石原知事記者会見

平成22年6月17日更新

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年6月11日(金)
15時01分〜15時22分

知事冒頭発言

【知事】冒頭、私から申し上げることはございません。質問があったら、どうぞ。

質疑応答

【記者】新内閣の件について、1点お尋ねいたします。報道機関の各種の世論調査で、60%を超える高い支持率になりまして、知事が前首相退陣前におっしゃってた選挙目当てという狙いも、奏功しているように見かけられる向きもありますが、支持率についてご一言あったらお願いできればと思います。

【知事】国民が新しい政権に期待をするから支持率も上がったのでしょうから、失望転じて、国民の期待に応えるべく、様々な努力をしてもらいたいと思います。ちょっと心配なのは、菅(直人)君は、かつて国旗、国歌を決める法律(国旗及び国歌に関する法律)に反対しました。その先、演繹(えんえき)すると、天皇制についてどういう考え方を持ってるか、よく分からないけれど、天皇を否定するのだったら認証式に行けるわけないのだし、一国のリーダーが、みずからの国の国歌・国旗に敬意を表さない、特に国歌・国旗っていうものに対しての総理大臣の姿勢というのは、これから刮目(かつもく)される時に、例えば、自衛隊の観閲式。私は練馬の駐屯地の創立記念行事には行きますけれども、国旗が入場する時に、みんな起立して敬意を表します。新総理大臣がそれをするのかしないのか、みんなで国歌斉唱する時にするのかしないのか、そこら辺は、とても問題です。多分するでしょう。若気の至りだって、頭かくならそれで良しとするじゃないか。そういうものを払拭してもらわないと、非常に大きな問題で、根本的なものなのに漠然とした不安というものを国民が感じるのは、国全体にとって不幸なことだと思いますから、国歌についてどう思うか、議会でも問題になるかもしれない。その前にメディアの諸君が総理大臣に問うてもらいたい。今の立場ではっきり否定するなら、私はそういう総理大臣は否定します。はい、どうぞ。

【記者】今、都議会のほうで審議が進められています青少年健全育成条例改正案の関係ですけれども、自民党、公明党の修正案が提出されて、今後審議されるわけなんですが、都議会民主党のほうは、修正案にも反対で、改正案の原案にも反対するという方針を、変えていないわけなんですけれども、本会議で改正案が否決された場合、知事としては今後の対応について、どのようにお考えでしょうか。

【知事】目的は間違ってないのだし、どういう文言についての不満なのか知りませんけれども、そもそも、それを否決する理由というのをはっきり聞きたい。それは、法律の文言に対する解読能力の問題だと思います。政権が多数を占めて、数が何でも言うことを聞くのだと、1つの数のデモンストレーションのための反対のための反対で、目的がそう間違ってない法律というものを修正しても、誤解を解く解けないの問題じゃなく、基本的に気に食わない、許さないというのだったら、その理由をはっきりしてもらいたい。私だって物書きですから、表現の自由というのは、死んでも守りたいと思います。だけど、そんなものを別に全く否定するわけじゃないし、日本ペンクラブ、私はかつて属してましたけど、アメリカの言論弾圧に遭った時に、何の助けもなかった、日本ペンクラブは。あきらめてやめたんだ、もう。そんなものが金科玉条、表現というものの、オーソリティー(権威)でも何でもないので。あの時に、ペンクラブに行って抗議しましたら、私の秘書をしていた、今度、総理の補佐官の阿久津(幸彦)君がついてきた。彼、いささかアメリカにいたことがあるのかな。彼が出てきて、慨嘆してました。「ペンクラブって一体何なんでしょうか」と、こんな問題について、あんな態度ありません。それは、石原さんの問題だから、アメリカ行って、あなたが抗議したらよろしいということで、突き放されたんですが。そんなこともありました。

【記者】そうすると、否決された場合は、再度、議案を、3定、または4定に提出するというお考えだということなんでしょうか。

【知事】いずれにしろ、法律、政令というものを作って、改良しなくてはいけない状況は、現にあるわけだから、それに対して、おそらく民主党の支持者も含めてでしょう、かなり多数の父兄の方々が、集まって抗議されたということは大事だと思います。

