石原知事記者会見

平成22年7月15日更新

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年7月9日(金)
15時00分〜15時18分

知事冒頭発言

1 新たなスポーツ行政の推進について

【知事】冒頭、1つだけ申し上げます。
 東京都がこれから展開する新しいスポーツ行政でありますけれども、この7月に東京都のスポーツ行政を大きく変えるために、まず、16日、国に先駆けて、スポーツに関する所管部署を一元化して、「スポーツ振興局」を設置します。スポーツ振興局では、東京マラソンや平成25年に開催決定した東京国体・全国障害者スポーツ大会をはじめとするスポーツ事業を総合的に推進します。
 都民の誰もが、いつでも、どこでもスポーツに親しめ、また、優れたアスリートを輩出する環境整備も進めていきたいと思っています。
 次に、東京マラソン財団は、設立後初めてとなる理事会を22日に開催しますが、この財団の理事には、シドニーオリンピックの金メダリストのQちゃんこと高橋尚子さんはじめ、市民ランナーの代表や各界の専門家が加わる予定であります。
今後、こうした専門家の新しい発想によって、東京マラソンが世界最高峰の大会へとさらに発展していくことを期待しております。
 加えて、「東京オリンピック・パラリンピック招致委員会」は、「国際スポーツ東京委員会」と名称を変えて、東京が国際スポーツ都市として発展していくために新たな活動を開始いたします。
 招致活動のレガシーを継承しながら、アスリートの協力を得て、子どもたちにスポーツのすばらしさを伝えるスポーツムーブメント事業などを行っていきます。
 前も、国際フォーラムの前のスペースでトラックをつくって、短距離の選手に疾走してもらったり、ビルとビルの谷間ですけれども、あそこで、棒高跳びやったりして、一種のコントラストのすごさで、みんなびっくりしたのですが、ああいったものを、これからも着想を新しくして行っていくことで、皆さんが刺激を受けて、よし自分も何かというような気持ちになってもらって、健康な体を維持するよすがになればいいと思います。
 いずれにしろ、東京はこれらの取り組みによりまして、スポーツの力で社会を元気にしていきたいと思っております。
 私から申し上げることは以上です。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】スポーツの関係で、大相撲の件についてお伺いしたいと思っております。
 NHKが、生中継を初めてやめるという決断をして、相撲協会も天皇賜杯自粛することを決めたことについて、横綱の白鵬も、「やり過ぎでは、もうつぶす気か」というような発言もございました。一連のことについて、ご意見伺いたく思います。

【知事】あまり意見ないね。僕はもう相撲の世界うんざりしているから、昔から。都知事は、歴代横綱審議委員会のメンバーになるのが定番だそうで、私は2度ほど頼まれましたが、断りました。
 まだ、政治家になる前ですが、例の大鵬と柏戸の八百長問題、いかにも不自然なゲームだったので、コラムに非難して書いたらえらい騒動になって。時津風が理事長の頃だけれども、その後援会のうるさい人が出てきて、石原殺すなんてことになって、大迷惑したんですが。あの時も、心配した審議会の委員の舟橋聖一さんとか、大映の永田雅一さんなんかが色々アドバイスしてくれましたが、舟橋さんの言葉が印象的だったのは、「石原君、全部がそうとは言わないが、大方が、『大男総身に知恵が回りかね』でね、自分たちは、体が大きくて力がある、偉いと思っているけれども、それは、とんでもない錯覚で、そういう一種の人生の中の思い上がりが多々見受けられて、なかなか厄介な連中なんだ」ということを、舟橋さんが言ったのを思い出しますが。自分たちは特別の選ばれた者と錯覚すると、何をやってもいいんだというような、俺たちは別だという、そういう心境になりがちなんじゃないのですか。この辺で、頭冷やしたほうがいいと思います、ということ。
 はい、どうぞ。

【記者】先日、北区などで浸水被害の出たゲリラ豪雨に関する質問です。
 今の防災対策は、1時間に50ミリの雨を想定で進められていて、50ミリの雨は3年に1回程度とのことですが、今回、近年の異常気象の中で、今回100ミリの雨も無視できないものと思いますが、今後、そのようなケースは考えて、想定していかなければいけないのでしょうか。

