てまいりました。そして、ベルリンでは、日独センターにおいて私も講演をして、ベルリンと東京でスマートシティを目指そうと、そういう話をいたしました。
 このロンドンとベルリンでは、さらに自転車の活用の状況も見てまいりました。それぞれ道路事情、利用の状況などは様々でありますが、大変参考になりました。当然、東京には東京の実情があります。今後、自転車走行空間の整備やシェアサイクルなど、東京と日本にふさわしい自転車政策をしっかりと進めていく考えであります。

(都市の活力を高める)

〈都市の国際競争力を高める〉

 ロンドンでは、チャタムハウスで、先ほど申しましたように、東京の将来像とそれに向けた政策を紹介し、シティで金融の第一線で活躍する方々と東京国際金融センター構想について議論してまいりました。その中で感じましたのは、世界中から資金、人材、情報が集まるロンドンの凄さであります。私の記憶が正しければ、ロンドンの銀行家の4分の3はイギリス人じゃなくて外国人であります。これがまさに国際金融都市ということでありまして、そこには、この資金、人材、情報が集まってますから大きなビジネスチャンスが生まれるわけであります。「金融の力は集積にある」ということをロンドンで改めて認識した次第であります。
 日本経済の機関車たる東京を国際金融の拠点にして、世界の富を日本へ呼び込まなければなりません。国内外から多数の金融関係者が集まる国際会議を国や民間と協働して開催するなど、「国際金融都市・東京」を国内外にプロモートする具体的な戦略を早急に立ててまいります。
 国家戦略特区の取組も具体的に進め始めております。グローバル企業やベンチャー企業の活動を後押しする雇用労働相談センターの来年1月の開設を目指してまいります。さらには、海外から家族と赴任するビジネスパーソンにとって、日本での子供の教育は大変気掛かりな問題でありまして、外国企業が集まる都心部のインターナショナルスクールを充実させていきたいと考えております。
 また、特区の区域内では、まちづくりの気運が高い地域に道路管理の一部を担ってもらい、地域の人が自らの創意工夫で景観に配慮した道路など質の高い公共空間や、新しい賑わいを生み出す方策を検討しております。規制緩和で、地元企業などからなる地域団体がオープンカフェや広告、イベントなどを展開することを可能にして、その収益を道路管理や地域の魅力向上に役立てる新たな仕組みを作ってまいりたいと思っております。

〈水辺の魅力創出〉

 隅田川を中心とした地域、東京スカイツリーの脇を流れる北十間川のような隅田川に通じる川筋は、江戸の昔から賑わいに溢れ、独特の和の情緒を醸し出してきました。浅草寺とスカイツリーが伝統と現代を鮮やかに両立させている浅草地域、国技館や旧安田庭園など歴史と文化が色濃い両国地域など、隅田川に沿って観光・文化施設が点在しております。
 地元区や民間企業とも協力し、こうした施設と川の結びつきを強め、テラスの連続化や夜間照明、舟を使った移動の活性化などにより、界隈の賑わいをさらに引き出してまいります。東京の顔として、ウォーターフロントの魅力を高めていきたいと思います。

(人材こそ日本の宝)

 さて、今年のノーベル物理学賞は、赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんの3氏が青色発光ダイオードの開発で受賞することが決まりました。まさしく、ものづくり大国・日本の面目躍如であります。
 東京の中小企業でも、優れた技術が次々と生み出されております。先日、東京都ベンチャー技術大賞の表彰式に出席してまいりました。今年の大賞は、文章をパソコンなどに入力すると実在の人の声で再現することができる画期的な音声の合成技術であります。こうした東京の中小企業の技術が、2020年のオリンピック・パラリンピックでも大いに活用されることを期待しております。
 卓越した技術を生み出すのは、優れた人材であります。都民の活躍をしっかり支え、東京に集う人材の力を最大限引き出してまいります。

〈女性の活躍〉

 東京の人材を考えたときに最も潜在力を有しているのが、女性だと思います。来年度、東京都の政策の方向性を示す「女性活躍推進白書(仮称)」を出し、多様なライフスタイルに応じた実効的な取組に繋げていきたいと思います。また、国際レベルでの活躍推進のネットワークを構築するため、有識者へのヒアリングを行い、人材交流の促進も検討してまいります。中小企業での女性活躍を後押しするための人材育成プログラムも、来年度から実施すべく準備を進めていきたいと考えております。

〈東京と日本の未来を担う若者の育成〉

 グローバル化が進む中にあって、国際感覚を具え世界の舞台で活躍できる人材を育てることは、首都東京の大きな責任であると思います。
 教員の指導力を向上するため、国際協力機構・JICAとの連携を強化いたします。青年海外協力隊員の派遣前訓練に準じた体験研修である「東京グローバル・ユース・キャンプ」に公立学校の教員を参加させ、異文化理解を深め、国際貢献意欲を高めます。また、青年海外協力隊の経験をした方を教員として新たに採用するほか、現職教員の協力隊への派遣を拡大し、帰国後は、国際貢献の経験を教育に還元してまいります。
 広い世界観と問題意識、たくましい精神力、高度なコミュニケーション能力を身につけた教員が子供たちへの教育に当たることで、グローバル人材育成の基盤を強化していきたいと考えております。

4 おわりに

 先般、全国知事会の2020年東京オリンピック・パラリンピック大会推進本部では、大会の成功と日本全体の成長に向けた取組を、オールジャパンで推し進めることを決議いたしました。オリンピック・パラリンピックには、不可能を可能に変え、社会を変革する力があります。その力を引き出し、50年後、100年後、私たちの子や孫に、東京と日本に、何を遺せるのか、そのレガシーこそが、最も大切なものであります。今後は、そのことを基軸に据えた都政を展開してまいります。そして、長期ビジョンを仕上げ、来年度の予算編成にも臨んでまいります。

 ロンドンでポール・ダイトン卿は、こう述べておりました。
 「成功への鍵は人々に自分たちの大会だと、自分たちの大会だと感じてもらうことである。」
 2020年大会も、国民一人ひとりの力を結集し、史上最高のオリンピック・パラリンピックを実現し、素晴らしいレガシーを遺していきたいと思っております。
 都議会の皆様、都民・国民の皆様のお力添えをお願い申し上げます。

 なお、職員の給与につきましては、人事委員会の勧告を踏まえ、勤勉手当の支給月数の引上げなどを内容とする条例改正案を提案しております。信賞必罰を徹底し、職員の力を存分に引き出すことで、都民サービスの充実を図ってまいります。
 本定例会には、これまで申し上げたものも含め、予算案2件、条例案53件など、合わせて85件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどをお願い申し上げます。

 以上をもちまして、私の所信表明を終わります。ご清聴、誠にありがとうございました。