石原知事記者会見

平成22年10月28日更新

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年10月22日(金曜)
15時00分〜15時19分

知事冒頭発言

1 「築地市場の豊洲移転」について

【知事】冒頭、築地市場の豊洲移転について申し上げます。
築地市場についてでありますけども、議会の議論を踏まえて、豊洲移転を進めていくことを決断いたしました。
 築地市場の再整備が持ち上がったのは、今から25年以上前の鈴木都政の時代で、いわば、これは「昭和からの宿題」であります。かつて築地現在地での再整備が試みられましたが、頓挫して終わったわけで、その後、豊洲移転に活路を見出して、都は業界と議論を重ねて、議会にも必要な予算も認めてもらってきました。この4月からは、議会自ら現在地再整備を再検討してきましたが、その中で、現在地再整備には、全てが順調に進んでも十数年かかるという致命的な欠点が明らかになりました。にもかかわらず、議会としての結論がだらだら先送りされて、今後の展望が依然として示されておりません。議会が決めかねるならば、知事が歯車を大きく回すしかないと。それがリーダーとしての責任であると思います。
 築地市場を取り巻く厳しさは、政治の不決断を決して許さないと思います。築地市場は、僅かな震度の地震でも、屋根の一部が落下するまで老朽化しておりまして、かつ、お世辞にも、清潔とは言えないと思います。パリの新しい市場を見てみますと、競りにかかるような大事な商品というのは、番号を振って、ガラス越しに見えるようになっていて、今の築地でやっているみたいに、外気にさらされて、持ってきて、地面へ転がして、それ見て値段つけるみたいな、そういう原始的なことはやっていないんだ。そんなものを含めて、私は、新しい市場が、新しい機能で、安全に清潔に、運営されるべきだと思います。
 こういった時代遅れの施設では、産地や顧客のニーズへの対応もままなりませんし、市場整備が先に伸びれば伸びるほど、事業者はじり貧になると思います。遠い将来、どんな立派な施設を作っても、担い手がいなくては元も子もないわけでして、業界の大多数も豊洲移転を望んでおりまして、慎重な検討、丁寧な議論なる美名の下で、現場に先も見えぬまま待つ不安、焦燥、混乱を強い続けるわけにいかないと思います。
 首都圏3,300万人に対する生鮮食料品の安定供給や、食の安全・安心をより確保するための品質管理・衛生管理の高度化にも、老朽化した時代遅れの施設では限界があると思います。25年以上にわたるかつてからの経緯、都民・国民への生活への影響、財政面なども複合して考えまして、「昭和からの宿題」にこの辺で区切りをつけるべきだと思います。今後、豊洲移転に全力を挙げるつもりでおります。
 予定地の土壌汚染対策として、我が国を代表する学者の方々の英知も借りまして、既に借りているわけですけども、それを、実際に運用して土壌をきれいにする。日本の先端技術を活用した手法を、整えているわけでありますから、世界に誇る日本の先端技術というものを、それを開発した日本人が信用せずに、それを使わずにいるというのはこっけいな話でありまして、今後ともそういった技術を、万全に駆使しながら、土壌汚染含めて、新しい市場を立派につくるがために努力したいと思います。
 事業者が抱える移転についての課題の解決などのためにも、これは主に財政的な問題でしょうけれど、かつて大田市場をつくった時もそういう問題に対処しましたが、都議会には、共にこの知恵を出し合うことを呼び掛けていきたいと思っています。
 社会には様々な利害の衝突は当然あるわけでありますけれども、それを乗り越えて、未来を切り拓くためにこそ、政治に大きな力と責任が与えられていると思います。市場の問題も、何が肝心かを政治が認識すれば、自ずと着地点は定まると思います。首都を預かる知事として、現実に立脚し、複合的な発想を踏まえて、今回の決断をいたしました。
 都議会の皆さん、市場関係者の皆さん、都民・国民の皆さんのご理解とご協力を改めてお願いをする次第であります。
詳細については、後ほど事務方から説明をさせますが、大体、今年度の市場の予算を含めて、現地再整備についての計画の検討を、さんざんしました。しかも、十数年かかる、金もかかるという結論が出ているわけで。
 それから、土壌汚染は深刻な問題ですけれども、日本の先端技術をもってすれば、克服できるという結論が出ているわけです。それに対して、科学的な論拠を構えての反論は一向に聞こえませんし、同時に、もう1つ、現地の業者とも、さんざん話し合ってきましたが、過半の要望は、一刻も早く豊洲に行ってほしいということでありまして、そういった附帯決議で、この予算が通ってきたんですから、そういうものを踏まえて議会は、色々議論の揺れもあったでしょう。市場に直接関係のない、政治力学も働いたようでありますけれども。
 いずれにしろ、事が時間的な限界まで来た今、これは日本の流通全体を考えても、築地は、今のままではとても立って行かないと思うし、先ほど言った、パリなどの、海からはるかに遠い、国土の真ん中にあるあの市場も、見事に、立派に再建されて、運営されていますから、そういった事例を、私たち、相対的に眺めながら、新しい流通の機構の要になる東京の市場の再建というものを果たしていきたいと思っております。
 メディアも、一部はこの問題で激しい対立を喜ぶかもしれないけれど、対立はさんざんしてきたし、いたずらな対立は、私は都民のために何の生産性もないと思いますので、これは議会が、この辺は割り切って、誰のためでもない、自分を選び出した、都民の利益というものを考えて、協力すべき時期に来ていると思います。
 質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】豊洲移転を進めることを決断されたというお言葉でしたが、本年度の予算については、全額、執行されるお考えであるということでよろしいでしょうか。

