石原知事記者会見

平成24年3月15日更新

石原知事定例記者会見

平成24(2012)年3月9日(金曜)
15時02分〜15時40分

知事冒頭発言

1 東京電力への対応について

【知事】私から冒頭に申し上げることはありませんので、質問があったらどうぞ。
 1つ言うと、猪瀬(直樹 東京都副知事)さんが頑張ってくれて、この間も、枝野(幸男)君、通産大臣(現経済産業大臣)出させて、会議で彼は実に的確に東電を追い詰めて、枝野もその通りだということになって、いろいろ実績を上げてくれています。東電もあの原発事故でピンチになったのは確かなんだけど、幾つかの子会社を抱えて、そことの色々な契約そのものが、みんな随意になっていて、不透明というか、まだまだ改良の点があるところを彼は強く指摘して、経産省もそれを支持したというのは、とても大事なことだと思います。僕はこういうことに疎いんで、数字は、猪瀬さんが来てくれたんで。普通の官僚出身の副知事はここまで手が回らない。非常に、都民を代表して、いい働きをしてくれると思っていますが、大いに諸君も評価してくれよ。
 はい。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】大阪の橋下(徹)市長について2点お伺いしたいのですけれども。

【知事】また橋下君かね。

【記者】憲法改正の問題で、知事はかねがね現行憲法の破棄を主張されていますけれども、(大阪)維新の会としては、現行憲法の改正要件を3分の2から2分の1に緩和するということを主張されていますが、知事はどういうふうにお考えになって……。

【知事】だめだ、そんな。まどろっこしくて、時間かかり過ぎて。まだ憲法擁護派のほうが扱いやすいと思う。あの憲法は占領軍がつくって、押しつけたもの、その間に色々な言論統制もやって、おたくの新聞も発禁停止になったんだから、そういう事情の中でつくられた憲法というものが、サンフランシスコ条約で一応日本が独立国で復帰した後も、国家の基本法として通用するというのは、世界史に例がないんです。それを踏まえれば、法的な規制とかの前に、政権がしっかりして、これは無効だと言えばいいので、すぐ新しい憲法をつくったらいいじゃないですか。3分の2も、半分もだめ。まどろっこしくて、どうにもならない。ほとんど永久に直らんよ、憲法は、そしたら。

【記者】国の統治機構のあり方として、維新の会としては、道州制の導入を強く主張されているのですけれども、九都県市の中心である都知事のお考えをお聞かせください。

【知事】道州制と言うのは簡単だけど、できません、そんなことは。どれだけの議員が賛同して、橋下君なんかすごい人気で、怖いもんだから、云々言っているけれど、政令指定都市は色々な問題がありますよ。これを、今の国会で直すのは百年河清を俟(ま)つ話だ。昔は九州独立なんてありましたけれど、そんなもので片づくような時代じゃなくなってしまった。はい、ほかに。

【記者】危機管理の問題で、ちょっとお聞きしたいのですが、この前の福島原発の時に、水素爆発が起きまして、それが東京250キロ圏内、半径です、東京も入ってしまうと。そういうことで、水素爆発があってから、そういうパニック状況に東京が含まれるかもしれないという判断を、当時の政府は外に出さなかったということがあるのです。

【知事】そう。

【記者】そうです。それで、石原都知事でしたら、そういう場合にはどういう危機管理の考え方として判断するでしょうか。

【知事】あなたの言う前提がよく分からない。そういう危険があったの?実際に250で飛散したの?

【記者】半径250キロ圏内に東京が入っていまして。

【知事】入っているだろうさ。

【記者】そして、避難しなければならないと、東京も。

【知事】いざというときの話?仮定の話?どういうこと?

