石原知事記者会見

平成22年7月8日更新

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年7月2日(金)
15時08分〜15時31分

知事冒頭発言

1 地下鉄一元化について

【知事】私から、冒頭申し上げることではないんですが、皆さんのお手元に配っていると思います、この資料。今、東京には地下鉄が2つ会社あるわけです。片一方が後発して、色々赤字も抱えているけれども、どんどん営業が上がってきて、当然、そのうちに健全な会社になるのは自明のことなんだけれども、この会社、本来なら、ユーザーのために一緒にするのが、民間だったら当然のサービスとして考えられるけれども、それがずるずる、主体者が、国と東京、つまり昔の大蔵省、財務省と東京都が大株主のために、結局、お役人の天下りの運営ということで非常にサービスの質が悪かった。
 見てもらうと分かるんですが、日本橋の駅でも、浅草駅でも、2つの会社の始発が違う。5時と5時15分ですか。15分の差で、扉が開く、開かないで、乗り換えするお客さんというのは非常に不便なんです。こんなことを、よくもやらずに来たと思うんだけれど。
 この間、株主総会がありまして、今まで株主総会というと、東京都の課長が行って、向こうは何か知らないけれど、こっちは変に劣等感持って、国のお役人だから言われるままぺこぺこしてきた。この間もこれやったんだ。会社の役員が座って、こっちに、東京都と財務省の役人が座るらしいんだけれど、株主代表で。今まで課長クラスが行ってきたし、たまに局長が出ても、とにかく約束だから株売るんだと、一方的に言われると、売るんでしょうかみたいな話だったんだけれど、常識で考えても、こんな株の安いときに、儲かっている会社が株売るばかはいないんで、色々議論はあったんですが……。
 この間、こういうことに詳しい猪瀬(直樹)副知事に出てもらいました。それで、今の1,000億と、将来の4,000億、どっち取るんだみたいなことも言ってくれたらしいんだけれども、彼、なかなかそういうことに迫力ありますから。
 いずれにしろ、この簡単な15分の差で扉を開ける、開けないでの、このサービスの強弱というものをどう考えるんだと言ったら、国のほうは「考えさせていただきます、考えましょう」ということだったんで、考えて、すぐやったらよろしいということなんですが、皆さん、フォローしていただきたいということです。
 ばかなことやってるんだ、こうやって。役人任せだと。中には、ドア1枚で鍵がかかっているんで、ここ通れませんということで、1回外出て、また階段降りて、乗り換えなくてはいけない、そういう変なアクセスもあるんです。そういったものは、本当に常識で考えると、自発的に、ぶっ壊してスムーズにするべきだけれども、そういうことに及びもつかないというのは、やっぱり官営なんだね、これ。
 私から申し上げること、それぐらいですが、質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】サッカー、ワールドカップで、日本がベスト16位で負けてしまいましたが、FC東京の長友(佑都)選手が、「自分たちの力が世界で通じることが分かった、自分たち若手が日本を引っ張っていきたい」と振り返りました。これ、若い世代の頼もしい発言だと思いますけれども、知事はどのようにごらんになりましたか。

【知事】若い世代って、サッカーの世界の中の若い世代だろう。日本の若い世代がそんなにしっかりしていると思わない。それをもって範としたらよろしいんで、あれ見て、俺たちも出来ると思ったら、草食から肉食に転じたらいいんで、若者たちが。それだけのことです。何かあなた言いたいの?

【記者】サッカーのベスト16位というのは。

【知事】それは、人によって評価する人と評価しない人と、もっと期待をする人としない人といるだろうけれども、全敗で終わると言われたりしていたんで、作戦と基本的な物の考え方変えて、あそこまで行ったのはよかったんじゃないですか。
 しかし、PKはPKで偶然とは言うけどね。PKで5対5で引き分けて、さらにPKになって、3回戦ぐらいPKやって、勝つか負けるか決まれば、もっとスリリングだったけどね。ああいう事例っていうのはワールドカップではないんじゃないですか、今までも。そういう点で善戦したと思います。善戦だよ、だけど。優勝したわけじゃないんだから。
 もともと、日本人、東洋人というのは外国人のサッカーに勝てないんですが、昔、杉山(隆一)とか、マラドーナとか、背が低くても突破力のある選手がありました。つまり、そういう基礎体力というものを備えること。それから、繰り返して言うけれども、バレーで負けた松平(康隆 日本バレーボール協会名誉会長)監督が、とにかく雌伏(しふく)して3年後には、今年は銅だったけれど、金取るんだということで、選手そろえて、戦略立てて。そういう大きな戦略構造というのを考え出す人がいなくなったね、日本には、スポーツに関しても。
 岡田(武史 サッカー日本代表監督)君はよくやったと思います。あれだけ、やめろとか、ばかだとか言われれば、ちきしょうと思って方向転換もするだろうし、それが当たったんだろうけれども。この間も言ったけれども、勝てば官軍で、そういう点では、非常に無慈悲な、つらい世界だなと思って、私は岡田監督に同情しましたが。
 はい、ほかにありますか。

