石原知事記者会見

平成23年12月15日更新

石原知事定例記者会見

平成23(2011)年12月9日(金曜)
15時31分〜15時48分

知事冒頭発言

1 外環道の整備について

【知事】冒頭、私から1つ。今日、国交省の高速道路委員会が、「外環道は有料道路方式を基本に整備すべき」と発表しました。私が外環道を事業化させてから、その整備手法は紆余曲折してきましたが、今回ようやく国交省が方針を出したからには、かねて主張しているように、来年度にはトンネル工事に着工すべきであると思います。
 外環道は、2020年のオリンピック誘致のためにも、どうしても完成しなければ困るんです。ということであります。他に質問あったら、どうぞ。

質疑応答

【記者】明日から、前にも少し、会見で話が出たのですが、原発の是非を問う住民投票、これの請求をしようということで、市民団体が署名集めを始めることになりました。東京都は、今年の東京電力の株主総会で、脱原発に対して反対ということを表明しているのですが、住民の間、都民の中でこうした動きがあることについては、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。

【知事】こういう開かれた社会ですから、人々が原発という大事な政治イシュー(論点)について、それぞれの意見を述べて、それをまとめるのは結構なんじゃないですか。ただ、放射能の問題については、もうちょっと、みんな冷静になったほうがいいと思うし、繰り返して申しているように、フランスという国はこういう事故を起こしたことがない。ほとんど原発に頼っているし、しかもその電力を隣のドイツとイタリアは買っているわけでしょう。これから先、どれぐらいのタイムスパンで、日本がどれだけの経済成長をして、社会福祉、社会保障というものをどういうふうに充実し直して、どれだけのお金が要るかということも勘案した上で、それを支えるのはエネルギーですから、それをどうやって補給するかという設計図もなしに、この時点で、私からいうとセンチメンタルともヒステリックとも思えるんだけれども、反対する人は反対したらいいでしょう。しかし、そのオルタナティブ、代案というものをきちんと出さない限り、政治は政治にならないんですから、それを受けとめても、政治はそれを是とするか非とするか、政治の判断でしょうけれども、国の。これだけの成長をするというのは、これだけの原発が要るか要らないかということもはっきり物を言わないと。国民も、ちょっとセンチメンタルになって、かつて、中国が、やたらに核開発の実験をやった時に、黄砂にまじって放射能がたくさん飛んできているんですよ。それを一番、若くて浴びていた世代が今の団塊の世代。調べてみると、この世代の体の中のストロンチウムの埋蔵量は非常に高いんだ。しかし、それで放射線による病気になった人いるかといったら、あまり聞きません。それから、アメリカがビキニで実験やって、福竜丸という近くで操業している漁船が、死の灰を浴びたということで久保山(愛吉)さんという通信士が死んだ。放射能で死んだんじゃないです。肝炎にかかって死んだんです。確かに、ある程度の放射能で肝炎になる人は多いんだ。でも、久保山さんは個人的な色々な状況も重なって悪化して死んだんで、あの人は、放射能障害で、間接的かもしれないけれど、放射能障害そのもので死んだわけじゃないんだ。死因は肝炎です。そういったこと、こんなことを勘案すると。それから、当時、隣の中国から、死の砂がたくさん降っている時に、日本の政府は一体何をしているかという感じがしないでもないんですが、現実に、あの時、雨に当たって、髪の毛が抜けてはげになるぞとか、色々な噂があったんだ。噂もあったんだけれど、それが何によるかということは、大方隣の中国の原爆の実験の放射能だろうということは感じていたけれども、あまりそれを、日本の政府は精査もしなかった。今度、こういう事故が起こって、日本人は非常にヒステリックになっていますけれど、反対運動も結構でしょう。その代わりに、自分たちの生活がどういうふうに保たれるか、そういう設計図を、政府が何もしないんだったら、国民が、そういうことも考えたらいいと思う。専門家もいることだろうからと私は思います。やることはおやりになって結構でしょう。

【記者】関連して。今のやりとりで、ちょっとお尋ねしたいところがあります。確かに知事は、以前から、フランスでは一度もまだ原発に関する事故は起きていないと。ただ、アメリカでもスリーマイル島とか、チェルノブイリ、ロシアの。それから、日本でも茨城県東海村の臨界(事故)とか、現実問題として起きたりしていると。いうようなことを考えてみますと、佐々淳行さん(初代内閣安全保障室長)の危機管理の考え方ではありませんが、悲観的に備える、準備をする。起きないようにみんなで努力をするとおっしゃるならば、知事の発言としてもよく分かるのですが……。