【知事】言いわけをするつもりはありませんけれど。日本の、特に東京の災害対策のインフラ整備というのは、かなり進んでいると思います。局地的に、集中豪雨がどうして降るかというメカニズムがよく分からないままに、どんどんそういう例が増えてきた。これは、アメリカと比べて、何も日本側の努力を誇るつもりないけれど、この間のハリケーンでめちゃくちゃになったルイジアナ、あのあたり見ても、ハリケーンの名産地なのに、護岸工事が全然なかったなんてことは考えられない、普通の国では。
 アメリカというのは、それだけずさんで、特にニューヨークのマラソンの視察に行って、先導車で、自動車専用道路を走ってみても、道路の事情がでこぼこで、いかに悪いかで驚いたのですが、それに比べると日本の道路もきちっと整備されてると思いますけれども。日本も、台風が頻繁に来るところであるし、皆さん気がつかないだろうけれども、日本に関する天気図、テレビ、新聞に出ていますが、その中で、年間平均して2つ以上の低気圧が毎日あるという、日によってはない時もありますけれども、多いときは5つもあったりするわけだ。こういう気象を備えている国というのはめったにないんです。
 私は、世界中の海でヨットレースやってきたけれど、一番怖いのは日本の海だ。それから、低気圧の墓場と言われているアリューシャン列島、オホーツク海、あのあたりで日本の漁船が出向いて漁獲を占めていますけれども、そういう、したたかな世界一能力のある日本の漁船がどこで遭難するかというと、全部日本の近海。それぐらい、気象の変化が激しいし、雷が来て、夕立が降って、昔も今も夕立は、「馬の背を分ける」と言われたけれども、家へ帰ってみたら、家の前の道はからからに乾いているのに、通ってきた土地の道はずぶ濡れだった、そういう現象がありますが、こういう気象の予測というのは極めて難しい、人智を超えたものなのよ。
 だから、東京は東京なりに、日本は日本なりに、地方は地方でも色々な努力はしていますが、人智をもっても及ばない事態というのは年中あるので、これからどうするかということ。仮に150ミリの雨が降っても大丈夫な都市をつくるといったら、これは、そのための設備投資の費用と、ほかに必要なお金というものを考えて、進めないとならないことで、幸い、今度も浸水はしましたけれども人命には関係なかったということはせめての救いです。ただ、天然の力、自然の力というのは本当に怖いんだということは、私たち心得て、いかに、安全都市でも暮らさなければいけないと思います。
 例えば平たい海の上でも、1962年、慶応と早稲田の船が沈んで11人死んだヨットレース、私はトップで走っている途中で、これは危ないなと思ってリタイアしました。おかげで助かったけれども、あの時なんかも、予想と外れて、通過する前線がなぜか知らないけれど、7つにも8つにも切れて、ばらばらになっちゃった。それで、岬の沖で四方八方から突然、風が変わって吹いて、もう本当に、どうにもならない三角波で往生したんだけれど、ああいう気象というのは、海象(カイショウ 海洋の自然現象)がそのまま、陸上に持ち込まれたらどんなことになるのかなと思った。空恐ろしい感じがしましたが、局地豪雨なるものも、その一つの証左じゃないかという気がしますけれども。人間の予想を超えた自然というものの変化というのはあり得ることなので、それを、人間の力で、インフラで完全に防御するということはとてもできません。大事なことは心の準備だと思います。
 はい、ほかにどうぞ。

【記者】債券市場構想について伺います。先日、償還したエクセレント・コラボレーションが広域CBOとして2回目の元本割れを起こしましたけれども、そのことについて、知事のご所見をお願いします。

【知事】例の社債担保証券、これは、私も、アメリカの事例というものを参考にして始めた仕事ですけれども、アメリカでは、かなり大きなマーケットになりましたが、別称「ハイリターン・ハイリスクのボンド」と言われている。つまり、リターンも多いけれど、リスクも高いということなのでしょう。日本はそれに比べると、比較的、今度のような破綻というのは数少なくしてきたと思いますし、逆に、80近い会社が、数年の間に上場したのですが。これは、もともとこの計画の織り込み済みのことですから、仕方ないと思います。個々のケース、それぞれ様々に違うでしょうけれども、それを織り込み済みで、こういう事業を展開しているわけで、非常に破綻した企業もあるかも知れないが、同時にそれで救われて上場までこぎつける会社もたくさんあるということで、それを冷静にとらえることは必要だと思います。はい。

【記者】消費税論議について伺います。選挙戦でもいろいろ影響は出ているようですけれども、国民からはばらまきのための補てんでないかとか、あるいは消費税の導入の前にやるべきことがある……。

【知事】ばらまきのための補てんというのは何のことだね。

【記者】例えば、子ども手当ですとか。

【知事】それはそうでしょう。それと消費税とどう関係あるんだい?