【記者】そういうことですね。仮定の話ですけれども、最悪の事態を考えなくちゃいけないということで、東京にも避難の体制をとらなければならないというふうなことを政府が発表すべきなのかどうかということなのです。危機管理のあり方として。

【知事】危機管理というのは、現実に何か信憑性のある危機が到来するか、しないかのときの問題で、この間の原発の事故で250キロまで放射能が飛散する可能性があったんですか。

【記者】あるかもしれないという仮定ですが。

【知事】かもしれないじゃだめだ。当然、それが実際に実現したら避難せざるを得ないだろう。

【記者】水素爆発があったから、それが連鎖して、大きな放射能を出すかもしれないという危機状況が考えられたわけです、1つでは。

【知事】だけど、仮定の仮定の話してもしようがないんだよ。君の新聞、どれだけの大きさの新聞か知らないけれど、あまり流言飛語(りゅうげんひご)に近いことを言うなよ。はい、どうぞ。

【記者】今月から宮城県女川町からの瓦れき受け入れを始めましたけれども、それを意識してかどうか、野田(佳彦)総理が新しく瓦れき処理をする自治体に財政補助をするですとか、住民への説明に政府から人を派遣してもいいというような発言をしましたが、知事はどのように受け取られていますか。

【知事】私が言ったのが、間接、間接、間接に伝わったのか、この段になってようやく総理が、決心というか、着想をしたのか分かりませんが、もうちょっと早くやったらいいんじゃない。近々彼にも会うけど、もっと色々な問題があるんで。
 どうぞ。

【記者】震災から間もなく1年になりますけれども、前々から知事は被災地への職員の派遣なのですが、継続してやっていくというお話ですけれども、現在、大体150名ほど行っているのですけれども、改めて来年度以降の派遣についてお伺いできますか。

【知事】現地の惨状が終息していかない限り、お手伝いは続けますよ。東京なんかぞろぞろ人が余っているんだから。

【記者】大体、今と同じような規模でですか。

【知事】はい。ただ、これから先、都市計画とか、色々、復興、復旧に当たってのインフラの整備とか、そういうものが出てくると、技術性のある職員のサポートが必要になってくるんじゃないでしょうか。そうすると、人間を入れ替えて送らなくちゃいけないと思うし、かといって、東京に、それだけの技術性を持っている職員がいるかと言ったら、これはなかなか難しいんですよ。東京だけじゃなく、政府が国家の総動員の形で、ゼネコンのそういう専門家もいるでしょうし、そういったものをゼネコンの責任で派遣させる、そういう指導というのをすべきだと思いますけれど。
 はい、どうぞ。

【記者】先日、首都直下での発生が想定されている東京湾北部地震について、文部科学省の研究チームが都心部でも震度7も発生し得る、震度6強の地域が広がるという見方を示しました。これによって、東京都が取り組むべき北部地域の火災の広がりなど、被害も上がることも考えられるのですけれども、この見解について、今、どのように受け取っていらっしゃいますか。

【知事】文部科学省なんて参考にしなくても、こっちはこの間も、(東京大学)地震研究所の平田(直)教授も呼んで、2度目の色々な話を聞きましたが、東京湾というのはよく分からないんで、「どこからどこなんだ。三浦岬と野島崎を結んだその中か」と言ったら、「そうじゃない。浦賀水道より内側だ」と。これはゆゆしき問題で、本当に、大都市の目と鼻の先ですから、そこに2つのプレートの接合点があるというから、これが優に震源地になり得るということで、相当の覚悟をしなくてはいけないけれども、4年のうち70%というのは、物々しい数字なんで、それで何となくみんな戦々恐々としているんだという話をしたら、それは数字の解釈の問題ですけど、別に直すと向こう100年で5回か、起こる可能性があると。僕は数学はあまり得意じゃないんだけど、どういう計量計算になるか分からないけれど、それは別の形でパラフレーズ(言い換え)すると、4年のうちに70%にもなるんですと。分かったような、分からないような、100年のうちに5回は起こるでしょうということでしたな。となると、大分先に5回続けて起こってくれたらありがたいんだけど、どうせ起こるなら。