【記者】ということは、3定なり4定で、もう一度提出するという。

【知事】ああ、もちろん。この悪しき状況を改良するためにも、あの目的を達成するための新しい制約というのは必要だと思います。1回、NHKで、とても放映しないだろうけれど、画面に映して出してみてくれよ。みんなたまげるよ、本当に。

【記者】ほとんどモザイクがかかって、放送できなくなりますね。

【知事】そうだろうね。はい、どうぞ。

【記者】このほど、文化審議会が文科省に常用漢字の答申しまして、196文字追加したんですが、全てを書ける必要がないということだったのですが、パソコン時代を反映しているということなのですけど、国語のあり方として、どのようにお考えでしょうか。

【知事】大賛成です。書けなくていいから読めればいいし、例えば今、資料を持ってきたけど、「曖昧(あいまい)」とか、「嫉妬(しっと)」とか、「妖艶(ようえん)」なんていうのはいい言葉じゃないか。女の人のあやしげな魅力というのを妖艶、表現するのに、こんなに適切な漢字はないです。書けなくてもいいけど、僕なんか書けない字がいっぱいある、この頃。パソコンに慣れてしまうと。昔は、必死になって、眼鏡かけ直して、「顰蹙(ひんしゅく)を買う」の「顰蹙」なんて字を写したけど、今、ぱっと押すと出てくるんだよ。そうすると、字をよく知ってるなと思うけれど、実はそうじゃないんだ。機械のおかげなのだけど、読めればいいことで。それは書けるに越したことはないです。漢字のコンテストなんかやっていると、なかなかみんな、漢字を知ってて大したものだなと思うけれど、あれは、特殊な人たちなんだろう。とても作家も及ばないぐらい、どういうつくりを据えたら、この3つの部首が漢字になるかとかありますがね。これに挙げられた字見ても、大事な言葉です、みんな。「軽蔑(けいべつ)」の「蔑」、それから「緻密(ちみつ)」の「緻」、みんな必要だ。特に、妖艶な女性というのは、ここにいるかいないか分からないけれども、会いたいなと思っているから、こういう言葉はなくしてもらいたくない。はい、どうぞ。

【記者】10月から、羽田空港、国際線が就航するということなのですけれども、成田空港のほうとの色々な、やはり争奪戦、競争というものが今後生まれてくるんではないかと思うんですけれども、本来のあり方として、どういうふうにこのすみ分けといいますか、考えていったらいいとお考えでしょうか。

【知事】本来の建前というのはないのです。つまり、羽田は最初、国際空港だった。これが、成田ができることで国際線から撤廃されまして、一時、羽田は国内線の空港になった。だけど、世界の行き来が激しくなって、とても成田だけでは賄い切れないということで、私も提案して、第4本目の滑走路もつくるようになった。さらに、どれか1本延伸して、あそこから最長距離のアメリカの東海岸とか、ヨーロッパの奥の奥まで、大型機が飛べるような整備をすれば、ダウンタウン(都心)から一番近い羽田の効用というのは、非常に高まってくると思いますし、これをどう勘案して、警察官の血を流してまでつくった成田というのをこれから活用していくかは、知恵の出しどころでしょうね。
 それから、羽田は東京湾というもののアプローチがあるから、24時間、深夜も使える、こういった利点を活かすと、本当言うと、羽田にもう1本、2本、滑走路があれば、私は航空機産業の色々な革命が起こると思うけれど、なかなかそれは言うに易しく行うに難い。だけど、航路の問題もあったりしますが、羽田ももっと合理化していく方法はないでもないと思います。ただ、それは大分先のことでしょうけれども、これはにわかに私がここで答えられないぐらい大事な問題です。成田を全く無視するわけにはとてもいかないし、ただ、お客にとってみると、成田は決して便利な飛行場ではない。これが今までの東京、首都圏の1つのハンディキャップになったということも否めない。
 羽田が、そういう形で蘇生してくると、成田もそれに対抗して、贅沢言ってられないから、飛行制限を10時から11時に延ばしたのですが、あのおかげで日本は出来なかったエネルギーをセーブするための夏時間ができるようになります。そんなことで、あなたの問題は非常に大事だと思うのだけれど、ちょっと私はここで責任持って答えられない。これから衆知を尽くして考えないと、あるものは十全に活かしていかなくてはいけないと思いますが。
 それからもう1つ、いつかも言ったと思うけれど、葛西(敬之 JR東海会長) 君が頑張っている、リニアモーターカーなんて東京−大阪を結ぶようになってくると、国内線の幹線の需要というのは激減しますから、飛行機に乗るより電車に乗ると速くなるわけだから。そうすると、国内線というもののあり方もまた大きく変えられてくるようになるでしょう。そんなこんなで、近未来に、飛行行政とうのは色々な問題に直面すると思うけれど、これからの問題ですけれども、いずれにしろ、相当知恵を凝らさないとある混乱を来しかねないと私は思ってます。どうぞ。