【知事】それはそうでしょう、移転するんだから。当たり前のことじゃないですか。

【記者】そのことについて、民主党は、予算の執行の仕方の結果いかんによっては、態度を硬化させるというような姿勢も見せていますが、その点についてはどのようなお考えでしょうか。

【知事】これから先の、議会運営と議会の討論でしょう。皆さんもそれを、厳粛に眺めて、評価していただきたいと思います。新聞は、誰のための代表でもない。公器ですから。代表しているあなたの読者である国民、都民のために、物事を冷静に判断して、報道していただきたいと思います。
 ほかにないですか。はい、どうぞ。

【記者】今の質問と重複する部分もあるのですが、民主党が先ほどの、先日までの議会で、厳しい態度で臨むという表現をしていましたけれども、その厳しい態度というのが具体的に何を指すかというのははっきりしていませんが、仮に来年度以降の予算で、土壌汚染の対策ですとか、新市場の建物の建設工事にかかる費用というのも、来年度以降、積んでいかないといけないのですが、それが認められないということになると、事実上、ストップしてしまうということになると思うのです。そういったことについては、どう考えていらっしゃいますか。

【知事】困惑し、困るのは、まず都民だと思います。それから、多くの業者だと思います。流通の機構がどんどん変わっている時代に、あの旧態依然とした市場で、都民、国民、首都圏に3,300万もの人なわけですから、そういった方々の、利益につながる市場の運営というのが出来るか、出来ないか。常識的に考えれば分かることじゃないですか。

【記者】もう一つなのですけれども、1,281億円の今年度の予算を、今年度のうちに全額執行するということを先ほどおっしゃいましたけれども、東京ガスと土壌汚染の対策工事の費用を、どの割合で負担するかという協議も進められていると思います。それの協議の進み具合によっては、今年度中に全額使い切らないで、来年度に持ち込す可能性もあると思うのですけれど、そこについては。

【知事】土地の購入が一番問題です。これが前に進むとしても。事務的にそれを、年度内に終えるように、これからも努力していこうと思いますけれど。議会が、事を引き延ばすようなことのないように、議会も協力してもらわないと、都民の需要にかなわないと思いますから、時間の上でも。
 どうぞ。

【記者】民主党、都議会は、この築地問題に関する特別委員会(東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会)の延長を決めていますけれども、もちろんその検討に際しても、当然、費用などもかかってきますが、知事は、この特別委員会の今後の延長については、もうやめるべきだという考えで。

【知事】それは議会が決めることで、これからの討論といいましょうか、色々な相談の結果、事が決まっていくんで、この時点で聞かれても、分かりません。しかし、特別委員会でやること、随分やってきたし、やり尽くしたと思います。色々な議論も出ました、案が出ました。航空母艦持ってくるとか、その他、この他ありましたが、しかし、築地の再生というものは、時間的にも非常に無駄だし、時間が十数年かかるということは、致命的な欠陥だと私は思います。
 はい。どうぞ。

【記者】民主党などは、意向調査を求めていますけれども、これに対して……。

【知事】意向調査はさんざんしました。今回、文書も関係者に出しました、回答もありました。一番困って、反対している人たちは、行ってみると、あの周辺における小零細企業者というのでしょうか、かつかつの仕事をしている方たちで、その人たちが移転に関する費用というものに、非常に負担がかかるんで、これから先、大田の市場の例もありますし、具体的に考えていかなきゃいけない問題だと思いますけれども。

【記者】もう1点なのですけれども、移転するとしたら、築地の望ましい形は、知事、改めてどのようにお考えですか。

【知事】あれだけの広大な土地ですから、しかも、都心に近いところにあるわけですから、利用価値はたくさんあると思いますし、色々な案が出てくるでしょう。一部には、あそこに医療の都市計画として、病院のクラスター(集合体)をつくるという、すぐ横にがん研(国立がん研究センター)もありますし、そういう案もあるようで、私は、それは非常に好ましいことだと思います。
 どうぞ。

【記者】今日の発表に至るまで、当然、都議会、民主党、共産党などともお話し合いをされたかと思うのですけれども、要するに、それが決裂したので、知事のご判断、裁量によるご判断ということになったのでしょうか。

