石原知事記者会見

平成22年3月11日更新

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年3月5日(金)
15:00〜15:18

知事冒頭発言

【知事】冒頭、私から申し上げたいことはございません。質問がありましたら、どうぞ。

質疑応答

【記者】都議会開会中ですけれども、先日の代表質問で、民主党が、築地市場の問題について、現在地再整備を検討しなければ、予算に反対することもあるということを発言したわけなんですが、知事のほうは、現状では、再整備の検討というのは現実的でないというような趣旨の発言をされましたけれども、議論が平行線の印象を受けているんですが、それについて知事はどういうふうにお考えでしょうか。

【知事】平行線でもないんじゃないですか。大体、理屈からいっても、民主党も、豊洲への移転、賛成してたわけですから。しかもその前に、繰り返して申しますけど、長い長い鈴木(鈴木俊一 元東京都知事)都政の時代から、いろいろ議論があって、しかも400億というのは膨大なお金です。銀行(新銀行東京)再建のためにいただいた追資(追加出資)と同じ額だ。それ、完全に無駄になった形の試行錯誤重ねて、やっぱり(現在地再整備は)だめだということであきらめて、それで、豊洲に移ろうということを決めたわけでしょ。

 ところが、豊洲にとんでもないの(土壌汚染)が出てきた。これは、向こうもびっくりしたし、私たちも腰抜かしましたよ。基準値の数万倍と言われれれば、だれでも素人びっくりしますけど。ただ、いろいろ意見がありまして、それで、特に日本のゼネコンにはそういう経験があるから、経験に駆使された技術というものを、使えるか使えないかということで、繰り返し申し上げますけれども、最高権威の一人である、ジャンルは違います、電子工学の、現首都大学東京の学長の原島(文雄)先生を座長とする、もう一人副座長は有名な方ですけど、そういう専門委員会に検討してもらって、これならできるということで、しかも原島先生の述懐だと、「いやあ、実にいい勉強になりました。なるほど、日本の技術というのはどこも進んでますな」ということで、折り紙つけてもらった。

 ただ、成功の事例があるからということで、「うん」というわけにいかないから、実際に豊洲でも、同じ方法でそれを試してみようということで、結論が6月に出るわけです。それがクリアされれば、当初、民主党も賛成していた条件整備になるわけだから、この段階で、いかに技術が進歩したとか、様相が変わったとかいったって、過去にさんざん議論してきて、絶望的だということになった案をもう1回蒸し返すよりも、豊洲がクリアされたら、そこで予定どおり、しかも、予算は想定したよりも非常に安い、30%も安い予算でできるということが目途もついている。現にもうテストを行っていますけども、その結果がシロと出てきたら、豊洲に移ること反対する理由というのはないんじゃないんですか。

 それから、ここでくどくど言いませんが、あなた方も、地方自治法の議会での採決の手順というのをよく調べていただきたい。これは、変な反対のための反対がまかり通ると、やっかいなことになりますよ。それは、極端なことを言うと、築地だけじゃなしに、東京の市場全体が停止しちゃうことになりかねない。そういうことも、どこまで考えているか知りませんが、選挙で勝った興奮もあるだろうけども、豊洲をそれほど唱えて選挙したわけでもなし、それをもって、都民が是として、都議会の選挙で民主党が大勝したわけじゃないでしょう。みんながわかってるみたいに、衆議院で自民党がぼやぼやしているもんだから、しかも総選挙のあおりを食ったというよりも、向こうが後になっちゃったもんだから、その前哨戦で都議会というのは大迷惑を食ったわけで、そんなこんなを冷静にとらえて、自分たちの立場、責任というものを考えてもらえれば、この問題の落ちつきどころというのは、冷静に考えれば、私は決まっていると思います。

 その豊洲というもののバリア(障壁)というのは、技術的に取り除かれないならば、それは代替案も考えなくちゃいけないけれど。日本の技術でできないことはないわけですから、それでやろうということです、はい。

【記者】その関連で、民主党の中には、中央卸売市場会計、築地用の予算が入った会計の修正案という声も出てきているわけなんですけれども、修正案が、民主、共産の賛成で可決されれば、先ほど知事もおっしゃいましたように、市場への影響というのも出てくるかと思うんですけれども、仮にそういう事態に陥った場合、知事としては、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

【知事】それは想定の上の想定ですから、今からそれをみだりに言うと、また論議が混乱しますから、ここでは控えます。あなた方にとってはおもしろいかもしれないけど、騒ぎは。それで済む問題じゃないから。はい。

【記者】話は変わるんですけれども、先月、東京商工会議所が、そして今日、東京青年会議所が、2020年のオリンピック招致活動に再挑戦をする要望書を都に提出しました。民間の団体から、このような声が上がっていることについて、知事はどのように考えていますでしょうか。