【記者】知事の報酬(09年の知事給与所得)が2,389万円と公表されたわけですが、これについて、知事のお考えは、高過ぎるのか、安過ぎるのか。

【知事】妥当なところじゃないですか。

【記者】妥当だということですか。

【知事】昔はもっと収入ありましたから、物書きの頃、私は。大流行作家だったから。

【記者】来年、知事選がありまして、新しい都知事が誰になるか分かりませんけれども、現在の知事報酬というものを持続させておいてもらいたいというふうに考えますか、それとも、もうちょっと高目にしてやったほうがいいのではないかとか。

【知事】東京都の知事は、ほかの知事と違って、持っている権限というのは、預かってる予算の規模から言ったって、大変なものだと思います。それなりに重い、大きな仕事だと思います。やりがいがあると思います。総理大臣、日本で一番偉いかもしれないけれど、くるくる変わって、何もできないうちに、罵詈雑言浴びて辞めるのに比べれば、自覚を持って、しっかりしてやれば、4年間はとにかく頑張れるわけだから、やりがいのある仕事と思いますけれど。それはそれなりに、日ごろ言っているみたいに、日本の心臓部、頭脳部であるのだから、給料としては妥当なものじゃないでしょうか、と思います。
 どうぞ。

【記者】参院選が終盤に入りますけれども、応援団長をお務めの「たちあがれ日本」など、色々応援演説も参加なさっていますが、3月、4月の、場合によっては、応援団長だけれども、グラウンドに殴り込みをするよというような知事の勢いから比べると。

【知事】あまり興奮しないね、今度の選挙は。

【記者】内閣の交代などで、知事の政界に対する心境というのは、新党への期待とか、変化はおありなのでしょうか。

【知事】僕は、菅(直人)君というのは、なかなかずるいと思うし、うまくやっていると思う。昔から知っていますが。タクティシャン(戦略家)だと思う。昨日も、10チャンネルかのインタビューを聞いていたけれど、うまいよ。
 それから、消費税は言うべくして言ったと思います。ほかが逃げ回っていますな。菅君も、色々非難が集中するようになったから。
 ただ、日本人はそういうところはよく反省しなくてはいけないけれど、税体制が今のままでやっていて持つんですか、財政的に。持ちっこないの分かっていても、それを持ち出されると、きゃーきゃー言う。自民党が言ったことを横取りしたとか、うまく利用したと言うけれど、僕はそういう点で、菅君はなかなかの総理大臣だなと、私は思ってますけれど。

【記者】鳩山内閣の頃は、参院で民主政権の過半数というのは絶対阻止しなければいけないという、強くおっしゃっていたわけですけれども、そういうところで、菅首相の、ある程度評価できる部分を勘案して、過半数を阻止しなければというところの変化というのはございますでしょうか、お考えの。