【知事】決裂じゃない、結論が出ないから。これ以上、待てないということです。流通というものの全体を考えれば。

【記者】ということは、事前のお話し合い、民主党とのすり合わせみたいなことは、特にやられてないということですか。

【知事】さんざんやりました。佐藤(広)副知事が一番、カウンターパート(対応相手)になって、随分苦労したと思います。私も、逐一、報告、聞いていますけれども。

【記者】それが、まとまらなかったということでしょうか。

【知事】まとまる、まとまらないじゃない。返答が来ないんだから、具体的な、前向きな案が。それでは、行政は行政として、立ちすくむわけにいかないでしょう。
 どうぞ。

【記者】先ほど、なかなか議会から答えが出ない、結論が出ないから決めましたとおっしゃいましたけれども、附帯決議には、検討結果を尊重するという言葉もあって、確かに法的拘束力はないと言われますけれども、知事としては、どのようにこの言葉、検討結果を尊重するという言葉を受けとめられますか。

【知事】さんざん検討してきたわけです、時間かけて。極端に言えば、鈴木(俊一 元都知事)さんの時代から十数年かけてやってきたんだ。その間、議会の人も変わったかもしれないけれど、さかのぼって、資料が残っているから読んでみれば、どんな議論があったか、あなただって分かるだろうと思う。自分自身、見てごらん。こんな1つのプロジェクトで、これだけ膨大な時間かけて結論が出なかった事例は、あんまりないんじゃないですか。

【記者】今回、今年度予算に関しては、仕切り直して、4月から再整備案というものをつくり始めたと。その検討はまだ続いているというのが、民主党など野党の認識のようなのですけれども……。

【知事】どうやって続いているんですか、何を検討していて、具体的に。出たじゃないですか。彼らの案をやったら十数年かかるんです、再整備は。そんなものは時間的に無理でしょう、あなた。焦眉(しょうび)の問題は、あと十数年間、宙ぶらりんになったまま、その間、消費者たちはどうして、何を待つんですか。その間、どんな災害が起こるかもわからない、ちょっとの地震で、アスベストを含んだ屋根がばらばら落ちてきているんだ。行ってごらんよ、現場で、君。

【記者】あと、1点確認させていただきたいのが、三定の終わりに報告書というものもまとまったわけなのですが、そちらを見た感想、結局、時間がかかるというのが致命的、この一点に尽きるのか。ほかにも、再整備にはこんな課題があると、そのほか認識されたことがあったんでしょうか。

【知事】時間がかかる以外の、大きなバリアは他にあるんですか。それが最大のバリアじゃないですか。もちろん、ほかにも色々あります。具体的に、実現化の案がないんだから。

【記者】これから、工期なり、工費を縮めていくことが可能だというような意見も、都議会からはあったのですけれども。

【知事】ありません。不可能です。

【記者】やはり時間がかかるというのが……。

【知事】こちらは技術的検討をしました、専門家で。
 どうぞ。

【記者】知事、冒頭発言の中で、豊洲移転に全力を挙げるというふうにおっしゃいました。とはいえ、任期満了まであと半年ほどになりまして、ここまで議論が膠着(こうちゃく)しますと、やはり政治的な突破力みたいな意味で、来年4月に予定されています都知事選に向けた知事の姿勢というのも、お答えにくいかもしれませんけれども、改めて……。

【知事】なかなか際どい質問だね、政治の肝要というのをついているけれど、それはノーコメントだね。はい、どうぞ。

【記者】それに関連するんですけれども、このまま対立が続けば、来年の知事選の争点にもなりかねない事態になると思うのですけれども、その点について、知事はどのようにお考えでしょうか。

【知事】何でもかんでも争点にして、選挙となれば面白いかもしれないけれど、争点になり得ませんよ。仮に、民主党が協力する、推す知事が当選したとしたら、彼自身、物事を冷静に判断したら、とても立ちすくむと思うし、迷惑千万だと思うんじゃないでしょうか。仮に、私の後に民主党が推薦する知事が誕生したとしたら、その人は民主党のためだけじゃなく、都民というか、首都圏全体の3,300万人の人間、もっと多い消費者のために物を考えて、すべきだと思うし、そうじゃなかったら、行政官とはいえないし、首都圏を代表するリーダーにはなり得ないと思います。
 はい、どうぞ。

【記者】知事の長男で、自民党幹事長の石原伸晃さんが、20日の会見で、知事選に触れまして、家族としては、そろそろ辞めてもらいたいけれども、都連会長としては、困ったらもう1回お願いしたいというようなことをお話しされましたけれども、それについて、知事は。

【知事】勝手なこと言うなと言っておいてよ。子供と幹事長の立場、両方、二つ使って、迷惑千万な話をするなと。口を慎めと言っておいてくれよ。

【記者】その時に、尖閣問題に絡んで、こういう時代だからこそ、石原知事の存在意義が増しているのかなというようなお話もされて、知事選絡みの話をされたのですけれども、公にそういうことをお話しされるということについて、どう受けとめてらっしゃいますか。

【知事】それは、あなた方が判断することで、私は自分の身内の人間が何を言おうと、そんなこといちいち責任持っていられないし、またコメントすれば、あなた方、揶揄(やゆ)するだけで。つまらない質問だよ、そんなことは。質問のための質問で。
 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)