【知事】ちょっと遅いけどね。去年中にやってくれれば、もうちょっとインパクトになったんだろうけど。ただ、それだけじゃなくて、その敗因が、世論がそろわなかったという言い方する人あるけど、それは、報告書の中にも書いたみたいに、もっと、もっと、非常に複合的なメカニズムがありまして、それを乗り越えていくだけの力を、日本側が持ち得なかった。それは、敗れてみて初めていろんなことがわかってきたんで、そういったものを整備、克服していかないと、なかなか2020年の戦いも大変だと思います。

 それからもう1つ、オリンピックを是とし、国際大会というものを是として、それで、無形だけども非常に大事なものをこの日本に培っていこうと思うなら、スポーツは、非常にそのためにとって大事なメディアだと思うけども、そのために予算を思い切って組まなきゃ、バンクーバーと同じように惨敗ですよ。だから、何も今度の政府だけじゃない、歴代の政府のスポーツというものの、国家の存亡にとっての意味合いみたいなものを考えると、軍隊養う国もあるかもしれないけど、それなりに予算をかけて、すぐれたアスリートを育てて、日本の代表として送るということが、いかに、国家イベントで意味があるかということを、もうちょっと政治がわかってくれないとだめだね。

 はい。どうぞ。

【記者】東京メトロの株式上場に伴って、財務省が政府保有株を売却するという話が出ているようですけれども、この辺に関しての都知事の意見を…。

【知事】売りたきゃ売ったらいいんじゃないですか。立派な会社なんだから、東京買いますよ、その分。言われて一緒に売るなんてつもりは毛頭ないから。この株安の時代に何で売るんですか。政府は、自業自得で、財源多端かもしれないけれど、東京は余裕もありますし、2つの会社(東京メトロと都営地下鉄)を統合するためにも、東京メトロのイニシアチブ(主導権)を東京が完全に握ったら、非常に事は都民にとっても有利なことになると思うし、東京は売るつもり、毛頭ありません。

 はい、どうぞ。

【記者】このほど、政府が、春と秋の大型連休を、日本を地域別にしてずらして、設定するような案を出しましたが、観光面のプラスが強調されていますけども、社会経済システム面では不都合も出てくるような気がするんですが、都知事、いかがお考えでしょうか。

【知事】春と秋の連休を何、北と南とで?

【記者】日本を5つのブロックに分けて、1週間ずつぐらいずらして、(連休を)設定するという案なんですけれども。

【知事】それはどうですか。私は、無意味な試みだと思う。だって、これだけ日本の運輸機関というものが整備されてきて、飛行機だけじゃなしに、新幹線も走っているわけですから、どういう区分けするか知らないけれど、北海道の人が九州へ遊びに行くなんて、ごく簡単なことだよね。ましてや、その半分の距離だったら、新幹線使えばあっと言う間に行くわけですから、それは、そういう観光客の移動というものを考えれば、ナンセンスなんだと思う。だれが考えたか知らないけど、ごく頭の悪い政治家が考えたんじゃないの。官僚というのは小利口だから、そんなことはおそらく考えないと思う、僕は。ただの思いつきの域を出ないね、はい。大反対。

 はい、どうぞ。

【記者】政府等で、高校の無償化をめぐりまして、朝鮮学校を支給対象にするかどうかというところがちょっと議論になっているんですけれども、知事はその点についてどのようにお考えでしょうか。

【知事】どういうファクター(要素)が議論のベースになったか知りませんけども、現実に、東京は、朝鮮系の学校にも、額は違いますけど、年間の支援は出していますから、そういったものをベースに、これから、政府の決定を眺めながら、東京の対処も考えていこうと思っています。

 はい、どうぞ。

【記者】ほぼ1週間前に、チリで大きな地震がありまして、その津波が、日本にも大きな影響を与えたと。それこそ、1993年の北海道奥尻地震以来、大津波警報というものも、日本国内には出されたわけなんですが、日曜日に、東京マラソンも無事に一応終わったようですけれども、たまたまそういう日に当たってしまったことなども考えてみますと、今回のこの津波警報が出されたことの問題点、それから教訓というものを、石原知事もリーダーとして何かお感じになったこともあろうかと思いますし、これからまとめるのかもしれませんけれども、どうでしょう。

【知事】今の政府のある大臣が、災害対策(担当)らしいんだけれども、津波警報が出ているのに、東京はのんきにマラソンをやっていたということを言ったらしいが、これはナンセンスで、むしろ気象庁が、ちょっと気象の予報がオーバー過ぎて、これからもう少し精度を増す必要があるという自戒をしているわけです。私もそう思います。