【記者】そうすると、震度7というと、ちょっとインパクトが大きいのですけれども、都として、これを受けて、すぐさま何かやる必要は特にないという受けとめで……。

【知事】ビルディングなんかの耐震性というのも、随分補強されて、更新されて、厳しいものになっていますから、既存のビルディングでも脆いものと脆くないものとあるでしょう。どこにどれだけの震度の強い地震が到来するか分からないから、今考えられることは、そういう時に一番、脆い木造の建物の建てかえだけは重点的にやっていかないといけないと思っていますけれども。想定の想定で話しても、これは切りない話で。かといって、手を抜くわけじゃないから。
 はい。

【記者】4月にも出される被害想定なのですが、今の関連で、震度7を前提とした被害想定になるのでしょうか。

【知事】知らない。専門家に聞いてくれ。今研究中なんだろうから。都でそんなもの出すの?

【記者】東京都が出されて、9月にも地域防災計画の草案を出されると思うのですが。

【知事】どれだけの精度の数値で出てくるか分かりませんけど、こういう問題について、僕はあまり数字を羅列して、「大変だ、大変だ」と考えることはよくないとは言わないけれども、相当慎重にやった方がいいと思います。数字が先走ると、結局、一犬虚をほえて、万犬実を伝うみたいな形になって、実際ことが起こればどえらいことになるけれども。色々な想定があるから、そういうものを踏まえて、それに対する、できるだけの準備をしようと思っていますけれども、財政にも限りがあることだし、当事者の責任あるでしょうし。特に木密地帯の住居なんかについては、「せめて、自分の寝室だけでも倒れないようにしてください。こういう方法がありますよ」と言っても。幾つかの方法があるので展示もしました、(東京都庁の)議会棟の中で。あまりみんな参考にしないね。家族が寝ている一部屋ぐらい、8畳ぐらいの部屋だったら2、30万円でできるようなことも、せめて寝室だけでもしようという人もあまりいません。こうなってくると、どうやってそれを督励、督促するかということになり、「都が金出してくれるんならいいよ」という人がほとんどだけど、そうはいかない。個人の住宅までこっちが補強するわけにいかないんで。だから、耐震診断は都のお金でやりますけれど、後はあなたが考えてやりなさいということになるわけだし、今度は、新しくステッカーつくりまして、耐震診断をして、この家は大丈夫だというのは、そのステッカーを貼ることにしましたけれど、ほとんどの人が張らないんじゃないかな、自分では。それでは困るんだ、本当は。
 はい、どうぞ。

【記者】昨日の拉致被害者に関することと、東日本大震災の被災者に関することでお聞きします。
 まず、拉致被害者の件なのですが、昨日、被害者の側から朝鮮学校の認可について見直しをしてもらえないかという要望があったそうなのですけれども、これについては、今の時点でどういうふうにお考えでしょうか。

【知事】私も調べましたら、各種学校はいろいろ経緯があって、どういう形で認可されているかというと、各種学校なんですよ。各種学校というのは、ドライバースクールとか、料理学校とか、もっと高度になればコンピューター教室とか、そういうものなんです。私は、そういう学校に、公的機関が税金でそれをサポートするというのはおかしいと思います。それを認可するのを国が逃げてしまって、県知事がやっているわけでしょう。責任転嫁も甚だしい。国がこういう問題についてきちんと線を引いて、法律をつくるべきだと思うけれど。これだけの問題になっているのに、県でお願いしますという。もともと各種学校なんだから、生まれては消える何とか学校と同じように、公的な学校じゃないんですよ。

【記者】そうすると、見直しを検討するという意味ですか。

【知事】そこの学校でどんな教育が行われるか、なかなか、情報も開示しない。しかも、その指示をしているのは朝鮮総連という組織で、この人たちが同胞の拉致に随分コミットしているんでしょう。傍証(ぼうしょう)はたくさんあります。そんな学校に、私たちが税金を使ってサポートする必要があるのかということ。だから、あなたがどんな教育をしたか、どんな教科書を使っているのかということをこちらが言っても、なかなか反応がないね。

