都民のみなさんへ

平成24年10月15日更新

発言内容

都民のみなさんへ (10月)

 リオに次ぐ夏季のオリンピック大会の招致をどこにやるかということをですね、来年の9月にブエノスアイレスで決まるわけです。
 その前に、3月の初旬に視察団が来まして、東京の状況を視察する。これはほとんど4年前とも変わらないと思うのですけれども、1つ条件が変わったのは、選手村の候補地が実は変わりまして、元々、国がなかなか「うん」と言わなかったので東京でオリンピック規格のスタジアムを作ろうかということでしたが、幸い、霞ヶ丘の、今の神宮のあのスタジアムを大改修してオリンピックの規格に合うものにすることが決まりましたので、その分もっとスペースの広い選手村ということになりますから。これはちょっと一つのハンディキャップだったのですけれども、これも解消されました。
 そういう点で、東京は非常に有望だと私は信じておりますが、これは何といっても大事なことは、東京の都民の皆さん方の支持率というのがもっと強いものにならないと、なかなか印象的にハンディキャップになりかねない。

 この間、私が怒ったんです、実はね。なでしこジャパンが世界選手権で優勝した時に、何でパレードしないんだと。日本の女性のサッカーが世界一になって、アメリカを破って劇的に優勝したのに、何でパレードしないんだと怒ったんですけれども、率直に言って、JOCってあまり気が利かない、そういうところは。それでこの間、私が怒ったのを覚えていまして、オリンピックの選手達のパレードしましたね。銀座にあれだけ人があふれたというのは前代未聞のことですね。私もテレビで見ましたけれども、銀座の、メインストリートじゃないですよ、横のかなり大きな通りの奥の奥まで人があふれていて、あんな遠くから選手なんて見えるわけがないのに、50万の人が集まって歓呼して選手たちを迎えた。
 ただ、私は恐らく、あの50万の人間の中に東京の都民というのは5%いたかな、という気がしますな。東京というのは贅沢な街ですから、何があっても当たり前で、都民の方々も贅沢に慣れてしまって、何があっても当たり前だという気分が抜けないのかもしれないけれども、やっぱり東京にオリンピックを持ってくるんだという意志表示を調査の時にひとりひとりの都民がしてくれないと。これは日本国中、田舎でやるわけじゃありませんから。そういう点で私は都民の、別にお金を出してくれというわけじゃないんだ。東京都は財政再建しましたから、4千億の貯金がありますよ。これを全部オリンピックに使うつもりで取ってあるんですから。あとは特に都民の心の協力が絶対に必要だと思うんです。
 それから、オリンピックの推進役でありますJOC、これもちょっとしっかりしてもらいたい。何でもかんでも東京にやれといったって、私なんかオリンピック委員会の世界の委員、IOCの委員なんか一人も知りませんから、友達もいませんからね。いきなり連れて行って、あの人間と抱き合ってハグして、「『よろしく頼む』と言ってくれ」といっても、そんなものはただの社交辞令であって、向こうが「はいはい、うんうん」と笑って聞くかもしれないけど、そんなものでオリンピック招致が獲得できたら安いものですよ。もっと色々な陰に陽の外交があって、その努力の賜物として結果が決まるわけでしてね。
 例えば、コペンハーゲンで、残念ながら日本(東京)がシカゴに次いで敗れた。その時に、この間(ロンドン)オリンピックの最高責任者、セバスチャン・コーという、かつての中距離ランナー、名選手ですけれども。これがなかなか取っ付きの悪い男で、私2、3回会いましたけれども、色々問題も抱えているから憂鬱な顔をしていたんでしょうが、その男が、コペンハーゲンですからロンドンオリンピックのはるか前の時ですけれども、日本が敗れたと聞いて、わざわざ日本のブースにやってきて、何て言ったかといったら、「私から見たら日本のプレゼンテーションは最高だった」と。「日本、東京が準備している準備体制というのは、資金の面も含めて全く羨ましい限りだ。しかるにな」と言って肩をすくめて、慰めというのでしょうか、一言残して去って行った。これは決してただのお世辞じゃなくて、オリンピックの招致ゲーム、ビディングゲームというものの本質というものを彼はよく精知しているから、「残念だったな」という意味で言葉を残したと思いますがね。
 そういうものを熟知した上でJOCが国を動かす、何を動かす。東京は動いているわけですから。JOCがもっと強いスクラムを組んで突っ込んで行かなかったら、オリンピック招致ゲームのトライはなかなか難しいと思いますよ。見えない所のゲームも含めて、そういう多角的な複合的な戦いの進め方というのは、日本人は割とこの頃鈍くなって、苦手になってきましたけどね。それを皆で、知恵を出し合って、いいサジェスチョンがあったらどんどん発言して、JOCに力を、知恵を与えてやっていただきたい。
 それを国民の皆さんにお願いします。

東京都知事 石原 慎太郎