【記者】国政の話で恐縮なのですが、参議院選挙の日程が7月11日ということでほぼ確定しました。振り返ってみますと、1年前の都議選、結果、民主党が都議会で過半数を占めることになったんですが、明確な争点がないまま選挙戦に突入して、投票日を迎えて、結果、民主党が圧勝したという形になりました。今回の参議院選挙も、今のところ、まだこう、はっきりとした争点が浮かび上がってきてない状況だと思うのですが、石原知事は、今度の参議院選挙というのは、どんな争点だとお考えでしょうか。

【知事】懸念する問題は幾つもあります。それは、消費税を含めて増税の問題、あるいは日本の企業の存立、外国の企業の誘致のためにも、高過ぎる法人税というのを安くする問題もあるでしょう。いずれも、日本の財政を根幹から揺るがしかねない大きな問題です。参議院の選挙とはいえ、第二の選挙とはいえ、選挙の後、みんな足がすくんでしまって、先送り、次の選挙ということになるのだけれども、どの程度の議論が尽くされるか分かりませんが、日本の財政は、まさに崖っぷちです。みんな安閑としているけれど。
 ギリシャはあんなことになったけれど、スペイン、ポルトガルが危ないと。あの国の国債と同じぐらいの位置まで来たのじゃないですか、日本の信用度というのは。破綻したら、あっという間に転落します、日本の財政というのは。その時になって慌てても仕方ないので、今から、多少の犠牲を覚悟する。そういう啓蒙というのを、せっかく国政の選挙なのだからやってもらいたい。
 それから、枝野(幸男 民主党幹事長)君はうまく逃げてしまった。彼自身が、弁護士だから、確かに問題あるなということは認識しているのだろうけれども、日本に長く住んでる外国人に、これだけ日本も、世界も、コンパクトになった時代に、地方の政治イシュー(論点)が、国の運命左右しかねない。再々言ってきたことだけれど、原発関係の施設の誘致、自衛隊の基地の問題、そういった問題を、地方の選挙というものにかまけて決めるということは、私は危険だと思うし、そこに外国人が、背後にある自分の祖国の利益を背負って、参加するということは論外の話だ。
 日本人は、ちょっと鈍感になり過ぎた、平和に溺れて。だって、そうでしょう。北方四島、竹島、それから尖閣、みんな日本の固有の領土じゃないですか。2つは取られっ放しだ。しかも、ハーグの裁判所(国際司法裁判所)にかけると、明らかに日本が勝つんだ。負けるのが分かっているから、相手の国は出てこない。尖閣の問題も、ハーグで提訴しようと思ったら、肝心のアメリカが、尖閣は沖縄として返したけれど、主権がどこにあるか俺たちは知らない、自分で考えろという、こんな友好国ありますか。そんな問題も、この選挙の時に、なかなか争点になりにくいだろうけれど、認識してもらいたい、国民に。 はい。

【記者】一番最初、新内閣の支持率に関して、菅内閣の動きについてのお話がございましたが、実は私、ちょっとお尋ねしたいのは、与党も野党も、お互いに批判の球を打ち合って、国政という、国民のことを一切、考えていないような、その不安を覚えているわけなのですが、今も、日本人は平和ぼけしてということにも関連して、新しくリーダーとなった菅さん、都知事もなりたいという一時期ありましたけど、昔、その新しいリーダーになった年下の国のリーダーに対して、石原知事、今、国のリーダーとして、彼はこういうことをやっぱりやるべきだという、何か考えがおありだと思うんですが、いかがでしょうか。