【記者】許認可についても、それが調べ終わった後で。

【知事】もちろんそうです。事がはっきりしなければ、絶対にだめです。
 あなた方、拉致被害者の家族になってみなさいよ。納得できますか。同じ日本人だって、同情を禁じ得ない。こんなもの、納得できない。そこでどんな教育が行われるかはっきりしないまま、彼らは彼らなりに歴史観が色々あるでしょう。現に、日本にいる人たちがそういう同胞の拉致にも関与していて、それを是とするみたいな教育をもし行っているとするならば、行われている節があるけれども、それがはっきりするまで、その学校に都民の税金使ってサポートする意味ないじゃないですか。自分たちで勝手な教育をやったらいいんだ。各種学校なんですよ。
 はい。

【記者】北朝鮮に対する政策について、次の選挙で争点にするような、踏み絵という言葉を使われたそうですが。

【知事】そうですね、したいですね、政府に。でも、政府は、結局腰抜けの外務省に左右されているから、外務省の問題なの、こういう問題というのも。全部が全部そう。私は、本当に、拉致されて、帰って来ない横田を取り戻そう思っているけれど、結局最後は、外務省の腰が引けて。この間、在日米軍の総司令官の何とか大将と(国防総省)日本部長のジアラがパネリストになってきたシンポジウム、今まで防衛省、それから国土交通省、外務省も来ていたんだけど、その時だけは外務省の役人が来ない。なぜ来なかったか。後になって、その2人が来て「石原さん、私、シンポジウムに出る前に呼びつけられました」、外務省に2人。それで、北米局長が、横田の問題はナショナルイシュー(国家の問題)じゃない。羽田に4本目の滑走路ができたから、もう日本のリーダーのリクワイアメント(要求)は、こんなもの外務省の局長が分かる訳ないんだ。それで、「あなた方、発言慎んだ方がいいよ」と、彼らに言ったんです。こんなばかなことする北米局長、どこにいますか。みんなのために基地取り戻そうと思っているのに、共用しようという形でお話ししているのに。それで、私は乗り込んでいったんだ、都の関係者も連れて。前原(誠司 元外務大臣)と北米局長呼んで、「一体、どこの大臣で、どこの局長なんだ」と言ったら、「日本でございます」と言うから、「ぬけぬけした顔で言うな」と。その前に、前原が「地方自治体のやる行事に一々国が参加する必要はない」と言うから、就任早々で、北米局長に洗脳されたらしいけれど、ずっと、谷内(正太郎 元外務事務次官)君の時代から出ているんだ、外務省は。色々な合議をしている。何故この時点で、大臣が新しいからか知らないけれど、それにかいくぐって、肝心のパネリスト呼んで、余計なことを言うなと。一体、何のためにそんなばかなことを言うんだと罵倒しました。あのフィルム撮ってきたかったね。本当に外務省はだめだ。これは、外務省がその気にならないとだめ。一番余計だったのは、田中均なんていう、前の(外交官)。あれだって点数稼ぎでやっただけで、後のフォローは全然しないんだから。本当に日本の外務省、だめだな。

【記者】東日本関連のことで、もう1点。都内に、被災地から避難者が9,000人ぐらい、今も住んでいらっしゃって、うち4,000人ほどが都営住宅で暮らしているそうです。国の方針に沿って、一応2年ということで入居期限が定められていて、都の担当部局に聞くと、国が方針を示すまでは、その後のことというのは今のところ検討できないというような話をされていたのですが、知事として、これについてはどういう……。

【知事】避難してきている人たちの故郷が政府の努力でどれだけリカバーできるかですよ。2年で埒(らち)が明くんなら、それは戻ってもらいますけれど、政府が無能で事が進まないんだったら、その人たちを無理やり帰すわけにいかないじゃないですか。東京は東京の責任でその人たちをかばいますよ。

