石原知事と議論する会

平成14年12月11日更新

東京の魅力を世界に発信〜東京の観光と産業を考える〜
平成14年度第2回「石原知事と議論する会」議事概要


テーマ  東京の魅力を世界に発信〜東京の観光と産業を考える〜

日時  平成14年10月21日(月)午後2時から午後3時30分まで

場所  都庁第一本庁舎5階大会議場

趣旨

 東京都は平成13年11月「東京都観光産業振興プラン」を策定し、積極的に観光施策の活性化に取り組んでいます。
  平成14年10月からは、内外からの観光客の増加につなげる財源として「宿泊税」の導入を開始するとともに、観光案内機能を充実させるため「東京観光情報センターの開設」「ウェブサイト『東京の観光』の開設」「外国人旅行者都庁内ツアー」を実施しました。
 さらに、観光を大きな成長が期待できる産業として位置づけ、ものづくりや先端技術に着目した観光ルートの開発、エコツーリズムの構築、カジノなど新しい観光資源の開発、アニメフェアなどの国際的なイベントの開催・誘致など積極的なシティセールスを展開していきます。
 東京の魅力を世界にアピールし、日本のゲートウェイとして何をすべきかを都民と知事が語ります。

参加者


(公募都民)写真:知事と出席者の方々
 発言者4名、一般参加者296名

(コメンテーター)
 岡本 伸之さん(立教大学教授、東京都観光事業審議会会長)
 中村 義一さん(三鷹光器株式会社 代表取締役会長)
 松谷 孝征さん(株式会社手塚プロダクション 代表取締役社長)

(都側出席者)
 知事、生活文化局長(司会)

発言要旨
 以下は、出席者の発言内容を生活文化局広報広聴部で要約し、取りまとめたものです。

○石原知事

 国も東京都も観光を産業として捉える視点が欠落している。国際的な観光の収支バランスでは日本は3兆円の赤字。

 観光資源は、いろいろあるはず。東京の中にも認識を新たにするようなことが多々あった。持っている素材を東京や日本は活用できない。

 ワールドカップでやってきた人々が日本好きになり、次の試合までどこか旅行して日本を見物したいと思っても、全然情報がない。旅行、観光の組み立て方が日本人は拙劣。

 東京は、日本有数の観光地だが、インフォメーションがなく、組み立てがない。

 皆さん、アイデアを出していただきたい。

○岡本さん(コメンテーター)

 日本は外国からほとんど客人が来ない、世界で珍しい、孤立した国。

 観光の本質は異文化交流。異文化交流をして、他者の目を通して初めて自分のことがわかる。

 交流がないところには進歩がない。観光振興の基本原理は、「知らせて、見せて、また来たいと思わせる」こと。

 ところが、知らせることも努力が足りなかった。駅に着いたら案内所があるのが世界の常識。そういうところから変えなければいけない。

 次に、見せること。見て楽しんでもらうものを発掘しなければいけない。東京には良いところがたくさんある。自分たちが良いと思うところを客人にも見せることが基本的な観光のあり方。

 3番目に、また来たいと思わせるような仕掛けとして、交通機関や美術館のパスなども考えなければいけない。

 最近は、見せるだけではなく、経験してもらうことが大事。ホスピタリティの担い手としての観光ボランティアの力で、大いに観光振興を盛り上げていただきたい。

 欧米では「産業観光」「工場観光」という分野がある。日本は、ものづくりの国でありながら、そのものづくりを見せる努力に欠ける。そういう可能性も大いに模索していきたい。

○中村さん(コメンテーター)

 日本から世界に物がどんどん行き渡ったほうがいい。

 私の会社と提携しているスイスにあるライカの本社には、毎日観光客が来る。観光客が工場を見て、あそこのはいいと思って買って帰る。日本にはそういうものがほとんどない。大手企業に観光バスが入ることはなく、こそこそつくっているというのが現状。皆さんが見てから欲しいなと思うようなものを、これからは見えるようにしていったほうがいい。

 日本ではものづくりを見せないようにしているので、ものづくりが下火になっている。

 ものづくりがいろいろなところで見えて、それをまねする。まねをしてはいけないと言っていたら、日本は進歩しない。追いつかれたら、またその次をやればいい。いつまでも昔のままでやっていると世の中から遅れていく。

○松谷さん(コメンテーター)

 今年の初めに、国際的なアニメのイベントを東京都が主催して開いた。これは大英断で、大変な成功だった。

 東京の魅力は一体何なのかを再発掘しなければいけない。発掘されていても、トータルな連携をしていない。東京都全体を一つのテーマパークとして考えてしまえばいい。混沌としている東京の魅力を発掘していくことによって、一つのストーリーがつくれるのではないか。いろいろな人間が集まって一つのストーリーをつくり上げる。

 東京の魅力の発掘と同時に、それをつなげるストーリーをつくり、さまざまなイベントを打っていくようにすれば、東京は結構アピールできるのではないか。

○松村さん(都民)

 観光はお国自慢以外の何ものでもない。自分たちの地域を愛する気持ちが出てくれば、どんどん観光にも目が向くのではないか。

 アピールは、ど派手にやるしかない。今は絶対に地味。西洋型のオペラ型表現をやらないとわからない。

 一番目立つ都知事が、東京都のすばらしさを訴えていくことで観光が活性化する。

○鹿野さん(都民)