 私、実は、チリの大地震の経験、もう1つあるんです。それは、昭和30年代、同じような地震が起こった。日本にも津波が来た。非常に水位が上がったのは気仙沼などで、あれは、ああいうのを入り江っていわず、「インレット」というんです、英語で、細長い入り江。あなたおっしゃった奥尻もそうなんです。「奥尻に嫁やるな」ということわざが函館半島にあるぐらい、奥尻というのは非常に津波の被害の多いところなの。なぜかというと、あの島は、非常に狭い、幅の細い、奥の長いインレットがある。あそこに、例えば水位が2メートルの波が押し寄せてくると、どん詰まりでは、とんでもない高さになって、私の親しい中村征夫さんという有名なダイビングのカメラマンがいますが、彼がたまたまそこへ行ったときに、民宿のおばさんに、地震が来たらとにかく何も持たずに裏山へ逃げてくれと言われたら、その朝来たんです。

 未明だったらしいけど、とにかく夢中になって裏山へ逃げて、明るみが差してきたころ、波の音がしてきたら、20メートル以上ある丘へ駆け上ったときに、足元まで水が来たと。潮が引いたら、自分が泊まってた民宿全滅して、おばさんもいなかったと。そういう状況で初めて津波の怖さが出てくるわけで、ですから私のヨットが舫(もや)ってあった、油壺というのも一種のインレットなんです、非常に深い。それほどじゃないのかもしれないけど、とにかくそれ非常に心配したので行きました。30センチぐらい水位が上がりましたかな。そのときも、たしか気仙沼でかなり水位が上がって、被害は出なかったんだけど、なるほどなということだったんですが。あれ、波が来るわけじゃなしに、海が膨らんでずーっと水位が上がってくるわけですから。

 そういう点で、東京湾は大丈夫なの。なぜ大丈夫かというと、かなり広い水域、閉鎖水域だけども、その奥に、多摩川とか隅田川とか荒川とか、ある意味でインレットがあるんです。それが、波を吸収しますから。地震の津波工学からいっても、別に心配はないんだけれども、警報が出た。こちらも一応心配ですから、小笠原とか父島、もっと遠くだったかな、とにかく情報をとりながら、対処しましたんで、その災害対策、人によったらしなくていいって人もいるけど、毎年1回自衛隊も動員してやっている、災害対策やっていますから、それは神経質になりまして、連絡とりましたが、全く心配がないということで、(東京マラソンを)続行しました。

 どこかのメディアが、なぜやめなかったとばかなこと言ってるけど、やめる必要がないという判断があったから、科学的に。ただ、そういうものを踏まえて、気象庁は、もうちょっと津波の予報の精度を上げなきゃいかんと自戒しているじゃないですか。

【記者】精度を上げなければいけないという技術的な進歩を求めるのは、確かにあろうかと思います。

 ただ、備えるという意味で、やっぱり安全を確保しなければいけないので、より注意が必要ですよという意味では、皆さんに心の準備、備えをするように呼びかけることは、とても正しかったと思います。

【知事】それはそうでしょう、はい。

【記者】今知事がおっしゃったように、東京湾は安全なんです、という裏づけといいますか、確固たるものがあるかもしれませんが、それこそ自然の持っているエネルギーというのは人間の人知を超えるものが随分ありますので、それ以上のものが起きてくる。奥尻で言いますと、あれは夜10時12分に起きた地震の津波なんですけれども、遡上高といって、上っていく30メートルの高さまで海草が残っていたりしていますから。それだけのものというのは、ふだん考えも及ばないことが起きているということなので、そういったことも含め、第1波よりも2波、3波、みんなで注意しておかなければいけない、覚えておかなければいけないということも、とっても必要だと思うんです。リーダーは絶対にそれを忘れないでいてほしいなと。

【知事】もちろんそうです。私なんかは、昭和30年代のチリの地震の記憶がありますから、それは非常に神経質になりましたけれど。

【記者】ちょうど50年前ですね、昭和35年。

【知事】途中、小笠原なり、伊豆七島があって、それぞれ、水位の向上というのをモニターする拠点があるわけです。これ、とっても東京にとってありがたいことで、それはつまり、波及してきて東京湾に通ったときにどうなるかということ、それは、マラソンのゴールが海のそばですから、お台場ですから、そんなことも考えまして、擁壁の高さからすべて勘案して、絶対に大丈夫だという結論で、とにかくマラソンを続行しました。

 おっしゃることはよくわかりますから、これから、どんな規模のどんなものが来るかわかりませんし、一番怖いのは、遠くの地震がもたらす津波よりも、近海で起こる地震が、どういう形で津波をつくって、どういうふうな形で押し寄せてくるかっていうのは、これは、知見があるようでないんです。特に三陸はもう苦い経験してますから。

【記者】まして東京湾内の下で震源があったりすると、それこそ、東京湾も津波というのが考えられるわけですから。

【知事】ほんとにそうです。だって、あの関東大震災は、震源地はたしか油壺あたりでしょう。

【記者】相模湾ですね。

【知事】あのとき、厨川白村(くりやがわ はくそん)という有名な作家が、鎌倉の材木座の海岸を散歩していて津波にさらわれて亡くなった。だから、近海で起こった地震のもたらす津波のほうがよっぽど怖いですよ。

 はい、それじゃどうもありがとう。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)