【記者】期間を延長するとか、そういうこと……。

【知事】もちろんそう。国次第だよ。しっかりしろと、国の方がもっと早く。
 どうぞ。

【記者】先に、日中問題で、名古屋の河村(たかし)市長の話が、民間外交にも水を差すようなところまで来ておりますが、今年は日中国交回復40周年ということで、こういう質問があちこちで出ると思いますが、知事は南京問題をどういうふうにとらえて……。

【知事】私は、南京大虐殺、40万人の兵隊、40万人の市民を、日本軍が殺したなんていうのは全く事実無根だと思います。何故、そんな事件があったというなら、終戦直後の中国の主権者、蒋介石なりを追い出して、中国を覇権した毛沢東が、この問題について一言もコメントしないんですから。あんなもの、あり得ませんよ。蒋介石の軍がめちゃくちゃなことをしたというのは例えば南京だけじゃない。あいつらが台湾に逃げていった、台湾でどんな事件起こしたか分かるでしょう。だから、みんな南京の市民は出ていったんだ。日本が戻ってきて、南京の南京城を占領したところで、市民がどんどん戻ってくるんです。ちゃんと記録にあります。そんなものも含めて、もう1回討論したらいいじゃない、そういうものを、識者を集めて。史実があるわけだ、資料も。
 はい、どうぞ。

【記者】今のテーマと関連するのですけれども、もう1回だけ、お付き合い願います。知事は、南京の大虐殺がなかったという根拠として、3人の方の名前……。

【知事】そのほかにいっぱい事実があるの、事実が。

【記者】ええ。大宅壮一(ジャーナリスト)については先週の会見の時に、私どもの記者が来て、大宅壮一さんもあったということを言っているということを申し上げましたけれども、もう1人、石川達三(小説家)さんについて、知事はこの人も大虐殺はなかったというふうに言っていると、そういう話を聞いたというふうに……。

【知事】いや、僕は直に聞きました。

【記者】ところが、石川達三さんが従軍した後、日本に帰って来て、『生きている兵隊』という小説を書いています。

【知事】『生きている兵隊』というのは、帰ってきてから書いたのかな。

【記者】そうです。それを中央公論社に載せたら、途端に発禁になりました。何故かというと、その中に、南京のことも書いてあったからです、その状況が。

【知事】『生きている兵隊』が発禁になった理由は、それじゃないんですよ。当の軍部が圧力かけたんで。

【記者】この中央公論……。

【知事】何が言いたいんだ、君は。

【記者】そして、石川達三も、南京大虐殺があったと言っている。

【知事】私はそう言ってない。彼から聞いて……。

【記者】読売新聞の終戦の翌年、(昭和)21年の新聞ですけれども、その中のインタビューで答えているんです。大きな建物に一般の人を押し込んで、そこに手榴弾を入れ、そして油を流し込み、火をつけて悶死させたとか、色々書いています。そういうことを、この人は取材した話として書いています。いずれにせよ、南京の大虐殺というのは、実にむごたらしいものだったと。自分たちの同胞によって、このことが行われたことを反省して、その根絶のために、今度の裁判、東京裁判、これを意義あらしめたいというインタビューに答えた記事があります。石川達三は南京大虐殺……。

【知事】だから何なんだ、君は。石川達三がそんなに豹変して、二枚舌を使ったのかも分からない。ただ、色々な事実があるわけだ。資料が。それをもとにした当時の日本軍の装備の中で、2週間か3週間で40万の人を殺すなんて、絶対あり得ませんよ、物理的に。

【記者】いや、あるんです。

【知事】あるんじゃないよ。君と議論しているんじゃないんだ。だから何なんだ、君は。
何を言いたいんだ、ここで。

【記者】知事が根拠にしている石川達三は言っていないということは違うということ。

【知事】私は直に聞いたんだから。

【記者】だったら、こんなことを石川達三が書くはずないです。

【知事】分からないね。文士というのはぐるぐる変わるやつもいるし。そうだとしたら、私は石川さんを軽蔑するね。はい、ほかにどうぞ。

【記者】2つほど質問させてください。1つは瓦れきの件、もう1つは震災から1年で思うところということです。1つ目の瓦れきの件ですが、国はようやくテレビだとか新聞の広告を使って、あるいはテレビのコマーシャルを使って、瓦れきの広域処理を進めようというPRを始めました。これについてどう思われますか。