【知事】その通りだと思いますよ。この時に事件を反省にして、仕組みそのものも間違っていたし、変な利権がばらばらに分散して、それぞれ勝手なことをしていて。ですから、こういった事故を未然に防ぐ政策、原発をこれからも是とするんだったら、十分講じて、これからこういうことをするということを、政府が明言しない限り、国民は不安でしょう。そういう作業が一向に出てこないし、起こったことの言いわけばかり、部分的にはそれを糊塗(こと)するような節がないでもないから、国民の不信を買うと私は思います。

【記者】まさにそういったことで、政府などがやってもらうのは当然必要な訳なのですが、そこで、1人1人、住民の方も、何とか備えるのもよろしいでしょうと言われても、なかなか1人1人、1戸1戸の家庭が、それに対してどういうふうにしていったらいいのだろうかと、なかなか難しいことが多いと思いますので、そういったことは1つ、疑問に思ったりしていることでもあるわけです。

【知事】お言葉を返すようだけれども、チェルノブイリと今度の原発とスリーマイルと全部、トラブル、アクシデントの原因が違いますからね。

【記者】そうですね。一緒くたにはしてはいけないことだと思いますけれど。

【知事】はい。他ににあったらどうぞ。

【記者】八ツ場ダムの関連でお伺いします。昨日、民主党の前原(誠司)政調会長が、党内の疑問点に対して国交省が回答するまでは、ダム本体工事は認めないという発言がありまして、政府にその点について申し入れるということだったんですが、それについてのご所見と、以前、国交省への6都県知事の申し入れで、万が一ダムを中止にするのであれば、負担金の返還を求めて訴訟を起こすと。

【知事】もちろん。

【記者】あと、残事業費を6都県で負担して、都県事業としてダムを完成させるという申し入れがあったと思うのですが、それについて今、どういうお考えかお聞かせいただければと思います。

【知事】前原君が言った通り、最終的には国交省の専門性に依頼して、事を決めるということなんでしょう。そうしたらいいじゃないですか。さっさと決めてもらいたいね。有識者会議で結論も出ているわけなんだし。もし、何かこじれてこれが中止になったら、法律の定めで返すものは返してもらわなくちゃいけないし。その前に、やっかいですよ、これは。都を含めて、6都県の議会を通じて、廃止に対する承諾を得なかったら、中止できませんから。当然、関係6都県は、これだけ色々申し入れをしてきて、強い姿勢で臨んできたんですが、そんなもの認めません。あとをどうするのか。九分通り出来上がった大事業というものを、あれで放り出すんですか。はい、どうぞ。

【記者】野田(佳彦)総理が、国家公務員の7.8%減を撤回しました。そういうことで、1番問題になってくるのは、これから消費税の問題だと思うのですが、それに対する影響というものはどういうふうにお考えになりますでしょうか。

【知事】財政再建なんていうのは、人を減らす、歳費を減らすというのが、当然のことです。それをやらないんだったら、ますます財政に食い込みが大きくなっていくでしょう。そうしたら、消費税だけがそれを賄うわけじゃないんだろうから。ただ消費税に対する期待というんでしょうか、財政的期待も大きくなってくるでしょう。大体、人が減らせない政府なんかだめだよ。
 はい、どうぞ。

【記者】防衛大臣の一川(保夫)さんが、失言が原因で、それから、マルチ商法ですとか、選挙にかかわる資金の関係で山岡(賢次 消費者行政担当相)さん、お二人が問責決議されるという事態になっていますけれども、これについてどのようにお考えでしょうか。

【知事】私、国会にいませんからね。その質問はとんちんかんじゃない?場違いじゃないの?国会行って聞いてくれ、そんな話は。
 はい、どうぞ。

【記者】昨日、神奈川県の方で、津波の想定の見直しの結果が公表されまして、江戸時代初期の慶長地震とか、室町時代の明応地震というのまで加えて、東京湾だと、横浜とか川崎の中心部も浸水しますというような大胆な想定を出したのですが、東京都は、今、防災会議の方で記録がいっぱい残っている元禄関東地震を想定した見直しを進めていると思うのですが、知事はより古い、あまりはっきりしないけれども、大変な被害があったと思われるような津波も想定して、その浸水の見直し、浸水の想定をするというのを、どういう風にお考えになりますでしょうか。