【知事】肝心のことは埋没されて、カーテンの向こうに行ってしまったんだけれど、例えば、私が絶対許せないのは、繰り返し言うけれど、時間的、空間的に、日本そのものが狭くなってきて、地方の政治イシュー(論点)というものが、国に作用しかねないこの時代に、日本に永住してる外国人に、しかも、それぞれ、日朝関係、日韓関係、日中関係、彼らにとっては、暗い過去があるわけです。そういった歴史のオブセッションを持っている人たちが、それを抱えて日本にいる。
 それを彼らは超克(ちょうこく 困難を乗り越えること)して、日本の伝統文化というのに敬意を持ち、愛着を持って、国籍を持ってくれるのなら、我々歓迎します。だけど、国籍を変えないままに、国政は別にして、地方の行政に参政をするという、投票できるという、僕はその考え方は絶対、危ないと思うし、してはならないと思う。
 だから、はみ出していってしまったんではないですかと言うけれど、僕は亀井(静香 「国民新党」代表)が、連立の政権の中で、まさに獅子身中の虫とは言わない、起爆剤として、夫婦の別姓、この問題は、私はちょっとまた考え方が違うんだけれども、永住外国人の地方参政権は絶対反対だというのは、私は彼を支持する、彼にエールを送ります。
 そういった問題が、菅政権の中でどこへどう行ってしまうのか、これは、今度の選挙の争点から外れてしまったけれども、これが真正面から出てきたら、国民はかなり逡巡すると思います。考えてみてください、本当に。大きな問題はたくさんあるんだから、原発の問題にしろ、自衛隊の駐留の問題にしろ。それを、その是非を問う議会なり、あるいは首長の選挙も、わずか数百人の差で決まってしまうみたいな僻地に、それに関心を寄せている外国人が、非常に強い反対の関心を持って、移住していって、1,000人、2,000人移住することで投票を決めたら、過去にもそういう例はあります。ある宗教団体なんか。まあ、評判だけれども、今はどうか知りませんが、私は、それは国民、許さないと思います。その問題はどこかへ行ってしまった。
 ただ、財政は本当に逼迫(ひっぱく)しているし、日本の国債の価値、どんどん落ちているし、多分、この間のG20(20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)なんかでも、日本はとにかく別格だという。別格というのはつまり、同情されたというのか、とにかく無為無策で、だらだら続いているこの不況というものを、一体日本の政府というのは、代が変わったのにどうなるんだと。だったら少し時間を待とうということなんだろうけれども、果たして、今度の民主政権が、自民党の垂れ流した財政というものを、うまく収拾できるかどうかというのは分からない。
 その1つの大きな要素というのは増税だと思います、私は。それを言い出したのはいいんだけれど、その所得300万、400万ということ、申告している所得はその限りにしても、資産持っている人いますから、いっぱい。そういったものをどうやって勘案するのかということになると、ああいうこと言わないほうが私はいいと思うんだ。むしろ、生活必需品というものをどこまで絞って、それを税の対象にするか、しないかという議論があってしかるべきだけれど、いきなり、300万、400万の人は控除する、還付するといっても大変な問題じゃないですか、作業そのものも。まして資産持っている人いっぱいいますから、そういった人間の詮索をどうするのかといったら、事務ではできないことです、できないことは言わないほうがいい、技術的に。
 ただ、僕は、菅君というのは、したたかだなと思った。お坊ちゃんの前の総理大臣よりずっとましだと思う。ほかの問題でも。あの人は詭弁家だと。だけど私は、詭弁家でもいいんじゃないか、やることやってくれたら、と思いますけれど。
 ただ、熱烈に期待しているわけじゃない。なかなかしたたかだなと。自民党の総裁に比べても、こっちのほうが、ちょっと役者としたら、したたかで上だなと。つまり蹴手繰り(けたぐり)もする、とったりもする、無双も切るような、油断のできない力士だと思う、僕は。
 はい、どうぞ。

【記者】小笠原の世界自然遺産登録に向けまして、現地調査団(国際自然保護連合 ユネスコの世界遺産委員会の諮問機関)が来日しまして、先ほど、知事も表敬訪問を受けられましたが、地形や生態系など、世界的価値が認められる小笠原なのですけれども、特にどのようなところを見て行ってほしいとお思いでしょうか。

【知事】さっきも言ったんですが、「あなたダイビングしますか」と言ったら、男性の方(ピーター・シャディー氏)が「する」と言っていた。小笠原の魅力、海の魅力というのは、上面だけじゃなしに、下もあるんです。それで、潜ってみなければ分からない生態系もありますし、表面に出ている、地形その他から言うと、奇岩烈々というような島じゃないんです。ただ、あの島だけは、太平洋にほかにあるのかどうか知りませんが、コンチネント、いわゆる大陸というものに付随しないで、あそこだけ、一部だけ隆起してきた島です。そういう島というのは、あまり太平洋にないと思います。その地政学的な特異性というものをどうやって見届けて、どこまで評価するかということは、とても難しいと思う。一生懸命、私も、小笠原の魅力を売り込みました。
 それから、(世界自然遺産に)指定されると、急に観光客が増えて、非常にスポイル(台無しに)される。私、参考に行きましたけれども、ガラパゴスなんかも。あそこは依然として、ごみの問題で非常に苦労しているそうですけれど。小笠原は、幸か不幸か飛行場できません、このままでいくと、今の環境規制がある限り。出来なくてもいいじゃない、みんな我慢して24時間、船に揺られて行ったらいいんで。この日本の中で、24時間かからなくては行けないような場所があるというのはいいことじゃないかね。僕は船が好きだから、多少酔っぱらったって、船に揺られて行くのはいいと思う。
 飛行場ができると、飛行場の工事もあったのだけれど、これがなかなか難しい、色々な問題があって。特に環境省が出てきて、特異な生物や植物があるということで、兄島が(建設予定地として)ボツになった限り、まず、不可能でしょう。
 それはいいかもしれない。ただ、危機管理の問題で、急病が出たとき云々、どうするかと。今まで自衛隊が着実にやってくれていますから、よほどの荒天じゃない限り、飛行艇も行きますし、硫黄島に運んで、硫黄島の定期便で飛べますし。
 そんなことで、私は、飛行場次第の問題だろうけれども、飛行場というのは1つの大きな案件だというから、これは多分、かなり難しいでしょうと、私の今までの知見の限りでは、できないでしょうという話をしましたら、それは1つのプラスの要因になると私は思いますけれども、これは、向こうの後の判断だと思います。
 ただ、私は、小笠原の人に言いたいけれど、私は飛行場をつくらないというんではないんです。多少の我慢して作れば、出来ないことはないし、そんなにべらぼうに大きな飛行場ができるわけじゃないから、環境省も折り合って、例えば、洲崎の、元の海軍のあった飛行場を延伸するみたいなことをやれば、出来ないことはないと思うけれども、限られた機種になると思います。ただ、それも難しいですな。はい、どうぞ。