【知事】遅いね。

【記者】遅い。

【知事】うん。全く遅いね。

【記者】もっと早くすべきだと。

【知事】もっと早くできたはずですよ。総理大臣が号令したらいいんだ、こんなものは。総理大臣もくるくる変わるから。

【記者】それから、震災1年で弊社の番組から伺いたいということで、著名人の皆さんに共通に伺っているのですが、2つ質問がありまして、1つは東日本大震災から1年たちますけれども、あれから石原知事自身が変わったと思うことは何でしょうかということ、もう1つは石原知事自身にとって幸せとは何でしょうかという2つの質問です。

【知事】そんな少女雑誌みたいな質問をするなよ、本当に。私にとっての幸せは日本が早く復興することですな。それから何だった、もう1つ。

【記者】自分が変わったと思うことは何でしょうか。

【知事】変わらないね、私は。大体、この日本の列島というのは、地政学的にどれだけ危険な、地勢的な条件に備えているか、再三言ってきたし、書いてもありますし、特に三宅島の、就任早々、爆発が起こって、いまだに三宅島は苦労しているわけだけれど、ああいう1つの事例を見ても、私は自分の趣味のヨットでよく行くところだし、伊豆七島というのは非常にアクティブな、美しいけれど怖い列島です。そういったものの実態を眺めていると、素人の私でも、この国土というのは相当脆くて、恐ろしいという気がしますし。それから、諸君が好きかどうか、網野(善彦 歴史学者)さんが、史学でいうと、日本海というのは昔から浅くて、太古の昔は動物が渡ってきたと。それから、この間、猪瀬君がとてもおもしろい地図を僕にくれたのは、日本列島を逆さに写す、西側から東へ。そうすると、大陸の日本は防波堤でしかないんです。しかも日本海も、黄海なんてもっと浅い海で、そういう地政学的な条件の中で色々な文化、過程で取り上げてきたけど、いずれにせよ、非常にフラジャイル(壊れやすい)な国土で。また、この間おもしろかったのは、地震研究所の平田教授が、若い人だけど、なかなか、うまいことを言ったのは、日本の非常にフラジャイルな、こういう高い山があるけれども、それは非常に脆かったり、そういったものが日本人の情念、感性を培って、日本の文化をつくってきたんですなんて、君、なかなかいいことを言うなという話をしたんですけど。
 そういう点で、私は色々な文献を読んでいても、とんでもない災害はまた来るだろうと思っていました。私の小学校の教科書にも、庄屋さんが山の上に住んでいて、稲を取り入れた後、干していたら、津波が来るのが見えて、村民は海で働いているので、彼は半鐘鳴らしたくてもそんなものないから、自分の取り入れた稲の穂に火をつけて火事を起こして、それで村民を呼び寄せたという、なかなかドラマチックな、小説じみた文章がありました、小学校で。私はとても劇的なので、何度もそれを読み直した覚えもあるし。そういう点では、予期というか、予感はしていました。果たせるかなという感じはしたね。
 同時に、日本人の心が腐ってきて、「絆」とか、結構な話だけど、本当に一部の話で、例えば今、関西に行ってごらんなさい。一杯飲んでいて東北の話題なんか全然出ないよ、行ってみると。日本は狭いようで広いんだ、そういう点で。ただ、日本人の意識というのは、非常に限られた形では復活して、絆も固められたかもしれないけど、本質的には、みんな我欲だ。何ですか、一体。政府がギャランティー(保障)して放射能がついていないという瓦れきまで、一体何に危惧して、住民が拒否するの、なぜそれに首長が迎合するの。そんなもの、対話集会なんか開いたら反対派が来るに決まっているじゃないか。賛成者なんか来るわけない、あんなもの。やることがばかだよ。こっちに言わせると。はい、どうぞ。