【知事】色々な問題ありますが、さしずめ、明日あさってにかかわりな問題は財政です。この財政の再建のために、還流性のない財政の支出というものを考え直すべきだと思うし、それだけじゃなしに、財政再建の話、さっき言いました、消費税、法人税の問題を、プラス・マイナスあるでしょう、考えてもらいたいと思います。それから、色々な危機が日本に迫っていると思う。領土の問題だけじゃなくて、経済そのものが揺らいできて、どんどん日本の経済面におけるプレステージ(威信)も落ちている時に、どうやって、リカバーしていくか、復活させていくかということも、色々考えてもらいたい。
 日本の技術というものは大変なもので、実は、さっきも報告受けたのですけれども、東京の下水道局が、ある企業と一緒になって開発した、増水した先のごみを含んだ雨水を、どうやってコントロールするかという、非常に簡単な機械を考えた。これは、ドイツから引き合いが来て、ドイツはこれを数万個ごとに発注する契約ができそうなのです。こういったものの売り込みというのか、世界の情勢をくまなく調べて、うちにはこういう商品がありますよという売り込みを、都も大変な中でやっていますが、本当は国がやらなくてはいけない。
 通産省なんてお高くとまっているかも知れないけれど、大企業だけじゃなく、大企業の下を支えている中小企業には色々なノウハウがあるのですから。そういったものを、日本の大企業のためだけじゃなしに、狭くなった世界のほかの人たちに、発展途上国も色々な状況があって、地政学的に違いますから、ニーズがあるものとないものとありますけれど、とにかくもう少し世界全体に売れば、世界も助かるし、日本も経済的に助かる品物がたくさんある。
 そういったものの商品化を促進して、世界に広める努力を全くしない、国は。ほとんどしない。何でこんなことやらないのかという事例、たくさんあります。アニメーションだってそうじゃないですか。僕は、あまり好きじゃない、漫画というのは。だけど、そんな人気があるなら、フェアやろうとやり出したら、大もうけになったじゃないですか。あんなこと、本当は国がやるべきことだ、さっさと。役人はばかにしてるんだ。カントを読んでるかもしれないけれど、漫画なんか読まない。それはそれで結構だ。だけど、世間にそれだけ人気があるものは、世界にも人気があるし、日本のアニメーションというのは、世界の子どもが、主人公の名前まで覚えて、争って眺めている時代に、そういったものの国際的な商品価値というのを、何故、国が分からないのですかね。やっと分かってきたみたいですけれど。

【記者】そういう具体的な是々非々みたいなものもあるかもしれませんが。直接、菅総理大臣と近々会って話をしたいなとか、そういう動きみたいなものはどうでしょう。

【知事】別に今、案件ありませんが。個々の問題については、担当の大臣がいますから。ただ、僕は、菅さんにこの間言ったのだけれど、「君、日本の会計制度を変えてくれよ」と。財務諸表がないような国というのは、日本しかない。だから、事業仕分けをせざるを得ないので。財務省が色々問題があると言うなら、財務省の意見取り払っても、きちっとした複式簿記、発生主義の会計制度を入れないと、いつまでたっても表から眺めているだけでは、無駄は分かりませんよと。それから、絶対国にも、民主党を支えている組合にも、外部監査を入れなくてはだめです。何に使われてるか分からない金がいっぱいあるのだから。人事院勧告なんて知れたもので、外部監査をやって、さらに東京みたいに、監査人が指摘した問題、1年後どうなってるかということをちゃんと追及する、そういう制度をつくることで初めて、開かれた政治になるのではないですか。それがないのだから、会計の上では、全く閉じられた日本です。こんなに物の見えない国、ありませんよ。

【記者】できるだけオープンにしたいとは言ってますけれどもね。

【知事】できるだけじゃなく、うんとオープンにしてもらいたい。どこの国もやってることをやってもらいたい。はい。

【記者】国民新党の党首の亀井(静香)大臣が辞任をしました。民主党にとっては、連立政権を運営していく上で、ぎくしゃくしていく種が生まれてしまったという見方もあるようですが、それについてはどうごらんになっていますか。

【知事】全然違う、ぎくしゃくしていない。亀井は、にやにや笑ってると思う。したたかだよ、あいつは。私の兄弟分だったけれど。手玉に取られているのじゃない、民主党の方が。選挙終わった後、臨時国会を開いて、そこで優先的に特定郵便局の法律は通しますよと言ったら、選挙に拍車かかるでしょう。決まってしまった後よりも、その方が、よほど効果あると思う。亀井、なかなかやるよ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)