【記者】そういったものを補てんする代わりに消費税を上げるんじゃやっていられないというような話も聞くんですけれども。導入前に、例えばもう少し無駄のところをカットしてくれないと、ちょっとその前に消費税をただ単に導入すると言われても納得できないというような話も出ているようなんですけれど。

【知事】日本の財政が、非常に総体的にピンチだということはみんな分かっていることです。それから、消費税に関しても、色々な論がありますが、僕は菅(直人)新総理が、政党をまたいでこの問題を論議しようというのは結構だと思います。逆にひねって眺めれば、どうしてもやらざるを得ない消費税を、自分たちだけじゃなく、与党も野党も含めてみんなで合議して結論出したら、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ということになって、そういう形の呼び込みかなという気がしないでもないが、ただ、菅総理が言っている、200万、300万の所得制限云々するということも、滑稽な話で、日本人の国民の所得の平均値は400万ちょっとなんでしょ。そうすると、数値の考え方によって、過半の人間が対象になるということになってくるけれど、ただ、還付するということ、どうやってやるのですか。そんなこと技術的にできっこない。
 それから、例えば、200万、300万という所得の制限をしても、資産持っている人、たくさんいるわけだから、隠してお金持っている人もいるわけだから、そんなものは、どうやって、本当にこの人の所得が低いということの究明ができるのですか。それから、還付するといったって、そんなことできっこない。領収書を山と自分で持ってて、申告しない限り、そんな煩雑な作業というのは国民とてもついていけないし、言ってることは基本論として、財政救済するために、欧米の先進国並みに消費税上げるということは、原理的には私はうなずけないでもないが、上げることで、言い逃れというのか、皆さんにはあんまり迷惑かけませんよということで、消費税を還付するなんてことは技術的にできっこないので、あんなばかなこと言わないほうがいいと思う。

【記者】あとは、福祉目的税のように……。

【知事】そんな論はさんざんあったんです。だから、今度もそれこそ、与党・野党含めてその議論したいらいいじゃないですか。はい、どうぞ。

【記者】大阪府が、貸し金業の特区、年収の3分の1という制限(※改正貸金業法において、個人の借入総額が原則、年収の3分の1まで制限される)が始まったのですけれども、これを外すような特区を設けてはどうかという提案を大阪府がしているのですけれども、それについて、知事のご所見をお伺いできれば。

【知事】僕、初めて聞いたので、もう少し勉強してからお答えします。どうぞ。

【記者】参議院選挙の投票が日曜日に迫りましたけれども、民主党への歯どめとして、議席割りでいうと、どれぐらいの数を考えていらっしゃいますでしょうか。

【知事】私は、政界再編成のために、与党が過半数を割れることが望ましいと思う。これによって、小沢一郎(元民主党幹事長)なる人物がどういう動き方をしますか。その結果の責任を、どの程度、新しい首相に問うか、それによって、民主党の中の色々な亀裂も深まるかもしれない。それによって自民党も鳴動するかもしれない。小沢一郎が手下を含めて、自民党にまた手を突っ込んでくるかもしれない。
 私は、ガラガラポンで、政界再編成されたらいいと思うし、このついでに、非常に悪い選挙制度を変えたらいいと思います。日本は、2大政党ではだめなの、3大政党じゃなきゃ。ドイツみたいに、A、B、Cあって、AとB、BとC、AとCというような取り組みで、そうすると、イデオロギーを持ち込んだようなばかな体制はなくなってくるわけだから、私は政界再編成した後で、選挙区制度も変えたらいいと思うし、そうすることで、政治家はもっとゆとりを持って、大きな物を考えることができるようになるでしょう。
 東京に限って言うと、区議会議員や都議会議員よりも選挙区が狭いみたいなばかな現象が起こってるわけだから、それは、選挙のためにどぶ板かもしれないけれど、肝心の国会議員が毎日毎日どぶ板で戸別訪問したのでは、こんなもの政治にならないと思います。そういうことを期待してますけれど。
 はい、どうぞ。

【記者】知事が応援団長をやっていらっしゃる「たちあがれ日本」、マスコミの各社の世論調査だと苦戦が予想されていますが、現場、現在の終盤の情勢についてはどのようにごらんになっていますか。

【知事】苦戦は苦戦でしょうがないでしょう。耐えて頑張る以外にないので、孤立無援ということはもともと覚悟してやったことだから、私、応援団長ですから、一生懸命やりますけれど。はい。

【記者】実際、現場で街頭に立たれて、有権者の雰囲気とか意識、何か感じられることはありますでしょうか。

【知事】その限りでは、熱い視線を感じるし、声援感じますし、ある共通の危機感を持った人が、今度の選挙、注目しているなという感じはしますけれども。ただ、みんな、とにかくこの先日本どうなるのかなという漠たる、しかし大きな不安を抱えていることは間違いないと思います。
 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)