【記者】また、大阪維新の会絡みで恐縮なのですが……。

【知事】橋下君に聞けよ、そんなもの。

【記者】維新の方で、外交防衛政策に関して、日米同盟を機軸としてオーストラリアを加えた三国同盟でやっていくというような方向性を出されているのですが、これについて知事はどう……。

【知事】今までだってやってきたじゃないですか。リムパック(環太平洋合同演習)なんかオーストラリアの海軍を入れて太平洋でやったんだ。自民党時代にリムパックやるなら、シナ海でやれと言ったんだよ。大きな抑止力になるから。

【記者】少なくとも方向性としては……。

【知事】方向性も何も、今までやってきたじゃない、それぞれが。ごく妥当なことだと思います。ちっとも新規なアイデアじゃないが。はい、どうぞ。

【記者】知事がお話になった、『稲むらの火』です。実は、あれに1つの教訓がありまして、あれだけ全部の島の人に津波を知らせられたのは、和尚さんというか、お寺の人の判断で、半鐘ですね、鐘を鳴らしたからだと。これは今でも必要だと思うのですが。震災で拡声器だとか、色々、電気を使ってみんなに知らせていますが、津波が来たら電気は一発でとまって、知らせようがないんです。だから、復旧に、今、半鐘こそまた必要だと思うのですが、どこも、その鐘を問題にしていないですが、知事いかがでしょう。必要だと思いませんか。

【知事】いいですね。電気とまったら、サイレンも鳴らないんだから。昔、火の見やぐらがあって、そこに半鐘がついていました。あれでみんな動いたもんだ。本当に、古きを温める必要があると思います。結構なアイデアです。東京にもつくりましょう。
 はい、どうぞ。

【記者】一昨日の夜、立川市の都営アパートで女性2人が亡くなった状態で見つかりまして、なかなか死後大分たっていたということで、発見が遅れたと。数年前から問題になっている孤立死という案件だったわけなのですけれども、都営住宅では、こういった孤立死がひとり暮らしの方に限っても1年に400人以上いらっしゃるということなんです。これだけたくさんの方がいらっしゃるとなると、東京都の住宅供給公社などでは、マニュアルをつくって対応しているらしいのですが、こういったマニュアルは機能しているのかなという疑問を持つのですが、知事はどのように考えますか。

【知事】この問題について、都営住宅に住んでいる人と、こういった事件を報道するあなた方に、基本的な認識を持ってもらいたいのは、あそこに住んでいる人たちは権利者じゃないんです。ただの使用者なんです。それを、行政の当事者が勘違いしているから、みんなおずおずしているけれど、管理人が合鍵を持って、怪しいなと思って入って、元気だと、「あ、失礼しました、お元気ですね」と、言ったらいいじゃないですか。それをするとプライバシーの問題が出てくるから、おずおずして結局今日のような問題が起こったわけだけど。基本的な認識が違うんだよ。都営住宅の居住者は使用者ですから、権利者じゃないんですから。そういう点では、ある意味で、彼らにしてみれば無視されたと言うかもしれないけれど、その管理者が危ないなと思ったら、合鍵で中へ入って確かめるというのは、当然やるべきことで。変におずおずしているから、今度みたいな事件が起こったんだ。

【記者】例えば、今のマニュアルですと、異臭がした時に中に入るというのもあるのですけれども、異臭がしている時にはもう亡くなっていると。

【知事】そうです。かなり時間がたっているということですから。

【記者】もっと積極的に踏み込んでいいんじゃないかというふうに。

【知事】権利者じゃないんだ。使用者なんだから、その権限というのは、都の管理者が持っているわけですから、堂々と入って確かめて、中で生きていたら、「失礼しました。ちょっと心配で入ってみた、お元気で結構です」と帰ればいいんだよ。