【記者】新銀行東京で1点伺えればと思います。
 メガバンク出身の社長が就任されて、1年がたちまして、再建が黒字化ということで進んでいますが、現在の、知事の新銀行への営業状況をどう見ているか、改めて伺えればと思います。

【知事】それは非常に感謝しています。ほかの大銀行がしないリレギ(条件緩和等)をやって、相談に乗って、実績を伸ばしてきた。だからこれから、私も色々画策しているんだけれど、セカンドステージで、外国の金融セクターと組んで、どういうプロジェクトで組むか、プロジェクトなしに組むわけにいきませんから。その準備とか、そういったサンディングしていますけれども、これからの問題だと思います。
 ただ、一時期、社長がぼやいていたけれど、これは亀井君が言ってくれたんですが、一種の行政指導で、お前のところ頼りない銀行だから、あんまり預金を集めるなというのは、これはちょっと困るんだ、こんなことをやると。おかしな話です、行政指導というのはもうなくなったはずなんだけど。その思惑は何を背景にしているか分かりませんが、亀井君がとりなしてくれたんで、それはなくなったようですけれども、彼もそこまでよく知ってるか知らないか分かりませんが、次の努力の段階で、預金を持たない銀行なんてあり得ないわけだし、預金あるにこしたことないわけだし、実績というものが評価されれば預金者も増えると思いますから、これからの問題だと思います。

【記者】今、知事がおっしゃったセカンドステージなのですが、知事の3期目の任期は来年の4月までということですが、今のお考えでは、来年の4月までにはセカンドステージの絵姿が見えるような……。

【知事】ある準備はできると思います。そのつもりで、外交の当事者とも話してきていますし、まあ、それ以上のことは言えませんけれど。
 はい、どうぞ。

【記者】知事は先日、フィリピンに訪問されましたけれども、前回の会見で、現地に残された日本兵の遺骨の返還問題について協議を進められたらとおっしゃられていましたけれども、進展、手ごたえというか、そういったものはありましたでしょうか。

【知事】昨日、ノイノイ(ベニグノ・アキノ3世大統領)と、わりと長いこと、四、五十分話したんです。そこでその話もしました。これから、国が動かないんだから、新しい一般財団のようなものをつくって、それが、プロモート(奨励)するみたいなNPO、NGO、そういう形のものが、間に立って推進しないと。
 それから、今度のアキノ政権というのは、かなり今までと違った性格になると思うし、なってもらいたいと思います。ついでで申しますが、おとといの就任式で印象的だったのは、私たちこちらに座っているわけ、大統領も。それで、パレードなんかがある、そのスタジアムの反対側に、一般の大衆がたくさん、支持者も来ているのですが、そこに、色々キャンペーンのボードがかかっていたけれど、非常に大きな横の垂れ幕で、こう書いてある。「we won't miss Gloria!」。グロリアというのは、これ、前のアロヨ大統領の最初の名前です。「おまえがいなくなってほっとした」と。won't missというのは、will not miss。missというのは、いなくなって寂しいと。おまえがいなくなって、逆にほっとしたと。ああいう垂れ幕が出ているということは、よほど、国民が汚職に懲りたんだろう。遺骨採取をやってくれている野口(健 アルピニスト)君が慨嘆したけれども、レイテで見つけた、集団自決した洞窟で、村の村長にそれ言って出そうと思ったら、「あれは俺たちのものだから持っていくな、金払え」と言う。県知事に言ったら、県知事も「金払え」と言う。政府に言ったら、らちが明かない。こんな政権では、遺骨も泣きながら眠っているわけだけれど、こういった問題も、ある組織をつくって、そこで実績をつけていこうと思っています。そういう話もしていこうと思っています。
 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)