 外国人が物だけを求めているようで、さびしく思う。東京には、江戸文化があるにもかかわらず、その中心になるような歴史的建造物が少ない。皇居の東御苑に、江戸城の本丸御殿を再建してはどうか。

 短期間のイベントにとどまらず、200年後にも評価されるような、日本人のアイデンティティ確立の源として、再建していただきたい。

○うるのさん(都民)

 日本のホテルや旅館は、1人いくらという料金設定がほとんどだが、外国では、1室いくらが主体。ほかの国と同じような料金体系にすることで割安感も出て、わかってもらいやすい。

 東京は電車に乗りにくい。都内全域を使えるようなパスをつくってほしい。さらに、駅の乗り換え案内も不親切。看板も親切に掲示してほしい。

 海外の都市では、主要駅の目の前にインフォメーションブースがあり、いろいろなパンフレットをもらうことができるので、そうした体制を整えてほしい。都内のホテルや旅館と提携して、当日空いている部屋を安く提供するシステムも、インフォメーションブースを設置することで構築できるのではないか。

○関口さん(都民)

 外国人観光客を誘致するには、マーケティングの概念が重要。アジアの方と欧米の方では、期待しているものが違う。アジアから来る方、欧米から来る方、それぞれに対して、東京の観光モデルルートを示せるとおもしろいのではないか。

 観光産業の視点から、介護用ロボットを墨田区や大田区の企業が連携してつくってはどうか。介護用ロボットをつくり、東京都内の中小企業も連携して新しい分野に展開していくことができるという点から、中小企業の振興にもつながるし、観光資源としても活かせる。

○石原知事

 ものを知らせる努力が足りなさすぎた。産業と心得ればそういう意欲も出てくる。日本人は、なかなか自己主張や説明をしない。多角的に皆さんのお力を借りながらやっていきたい。

 産業も観光の大きな要因という意見があった。東京ビッグサイトなども、これからデータを踏まえて、考え直さないといけない。

 東京都庁議会棟への渡り廊下で「トーキョーワンダーウォール」というものを始め、それからヒントを得て、教育庁の建物を改装して「トーキョーワンダーサイト」をつくった。可能性がある若い芸術家を活かす方法を考えたいし、販路をつくることも東京都の責任。

 江戸城再建の話はお金がかかるだけでだめ。塀でもライトアップしたらいい。そういう観光資源もある。お金がかからないで効果があるアイデアを出してください。

○松村さん(都民)

 2年ほど前に都庁の前で薪能をやっていた。ああいう催し物を、都庁でたくさんやられたらおもしろい。

○石原知事

 薪能も一つのアイデア。都庁のような無機的な背景でああいうものをやるのもまたいいのではないか。

 この間、大道芸人を復活させようと、東京都が認可した人は警察も協力して、歩行者天国なんかでやろうじゃないかということをやった。大道芸は芸の原点で大事。それを道路交通法で押さえつけたらかわいそう。これも、そのうちに東京の観光の一つの要因になっていくと思う。

○鹿野さん(都民)

 日本の文化のもとになったのが江戸時代ではないか。再建した江戸城にカジノをつくり、入るには和服限定というアイデアはいかがか。

○石原知事

 江戸時代というのはすばらしい時代で、それを象徴するものは江戸城だが、再建にはお金がかかってしようがない。

○松谷さん(コメンテーター)

 地方都市のほうが活性化ということでは努力している。東京は何もしなくても人がいっぱい来てお金を落としていき、都民も都政も潤えばそれにこしたことはない。しかし、交通渋滞や安全性の問題もある。東京のすばらしさを世界中に宣伝をしてほしいが、受け入れ体制の不安材料を取り除かなければいけない。

 テーマパークになぞらえ、ブランド指定ということで、東京ブランドの指定や400年前から150年前までの産業であれば、江戸ブランドというようなブランドを指定したらおもしろい。それで東京都が大いに儲けたらいい。

 わかりづらいサインには、マンガや絵を多用すればいい

○岡本さん(コメンテーター)

 観光振興の基本は「住んでいいまちは訪ねていいまちだ」ということ。しかし、住んでいいまちはあるが訪ねにくい。その訪ねにくさを解消することが重要。

 東京の魅力に多様性があるが、東京では世界の文化も日本的になってしまう。違いと共生していく気持ちが東京の魅力をさらに高める。

 観光産業振興の中には、魅力的な資源をクリエイトすることが重要。高齢者が楽しめるような都市型のエンタテイメント空間をクリエイトしていくこともいい。

 「1人いくら」は、世界の非常識。東京のホテルは室料。業界では「泊食分離」をする方向へ急速に進みつつある。

 産業観光では、実際に物を見せて、見ることによって人々はものづくり大国日本の実力を知る。日本の企業は見せたがらない。アメリカの会社はビジター専用の通路からガラス越しに工場が見られる。日本のものづくりのすばらしさを表現して伝えることをすれば良い。

○石原知事

 ありがとうございました。参考にします。時間のかかるものも、やろうと思ったらすぐにできるものもあるから、新しい試みをしたい。