【記者】そのマニュアルの見直しを指示される……。

【知事】もちろん。今あるマニュアルの基本的なコンセプトが違っているんですよ。
 はい。

【記者】さっき南京の話が結構あったので、ちょっとお伺いしたいのですが、史実というお言葉を使われたのですけれども、史実というのと、一方で、色々な政治的立場から歴史の見え方は色々と違うと思うのですが。

【知事】もちろんです。

【記者】政治と歴史のあり方について、往々に色々なトラブルを引き起こすわけですけれども、その辺について、知事はどういうふうに、政治はあまり関わらない方がいいとお思いなのか、当然歴史と政治は切り離せないものだというふうにお考えなのか、その点をお伺いしたいのですけれども。

【知事】それは切り離せないでしょう。政治というのは、非常に複合的な手段で運営されているから、その1つとして、1つの歴史というもののエピソードを違った形で拡大したり、矮小化したりすることは平気でやりますよ。それは、しようがないと思う。それは政治というものが、核にもなっている文明の1つの意味でもあり、特質だと思います。
 私は、この問題について、随分研究したんです。当時は、あの時の生き残りの人がたくさんいて、偕行社という旧陸軍の人たちがつくっている会合にも行きましたが、色々な意見がありましたけれど、結局、便衣隊というのか、平服を脱いで、市民に紛れているゲリラみたいなのがいて、手を焼いて、日本軍というのはそういう経験が初めてだったので、随分苦労したらしい。兵隊も殺されたりして。そういうことの報復で過剰なものもあったんだろうけれど。云々の話を聞いて、結局、「1万人ぐらいは殺したんじゃないですか」と言ったら、非常に怒られた、僕は。そんな経験がありますが。私がその現場に行ったわけじゃないから、あの事柄をどういう事実として規定することはできませんけれど。討論したらいい、事実を、色々な資料を出し合って。そういうことだと思います。

【記者】政治と歴史学は切り離せないということになると、結局、外交交渉と変わらなくなって、研究とかという純粋な立場とは違ってきてしまいますよね。

【知事】そうでしょうね。だけど、歴史の史実として、ある意味では歴史科学的に検証したらいいと思うんです。その努力はしたらいいんじゃないですか。それを後ろにあるか、横にある政治がどういうふうに、利用するかは別の話ですけど。ただ、どういういきさつがあったにせよ、不思議なことに蒋介石と毛沢東はこの問題で一切発言していないね。
 はい、どうぞ。

【記者】知事、冒頭おっしゃったように、猪瀬副知事が、例えば中部電力との契約の可能性を示すなど、色々やってこられた中で、電力調達の問題というのは、今年度だけではなく、これからも将来的につきまとってくる問題だと思いますが、東京の電力調達のあり方について、どのように将来的にお考えでしょうか。

【知事】これは、幾つか、色々な教訓があると思います。まず、首都圏、特に東京は電力の非常に大きな消費地であることは変わりない。それを踏まえて、過剰な値上げをされたら非常に迷惑を被るわけだし、それをさせないために、東京電力の会社の合理化をさせるということも、色々な資料をそろえて責めるべきでしょう。彼は、枝野を呼んで、あの会議でとてもいいことをやったと思うし、1つ石を打ったわけだけれども。それから、第3の電力供給といっても、そんなものは日本全体でわずか2、3%ですか、これに頼るわけにはいかないし。東京都は、これから、天然ガスを利用した発電所をつくりますよ、だけど、結局それを配電するネットワークというのは東電が握っているわけだから、これにべらぼうの金を取られたら元も子もない。そういう交渉をしなければいけないし。それから、原子力というものは、みんな、センチメントで非常に今恐怖しているけど、同じことをフランスがやっていて、フランスでそういう事故が起こっていないということは、やはりシステムが違うんでしょう。人間がつくったことですから、システムというのは。これを反省したらいいと思うし、東電と経産省と自民党がグルになって、変な利権構造をつくってきたわけだから、これは反省しなくちゃいけないと思います。はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)