【知事】今度も、原発が非常にそういう形で致命的な被害を受けたんですが、これに関して言うと、貞観年間に、清少納言のお父さんが歌までかいている、地震があったということで、それを基に、地質学者が仙台まで出かけて、仙台市のもっと奥の方のところまで調べたら、そこまで水が来たということがあって。それは現代の地質学の学術的な分析で確かになったんで、それを献言したそうです。ところが全然聞き入れられずに、このていたらくになったんだからね。江戸時代、何の時代でも、過去に起こった地震が津波としてどこまで及んだということは、そうやって調べてほしいんだよ。地形が違うんだから。岩手、宮城、福島あたりのインレットと違って、東京湾というのは、一種の閉鎖水域ですけれども、形が全然違います。震源地によったら、大きな被害も受けるだろうけれども。かつての関東大地震、あれは大震災の一つだと思いますけれども、あの震源地は大島近辺ですよね。鎌倉あたりには5メートルの津波が押し寄せてきて、由比ヶ浜を散歩していた、厨川白村(評論家)がさらわれて死んだんだ。由比ヶ浜というのは、のっぺりした海岸でインレットではありませんから、あそこで5メートルの津波が来たというのは大変なことです。この間、3・11(東日本大震災)の時、奇特な人が稲村ヶ崎から撮った由比ヶ浜の写真見ましたら、普通の波打ち際が1キロぐらい潮が引いているんです、遠浅で。これは、大変な資料だと思いますが。関東大震災の時に、現実に、間近な震源地から津波が襲った。その時に、東京湾がどれだけ水位が上がって冠水したかということは、調べれば分かるんじゃないですか。それによって対策を立てたらいいと思います。

【記者】その関東大地震の時は記録が残っていますし、東京都が今度想定する元禄関東地震も、品川とか、佃島の向かいぐらいの霊岸島(現在の中央区新川付近)というところで、2メートルぐらい来たというような記録があるらしくて、神奈川がやっているのは、今度、今おっしゃった鎌倉だと14メートルが来るかもしれないという想定なのですけれども、それはもっと古い地震のことを想定して出しているんです。

【知事】いつ頃の地震、それは?

【記者】室町時代とか、江戸時代初期の1605年の慶長地震とか、そういう時代の、あまりはっきりしないのですが、何となくあったようなというようなところでやっているので。一応、ちゃんと津波の専門家がやられているのですけれども。そういうところまで踏み込んでやるというのが、東京都はそこまで踏み込んでいないのですが、どんなものなのかと。隣県はそういうふうに想定してやっているのですが。

【知事】江戸の地域に関しての、そういう記録があったら、それを斟酌して当然対策しますけれど、見つけてきてくれ、君らの方が。
 はい、どうぞ。

【記者】今週、柔道の金メダリストの内柴(正人)元選手が逮捕されました。都栄誉賞も受賞している人物なのですが、どのようにご覧になっていますか。

【知事】何だっていうの、それで。

【記者】そういった人物が、準強姦という罪で逮捕されたことについてのご所見を。

【知事】逮捕されたら、これから裁判にかかるんだろう。無罪になるか、有罪になるかも分からないじゃないか。過去にやった表彰について、今取り下げる、されないなんて、そんなことは、ちょっとフライングじゃないですか。軽率というか、メディアは喜ぶかもしれないけれど、人の足引っ張って。私はそういうことしませんな。法治国家なんだから、彼が本当に有罪と決まったら、それは考えなくちゃいけないことだろうけれど、どこかの県は、すぐ取り消したと。あなた方が焚きつけて、やったフライングだと思うね。一種の人権侵害じゃないですか。もし彼が、有罪じゃなく無罪だったらどうするんですか。
 はい、どうぞ。

【記者】今、都が申請しております、「アジアヘッドクォーター特区」の件で伺いたいのですが、書類審査を経て7地域が残って、東京もそんな中に残っているわけですけれども、書類審査で東京の順番が6番目ということで、大体5地域程度が選ばれる中で6番目ということで、かなり当落線上にあるという状況と伺っているのですが、それについて、知事のご所見はいかがでしょう。

【知事】そもそも、最初の出し方が間違っていたと思う。特区を構えたら、税制の優遇措置というインセンティブをつけなかったら、何の魅力にもならないわけです。東京だけが、それを付記していないんだよ。自分の身を削らずにいい思いだけしようと、それは無理ですよ。税収が減るかもしれないけれども、逆に、それを上回る効果もあるかもしれないんで、特区そのものが企業に対する減税というインセンティブを与えられるんだったら、それをうたわないで、従来のままの税制なのに東京だから来てくださいと、そんなものは通らないと思うね。ですから、それを修正させました。あとは、国の判断を待つだけですけれども。
 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)